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真実は迷宮の中  作者: Luce
第2章 大量発生
24/84

24話 装備


「マジでスンマセンした!」


そう90度以上頭を下げるレン。

他の『万色の集い』のメンバーも大小あれ頭を下げている。


「え?え?え?ど、どうしたんですか皆さん!頭を上げてくださいよ!」


そう言って立ち上がってまあまあと両手を下げるようなジェスチャーをしてルートは落ち着くように要求する。

それを見ていたマインは、


「ハハッ、あれだ。お前を見くびってたけど、想定外だったから謝るから許してくれってことだよ。‥‥‥あと正直お前の魔力は俺でもビビったぞ?それで"水"とか詐欺だろ」


と笑って言った。

まあ後半部分は半笑いであったが。


「別に謝られなくても気にしてないから!」

「いやいや!これはケジメでもありますんで!スンマセンした!」

「分かりました!謝罪を受け入れますから!頭を上げてよ!」


そうして3分程度ルートとレンが主張しあっているとレンの方が頭を上げて、


「あざっす!」


そう言った。

レンの怒涛の謝罪にすっかり疲れ果ててしまったルートは椅子に深く座って息を吐いた。


マインは場の流れを変えるために唐突に現れたシークに話題を振る。


「おいシーク、お前どうしてここに居る?偵察は終わったのか?」

「・・・・・・ああ。報告は既に"ギルド"に挙げてきた」

「そうか、それじゃあ聞きたいんだが。俺達は騎士団がまで持ちこたえられるか?」

「・・・・・・そうだな。下手にどこかの誰かがつつかない限りは大丈夫」

「ハハッ、それはいい報告だ。で規模は?」

「・・・・・・想定以上だ。軍団になりかけといったところか」

「ハハッ、3万弱ってところか。本当に笑えねぇな」


その報告を聞いたその部屋にいた全員が絶句する。

『万色の集い』のメンバーはシークの偵察能力を知っており十全の信頼を置いているからこそ今の情報が真実だと言うことを悟った。

ルートは素直に3万という数に驚きを表しているようであった。


「だそうだぜ。なかなかこれはお目にかかれそうに無いくらいの王国の危機ってところだな」

「本当にね。これは『万色の集い』の全員引っ張り出してくるべきだったわ」

「・・・・・・ああ」


この場におけるランクの高い三人がそんな話をしている。

その頃、ルートはと言うと、


「3万かあ。確かに多いね。けど、セルファで父様と母様が参戦した戦いでは確か総数1万だったっけ?セルファの戦闘者に比べて今回の作戦の方が参加人数が多いのだからそこまでの危機ではないような気もするんだけど」


などと暢気なことを小さな声で言っていたがその声は誰にも届くことは無かった。


もっともセルファの最前線の戦闘者は"青"が半分で"藍"が2割、"紫"が一割で"黒"が3人と変態的な編成であるため、正直今回の作戦に従事するものと比べるべきではない。

ちなみにそのセルファの"大森林"では丁度、「恵みの月」と言われている魔物がどんどんとあふれ出てくる一般人にとっては悪夢のなかでさらに見る悪夢のような時期に突入しており援軍は出せない。


「あっ、そうだ。俺まだ言ってなかったな。分かってると思うけどこの事態に参戦するぞ。俺達の夢を叶えるための名を上げるチャンスだからな。それともお前らはこの状況を逃して次のいつ起こるか分からない事態に懸けるか?」


