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真実は迷宮の中  作者: Luce
第2章 大量発生
41/84

41話 カウントダウン

前回20時丁度に見てくれた方は前話に加筆があるのでそちらから見てください。


いつもと同じく日が昇る前に北門から少し離れたところでルートは日課の柔軟体操と魔力操作、さすがのルートも今日は魔力を最大限に持っておかないと危険な場面もあるかもしれないという考えの下『影箱シャドウボックス』にルートの持っている魔力の半分を入れるということは避けておいたのではあるが、自然に回復する程度の魔力で試すならいいだろうと"身体強化"を使うための魔力操作をイーサの自論にしたがって循環に意識を向けて早めてみたり、遅くしてみたり、はたまた力強く流してみたり、弱く流してみたりなどいろいろ試してみる。


ルートは正直なところこれでなにかが変わるわけでもないと思いながらも"身体強化"の使い手であるイーサが言ったことだからと内心ではこれでなにかが変わるわけも無いと考えていたものの、循環では何も変わらないということを証明するという意味でも一応試してみる価値はあるかと考えていた。


そしていろいろな循環方法を試した結果、


(あれ?これってもしかしたりする?)


最大でも限界量の90%ほどまでしか魔力の循環がうまくいかなかったのに、循環の方法を変えたところで95%代まで伸び、魔力を体内で循環させることが出来ているということを実感した。

ルートはイーサの言うとおり"身体強化"を完成させるための鍵は循環にこそあったと実感すると同時にそれでもなお"身体強化"を発動できるようになるにはまだ錬度が低く少なくとも今回の戦いで使える状態に持っていくことはまだ出来ないということも同時に悟った。


そして"身体強化"に一筋の希望が見えたところで腰袋から槍を取り出し流れるように扱って微小な感覚と動きのズレを矯正して完全に自分の思い描く動きが出来るようになったところで槍を腰袋に入れて『創水ウォーター』でうっすらとかいた汗を流してさっぱりしたところで拠点へと戻る。


キラの町に戻ってきたときにはまだ日は上っておらず、もうすぐ冬になるということもあり、また夜明け前独特の肌寒さというものも感じつつルートは拠点に入る。


入ってすぐの大広間には殲滅作戦の決行の当日という事もあり、日が昇ると同時にキラの樹海に向けて出発するということもあってかすでに多くの人が集まってそれぞれで武器の点検や柔軟などを行っていて、そこに集まっている人々の顔には不安、興奮、歓喜と様々な感情が現れており、それでも共通して言えることは緊張感が漂っているということである。

もっともそれは人によってその緊張の意味というものは変わってくるのではあるが。

その緊張が漂うなか、良い意味で緊張している集団、『万色の集い』はこの時間はいつも寝ているだろうということが簡単に予測が付くピナを含めて全員が大広間に集まっており、そしていつもは見ない真剣な顔で最終確認などを済ませていたところで、そのパーティーと一緒に行動することになっているルートはそこに加わろうと近づき、


「みんな、おはよう!」


と挨拶をしてみると、それぞれが笑顔で挨拶を返してくれた。


「おはようさん。で、お前何処行ってたんだ?部屋に行ってもいないから驚いた」


マインがそう言うとルートは苦笑いで、


「あ~、町の外で日課の柔軟とかしてたんだよ。なにか用事があった?」

「いや、特に用事は無かったんだがパーティー全員で集まって話でもして体が固まっているなら解してやろうと思ってたんだが・・・まあお前に関しては別に必要なかったか」

「セルファ出身だからね。こういった作戦行動も少しは経験しているから体が固まるってことも今更ないよ」

「なんでもセルファ出身って言えば良いって訳じゃないんだけどな。それでも納得せざるを得ないのがセルファだよな」


そんな感想を漏らすマインの言葉にルートはセルファに領主の子供として住んでいたときに一人の戦闘者として参加した作戦の数々を思い出しながら少し笑う。

その作戦に参加し共に戦った家族の顔を思い出して少し胸が締め付けられるような思いが這い寄ってきてルートの顔を一瞬歪ませる。

幸いその表情の変化には誰も気が付かなかったようでルートは這い寄ってきた思いに蓋をして鍵を閉め普段どおりの自分の表情に戻す。

そしてマインを中心に『万色の集い』のメンバーで様々な話をしていると二階からセアラが降りてきていつも通り手をパンパンと打ち鳴らして注目を集めると、


「おはようございます。今日はアーミー・エイプの殲滅作戦の決行日です。ただ、今日の戦いは厳しいものとなるでしょう。ですが、ですがそれでも無事に帰ってきてください。私達はみなさんの帰りを待っています。どうか私の生まれた町、いいえ、私の生まれたこの国に明るい未来をみなさんの手で。どうかお願いします」


