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真実は迷宮の中  作者: Luce
第2章 大量発生
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21話 状況説明


ルートは『土人形アースゴーレム』の4分の1程度を集めて、


「『変形メイク』」


と唱えると『土人形アースゴーレム』達が一気にバラバラになって形を失い地面にこんもりとした土の塊になると、その土の塊がグニグニと蠢き小さい塊に分離すると一瞬で手枷や足枷の形になる。

その内の一つをルートは手に取ると、一対の穴の片方に指を入れてクルクルと回しながら、


「いまからお前達にこれを付ける。抵抗してもいいけど抵抗したら埋めるから」


そう言ってクルクルと回していたものを投げると『土人形アースゴーレム』がそれを掴み近くにいた者にそれを装着する。

それを見ると他の『土人形アースゴーレム』も同じように手枷や足枷を手に取り次々と装着していく。


途中で抵抗したり逃げたりしようとする者もいたが、『土人形アースゴーレム』がそいつの頭をガッと掴むと叫び声も気にせずにホールを出ていく。

少しすると開けっ放しの扉の方から、「助けてくれ!」「埋めないでくれ!済まなかった!」などという叫び声が聞こえてきて、その声を聞いた者達は抵抗する気が失せ、大人しくされるがままに装着されることにしたようだ。


全員に枷を付け終わると先程まで作業していた『土人形アースゴーレム』がまた伯爵達を取り囲むように座り込んで待機する。


「みんな、お疲れ様!」


とルートが声を掛けて労って、


「セアラさん、これでいいですか?」

「うん、いいよ。これで後は騎士団の人に任せましょう」


セアラはウンウンと頷くとそう言った。


「なあ姉ちゃん、聞きたいんだが騎士団ってのは何処のだ?」


と深刻な顔でマインが問うと、


「"群青"です」


セアラは何でもないことのように答える。


「そうか、なら任せても良さそうだな」

「はい、そうじゃなければこちらから王都まで自分たちで連れていかないと行けない所でした」

「ハハッ、そうだな。確か"群青"には転移使いがいたな」

「助かりますね」

「全くだ」


マインとセアラが話しているとルートが、


「"群青"って群青騎士団のことですよね?」

「ああ、流石のお前でも騎士団については知ってるか」

「たしか群青騎士団は完全実力主義でしたよね」

「ああ、平民、貴族関係なく実力と礼節を弁えた連中が集まった騎士団だ。確か今の序列は2位だったはずだ」

「確かにその名高い群青騎士団が派遣されるとは安心ですね」

「そうだな。だが、その序列2位を王国が派遣をしなければならない事態になっているということがどれだけの問題になっていると言うことがよく分かるってもんだな」


ルートとマインはそんなやり取りをしているとセアラが、


「それじゃあその問題についての話をしましょうか」


真剣な顔をして二人を見る。

それを見て同じく真剣な顔になって次の言葉を待つ。

そしてセアラは、


「それではまず最初に"ギルド"の今回の件に対する認識をはっきりさせておきます。今回は『無限』を有するキラの樹海において第二級特殊(・・)危険指定種のアーミー・エイプの大量発生の前兆が確認され、その規模は少なくとも旅団クラスと推定されますが"ギルド"では師団クラス相当の戦力がいるのではないかと予想しています。そして"ギルド"は王国に対して緊急事態を宣言し、王国はそれを了承、現場における指揮権を"ギルド"に一時的に移譲しました。そしてこの町に派遣される群青騎士団を筆頭に序列2、3,5,6、7位の騎士団を各地に派遣するようです。ここまでが現状の説明ですね。何か質問はありますか?」


現状の説明をしたセアラは質問をすると、


「ハハッ、王国も大きく出たな。特に無いな」

「そうだね、あっ、僕も無いよ」


二人とも質問が無いように見えたのでセアラは再び説明を再開する。


「続けます。"ギルド"は王国との談合の末、包囲殲滅作戦を仕掛けることに決定したようです。アーミー・エイプはその性質ゆえに取り逃がすと後々に面倒になってしまいますからね。というわけでキラの樹海の周囲にある5つの町や都市を拠点として、"ギルド"の戦闘者と騎士団の連合で樹海を包囲し、強襲部隊と待機部隊に分かれて徐々に数を減らしていく作戦に出ることになります。ここまでで質問は・・・・・・無さそうですね」