マインが挑発するように『万色の集い』のメンバーに言うと、先程までの絶望感に満ちていた目に覚悟の色が現れ、絶望の色をそれで塗りつぶしていく。

全員の目に覚悟が宿り迷いの無い顔になったのを見届けたマインは、


「ハハッ、いい目だ。それじゃあ一丁俺らの夢の為に猿ごとき精々踏み台にしてやるぞ!」


「「「おう(はい)!」」」


彼らの返事は大きく、窓がビリビリと揺れる。


「今から5分やる!完全装備でここに集合、かかれ!」


マインの言葉を最後まで聞くことなく彼らはすばやく動き出し、女と男が分かれて扉の奥に消えて行った。

ちなみに酒飲みの二人が出てきたのは男が入っていっている部屋である。


そうして一気に寂しくなった広間に残されたマインとルート。


「ハハッ、どうした?そんなに口を大きく開けて」

「いやあ、仲間同士の絆というものを間近で見たからね。圧倒されてた」

「どうだ?羨ましいか?」

「・・・・・・そうだね。正直に言うと羨ましい。けど僕には誰かを守れるような素敵な力が無いからね。僕にあるのはただ生き物を殺すためだけのただの暴力だけだから。マインさんたちのような関係は築けそうにないよ。だからこそ本当に羨ましいね。」

「・・・・・・ルート、これから言うことはただの俺の意見だ。肯定する必要も無い。ただ心の片隅で埃を被らせてもいいからどうか覚えておいて欲しい」


「?」


真剣な顔になったマインを前に何を言おうとしている分からないルートは首を傾げる。

そして、


「お前は持っている力をただの暴力だというが、それが駄目だとそうして決め付ける。お前の言う素敵な力ってのも結局突き詰めれば暴力なんだよ。だからな?お前のその暴力もいつか指向性を持てば素敵な力に変わるさ。お前は強大な力を持っているからこそそういう思うのかも知れんがあんまり囚われすぎるな。いつかお前が立ち止まってその力と向き合ったとき、心に浮かぶものがお前なりの素敵な力なんだろうと思うぜ」


そう言った。

ルートはその言葉を聞いて自分の力について考えてみる。

確かにそれは紛うことない暴力で到底素敵な力なんて言えそうに無い。

彼はこの暴力が素敵な力になるだなんて思えないからこそその言葉の本当の意味はまだ分かっていないのかも知れないが、いつか分かりたいものだと自然に思えて心の奥にそっとその言葉を置いた。

埃が被る前に取り出したいものだと思いながら。


「・・・・・・ありがとうございます、マインさん」


ルートは簡潔だからこそ飾らない感謝の言葉を心を込めてそう礼を言った。

マインは、


「ハハッ、らしくないこと言っちまったかもな。・・・・・・どういたしましてだ」


そっぽを向いてそう言った。

ルートはその様子を見て笑いその背中に感謝の念を込めた視線を送った。


そうしてなんともいえない、しかしあまり悪くも無い時間を二人は共有していると男が入っていった部屋の扉が空き、中から『万色の集い』の男性メンバーが完全装備で出てきた。


ギルバートは全身に黒い全身をすっぽりと飲み込んでしまうような鎧を身に纏い、背中には逆三角形型の下にした頂点が大きく伸びたような形の壁盾に分類される1m以上ある大きな盾を背負っている。