セアラはそう言うと頭を深々と下げてそれに習うように待機部隊の人達、炊事兵の全員が頭を下げる。

その中でこの集団の代表者でもあるブラハがセアラの前まで移動して肩に軽く触れて顔を上げさせると、


「私達は戦闘者だ。今ここにいる戦闘者の中にはこの国の出のものではないものもいる。それほどこの国に思い入れの無い者もいるだろう」


まるでセアラの言葉を全面否定しているようなブラハの言葉になんてことを言うというようにブラハの口を強制的に閉じさせようと近づいていく者も多くいて、そしてブラハの「だが!」という言葉になにかを感じてその場でピタリと静止させられる。


「だが我々は戦闘者だ。依頼に対して成功で答えるという生き方をしている者だ。だからこそ今回の国の存亡を脅かす敵を殲滅しろという依頼に対しても我々は必ず成功で答えて見せよう!精々依頼主に感謝しておけ!」


今までのブラハの話し方とは違って熱の篭った、それでいて説得力を確かに持ったブラハの言葉はブラハの言葉を止めようとしていたものに対しても、それ以外の戦いに向かうものたちに対しても、そして何よりセアラを始めとした頭を下げているものたちに対しても確かな覚悟というものが感じられた。

そしてその言葉を口に出した後、くるりと体を反転させて拠点の出口に一歩一歩堂々と歩を進めて、


「いくぞ!戦闘者諸君!」


その言葉にキラの樹海にまで届くのではないかと思うくらいの拠点の床を、壁をビリビリと震わせるような怒号にも近い鬨の声を上げるとブラハの後ろに今にも暴れだしそうなほどの活力に満ちた戦闘者諸君は付いていく。

そして事前に知らされていたのかこのキラの町に残ることを選択した者達が拠点の外で所狭しと並んでおり、「私達の町をお願いします!」「俺達の命、あんた達に託すぜ!」というような声援に、より一層の活力と負けられないという使命感が戦闘者諸君の胸に刻まれその勢いのまま北門から出て行き、キラの樹海、そしてその中にいるアーミー・エイプの大群の命を目指して前進を始めた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


士気を維持したまま、興奮冷めやらぬというような調子でキラの樹海の前のテント群に到着した戦闘者一行は群青騎士団と合流、そして昨日決まった作戦を説明して合意を得た後、戦闘者は罠の準備や設置、また自分達のパーティーが陣形のどの位置を担当するのかという事を決め、群青騎士団は昨日調べたのか平原の中でも一番策に合う場所の選定、そして何よりも回復手段のポーションなどの消耗品の支給などを担当し、それぞれの仕事を一生懸命に行う。


そんな中ルートは昨日募った土魔法の使える者たちを集め、騎士団が選定した戦闘予定地へと移動し自分達が土魔法で壁を作る予定のところで最終確認を行っていた。

ルートはアーミー・エイプが逃走を図り始める少し前にブラハによる『拡音スピーカー』を使った指示が下った場合、すぐにこの場所に来るように指示し、そして集まった者たちに指示を聞いて駆けつけて来た者からに順に六角形の上部の左側から並ぶようにそれぞれ5mずつ担当して12番目と13番目、36番目と37番目を担当する者達で角度が付くように指示すると同時に自分が今何番目に並んでいるかを確認し、そして後ろの者に「お前は○○番だ」と言っていくようにと指示しておき、残りは自分が担当すると宣言した。

そして何度か順番を入れ替えて実際に動きの確認を行った結果一度もミスが無かったためルートは解散の指示を出して自分のパーティーへと戻っていく者たちを見て、丁度ルートを含めて48名の土魔法が使える者が集まったもののアーミー・エイプの大群との戦いで何人が力尽き、何人がその壁を作る魔力も残すことが出来ないほどの戦いを強いられることになるのだろうかと思いながら首を横に振ってその考えを振り払いながらルートも『万色の集い』の元へと歩き始めた。


