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真実は迷宮の中  作者: Luce
第2章 大量発生
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28話 部隊


ギルバートとシン、ルートについてきた中央会館に集まっていた全員、そして途中から見物していた集団、マインに寄れば王都から来た援軍と思われる群青色の全身鎧の集団と統一感の無いさまざまな武器や防具を身にまとった強者独特の圧を放った集団、約500名程の人々すべてが模擬戦を終えた広場に集まっていた。


そしてその集団はそれぞれ模擬戦が行われている最中こそ集中して実力を見極めんとばかりに食い入るように見ていたが、それが終わったことによって今度はそれぞれの集団が他の集団の様子を伺うようになった。

そのせいで敵意は無いのだが確かな緊張感が広場に漂い始め、下手に動けばこの場の注目が自分に集まるのではないかと思い、誰も動かなくなってしまう。

そしてその空気を気まずくなった者たちは次第に他の集団に視線を向けるのを止め、このさまざまな集団の中央にいるルートとシン、マインに視線を向け始めた。

そして次第にその三人を見る人が増えていく中、


「マインさん、今とても逃げ出したい気分なんだけど駄目かな?向けられた視線が痛いよ」

「ハハッ、我慢しろよ。そもそもここにこれだけの人が集まったのはお前達が原因だからな」

「そうですね。私もルート君の言うこともよく理解できますが、確かに私達の模擬戦が原因ですから我慢するしかないようですね」

「そうだよねえ。けど僕が一番腑に落ちないのは発端のギルバートさんがサラッと『万色の集い』の他のメンバーの中に紛れ込んでいることなんだよ。それにいつの間にかシークさんも居なくなってるし」

「ん?ギルのやつが発端なのか?」

「はい。ギルバートがこの模擬戦の発端です」

「確かに僕とシンさんで模擬戦をするからギルさんが離れることは十分分かってるんだけど納得はできないね。・・・・・・あっ、こっちを見てニヤッて笑ったよあの人。凄い腹が立つんだけど」

「あいつまたちゃっかりしてやがるな。本当にいい性格してるぜ」

「それにギルバートは相手が本気で怒る程度を見極める能力に長けていますからね。さっきのニヤケ顔も性格が悪いと思われる程度に抑えていますね。本当に彼はいい性格をしています」


三人はこうして雑談をすることによって自分達に向けられた視線をどうにか忘れようとしていた。


そしてその緊張感が張り詰める中、王都から来た援軍と思われる集団の中、全身鎧の集団から同じ格好の男が一人、統一感の無い集団から全身をローブで覆った性別不詳の者が一人、そしてセアラが三人の下へ近づいてきた。


三人は3m付近まで近づいてきた人たちに顔を向けていると、セアラが体を反転させて一緒に近づいてきた二人に向かって、


「お二人に紹介します。こちらの竜人族の男性がシンという名前の"青"の戦闘者で、もう一人の男の子がルートという名前の"水"の戦闘者です」


そういって手をシンとルートに向ける。

セアラはそういって一緒に近づいてきた二人に紹介すると、シンとルートの方に向き直って、


「突然紹介してすみません。このお二人が先ほどの模擬戦を見て挨拶がしたいとおっしゃられたのでお連れしました」


そういうとセアラは挨拶の邪魔にならないように距離を取ってその場を逃れると、全身鎧の男とローブの者が一言二言言葉を交わすと全身鎧の男が一歩前に出てきて、


「僭越ながら私から自己紹介させていただきたいと思います。私はショルツ・ナイトという者で非才の身ながら群青騎士団の団長を務めております。お二方の戦いを見て私も団員も"ギルド"の戦闘者の実力の一端を理解することができました。今回の戦いでは騎士団と"ギルド"の協力が不可欠ですからお互い力を合わせて乗り切りましょう」


