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真実は迷宮の中  作者: Luce
第3章 王都
54/84

54話 高貴会

文字数が少ないです。


なかなか展開に悩みました。


キラの町から転移して王都エルガに入って武器の調達から視線の主についての情報を集めた一日目が終わり、二日目、ルートはいつも通り日が上る前に起きていて『影部屋シャドウルーム』の中で日課の体の柔軟と魔力操作、今は"身体強化"の体内の魔力量を増やす訓練を行っており、今では限界量の97%と発動までもう少しというところまでたどり着いてきていた。


"身体強化"の発動がルートが内心で定めていた期日までに間に合いそうな手ごたえを確かに感じていて、用事が終わればもう一度鍛錬を行おうと考えると、魔力の循環を止めて平常時の調子に戻すと自分の寂しくなりつつある所持金の心配をして、今日はギルドに向かってアーミー・エイプとの戦いによって得られる報酬を受け取ると同時に『無限』で回収したいくつかの換金可能な素材を売ることにした。


そろそろ活動を始めるにもいい時間になってきたと感じたルートは今日の予定をそう定めると適当な素材を選んで腰袋にしまうと『影部屋シャドウルーム』と自分の借りている部屋を予め作っておいた影とを繋いで外に出る。


そして軽く部屋の乱れを直すと部屋から出て鍵を掛けて階段を降りる。

階段を降りて受付に鍵を昨日も見た老紳士に渡して少し言葉を交わした後、朝食を取ろうと昨日説明された食堂へと入る。


食堂はそこまで広いものではなく、大人が5人が周りに座ることの出来る円形テーブルが6個に、厨房の内部が見えるような位置にあるカウンター席が10席程というもので、今は丁度朝食時ということもあってそこそこ賑わって朝食を取っていた。


ルートも空いているカウンター席を見つけ、隣に座っていた商人風の男に席に座ってもいいかを尋ね、問題がないようなのでその席に座り、それと同時にこの食堂のスタッフが注文を伺いに来た。

ルートは手軽に食べることの出来る軽いものをという大雑把な注文をするも、スタッフはそれを快諾し、「それではサンドウィッチと温かいスープをお持ちいたします」というと厨房の中へと入っていった。


そうして注文した物が届くまで待っているルートに、


「お暇でしたら私の話し相手になっていただけませんか?」


と隣の商人風の男が話し掛けてきた。

ルートはその男と話すことに拒否感も持っていなかった為、


「いいよ」


と軽い調子で返す。

それにニッコリとした男は、


「私はクロンと申しまして行商をしております。宜しくお願いします」


と手を差し出し、ルートはその手を握り返して、


「僕はルート。こちらこそ宜しくね」


軽く握手を交わすと、クロンが、


「その格好から察しましてルート殿は戦闘者ですか?」

「そうだよ」

「ほう。この宿に泊まっているということは王都で活動している戦闘者では無いと思うのですが、これまではどちらに?」

「セルファだよ」

「…あのセルファですか?」


ルートの言葉が信じられないのか聞き返すクロンにルートは頷くことで肯定する。

その肯定を見るとクロンは難しい顔をして顎に手を当てて何かを考えるとハッと顔を上げて、


「セルファで活動していたとは…。失礼ですがランクは?」

「"水"だよ」

「ふむ。"水"ランクではセルファはキツいと聞きますが大丈夫でしたか?」

「共に戦う人がいたからね」

「それでもこうして生きているというところを見るにルート殿は優秀なのですね」

「確かに大体の"水"よりは強いと思うよ」


セルファは一般的に傷は負っても犠牲を出さずに魔物を狩ることの出来る目安を"青"ランクとされており、"水"ランクでは犠牲を出して一匹倒せるかどうかという所で、それ以下のランクのものについては生きて帰れるかどうかといった所であった。

そう知られているからこそクロンは"水"ランクで戦闘者として活動していたということを仲間がいたと言ってるとはいえ十分に優秀であると評価をしたという訳である。


もっともルートのセルファでの活動というものは闇魔法を得る前のルートの正当な努力によって培われた実力でのものであり、自身に"呪い"を掛けて強制的に魔力量などを拡張した今では"水"ランクに収まるような可愛いものでもなかった。


「私も商人として1度は魔物の良質な素材が取れるというセルファ領には一度訪れてみたいのですけど」

「クロンさんの実力なら少なくとも身一つなら襲われても十分に逃走なりの手段を取ることが出来ると思うよ。」

「…わかります?」

「セルファで観察眼は養われてるからね」

「それは凄いですね」

「少なくともその服装じゃなければ行商人をしているなんて思えないよ」

「…一応本業なのですけどね」


などと言って二人して笑い、そしてそれぞれの食事が運ばれてきてそれを食べながら、ルートがセルファ領で求められている物について語り、クロンが拠点にしているというこの王都ルエガについて話をして食事を楽しんでいた。


