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真実は迷宮の中  作者: Luce
第2章 大量発生
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27話 模擬戦


群青騎士団と"ギルド"の戦闘者がこの町に到着したということで、セアラとこの場で一番の高ランクのマインとルナが出迎えに行くことに決定した。


「それでは私達は出迎えに行ってきますので皆さんは少々待っていてください」


セアラがそう言うとホールから出て行き、その後ろに報告に来た兵士、マイン、ルナの順に付いて出て行った。


するとその場に残された人たちはそれぞれ装備の点検などを始めて、近くにいた者たちと自己紹介などを始めた。


『万色の集い』のメンバーとルートは道具の点検や自己紹介を済ませているため手持ち無沙汰になっていたのだが、ギルバートがルートに、


「ルート君、俺と少し模擬戦でもしないか?」


と手合わせを申し込んだ。


「構わないんだけどどうしてですか?」

「今回俺達は一緒に動くわけだからな。君がどんな戦い方をするのか知っておきたい。まあルナさんやシークさん、マインさんならその場で合わせられるんだろうけど俺には無理だからな」

「なるほど。確かに僕もギルバートさんの戦い方も見ておきたいですしいいですね。それでどこでやりましょうか」

「この近くに広場があるからそこでやろうか」

「はい」


そういってギルバートとルートの二人はホールを出て行こうとするが、


「ちょっと待ってください。私も手合わせしたいのですが」


とシンが言うので了承して改めて三人で出て行こうとするとその後ろに続々と道具の点検をしていた戦闘者も勿論『万色の集い』のメンバーも付いてきた。


「ギルバートさん、なんだか大事になってしましそうな雰囲気になっているんですけど」

「確かな。まあ北門からこの中央会館までの大通りの通過点にあるからそこそこ騒がしくなっていたら向こうが気付いてくれるだろう。それより呼び方だが、俺はギルでいいし敬語も必要ない」

「そう?それじゃあギルさん、僕も呼び捨てでいいよ」

「それは助かる、ルート」

「私もシンと呼んでください。ルート」

「わかったよ、シン」


そういって全員がホールから出て近くの広場に入っていった。


その広場は直径100mほどの円状の広場で石畳が敷かれ中心には小ぶりな今は停止している噴水がある。

ギルバートとルートはその噴水を間に挟むように距離をとり、その周りを付いてきた面々が取り囲むように見物している。

そして、


「ルート、それではルールを決めようか。大怪我になるような一撃は必ず寸止めにすること。そして修復不可能な破壊は行わないこと。魔法は牽制程度のもので過剰な威力のものは使用しないこと。あとはこの広場から出ないようにするということでどうだ?」

