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真実は迷宮の中  作者: Luce
第2章 大量発生
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30話 編成


4階は広間に面した部屋の数々という3階と変わらない構造であったが、人数が半分ほどになったためか広間は先程よりもずいぶんと大きく感じた。


そして部屋の真ん中でドンと構えたマインが、


「これから班の編成を始める。先に決まったメンバーがいるところは固まってくれ」


その言葉に従ってぞろぞろと移動を始めた戦闘者たちはしばらくすると十数ほどの集団に分かれるが当然と言うべきか同部屋の者同士の集団であるようで、先程の部屋決めと同じような分かれ方をしていることも道理というものなのだろう。


そうして移動が終わったことを確認したマインは、


「そんじゃあ臨時のパーティーメンバーを募集するところの代表者はこっちに来てくれ。んで希望する能力とかを発表して、そんで残った者たちはその要望に応えられると思ったらその代表者の下に行って自分を売り込むと。承認されたらそのパーティーに、否認されたら自分でパーティーを組むなり何なりしろ、いいな?あと募集するつもりの無いパーティーは自分達の部屋を決めて準備でもしててくれ。・・・・・・よし、それじゃあ少しパーティー同士で話し合いが出来る時間を設けるぞ。俺が手を叩くまでだ、開始!」


開始の合図と共に騒がしくなる室内、パーティー同士で話し合いを始め怒号にも似た声や笑い声なども飛び交い、また、幾つかのパーティーが部屋を決めるために歩き回ったりするときの足音などの雑多な音の合唱祭さながらの様相を呈しながらも、刻一刻と時間は過ぎていく。

先の模擬戦で見た槍の腕前を思い出してか、時折ボーっとしているルートの様子を伺うような視線が向けられるがルートはどこ吹く風、何も気にしてなどいなかった。


そして唐突に全員の耳に届いた手を叩く音にもうそんなに時間が経ったのかと小さく驚き、パーティー内で話に出たものを頭の中で組み上げて具体的な要望と言う形に落とし込むと、全員がマインを見る。


マインはそうした行動を理解したうえで一拍おいてから、


「結論は出たな?そんじゃあパーティーメンバーを募集するところはこっちに来い」


その言葉にメンバーの募集を考えているパーティーの代表者がチョロチョロと彼の近くまで集まって、全パーティーの3割ほどの代表者が集まったところでマインはそれぞれに決まった要望を発表するようにとマインが指示すると、各人が「我々のパーティーは○○なので、××を出来る者を探している」と自分達が欲している人物像を簡潔に述べていく。

その中にはマインやブラハの募集もあったが、ルートにとってそれと同じくらいに印象に残ったのはルートを名指しで指名した人族の男の発表で、その発言がされたとき少しばかりざわめきが起こった。

ちなみにマインは「他種族に対して偏見が無い腕に覚えのあるもの」、ブラハは「魔法が使える腕に覚えのあるもの」というしていてあっ。


代表者の最後の一人の要望の発表が終わると少し時間をおき、そしてマインが「アピールタイムだ」というと、班の決まっていなかった者が一斉にそれぞれの方へ動き出し始めた。


ルートは約束していた通りにマインのところに向かおうと歩き出すと、先程の人族の男がその行く方向に自分の体を挟み込んでそれを邪魔する。

ルートはたまたまかと思ってその男の脇をすり抜けて行こうとするがまた男がそれを阻んでくる。

それを何度か繰り返した後、


「・・・・・・なんですか?」

「いやなに。俺達のパーティーメンバーになってほしいんだよなあ」


とニヤニヤしながら男がそんなことを言うが、マインに誘われているということもあり、そして何よりもこの男が信用できそうも無いと思ったルートは、


「お断りします」


ときっぱりと口に出して言った。

男はまさか自分が断られるなどとは考えていなかったのかそのにやけ面を貼り付けたまま固まり、ルートはこれ幸いというように男の脇を通り抜けて改めてマインの方へと進んでいく。

が、肩を掴んでそれを妨害する者が一人、言わずもがな男である。

面倒になってきたルートはもうわざわざ振り返ることも無く、その体勢のまま、


「・・・まだ用が?」


そう突き放したような言葉を発する。

男はその肩に置いた手を基点に背後から前方へくるっと半円を描くように回り込み、いつものにやけ面を貼り付けながら、


「まあまあそう嫌がらなくてもいいじゃないか。俺達はこの戦いを一緒に乗り切る仲間じゃないか。そんな嫌そうにしていたら取れるはずの連携だって取れはしないだろう?まあ君の腕はさっき見させてもらったけどなかなかなものだ。その腕を俺達のパーティーで存分に振るって欲しい。君にとっても悪い事ではないはずだ。君にも俺達の背中を見て学ぶことが必要だと思うからね。どうかな、気は変わったかな?」