そして食事も終わり、ルートとクロンが食後の紅茶を飲んで"悠遠亭"の食事のレベルの高さに満足していると、


「そういえばルート殿は知っていますか?もうすぐ通称高貴会が行われることを」

「高貴会?」


ルートは聞いたことのない言葉に首を傾げていると、その様子からその単語を知らないと判断するとクロンはルートと距離を詰めて小さな声で、


「正式名称は王国臣下統一会議と言って、十年に一度、国中の全ての貴族が一堂に会して報告を行い、その上で数日かけて国としての方針を決めようというものです。・・・建前は立派なものなのですが実際には国の方針も何も決まることが無く、各地から集まってきた貴族の目的は王家主催の夜会です。そこで貴族の皆様は自分の娘や息子の社交界デビューの場とし、なるべく家柄のいい結婚相手を探しに来るという出会いの場なのですよ。そしてその自分の家の繁栄しか考えていないということから庶民の間では皮肉で高貴会と読んでいたのですが、それを聞いた貴族がそれを額面どおりに受け止めてですね・・・今では自分達で率先して使っているというのが今の通称です」

「へえ」


ルートはそう淡白に相槌を打っている。

しかし内心では、


(国中の貴族が集まってくるということはつまり目的が向こうからやってきてくれるということだ。目的を果たすにはお誂え向きの場所じゃないか?周りの貴族が見ている中で自分の行った行動を暴かれる。うん、いいな。まさにこの日以外には無いくらいの最高のステージだ)


激情が内心で暴れ狂う中でそんなことを考えていて、ルートはその激情が表に出ないように抑えていた。

そしてもっとその高貴会というものについて知っておきたいと考えたルートは、


「その高貴会っていつなの?」

「3日後です」

「3日後か」


自分の頼んだ短剣が出来上がるのは2日後だということを考えると、ルートはまさに最高の機会ともいえるその偶然に恐怖さえ覚えていた。


そんなルートの内心など知らないクロンは少しぬるくなった紅茶を一気に飲み終えると、


「私はそろそろ商談がありますのでこの辺りで失礼します。私はその商談が終わり次第他の町へと足を運ぶつもりですのでおそらくここで会うことは無いでしょうが、またルート殿にはどこかで出会いたいものです。今は手元には何もありませんが、今度あったときには私の商品も見てください」


そう言ってにこりと微笑み、ルートはとりあえず自分の心の中の様子は置いておくと笑って、


「あはは、さすが商人だね。うん、またあったときには何か買わせてもらうよ。またどこかで会えたらいいね、クロンさん」


クロンはその言葉に「きっといいものをお売りしますよ」と返すと自分の椅子にかけていたリュックサックのようなものを背負うと食堂を出て行った。

ルートはそのクロンに小さく手を振って食堂から出て行ったことを確認すると、同じく紅茶の残りをクッと飲み干す。

そしてさっきのクロンの言っていた高貴会に合わせて行動を起こそうと決めると、席を立って歩いてゆき、老紳士にギルドの場所を聞くと"悠遠亭"から出てゆき、朝の日差しが眩しい中、ギルドを目指して歩き出した。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ルートがギルドと思わしきレンガ造りの二階建ての、外見は正方形の大きな箱の上に一回り小さな正方形の箱を乗せてその上に大きな方形屋根と呼ばれる形の屋根を被せたような大きな建物にたどり着いて中に入ったときには既にギルドが開い毎朝恒例のて依頼の争奪戦が終わり、依頼を受けることが出来なかったまだ駆け出しの戦闘者たちが併設された酒場で鬱憤を晴らすように酒を呷っていた。


ルートはギルドの中に入った途端にその酒場から多くの視線を集めていることに気がついたもののすぐに興味を失ったようでその視線が消えていくのを感じながらセルファと同じ構造の受付口のうちの一つの報告と書かれている受付口へと歩いてゆく。

そしてルートが受付口の前までたどり着いたところで、その受付口の担当の女性職員が、


「おはようございます。どのような報告でしょうか?」


と言うのでルートは腰袋から自分のギルドカードを取り出して、


「この報酬を受け取りたい」


そう言って提出した。

すると女性職員が「少々お待ちください」と言うと手元にあったタブレットPC状の透明なクリスタルのような魔道具にギルドカードを翳す。

するとそこに白い文字が浮かび上がってきて、女性職員はそのいくつかの文字が組み合わさって出来た単語のうちの一つに指先で触れると、そこに表示されていた文字の全てが一度消え、また先ほどとは違った文字が浮かび上がってきて、単語を構成してゆき、最終的には文章になった。

そうしてその女性職員がそこに浮かび上がってきた情報を読み取ると、そこに書かれた内容に驚くと、


「・・・すみませんがご同行願えますか?」


と言った。


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もう一つの連載作 テーマは独善の投影。
「辻ヒーラーさんは今日も歩く」
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