そういって全身鎧の頭部だけが露出した金髪の甘いマスクのショルツがシンに手を差し出し握手を求める。

シンは「こちらこそよろしくお願い致します」と言って同じく手を差し出して握手を交わす。

そして数秒間握手を交わし終えると手を離して彼は次にルートの前に来て「よろしくお願いします、ルート君」と言って手を差し出す。

ルートはショルツの顔をしばらく見つめて、


「こちらこそよろしくお願いいたします、ショルツ・ナイト卿」


堅苦しい口調でそう返して右足を少し引いて軽く腰を折り、差し出された手を握った。

それを見てショルツが、


「・・・・・・君は貴族なのですか?」


とルートの目を見てそう言った。


「当の昔に没落した身でございます」


ルートはそう表面上は冷静な様子でそう言ったが、握手を交わしているショルツだけがその手に一瞬力が込められたことに気がついた。

そしてショルツは、


「そうですか。これ以上お聞きするのは止しておきましょう。よろしくお願いします、ルートさん」


そう言って手を一度軽く上下に動かした後に離して一歩下がった。

そのショルツと入れ替わるようにして全身ローブの者が一歩前に出て、


「次は私か。私はブラハ。"紫"で今回の"ギルド"の援軍の代表者だ。よろしく」


そう言ってシンに手を差し出して握手を交わす。

同様にルートとも握手を交わすと、一歩下がって静かに佇んだ。

セアラは話が一段落したことを確認したようで手をパンパンと叩いて注目を集めると、


「お話は終わりましたか?もし終わったのであれば私の話を聞いていただきたいのですが」


そう言って広場にいた人々の顔を見ると特に問題がなさそうなのでそのまま話を続けようとした彼女にブラハが、


「『拡音スピーカー』」


と言って風魔法を唱える。


拡音スピーカー』は数多くある風魔法の中でも有名な魔法のうちの1つで呼んで字の如く音を広げるだけの魔法であるが、その単純な魔法であることこそがこの魔法が有名である所以でもある。

それ故この魔法は様々な場面で利用されていて、例えばこのキラの町に張り巡らされてた拡声の魔道具もこの魔法が付与されたもので、他には戦闘中に指示を飛ばすときにも使われる。


セアラはその魔法が使われたことに気がつきブラハに一礼し、それに彼が頷いたことを確認すると、


「幸いこの場にはこの町の戦闘者も集まっているようなので話を始めます。今回の戦いに対する作戦の説明などはこの場に居る全員にしてありますので省略します。この場に居る皆様にはこの町での拠点に案内しますが、皆様に待機していただくのは『無限』の"大暴走スタンピード"に対する防衛拠点として建てられた建物となります。そしてこの後皆様には強襲部隊、待機部隊、警戒部隊のそれぞれに分かれて行動していただきます。あと、王都からの援軍の中には"ギルド"の生産者もいると言うことなので、その方々には待機部隊としまして武器の修理などは彼らに一任します。ここまでで質問等はありますか?」


セアラがそう言って人々を見渡すが何もないようなので先に話を進める。


「これから皆様の拠点に案内します。拠点に到着し次第、先ほど上げた各部隊への配属を開始しますのでそれまでにどの部隊に入りたいかを考えておいてください。それでは私の後についてきてください。」


そう言ってセアラは広場を抜け、大通りを通り北へと向かっていく。


その後ろをマイン、シン、ショルツ、ブラハ、ルートがついて歩き出し、その後ろを広場に集まっていた人々が歩いてついていく。


総数500名ほどの武装した集団が大通りをダッダッダッというような足音を響かせながら歩き、それを避難することを選ばなかった町の人々が遠巻きに見て「俺達の町を救ってくれ!」というような声を掛け、目には期待や縋るような色が含まれていて、その眼差しを向けられた戦闘者や騎士団員達は今回の戦いで自分達の背負うものの大きさと言うものを再確認させられ、自然と背筋が伸び堂々とした姿勢になり、それが我々に任せろと語っているようだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


そうして北に進み続けた一行は中央会館を越え、北門から300mほど離れた所でセアラは足を止めた。

そして、


「到着しました。こちらが拠点です」


と言って手で拠点と言われた建物を指し示す。


その拠点は中央会館の三倍以上の敷地面積を誇り、窓の数から察するに5階立ての煉瓦を組み上げて作られた建物でどこか砦を模したような印象を与えるようなものだった。

そしてその砦に寄り添うような形で同じ材質のもので構成されたふたまわりほど小さい建物が拠点の両脇に建てられている。

それを見て集団の中からへえ~だとかいうような声が聞こえてきたりするが、今はそんな感情に左右されている暇は無いと言うようにセアラはお馴染みの手を打ち鳴らし、


「それでは皆様にはこれからそれぞれ希望の部隊を決めていただきます。それが決まり次第拠点に案内します。それではまず、待機部隊、警戒部隊を希望される方は私、セアラの前まで集まってください。そして強襲部隊を希望の方はここに居る"紫"の戦闘者、"豪腕"のマイン・ディロッタさんの前まで集合してください」


