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真実は迷宮の中  作者: Luce
第2章 大量発生
48/84

48話 終了


ルートたち援軍の中には一日に二つの激しい戦いを行い勝ち鬨の声を上げた後、気が抜けたのか腰が抜けたようでその場にヘロヘロと尻餅をついて倒れこんでしまった者も大勢おり、ブラハもすぐにキラの拠点に戻るつもりも無かったが、その様子を見てより一層その考えを深め、


「キラの拠点から来た諸君、ご苦労であった。疲れて倒れこんでしまった者たちはそのままの体勢で待っていろ。動ける者は勇敢に戦って散った者たちを神の元へと送った後、この辺りの掃除を頼む」


ブラハはそう言うと近くに倒れている遺体からギルドカードを抜き取って回収して運び、それに倣うように動ける者たちもギルドカードを回収して遺体を運んで一箇所にまとめてゆく。


そしてその作業を続けていると、ルシトの拠点からギルドの職員が出てきて全ての拠点で殲滅を確認できたと言う連絡が入り、そして現在"黒"の二人を筆頭に樹海の内部調査を行い、アーミー・エイプの姿が確認できないという報告が入り次第、この依頼を達成と認定するそうだ。


それを聞いて明確な終わりが見えたことでそこらにいた者たちがやっとかという表情を浮かべ心底疲れきったという様子になっており、ルートは近くに居た『万色の集い』の面々とさまざまな話をしながら遺体の回収を行っており、その辺りに遺体がなくなったところでついでにアーミー・エイプの死骸を適当な位置に纏めてゆく。


そうしていると他のパーティーが回収していた最後の遺体の回収も終わり、ブラハによる『創火ファイヤー』によって着火され、やがて大火となって煙が天へと、神の元へと導かれてゆく光景に手を合わせ、そして次々とアーミー・エイプの処理に入る。


ルートとエリュは自分達が処理したアーミー・エイプの元へと向かい、自分達が作り出したその光景をみてため息を一つ。

そこらへんに氷や石の槍が地面から生えていたり、それは大きな岩の壁が出来上がっていたり、季節はずれとかいう問題ではない氷山が出来ていたりと、他の場所よりも一段と非自然的な光景が広がっており、それを見てルートとエリュは自分の戦っているときの人格のはっちゃけ具合に辟易し、それでも自分の隣の相手よりはまだ常識的だとお互いに思っていた。


そしてルートもエリュも自分の発動した魔法を解除して姿かたちを消し去り、ルートが土魔法で地面を綺麗に均してそこいらに散らばっているアーミー・エイプの魔石を回収して焼却、回収しては焼却と何度も繰り返して自分達の始末した死体を完全に処理し終え、二人で達成感もあってか今度は高さの合わせた拳をつき合わせてコツンとさせる。


そしてマインなどが後始末をしているところへと歩いていっている途中にギルドの職員が声を張り上げ、


「今回のアーミー・エイプの殲滅作戦は"黒"ランク二名による事態の収束宣言によってギルドの本部より、正式に作戦の終了の宣言が出されました!戦闘者、騎士団の皆様、今回の事態の収束にご助力いただきましてまことに感謝いたします!ギルド、またルシトの町を愛する者の一人として心より感謝いたします!」


「「「おおおおおお!!!」」」


戦いの収束宣言に喜びの声を上げる者たち、隣にいる者と抱き合ったりハイタッチをしていたり、またその場で大きくジャンプしたりと全身で喜びを表現し、また王国の危機を救ったということで何か思うことがあったのか涙をポロポロと流したりと安堵の表情を浮かべる者もいた。


ルートとエリュは特に何かするわけでもなくただお互いの顔を見て笑い合うと、マインがその宣言を聞いて喜んでルナを抱き寄せようとしたところで蹴りを入れられていたり、何かを感じることは無かったのか無表情でいるピナにレンがもじもじと何か話しかけたそうにしているのを見て、ため息を吐くシンと面白そうなおもちゃを見つけたような顔でレンに近づいていこうとしているギルバートをシークとイーサの二人にとめられていたり、ルイとライがハイタッチを交わし困った顔のリズを中心にグルグルと回っていたり、いつの間に酒を取り出したのかもう呑み始めているミツナとタタラといった愉快な『万色の集い』の元へと足を進めてゆく。


そうして合流した『万色の集い』の面々とまた気が付けばそばにいる『熊樫の森』の面々と話をして交流を深めていると、突然、


「キラの町の援軍たちに連絡だ。セアラからキラの町で宴会を開くという連絡が入った。帰るぞ」


拡音スピーカー』で大きくなったブラハがそれだけ言うとさっさとパーティーメンバーと共にキラの町の方へと歩いてゆく。

さすがに何度もブラハの行動を見ていれば発言と行動までの時間の無さというものにも慣れ、共闘したルシトの拠点の戦闘者や騎士団の者に別れの言葉を告げるとその後ろについてゆく。