「了解です」

「よし、それじゃあ誰か審判やってくれ」

「・・・・・・俺がやる」

「ありがとうございます」

「任せます」


シークが審判に名乗りを上げ、ギルバートは背中の大きな盾を正面に構えて、ルートは無手のままただ腰を低く落として合図を待つ。


「・・・・・・始め」


そういうとルートが放たれた矢のような速度で飛び出し噴水のモニュメントを足場に加速、ギルバードに襲い掛かる。

ギルバートはそれを見てほかにも何かしてくるかもという可能性だけは頭に入れて盾を前に構え勢いよく突進する。

ルートは迫ってくる盾を前に、


「『岩壁ロックウォール』」


と唱えると彼とギルバートの間の地面が膝くらいの高さまで隆起し、その直後それと盾が衝突する。

盾の下部にだけ障害物を設置されたことによって上部の方だけが勢いよく前に飛び出すが、それを自前の筋力で止める。

ルートはその一瞬の硬直を逃さず側面に回りこむと腰袋からナイフを取り出し切り掛かる。


が、反射的にそれを止め後ろに下がって距離をとり一瞬前まで頭があった位置に何かが通り過ぎる。


「・・・・・・いやいや、その盾はないでしょう」

「俺の愛用の一品だ。邪険にするなよ」

「厄介すぎるでしょうそれ。何ですかその大きな手甲のような使い方って、絶対何か間違ってる」


ルートが指摘したギルバートの持つ盾はさっきまでとは違い、ちょうど盾に真っ二つに切ったように左右に分離して腕に添うような形で装着されていた。


「まあ確かに使い方がおかしいのは認める。だがお前の魔法の使い方もおかしいからな?」

「それはその・・・・・・僕も認めますけど」

「だろうよ。ただ俺達はその変な使い方が一番性に合ってんだ。さあそれじゃあお前の変な使い方で向かって来い、俺が全部防いでやる」


そう言ってファイティングポーズをとるギルバートに、


「その拳闘士みたいな構えで防いでやるって言われても説得力に欠けてるよね。まあいいや、それじゃあ僕も変な使い方で破ってやりますよ。『石槍ストーンランス』」


地面から突き出してきた一本の『石槍ストーンランス』をへし折るように掴んで構えるとさっきと同じ速度でギルバートに向かって走り出す。

そしてギルバートはステップを踏みながらギリギリまで引き付けるようにして突き出した槍をかわして近づこうとすると一歩踏み出したところで、突然地面が無くなりその穴に落ちてしまう。


観戦していた人たちは突然ギルバードの姿が消えたことに驚く。


「ギルバートさん、どうします?もうそこは僕の領域ですけど」

「降参だ。確かにマインさんが言うだけあって強い」

「・・・・・・ルートの勝利」


ギルバートが降参を宣言するとシークがルートの勝利を告げた。

そして、


「それじゃあギルさん、引き上げますね」

「いいやそれは及ばない。『岩壁ロックウォール』」


そう唱えるとギルバートの足元が隆起し元の高さまでその体を押し上げる。


「あれ?土魔法使えたの?じゃあなんで降参したの?」

「俺はそもそも魔力量が少なくてな。今の『岩壁ロックウォール』で2割は吹っ飛んだ。だからこそ奥の手の魔法を使っても勝てる未来が見えなかったから降参したんだ。ただその奥の手を見せたのは俺のささやかな抵抗ってとこだな。ルート、俺の負けだ」


ギルバートは籠手を外すと開放された手をルートに差し出す。

ルートはその手を握り返して、


「なんだかあまり勝った気がしないのはどうしてかな。まあそれでも、僕の勝ちだね、ギルさん」


笑って言う。


「お?そうお前が感じるなら一矢報いたってことだな」

「うん、一本とられたよ」


お互いに称えあっている二人を、周りで見ていた観客達は拍手を以ってその健闘を称えた。


「とりあえず俺の番は終わりだ。次は「私です。」・・・・・・ずいぶんとやる気だな、シン」

「勿論です。『万色の集い』には長物を扱う人はいますが槍を扱う人はいませんでしたから。久しぶりの槍相手の試合ですので燃えるというものです」

「そうか。ルート、こいつスイッチ入っちまったみたいだわ。まあ頑張れ。こうなったときのこいつは少々というより大分と面倒だからな」

「さてルート君、やりましょうか。勝負は槍のみの純粋な槍術勝負で。基本は先程と同じルールでいきましょう。シークさん、審判をお願いします」

「え~っとシンさん?少し落ち着かれたほうがいいのではないでしょうか?」

「私がこの状況で落ち着いていられるだろうか、いやない!」

「そう言い切られても・・・・・・」

「・・・・・・準備はいいか?」

「シークさんも大概自由ですよね」

「うっは、なんだか面白そうだなこれ。んじゃルート頑張れ。俺は敗者らしくこの場を去り、高みの見物を決め込むことにする。じゃあな!」


そういうとギルバートは他の『万色の集い』のメンバーがいる所に足取り軽く向かい、そして着いた途端に体をくるっと回してニンマリとした顔で白々しく「俺に勝ったんだからシンにも負けるなよ!」などという言葉を吐く。


「ギルバートさんもいい性格してるよ」

「ルート君、君も槍を構えてくれ。そろそろ私の我慢の限界が来てしまいそうなんだ」

「アッハイ。ソウデスカジュンビシマス」


ルートはあらかじめ『影部屋シャドウルーム』から移しておいた純白の槍を腰袋から取り出して構える。


明らかに腰袋の大きさと取り出したものの中身が一致していないマジックのような光景に、周りで見ている者たちは目を見張るがすぐに「ルートのことだからしょうがない」と諦めが過剰に含まれた結論を導き出して冷静に試合の行方を見守ろうと意識を切り替えた。


