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真実は迷宮の中  作者: Luce
第2章 大量発生
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29話 強襲部隊

今回は話の都合上短めです。


最初にこの話を書いたときに騎士団長の名前を勘違いしてシュルツと呼んでいたのですが、実際はショルツなので訂正が出来ていない部分でその名前が残っていれば、鼻で笑い飛ばしてください。


声に反応して足を止め振り返ったルートとショルツを呼び止めたセアラは二人との距離を少し詰めて内緒話をするように小声で、


「お呼び止めして申し訳ありません、少し話をしたいことがありましたので」


ルートはその言葉を聞いてショルツと自分の共通点を探してみるが思い当たることは一切無く、首を捻りながらもセアラの話の続きを待つことにし、ショルツはただ泰然と次の言葉を待っている。


そしてセアラはショルツを見て、


「ショルツ様に対しての話と言うのはこの町の長、カント伯爵なのですが、今回の事態を住民に知らせることもせずに逃走を図っていたのため指揮権を持つ者として拘束しました。証人はここに居る"水"のルート君と"紫"のマインさんです。"ギルド"はこの伯爵の身柄を王国の代理として群青騎士団に引き渡します」

「・・・・・・そうですか。それでは"ギルド"からこの町の長、カント伯爵の身柄を我ら群青騎士団が引き受けます。カント伯爵は我々が責任を持って王国に引き渡しますのでご安心ください」

「お任せいたします。ショルツ様にお伝えしたかった話はこれでおしまいです」

「分かりました。それでは私はこれで」


そう言って一礼して三階への階段を上っていくショルツの背中を見送る。


そして彼の上っていく靴も見えなくなった所で、ルートはセアラに、


「僕に話って何かな?」


と問いかける。

するとセアラは先程までの硬い口調からいつかの軽い口調で、


「ルート君に頼みたいことがあるの」

「頼みたいこと?」

「うん。私が中央会館で言った物見櫓のようなものを建てるっていう話は覚えてる?」

「うん」

「それの建設を頼みたいの。一番上に2,3人が乗れるくらいの簡単なもので十分、防衛機構も一切必要なし。町とキラの樹海との距離が2:3くらいの位置にあれば高さも外観もルート君に任せるわ。どうかな?」


セアラにはルートの土魔法の使い方を見て彼に物見櫓を建設を依頼しようと思っていたのだが、いかんせん彼は若く、いくら模擬戦を見ていたとはいえ大多数の人々は槍の腕前しか見ていないため魔法の腕前についての信用が集まらなければ、侮られたり俺にやらせろと言うような面倒な事態にもなりかねないためルート一人に話を通して迅速に誰にも知られること無く事を済ませたいと言う考えがあった。


ルートはそんなセアラの心情を知りはしないものの、少しの間頭の中で考えを巡らせ建設自体は労力もそこまではかからないと結論付け、彼は、


「うん、考えてみたけど問題は無いね。・・・・・・・セアラさん、物見櫓の建設、僕が引き受けるよ」


ひとつ頷いてセアラに向かって胸を張ってそう言った。

セアラは「ありがとうね。ルート君に全部任せるわ」と彼の両肩に軽くポンと手で叩くと部屋を決めようとしている待機、警戒部隊の面々のいる方に足を進めていった。


ルートはそこで話が終わったものだと判断し、強襲部隊が上っていった階段を上っていった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ルートが階段を上ると、2階とは少し違って3階は広間が狭くなった代わりに扉の数が増えていて、500名に少し足りない位の部隊の人々にとっては少し狭かった。

どうやら彼が上ってのはちょうど部屋分けの最中だったようで群青騎士団の面々は元々決められていたのか全身鎧がある程度の人数に分かれていて、戦闘者の方もおおよそ9割ほどはパーティー、クラン単位で集まっているのか分かれており、残りの男女別の大きな2つの集団の細分化待ちといった様子で見守っていた。


彼はとりあえず戻ることも少なそうではあるが、自分の部屋を確保するためその男の方の集団に混ざることにする。

そして、「僕も入れてもらえますか?」と小さく手を挙げておじおじとその集団の中に入っていくと、どうやらその集団の話を回していた男が彼に気がつき、「ああ」と言って集団に迎え入れた。

許可を得た彼は円状に並んでいる集団のあいているところに自分の小さな体を潜り込ませて話に入る。


そして5分程度話が進み、結論としてどうやら部屋は近接タイプと遠距離タイプに分かれることにしたようなので、彼は自分の戦い方を考えてみると、


「どちらかというと僕は遠距離タイプかな?」


と呟いて遠距離タイプの集団の方に移動していくと、全員が「あれ?」と声を出し困惑する。

先程のシンとの槍を使った模擬戦を見ていた者たちはてっきりルートのことを近接タイプなのだと考えていたからである。

それゆえの疑問の声と困惑なのだがそんなこと知る由も無いルートはどうしてそのような反応があがるのかも分からないまま遠距離タイプの集団の中に混ざっていく。


多少の戸惑いはあったものの全員の部屋分けが終わったところで暫定的に強襲部隊のリーダーに収められているマインが、


「全員部屋分けも出来たようだから話を進めるぞ。っと、俺が勝手に話を進めているが問題ないか?無いなら話を進めたいんだが」


そう言ってこの場にいる人々の顔、特にショルツやブラハの顔を特に見て確認するが、どうにも何もないようなので先に進めることにした。


「なら俺がこのまま進めるぜ。まず最初に決めなきゃなんねえのは班の編成だろうが、それぞれ戦闘者と騎士団の二つの集団で戦闘の担当を交代するほうがいいか?それとも混合の班がいいか?団長さんはどうだ?」


