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真実は迷宮の中  作者: Luce
第2章 大量発生
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42話 戦闘開始


平原でブラハの作戦開始が叫ばれる少し前のこと、シークの姿は樹海の森の奥、アーミー・エイプの大群の近くにタタラとリズが地下に作った拠点に各拠点から集められた大群をおびき出す担当になった者達と共にあった。

おびき出す担当の者達はそこで作戦決行直前まで自分達の誘導次第では自分の所属している拠点の戦力が壊滅的な被害を被る危険があるからこそ彼らは念入りに何度も何度も打ち合わせを重ね、そこらへんに落ちている石を拾って来てそれを自分達に見立てて実際の動きを確認したりと、起こりえるだろう非常事態にも対処できるように対応策を練り、作戦開始の時間を待っていた。


そして、


「時間だ。出るぞ」


おびき出す担当のリーダーは支給されていた決められた時間が経過すると静かに震える魔道具が震えたことを確認して静かにそう言った。


リーダーもそのリーダーについていく者たちもみなこの担当に選ばれるだけあって足音を一切立てない歩き方をしており、地下の空間から出た後、もちろん気配も消して装備が擦れ合う音すら最小限に抑えていて、その中でもリーダーとシークはその装備が擦れ合う音すらも立てずに静かに移動し、所定の位置に付くとあらかじめ決めておいた手で行う合図で準備が完了したことを伝えると、魔力を流すことによって3秒後に辺りに吹き荒れる暴風を発生させるという風魔法を封入した球状の物体を簡易的に作成した投石器のようなもので大群の中に次々と放り込む。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


アーミー・エイプはその突然自分達の方へと飛んできた球状の物体がどんなものかは分からないもののとりあえずその着弾予想地点から離れようとすると空中でその球状の物体がひび割れ、中から透明な緑色の光が吹き出し、


ブオオオォォン!


轟音と共にその物体が破裂し狭い場所からやっと解放されたといわんばかりに暴れ狂うように吹き荒れる風がそこらの石や砂、落ちていた葉っぱや枝、そしてそこそこの重量を持ったアーミー・エイプでさえも巻き込んで周りにある物の全てを一掃した。

その物体によって被害を受けたのは巻き込まれたアーミー・エイプだけでなく、そのアーミー・エイプが飛んで来て押しつぶされて命を落としたものもいれば舞い上がった枝が風の中で勢いを受けて飛び出しアーミー・エイプの柔らかい部分、口内や目などに刺さったりと様々で、それに何よりも面倒なのは巻き上げられた砂や葉っぱで視界が制限されるということであった。

そしてその制限された視界の中で次々と飛んでくるその球状の物体は自身の存在を悟らせずにアーミー・エイプの集まっているところに着弾して凶暴な風を解き放っていく。


突然の出来事に混乱する中、少ないとはいうものの犠牲が出るほどの被害を受けたアーミー・エイプたちの総指揮を担当する個体はその原因を探し出すように周囲を警戒すると自分達はあらゆる方向から魔力を放っている存在に気がつきよく観察しているとその存在がいる方向からその物体は放たれていることが分かり、その存在の仕業だと断定しその魔力の大小で迎撃するのに必要だと思われる数を割り当ててその存在を消すように命令を下す。


その命令を受けたアーミー・エイプたちはそのものたちに襲い掛かり、そして難なく返り討ちにされ、それに怒りを覚えた総指揮を担当する個体はより多くのアーミー・エイプをそれぞれに追撃に向かわせる。

するとその存在は逃げてゆき、それを見て総指揮を担当する個体は、私の軍勢に被害を与えておきながら逃げるとは何事だ、と怒りをあらわにしてまたより多くのアーミー・エイプを派遣し後を追わせる。


さすがにここまですればその存在も始末できるだろうと考えて総指揮個体は頭を冷やすという意味でも一息入れようと自分に献上された不恰好な器に入った水を一気に飲み干して少し溜飲を下げ、次に自分の下にやってくるのは始末が完了した知らせだろうと思いながら先ほどの襲撃から落ち着かない様子のアーミー・エイプの軍勢を視界に入れながら知らせを待っていた。