そしてその姿が見えなくなるまでお互いに手を振り合い、姿が見えなくなったところでルシトの拠点の者たちは拠点の解体を始め、援軍たちは前を向いてキラの町を目指して歩いていった。



傾き始める日が段々と紅くなってゆき、平原の緑をオレンジ色に染め上げてゆく。

そして今回の戦いの舞台の一つでもあるキラの樹海は、樹冠が多くのオレンジ色を受け止め、中のものを隠すような大多数の黒が樹海内部を支配していた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


キラの町に援軍一行が到着したときにはすでに遠くに見える山の稜線に日が少しだけの暖かな光を残して隠れていた。


そして北門にいた門番代わりの戦闘者に挨拶をして町の中に入ると、そこにはキラの町に残っていた者たちが並んで援軍集団を拍手や指笛などで迎えて、感謝の言葉が次々と投げかけられる。


それに対応しながら拠点の中へと入ると、焼けた肉の放つ暴力的なまでの匂い、そしてパチパチという油で何かが焼かれるようなポップな音が帰ってきた者を出迎え、そして目に映るのは昨日の夕食など比較にならないほどにたくさん並べられた料理と忙しく動き回る人たちの姿だ。


そして忙しく動き回っていた人たちがこちらに気が付くとそれぞれが感謝の言葉を言うとまた忙しく動き回り、その内の一人、キラの町のギルドの受付嬢であるセアラがこちらに寄ってきて、


「皆さん、キラの町方面の戦いだけでなくルシトの拠点での戦いまでお疲れ様でした。ギルド本部も報酬の増額を約束するとのことです。後ほどギルドカードに記録させていただきますので提出してください。また、報酬はこの町にあるようなギルド派出所では換金が出来ませんので、お手数ですがギルド支部に行って報酬を受け取ってください。と、報酬などの固い話はここまでにしまして何かご質問があればそれぞれ私のところまで来てください。さて、今回用意させていただいた食料などはこの町に残っていた住民のみなさんに提供していただいたもので、みなさんに感謝しているとのことです。私からもこの町に住む住民の一人として感謝しております。この町を守っていただきありがとうございました。それでは是非とも楽しんでください。」


そう言ってセアラは深々と頭を下げると小走りでこの場を離れ、大広間を出てゆく。


そして戦闘者や騎士団の面々はワイワイと楽しげな声を上げながら豪快に豚を一匹丸々焼いたものなどのさまざまな料理が並んでいる中で自分の好きなものを取り分け、酒や果実水などのさまざまある飲み物も自分の好きなものを注ぎ、そして食事の準備が完全に出来たところでこの集団のリーダーとなったブラハの言葉を待つ。

それを感じ取ったのか面倒そうな雰囲気を出しながらも目立つ位置に立ち、一身にこの場にいる者たちの視線を集めながら、


「私達は今回の戦いでこうして生き延びた。しかしながらこの場に帰ってこれなかった戦友もいる。騎士団の者にとっては流儀が違うのかもしれないが、今回は私達戦闘者なりの弔いを行おう。そうだ!歌え!踊れ!食え!呑め!神の元へと旅立った者たちが後悔するほどに騒いでやれ!それだけだ!それが戦闘者だ!準備はいいか!」


激しくまくし立てるブラハの言葉に理解を示した者たちはエールが並々注がれたジョッキなどの飲み物が入った容器を高く上げ、それを見た理解していなかった者たちが真似して全員が容器を高く上げたことを確認すると、


「よし!まだ見ぬ明日に!乾杯!」


「「「乾杯!!」」」


ブラハの音頭と共に隣にいた者同士でぶつけられ合う飲み物の容器がキンッというような薄い金属の容器同士が当たるような音やボッというような中身の入った木製の容器同士があたるような音がそこらじゅうから鳴り響く。

そして、


「「「ぷは~!!」」」

「美味え!」

「お代わり!」

「もう呑みきった奴がいる!?」

「こっちにもお代わり!」

「他にも!?」

「ごちゃごちゃうるせえ!」

「理不尽ッ!」


早速騒がしくなる大広間にルートはセルファでの大規模戦闘の後の宴会を思い出して少し笑い、そしてそのときには飲ませてもらえなかったエールを呑む。


喉を麦の持つ甘味が通り抜け、口から鼻に抜ける独特の香ばしさが、


「僕これ苦手」


ルートには合わなかったようだ。


それでも残すのはもったいないと思って、エールのいいところを探しながら飲み干し、ルートは口の中の味を消すように自分の取ってきた皿に盛ったしっとりとした肉をおいしくいただく。