レンは急所を守るだけの簡素な革鎧を服の上に身に着けており、その手足には魔物の甲殻から作られた手甲と脚甲が鈍い光を放っている。

シンもレンと同じような格好で、ただ違うのは手に持ったルートのものよりも長い黒の槍である。

タタラは赤のチェストアーマーだけを身に纏い、大きなハンマーを二本背中に担いでいる。

シークは胸当てを着けていて、必要最低限だけの急所を守る程度の装備で腰には一対の大振りのナイフが左右対称に収まってる。


「皆さん貫禄がありますね。‥‥‥どうして僕はこう、貫禄が出ないんだろう」

「ハハッ、ルートの場合、貫禄はないが迫力はあるな」

「うるさいですよ!僕だって気にしてるんですから!」

「少なくとも今のお前人族には見えねぇぞ?正直に言っていいなら保存状態のいい陽気なゾンビってとこだぜ?ボロい装備の黒はいいにしてもその不健康そうな見た目がな」

「うぐっ。や、やっぱり不健康そうですか?」


そうルートが問うとマインはともかく男性メンバーも一緒になって頷く。


「やっぱりって言うくらいなら少しは気を使え」

「はい‥‥‥。で、でもゾンビメイクって言ったら少しは「くだんねぇこと考えてんな」‥‥‥はい」


『無限』で2ヶ月近く潜っていたせいでルートの食事というものは必要最低限を強いられ、どうにも栄養が不足がちになっていた。

その結果、マインが言った通りの印象を与えてしまっているようだ。


ルートは不健康そうと言われないように食事量を少しずつ増やしていこうと決意した。

そして、


「あっ、そういや僕昨日の昼?、から何も食べてないね」


と呟くとすぐさまギルバートが動きキッチンの方へと向かって言った。

そして、


「すまん。俺鎧着てるから保冷の魔道具開けられないわ」


表情の見えないヘルム越しにこっちを見やりそう言った。


「ハァ、お前動く前に気付けよ」

「いやぁ、面目ない」


マインがそう言い、ギルバートが鎧をガシャンガシャン言わせながら頭を掻いた。


「それでは私が」


そう言ってシンがテーブルに長槍を置いてキッチンに行き、冷蔵庫の様な保冷の魔道具を空け、適当に中の物を取り出していく。

そしてその取り出した物を手に持ちギルバートを伴って戻ってくる。

手には焼かれた肉や野菜が乗った皿が持たれていた。


「ルート君、これを食べるといい。どうせこの宿を出ないといけないから保冷の魔道具に入れていても意味が無いからね。それに保存も効かないからね。食べて欲しい」


そういって手に持った皿とフォークをルートの前に置いた。

すると、


「いいんですか?」


ルートが他の人達を見て言うと問題ないというように頷く。

それを見て、


「ありがとうございます。いただきます」


感謝を表すように合掌するとフォークを手に持ち、突き刺し、それを口の中に運ぶ。


流石のルートでも一日近く何も食べていないとお腹の中はスッカラカンのようで、1口、2口と皿まで食べてしまいそうな勢いで次々と口へ運んでいく。


彼が一心不乱に食べていると、女性メンバーが扉から出てきた。


ピナは歌姫が着るような緋色のドレスの様なものを身に纏っていて手にはハープのような物が握られている。

リズは黒いとんがり帽子に黒いローブに彼女自身の身長ほどある杖を装備している。

ルイとライはお揃いの革鎧に薙刀を手に持っている。

ミツナは胸当てだけ身につけ、背には大剣が背負われている。

ルナは胸当てと両手には指貫を身に着けており、腰には矢筒が左右対称についていて手に弓を握っていた。


ピナの格好を顔を赤らめながらも見つめているアホ(レン)はさておきマインは女性メンバーが出て来たことで全員が揃ったと判断し、


「ハハッ、全員揃ったな?それじゃあ『万色の集い』は今回の事態に積極的に参戦し名を上げる!いつか亜人族と人族が差別無く共に笑え合えるような未来の礎を作る為に!分かったか!?」


「「「はい(おう)!」」」


右手を天を突くように突き上げる。

それに倣って『万色の集い』のメンバーも同じように右手を天を突き上げた。


「モグモグ、ゴクリ。ご馳走様でした。美味しかったです、ありがとうございます」


ルートも食事を終えた様で真摯に合掌し、『万色の集い』のメンバーに礼を述べる。


「ハハッ、美味しかったのは良かった。ただ口元ソース付いてるぞ」


マインがそう言うとルートはササッと口元を袖で拭って、


「ご馳走様でした。美味しかったです。ありがとうございます」

「無かったことにはなんねぇからな?」

「‥‥‥見逃してください」


その様子を見ていた『万色の集い』のメンバーはどうやら無意識のうちにしていたらしい緊張を解かれたようで、お互いに顔を見合わすと笑いあった。


アーミー・エイプの大軍と交戦する時間は刻一刻と迫ってきていた。


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もう一つの連載作 テーマは独善の投影。
「辻ヒーラーさんは今日も歩く」
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