そして胸の前で組んだ腕をしきりに組み替えながら十分ほど待っていると、例の存在の追撃に出していた一匹のアーミー・エイプが震えながら総指揮個体の前に姿を表して、追撃に出していたアーミー・エイプの少なくない数が突然地面に穴が開いて落ちたり、頭上から木の切られた大きなものが落ちてきたなどの理由で死んでしまった上にその存在の行方も見失ったという報告をした。


その報告を聞いた総指揮個体は軟弱な奴らめと報告してきたアーミー・エイプを怒りのままに殴り飛ばし絶命させ、まるで自分の指示が間違っていたようではないかとこちらに気づかれること無く一方的に攻撃してきた存在のこともあって非常に不機嫌になっていた。

そして次々と追撃のために様々な方向に放ったアーミー・エイプたちが先ほどと同じように肩を震わせながら自分の前に立つのを見て総指揮個体はその先の報告は悟り、怒りのままに殴りつけて絶命させる。


そしてその行為を嗤うように現れる先ほど感じた魔力を放った存在が最後に見た位置に再び姿を表した。


その行為によって完全に頭に血が上った総指揮個体はこの場に残っている全アーミー・エイプたちを憎き魔力を放った存在の魔力の大きさに応じて旅団単位に振り分けてあの存在を始末した後も八つ裂きにしてバラバラにして食ってやろうと考えながら自分もそのうちの一つに加わり、また逃げ始めたその存在の後を追ってそれぞれの方向に出発した。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


そんな総指揮個体の心など知らないおびき出し担当のものたちは幾つか作戦通りにいかなかった部分もあるものの本来の目的であるアーミー・エイプの大群の分割して誘導という大役を果たせそうだということで内心ではほくそ笑んでいたもののそれを表情に出せるほど余裕は残念ながらなかった。


本来の作戦は昔の国を滅ぼしたというアーミー・エイプの大群に関するギルドから提供された資料を基に立てたもので、最初に風魔法の封入された球状物体を投げ込んで混乱させ近くに待機しているものの魔力の放出量を調整することでアーミー・エイプに自発的に強さを判断させて軍団を分断させるというものであったのだがどうにも作戦通りにはいかなかった。

実際には魔力の放出量を調整することで自発的に強さを判断させるというところまでは狙い通りだったのだが、その後の戦力の逐次投入という手に出るというものが一つ目の誤算、二つ目の誤算は追撃を全軍で行わなかったこと、そして最大の誤算はというと総指揮個体がそこまで優秀な個体ではなかったということだろう。


実際、国を滅ぼしたというアーミー・エイプを率いていた総指揮個体であれば本来の作戦通りに戦力の逐次投入は悪手だと理解しており、少なくとも最初に放った少数の追撃があっけなく返り討ちにされたところで全軍をいくつかに分けて追撃を行っただろう。

しかし、今回の総指揮個体は少なくとも優秀といえるような個体ではなくまさしく自分のミスを認めず他人に責任を転嫁する、表現するのであれば率いているというよりも従えていると言ったほうがふさわしいタイプの個体であった。


しかし本来の作戦で上手くいかなかったもののアーミー・エイプの大群の指揮を執っているのがあの個体であったということは少なくとも文字通りアーミー、軍団という側面をもつ彼ら魔物側にとって士気というものは大きく影響するということもあり、この事実は人側にとって有利になるかもしれないものであった。


作戦通りとはいかないもののアーミー・エイプにとって思わぬ効果を与えていたとは知る由もないシークはというと、


「・・・・・・『風刃ウィンドカッター』」


その言葉とともにシークの体の周りに透明な緑の風の刃が5つ展開され、それらがアーミー・エイプに着弾する前に素早く地を駆け腰から二本の大振りなナイフを抜き放つとアーミー・エイプの一瞬の死角に潜り込み一瞬で大きな血管を切断、吹き出る血を見ることなく次の獲物に狙いを定めてナイフを振りかぶるシークに仲間を傷つけたという感情から周りにいたアーミー・エイプが襲い掛かってくるものの遅れて到着した『風刃ウィンドカッター』に一匹ずつ切り裂かれて重症を負い、そしてシークに狙われていたアーミー・エイプはあっさりと視界を奪われてしまう。


それを見ていたアーミー・エイプはシークに殴りかかろうとして一歩進み出るとそこには消えてしまったようにシークの姿はなく動揺していると自分の後ろから仲間の悲鳴が聞こえ、あわてて振り返るとそこには自分が殴りかかろうとしていたシークがナイフを首に突き刺しまたアーミー・エイプの命をあっさりと絶つ。