その槍を見たシンは周りの者と同じように驚きを前面に出して黙り込む。

先程までの熱はどこへ行ったのかと心配になるほどに静かになって顎に手をあてて何かを考え込むような仕草を取り、1分ほど経つとルートと目を合わせると、


「ルート君、この試合が終わったら私に少し時間をくれませんか?」

「・・・・・・いいですけどどうしてですか?」

「聞きたいことがあります」

「はあ。」

「まあそれは後にしてですね・・・・・・」


そう言うと彼は満面の笑みを浮かべ、


「今はただ試合のことだけを考えてください。私はそうします!」


手元で槍を回し構える。

そして彼からあふれ出る威圧感によってルートの戦闘スイッチが入ると、ルートの顔から感情の色が抜け落ち槍を構える。


「・・・・・・それでは始め」


その合図でシンは距離を詰めるために駆け出し、ルートは前に出ず迎撃の態勢に入る。

シンはまず様子見の一撃を足元に放つとルートはそれを半身になって避けシンの足元に突きを放つ。

シンもそれを半身になって避けると次は右肩、腹、左腿に突きを放つとルートはそれぞれを柄で防ぎ、最後の一撃を強く弾き飛ばすと攻守交替してルートが攻撃を放ちそれをシンが防ぐ。


二人の攻防は徐々に激しさを増していき早くなっていくと、槍同士が衝突したところに火花が散る。

彼らは視線で、体の向き、槍の握り方などで相手を欺き、当たらないはずの槍の軌道を変えて本命の攻撃にしたり、当たる槍の軌道を変えて次の攻撃を確実に通すための布石にしたりと二人の間でさまざまな駆け引きが行われている。


そして彼らの槍の衝突の衝撃で石畳が剥がれ始めたところで、


「そこまでだ、これ以上は町の外でやれ」


と声が掛かった。

そして声が掛かって動きが止まったとき、二人の槍の先端は互いの首に触れそうなほどの距離にあった。

そしてその声の主は、


「悪いなルート、俺が思っていた以上にこいつの槍術勝負欲が溜まっていたらしいわ」


シンの肩をバンバンと叩いていうマインであった。


「マインさんが止めてくれなかったら収拾がつきそうになかったから助かったよ。僕も久しぶりに人を相手にしたから楽しかったし」

「すみません、リーダー。久しぶりに槍術で勝負できる相手が見つかってそれが想像以上の実力で楽しくなってしまいまして」

「まあルートがそういうならいいけどよ。・・・・・・シンはそろそろ自制の手段を身に着けろ」

「面目ない。」


シンはそう言うと肩を落としてしまった。


「ところでマインさんがここにいるというはもう案内は済んだということかな?」

「いいや、案内の途中だ。その証拠にほら」


マインが指差した方を見ると同じ群青色の頭部だけ露出させた全身鎧を身に纏っている統一感のある集団と、見たことのない顔で装備も武器もバラバラな統一感に欠ける集団がいた。


「なるほど、大方広場から大きな音が聞こえるから危険がないか様子を見ようと全員で来たってところ?」

「惜しいが少し違うな。俺が楽しそうなものがありそうだから全員で行こうって言った」

「つまりはマインさんのせいね」

「いやいや俺のお陰だろう。お前とシンの模擬戦を見てこれなら今回の事態も乗り越えられそうだって騎士団と戦闘者の連中が一緒になって喜んでたんだぜ?俺ら戦闘者は騎士団の実力を知ってるが向こうはどうやら知らないしているようで不安に思ってたところでお前達の模擬戦を見て戦闘者の実力を信じてみる気になったらしいぞ」

「それならいいけどね」

「ああ、姉ちゃんが嬉しい誤算だって言って笑ってたぞ」


そうしてルート対ギルバート、シンの模擬戦が終わり、ついに王都からの援軍と顔を合わせたルート。

まだこのときは援軍の中に一生を共にする者が混ざっていることをルートは知らない。


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もう一つの連載作 テーマは独善の投影。
「辻ヒーラーさんは今日も歩く」
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