彼女はそう言い終えて手をぷらぷらと挙げているマインを指し示した後、彼女自身は拠点の入り口前から少々遠い位置まで移動すると、


「それでは移動を開始してください」


と言った。


すると拠点の前で居た人々がゾロゾロとそれぞれの希望の場所に移動し、大体セアラとマインの前には1:9ほどの割合で分かれた。

セアラの側には先ほど決めたキラの町の戦闘者が居て、王都からの援軍の中からも数十人もの人々がそちらに移動していて、マインの側には残りの人々が集まっていて、見たところ群青騎士団と戦闘者集団の頭数は等しいようであった。

もちろんルートも強襲部隊のほうに並んでいる。


セアラは並び終えたのを見て、また手をパンパンと打ち鳴らし、


「並び終えたようですので中に移動します。私についてきてください」


そういって彼女は拠点の中に入って行き、残された人々も続々と後に続いて入っていった。


そして中に入った人々が目にしたものは千人程度を収容できる程度のただただ広いだけの机も椅子も無い簡素な煉瓦の広間で、あるものはというと3つぽっちの大き目な扉と二階へと続く階段のみであった。


中に入った人々は広間の中を見渡して確認する。

セアラは後ろに人々が着いてきていることを確認するとそのまま階段を上っていくので、彼らもその背中を追って階段を上っていく。


階段を上がった二階には一階と打って変わって広間自体は小さく全員が入ると少々手狭に感じてしまうほどの広さで十数個の小さなドアに面しており、机や椅子などが数多くあって一部には教壇のように床よりも一段高くしてある所もあり、何かを話し合ったりするのに使用する場所であると言うことが想像できた。


セアラは階段から人が上がって着こなくなったのを確認すると、教壇の上に乗って全員に椅子に座るように勧めて全員が座ると、


「この二階は基本的に待機部隊と警戒部隊の人たちに使っていただきます。そしてこの広間で他の町や都市と連絡を取って情報をまとめていただきますので、この町にいる間は強襲部隊の方々には時折ここで情報の確認をしてください。部屋割りについては特に指定はしませんが気心が知れているもの同士の同室以外は基本的に同姓同士の部屋にまとまって下さい。言うまでも無いでしょうが今は非常事態なのでそういった事情によって問題が起こってしまうと致命的なものになってしまうかもしれませんから。また、武器の修理などは拠点の脇にある内のひとつの建物で受け付けていただきます。また、もうひとつの建物では群青騎士団より一部の炊事兵が派遣されますので食事関連の用事がある方はそちらを訪ねてください。これで私からの話は終わりまして次はそれぞれの部隊での打ち合わせの時間としたいのですが質問等はありますか?」


その言葉に騎士団長のショルツが手をピシッと挙げて、


「いいだろうか?」


そう言ったのでセアラはうなずいて続きを促す。

するとショルツはその場で立ち上がり、


「一度目の強襲部隊がこの町を出るまでの刻限はいつでしょうか?」


と質問すると彼女は、


「そうですね、鐘の音が二度鳴るころには町を出ていただきたいです」

「分かりました、それでは急いで準備をしなければなりませんね。私からは以上です。感謝します」


そう言って彼は席に再び腰を下ろして不動の姿勢に戻る。


セアラは「他に質問はありませんか?」と言うが誰も声を発しなかったため、


「それでは強襲部隊の人たちは3階へと移動してください。そちらのことはお任せいたします」


するとその言葉を聞いた強襲部隊の面々は続々と立ち上がり3階への階段を上って行き、その後に続いていこうとしたルートとショルツにセアラが静かに近寄ってきて、


「少し時間を下さい」


と言って呼び止めるのであった。

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もう一つの連載作 テーマは独善の投影。
「辻ヒーラーさんは今日も歩く」
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