どうにも自己中心的な主張しかしていない男は背の小さいルートを見下ろすようにニヤニヤしながら得意げにそんなことをべらべらと並べ立てているわけであるが、当然そんな話で気が少しでも変わることも無く、


「改めてお断りだね。僕にはもうすでに誘ってくれたパーティーがあるから君達のパーティーには入れないよ」


そうにべも無く断りの文句を言う。

それを聞いて何を思ったのか男は、


「俺達よりもそっちを選ぶのか?」

「・・・?そうだけど?」

「ああ、そうか。まあ精々そのパーティーで頑張りな。後で泣いて入れてくれって頼んだってもう入れてやら無いからな!」


にやけ面はどこへ行ったのか、男は表情を怒りの形に変えると早足で離れていった。


どうにか僕をパーティーに入れたかったということだけは何とか汲み取ったルートであるが、それ以上のことは何も分からず、ただあの男にいたずらに使わされたということだけを理解して今度からはもっと簡単に諦めてくれるような断り文句を考えておかなければならないなと教訓にするだけにとどまった。


ルートは出鼻を挫かれたという思いは拭いきれないものの、当初の予定通り少々疲れたような顔でマインのところまで歩いていく。


何とか今度は誰かに絡まれることなくマインのところまで来たわけであるが、まあなんとも人気のあるようで、やはり"紫"の戦闘者という肩書きは当然、『万色の集い』というクランのブランド力がまだパーティーの決まっていない人々の心を惹きつけたのだろう。

『万色の集い』は未所属の戦闘者の1/3程度の人数を集めており、残りの1/3はブラハの率いるパーティーで、最後の1/3はそれ以外のパーティーに自分を売り込んでいる。


ルートはとりあえず自分を売り込もうとしている人たちから少し離れたところでボーっとその様子を眺めていると、彼に気がついたギルバートがニヤニヤとしながら近寄ってきて妙に優しげな声と口調で、


「おいおい、ルート君?随分と熱心に勧誘されていたみたいだけど断っちゃって大丈夫なのかい?それが原因で陰で虐められてたりしたらお兄さんにちゃんと言うんだよ?お兄さんは心配だよ~」