ルートが『万色の集い』に合流するとシークを除いた全員がいて、そのシークも前もって決められていた罠の設置などの役割を請け負っており、さらにアーミー・エイプを樹海の中から罠を多くの奴らに踏ませるように誘導するという非常に重要な役割を請け負っており、実質この場に集まっている者たちが今の『万色の集い』の全メンバーであった。

そしてその全メンバーはそれぞれ自分の武器の確認や手持ちの道具の確認などを行っており、いつもの騒がしいというか賑やかというかという雰囲気とは違い、これが"紫"ランクの戦闘者が率いる有名なクランであるということが見るからに伝わってきた。


ルナなどのメンバーの装備は以前町で見たとおりの装備であったのだが、クランのリーダーを務めているマインは今まで付けている所を見たことは無かったガントレット、似ている装備をしているレンの手甲はどちらかというと拳闘士が使うようなナックルガードに近いものなのだが、そのレンの付けている手甲とは見るからに形状も違い、五本指が自由に稼動出来るようになっているマインの両腕を呑み込んみ一回り大きくさせたようなガントレットと呼ばれるもので、それに加えそのガントレットからはなにやら独特の雰囲気を放っているとでもいうのか、表現するのであればそこいらのガントレットとは"格"が違う。


ルートはそれを見ておそらく魔剣や聖剣といったものの同類で、その中でも上位に位置するであろうものだと判断し、下位に位置するであろう自分の持っているシンの父親の角から作られたという簡単に言えばメンテナンスフリーなだけの魔槍とは分類は同じだとしてもその能力に大きな差があるということも同時に悟った。

そう評価したものの自分の持つ魔槍を手放すつもりも無く、シンから聞いたとおりの能力を持っている自分の戦い方にこれ以上なく合った魔槍など見たことの無いルートにとってはうらやましいなどと思うことも無かった。


そしてルートが頭の中でマインのガントレットの持つ能力を予想しているとその視線に気が付いたのかマインが近づいてきて、


「これが気になるのか?」


と悪戯っぽく聞いてきたのでこれは聞いても簡単に答える気が無いなと判断したルートは、


「全然っ」


少し拗ねた様に振る舞い、言う事でマインに自白させようと試みてみると、


「そうか。じゃあ教えねえ」


そう言うとすれ違いざまにその固いガントレットでルートの肩に手を置くとそのまま何処かへと行ってしまう。

ルートは自分の目論見が外れたことに少し悔しそうな表情を浮かべるとその場に座って自分も腰袋の中に手を突っ込んで中身を取り出して最終点検に入る。


ルートの戦い方の要を担うといってもいいナイフは虹蛇の戦いやクレイジー・ボアとの戦いで数が減りすでに20本を切って、ガラス管に収められた淡く光るカラフルな液体、いわゆるポーションの類も虹蛇との戦いで数を大幅に減らし、残っているのが軽い傷口を塞ぐ程度のポーションが6本とエリュが治した肩を貫通した傷口を塞ぐ程度のポーションが3本、そして虎の子の部位が欠損してもその部位を傷口にあてた状態で使用すると再びくっつくポーションが一本、ソフトボール大の鉄球が5個に爆弾が1つ、そして長いロープが一本と透明な糸の糸巻きが3個、それらの数々を一つ一つ念入りに確かめて問題が無いことを確認すると4個の鉄球を大振りなナイフに変形させてから腰袋にすべてしまいこみ立ち上がると、最後に自分の一番信頼している武器である白い槍を取り出して構える。

手に完全に馴染んでいる槍を手にして少し魔力を流したりと弄んでいるとブラハが大きな声を上げて、


「作戦開始5分前だ!」


その言葉に少し浮き足立つものも現れるもののさすがは戦闘に関わっている者というべきかすぐさま自分の気持ちを落ち着ける。

そしてマインも戻ってきて、あらかじめ決めておいた配置について陣形を構成したところで、


「作戦開始だ!鬨の声をあげろ!」


「「「おおおおおおお!!!!」」」


アーミー・エイプの大群、約3万と騎士団や戦闘者の軍勢、約5千の戦力比6:1の戦いの始まりの火蓋が切って落とされた。

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もう一つの連載作 テーマは独善の投影。
「辻ヒーラーさんは今日も歩く」
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