青い血を体の各所に付着させたシークがその手に持ったナイフの青色をそこらに転がっているアーミー・エイプの体で拭っているのを見て、さらに怒りを溜め込んだアーミー・エイプが殴りかかってくるもののその手には何かが触れるということもなくその代わりとばかりに自分の首に一瞬ぬるい、そして芯から伝わる金属特有の冷たさが食い込み、そこでその個体の生涯はそこで終わった。

シークはナイフを食い込んだナイフを引っこ抜くと吹き出る血を半身になって回転することによって回避し、静かに迫ってきていたアーミー・エイプにその遠心力のすべてを込めて靴の踵で蹴りつけて後ろに続こうとしていたアーミー・エイプに衝突させ、一瞬気配を強くして自分の居場所をアーミー・エイプに強く印象付けると次の瞬間に完全に気配を絶ってその場から離脱する。

シークの小細工にまんまと引っかかったアーミー・エイプは自分の攻撃が当たると確信して拳を振るったもののすでにシークの実体はそこには無く、空を切るに留まるかと思われたその拳はシークの虚像の向こう側にいたアーミー・エイプに当たって吹き飛ばし、仲間を殴るつもりなど無かったのだと主張する間もなく周りにいたアーミー・エイプに殴られてその命を落とした。


そのような奇襲を何度も繰り返して時には正面、時には側面、時には背後、時にはアーミー・エイプの集団の真ん中と戦場ところ狭しと言わんばかりに動き回り、突然現れて損害を与えてそして気がつけば消えているという神出鬼没を体現したように動くシークは数をチマチマと減らしながらもちゃんと自分の担当の仕事は忘れずにキラの町の戦力が待機している地点に誘導していく。


そして樹海の外が木々の隙間から見え隠れするほどの地点まで誘導すると気配と魔力を弱弱しいものに変化させそれらしく見えるように歩き方も工夫して、実は先ほどからの奇襲で力を全部使い果たしましたとでも言うように演技して見せながら必死に樹海の外に向かって歩いていますというように見せかけると、先ほどから仲間を殺されて、仲間同士で殺し合いもさせられた憎き相手が息も絶え絶えというくらいに弱っているという姿を見て、シークの連れてきたアーミー・エイプの約8000体程度の集団はあっさりと理性を飛ばし、目の前の相手を殺したいという本能の欲求に逆らうことなく襲い掛かる。

それを見て驚いたような顔を作って視線を樹海の外に向けて動き辛い体に鞭を打って必死に走っていますといかにもな態度で走っている風を装うシークは口角をニイッと持ち上げながら樹海の外に出る。


そこにはあらかじめ決められていたとおりの陣形で待機していたキラの町の戦力がいて、シークは素早く目だけを動かして、『万色の集い』の面々を見つけると目で「演技をしたまま中央まで誘導するから手を出させるな」という意思を込めて見るとちゃんとその意味を汲み取ったのかルナがブラハの元へと駆け出しその意図を伝えて『拡音スピーカー』によって今は大群に手を出すなと指示を出す。


意図を汲み取ってくれたことにありがたく思いながら息も絶え絶えに必死に走っている演技をしているシークの演技はそれほどまでに真に迫っているのか本当にブラハの指示通り手を出さなくてもいいのかとハラハラしながら見守り、そしてシーク以外のものには何一つ興味の無いというようなアーミー・エイプの集団の先頭の個体が殴りかかってきて、それをよろけた振りをして回避、そして絶望に染まった顔で後ろを振り返って見るとそこには先ほどシークが浮かべていたもの以上に口角をニイッと上げている顔が迫ってきており、内心ではその顔を見て少し腹を立てながらも次々と迫り来る連撃を回避し、そして十分に陣の内部に引き込めたと判断したシークは一瞬で普段どおりの様子に戻ると呆気に取られた表情をしているアーミー・エイプの顔を思いっきり踏みつけて高く跳躍して風魔法で風を調節しながら陣の外に飛び出す。


そして動きが止まっているアーミー・エイプの軍団に対してブラハがすかさずに、


「戦闘開始だ!」


その風魔法で補正を加えられた大きな声に戦闘者や騎士団の面々が大きな声を上げながら突撃をはじめた。


シークさん大活躍話でした。

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