「ギルさん、さっきのあれを見て、からかうネタが出来たとか思ってないよね?」

「やだなあ、心の奥底からお兄さんは心配しているのにひどいなあ」

「そんなニヤニヤした顔で言っても説得力の欠片の無いよ」

「まあそうだよなー。・・・・・・で実際のところ大丈夫か?」


からかうような雰囲気はどこへ行ったのか、まとう雰囲気を一変させて真剣な様子でそう聞くギルバートを見て、怒るに怒れないという状況にずるいなあと思いながらも、


「問題はないんだけど、彼が何が言いたいのかよくわからなかっただけだね」

「そうか。まあなんかあったら俺達を頼れよ。俺達はパーティーだからな」

「・・・ギルさんは少しずるいね」

「自覚はしてるさ」


ギルバートの言葉にどちらがともなく小さく笑う。

そして二人でしばらく雑談をしていると、いきなり目の前で自分達を売り込んでいた人のうち数名が腰を抜かしたようにその場にへなへなと座り込んだ。


「へえ、マインさんはこういう方法で判断するんだね」

「ああ、これうちの入団テストなんだよ。マインの殺気にどう対処するかっていう内容のな。まあ見る限りじゃ大半は脱落か」

「でも残った人はなかなかですね」

「ああ、残った奴らは全員余裕があるな」

「これはなかなか期待出来そうじゃない?」

「普通にうちのクランに欲しいな、全員。ついでにお前もうちにはいらねえ?」

「その言葉は嬉しいんだけど、まだやらなくちゃいけないことがあるからね。それが終わるまでは何も言えないかな」

「そうか。ならいつかのときのために今回の戦いでうちのいいところをいっぱい紹介してやるよ」


そんな会話をして楽しんでいる二人の元に、勧誘の件の決着がついたのか、マインと『万色の集い』全員と晴れて臨時メンバーに選ばれた二人の人達が近寄ってきて、


「ルート、お前を加えれば俺達のパーティーは完成だ。よろしくな」


と良い笑顔でそう言って手を差し出してきた。

ルートはその手を握り返し、


「こちらこそよろしく、マインさん」


マインに負けず劣らずの良い笑顔でそう返した。


そして握手を交わした後にそれぞれで自己紹介をすることになり、『万色の集い』のメンバーから順に自己紹介をしていき、臨時メンバーの自己紹介のターンに入った。


臨時メンバー組で最初に自己紹介することになったのは、頭に縦に二本の大きさに違いのある灰色の角を生やした灰色の髪の大きな盾と剣を背中に括り付けている大柄な男で、


「俺はイーサ、サイの獣人族で"青"の戦闘者だ。最近まではパーティーを組んでいたのである程度集団戦闘に慣れている。魔法は一切使えないが、魔力を使った"身体強化"で前衛を務めていた。よろしく」


どうやらイーサは見た目どおりの話し方をするようだ。


また、イーサが得意とする"身体強化"というものは魔力を使ったルートが得意とする"探知"と同じような技術の一種で、単純に表現すると体内で魔力を循環させることによって体の出力を強化するというものである。

体内で魔力を循環させるという性質ゆえに魔力の消費量は少ないが、一定量を超える魔力を流した場合、体内を魔力が暴れ回って筋肉断裂、内臓破裂、骨折などなどの割と洒落にならないことになってしまうので繊細な魔力操作が要求され、使える人はあまりいない。

つまり、"身体強化"を使えると言うことがイーサの力を示しているといっても過言ではない。


閑話休題。


イーサの自己紹介が終わり、次に自己紹介をする人は先ほど場がヒートアップしていた時に発言した翡翠色の髪の少女で、


「私はエリュと申します。ランクは"水"で水魔法と光魔法を用いた回復と魔法による防御と、この杖を使った杖術なども少しは収めております。よろしくお願いします」


飾りっ気の無い無骨な杖を手に持って頭を深々と下げる彼女はどこと無く僧侶のような雰囲気を感じるが、ルートはなんとなくそれだけではないような気を感じ取っていた。


「へえ、光魔法ね。あー、エリュでいいか?「構いません」どうやらエリュは神さんから愛されてるらしい。んじゃ俺達も神さんの恩恵にあやかれるかもしれんな」

「・・・・・・その神様はとても皮肉が好きなのでしょうね」

「ん?何か言ったか?」

「いいえ、何も」


マインの言葉にエリュがボソッと低く小さな声で言った言葉は隣のルートにしか聞こえなかったようなのだが、どうにもその言葉が彼の耳に妙に残って離れようとしてはくれなかった。


「んじゃ最後はルートだな。ビシッとしたのを頼むぜ!」

「・・・んあ?あ、うん。僕の番ね。分かってる分かってる」

「ぼっとしてんなよ・・・。そら自己紹介だ」

「僕はルート。ランクは"水"で土魔法と槍を使った攻撃、あと"探知"が得意だよ。よろしくね」


ルートも前の人達に習って一礼する。

そして全員一通り自己紹介を終えたところでマインが、


「全員終わったな。それじゃあひとまず部屋にでも移動しようぜ」


どうやらいつの間にかマインたちが最後の班になっていたようで、先ほどまでも十分大きいと思っていた広間だったが、なんとなくより一層広く空虚に感じた。

マインたちは空いている部屋を探して自室とするために移動した。


部屋の構造は山小屋がイメージとして一番近いだろう。

部屋の中央が少し広めの通路のようになっていて部屋を横広にするように両端に二段ベッドが4台ずつ少し間を空けて並んで置いてあるという構造だ。


「んじゃあとは配置でも決めるか。前衛に俺、ギル、レン、ミツナ、タタラで中衛がシン、ライ、ルイ。んで後衛にピナ、リズ、ルナで遊撃にシークってのが今の俺たちの戦闘配置なんだが。まあイーサは前衛決定だろ?そんでルートには後方の警戒を任せようとしてるから、後は嬢ちゃんだけなんだが希望は?」

「エリュで構いません。私は中衛が一番都合が良いです」

「ならそうしようぜ。他に決めることはあったか?」

「そうね。基本的には指示は私が出しますので、変に調子に乗って指示を出すバカには従わないようにしてください」


辛辣にマインをぶった切ったルナは抗議の言葉に耳も傾けず、『万色の集い』における戦闘の流れなどを臨時メンバーに教えていくのであった。


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もう一つの連載作 テーマは独善の投影。
「辻ヒーラーさんは今日も歩く」
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