マインは騎士団長のショルツに水を向けると、


「私は別のほうがいいですね。実力と言う面であなた方戦闘者を侮っているわけではありませんが、連携と言う点において不安が残るのも事実です。ブラハ殿は?」


ショルツは混合班を連携が取れると思わないと言う観点で否定し、それぞれの集団での行動を肯定し、援軍の戦闘者のブラハに意見のバトンを渡す。

そしてそのバトンを受け取ったブラハは物静かに、


「私も別がいい。理由は同じだ」


とだけ言った。


マインは二人の意見をまとめるように、


「だそうだが混合班が良い奴はいるか?」


とその場の人々を見渡してみるが反対意見を出すものはおらず、戦闘者と騎士団の二つの班に分かれて行動することに決定した。


「よし、次だ。それじゃあ俺達戦闘者を第1部隊、騎士団を第2部隊と呼ぶとして、どちらが先に行くかっていう話なんだが・・・・・・。俺としては俺達戦闘者が先に行った方がいいと思うな」


マインがそう言うとショルツが、


「その理由をお尋ねしても?」


と問う。

するとマインは、


「騎士団の技量を馬鹿にしているわけじゃあないってのは先に言っておくが、最初はアーミー・エイプの場所や行動などの情報だろう。そういうことなら魔物を狩って生計を立てている俺らの方が慣れている」

「確かにそうですが危険ではないですか?」

「危険ってんならここにいる時点でもう十分危険だろ。それにそっちは全身鎧だからそういった情報収集には向かないしな。だから俺達に任せとけ」

「しかしですね・・・・・・」


マインの言葉に戦闘者たちは同調し、「任せとけって!」「やってやる!」などの声を上げる。

騎士団の面々はそれを聞いて戦闘者に対して危険なことを押し付けてしまうという罪悪感から、「そんな役割を押し付けられるか!」「君達も我々が守るべき内の一人なのだ!」と言い始めてしまい、それに大本のマインとショルツの危険の引き受けあいとでも言うべきものもまだ継続しており、どちらも引く気配はなさそうで、場が膠着状態になってしまっていて収拾がつかなくなってしまっている。


そこで何の気負いも無く発言するものが一人。


「始めだけ合同で行けばいいのでは?」


その言葉にその場にいるすべての者の視線が集まった。


言葉を発したのは、透き通るような翡翠色の髪が肩の辺りで切りそろえられたミディアムヘアで、白磁器のような白い肌にキリッとした夕焼けのような紅い緋色の瞳、スッと通った鼻筋に小さな口、身長はルートよりも高い165cmほどだろうか、スラっとした細身の体に長い脚、それらが組み合わさって冷たげな美人といった印象を与える、まだ少し幼さを残した少女であった。


その少女の言葉は確かに混乱した場を収めるのに十分な説得力を持っており、ヒートアップした頭を冷やすと言う意味でも役に立ったと言うことはマインとショルツがその言葉を前提に話し合いを再開したことを見れば明らかであった。


そして、


「確かに嬢ちゃんの言うとおりだ。危険の押し付け合いをするくらいなら一緒に行った方がいいだろうし、相互理解の場にもなるだろうからな」

「そうですね。どちらから先にキラの樹海に入るにせよ確認だけは始めに行っていた方がいいですね」


戦闘者代表のマインと騎士団代表のショルツが合意したことによって、ひとまずの方策が決定した。


「と言うわけでだ。まず最初に俺達は合同でキラの樹海まで行き、まずは情報を集める。聞いているとは思うが確認だ。本隊への攻撃はやめてくれ。それはすべての町や都市の戦力とタイミングを合わせて一気に殲滅するになっているからな。下手に刺激して馬鹿みたいな数の奴らの突貫なんて真っ平ごめんだ」


マインは降参するときのように両手を肩の位置まで挙げて首を横に振って心底嫌な顔をすると同じような顔で同感だと頷いた。


「そんな最悪の状況に陥らないためにも全員慎重に行動することを心がけろ。まあそんな顔をすんな、気をつけてればそんな面倒な事態なんて起こんねえから。そんじゃあ部隊内の班でも決めようか。それじゃあ騎士団の方はこの3階の部屋を使ってくれ。俺達は4階の部屋を使わせてもらうがいいか?」


誰も階層などに興味は無いようで適当に肯定する。


「よし、そんじゃあ鐘の音が二回鳴ったら拠点前に集合ということで。俺達は4階に行くぞ!俺にとってはいい加減狭いんだよ!」


そういって一目散に4階への階段を上っていくマインの後ろを『万色の集い』のメンバーを筆頭について上っていった。


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もう一つの連載作 テーマは独善の投影。
「辻ヒーラーさんは今日も歩く」
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