するとルートはつい最近まで満足に食べ物を食べることが出来ない生活を繰り返していたが、地上に戻ってきたことでその心配をする必要がなくなったということに気が付くと次々と皿の上の物を食べ、そして次に食べたいものを選んで持って帰ってきてそれをまた食べて取りに行くというひたすらに胃の中に食べ物を詰め込んでいく作業を味わいながらも繰り返していた。


そして無くなったエールの他のものとして取ってきたワインを味わい、虜になったルートは、食べる、呑む、食べる、呑むというルーチンをひたすらに繰り返すだけの存在になっていた。


しばらくそんな行動を続けていたのだがいくら制限がなくなったといっても胃に限界はあり、そろそろ食べ過ぎかと感じ始め、食べるスピードを落とし始めると、近くに居たマインが、


「そういやイーサにエリュにルート、お前らはこれからどうするんだ?俺達はクランの拠点に帰るが。お前らなら是非ともうちに勧誘したいところなんだが」


その言葉にイーサは、


「『万色の集い』に入れて欲しい。戻らなければならないパーティーももう無くなった」


そう答えると『万色の集い』のメンバーはそれぞれ歓迎の言葉を送り、


「ハハッ、歓迎するぜ!イーサ!」


そう言って差し出した手をイーサが取って固い握手を交わし、マインが肩をバンバンと叩いて「これからよろしくな!」と笑顔を見せ、他のメンバーとも握手を交わして行き、イーサも同じように楽しげな様子で挨拶をしていた。


そうして一通りの交流が終わるとイーサも『万色の集い』の側に座り、そしてマインがルートの顔を見ると、なんとなく言いたいことを察して、


「ごめん、僕は一緒には行けないよ」


そう言って申し訳なさそうにしているルートからマインはその隣にいるエリュに視線を移すと、


「私も申し訳ないのですがお断りさせていただきます」


そう言って頭を下げるエリュを見て、マインも残念そうな顔をしていたものの、


「そうか。理由は聞いてもいいか?」


と尋ねるとルートとエリュは、


「目的を果たすまではそういうことが考えられないから」

「目的がありますから」


二人の瞳はこれ以上は何も語らないと主張していたため、マインはそれ以上の追求は止めて残念そうな顔を作ると、


「それはほんとに残念だ。まあ一緒にパーティーを組んだのも何かの縁だ。気が向いたら俺達を尋ねてきてくれよ。俺達の拠点はこの国から少し遠いがアガレア連邦の首都にあるからな。よし、ピナ!何か一曲頼む!」


気を使ったのかマインがピナに歌のリクエストをし、それを受けたピナが手に持ったハープを奏で始めると、大広間に集まっていた者たちが「よっ!待ってました!」「また聞けるのかな?」などと一度聞いたピナの歌声を楽しみに待っていて、ピナの奏でる曲のテンポに合わせて手拍子をする。


そしてピナが歌を歌いだす中、ルートは内心で自分の中に住んでいる復讐心がなくならない限り固定のパーティーなどを組むということが出来ないだろうと考えて、同時にマインの誘いどおりに『万色の集い』に入るにしても自分の心は汚れすぎていると自嘲していた。


そんな面倒なことを考えていると隣にいたエリュがそのルートの心情を読んだのか、お酒を呑んで少し赤い少し色っぽい顔を近づけ、


「ルート、あなたはいつかまた生きることが出来る日が来ますよ」


と耳元で囁くと離れていく。

ゾクッとする感覚に襲われながらもルートはそう言ってきたエリュを直視、するには少し抵抗があって目を逸らしながらも近くにいるエリュにしか聞こえないような声で、


「エリュもね。そのいつかは僕達にとってもそう遠くないかもしれないよ?」


と少し微笑んで含みを持たせながらそう言った。


その言葉を聞いてエリュは少し驚いた表情を浮かべると、その表情をすぐに消して片手に細身のワインの入った金属製の容器を持ったままルートの正面から隣に移動すると、頭をコテンとルートの肩に預けると、


「その言葉を信じるよ。それなら先に前祝いということで」


と手に持った容器をルートとエリュの間ほどに持って行き、ルートはその意図を悟ったようで、


「分かったよ。前祝いね」


と言って二人の間に差し出された容器に自分の容器をキンッという軽快な音を鳴らす。

そして二人とも自分の口元に持って行き中身を少し飲むと顔を合わせて少し微笑んで笑う。


いつか味わったことのある和やかな雰囲気。

それを思い出して心穏やかになる。


ピナの歌声に合わせて歌う音痴な男に拳が飛ぶ、そんな行儀もへったくれもない空気のまま時間が緩やかに流れてゆく。


まだ宴は始まったばかりだ。


これにて二章完結!

次は王都編です!

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もう一つの連載作 テーマは独善の投影。
「辻ヒーラーさんは今日も歩く」
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