質問は、と聞くと二人は首を振っていたため話を続ける。


「そしてここからはこの町での対応を説明しますね。この町の戦闘者は数も少なく・・・・・・それほど質も良くありません。そうですね、"藍"がマインさん1人だけ、"水"が4人です。まあルート君は少なくとも"青"以上だろうけどね。あとは"黄"が十数名ですね。ここまでが今回の戦いにおいて戦力になりそうな者たちです。あとは"橙"以下の戦闘者ばかりです。まあそう言った理由から群青騎士団が派遣されることになったのですが。質問は?」


と問うと、マインが口を開く。


「その戦力分析は少し間違ってるぜ。というよりもルートが怪しかったもんであえて伏せていたんだがな、出てきていいぞ、シーク」


マインがそういうと天井からナニカが降ってきた。

ルートはとっさに距離をとって身構えると、その正体が人であることに気がついた。


「ルート、身構えなくていいぜ。こいつはシークっていう名前で俺の仲間だ。ランクは同じ"藍"。お前の監視を頼んでいた。もう必要無さそうだから出てきてもらった」


そういって紹介されたシークという男は背が高く、マインと同じくらいで180cmほどありそうな細身でなかなか爽やかな顔立ちをしていてその耳はぴんと尖っている。


「シークさんはエルフですか」

「・・・・・・ああ」

「ハハッ、こいつは無口でな。・・・・・・ところでルート、お前は亜人差別主義者か?姉ちゃんにも聞きたい」


物静かなシークを笑ってマインがフォローすると、真剣な顔に変えてそう問う。

二人は、


「レストに住んでいると亜人なんて珍しくも無いですし、何度も助け合いましたからそんな考えは持っていませんよ。・・・・・・それに亜人よりも人のほうが恐ろしいですし」

「私も違いますね。種族なんて気にしていたら"ギルド"の仕事なんて出来ませんよ」


そう二人が言うとマインが豪快に笑って、シークは少し頬を緩めた。


「ハハハハッ、そうか!それなら良かった良かった!よし、姉ちゃん。さっきの戦力分析を上方修正してやる!"藍"が2人、"青"が3人、"水"が6人追加だ!この戦い、俺達『万色の集い』が参戦するぜ!そして改めて自己紹介だ。"紫"のマイン・ディロッタだ。いちおうクランのリーダーやってる。よろしく頼む」

「・・・・・・よろしく頼む。」


その言葉を受けてお姉さんとルートは、


「え!?『万色の集い』ってあの有名な多種族クランの!?と言うことはマインさんってあの"豪腕"のマイン!?」

「マインさんが"紫"!?」


驚いて大きな声を出してしまった。

ルートはなんだか違うところに驚いているような気がするが。


「その二つ名はちょっと恥ずかしいんだよな。"豪腕"って言っても精々亀の甲羅を割っただけなのによ」

「亀って!第一級危険指定種のダイヤモンド・タートルですからそれ!甲羅の硬さは特級危険指定種にも及ぶと言われている立派な魔物ですし!"ギルド"が記録しているなかでもあなただけですからね、手で甲羅を砕いたの!」

「いやいや、記録されて無いだけで他にも居るって。硬いって言っても精々城壁よりも少し硬いくらいだぜ?」

「そもそもどうして城壁を壊したことがあるんですか!」

「い、いや酔った勢いで・・・。正直すまんかったと思ってる」

「酔った勢いで壊された城壁の気持ちも考えてあげて!?」

「仕方ねえだろ!周りの奴らが流石のマインでも城壁は壊せないだろうな~とか笑いながら言ってきやがったんだから!」

「そんなことで壊されたの!?」

「まあその後、城主に滅茶苦茶怒られて依頼を何件か受けさせられたんだがな」

「でしょうね!」

「まあその依頼の一つであの亀にであったんだがな」

「そこで出てくるの!?」


なんてこと無い事のようにマインが言うと、セアラはそれは違うとその異常性を力説し、どんどんと話が逸れていく。

そしてそれを傍目に見ながら、


「シークさん、マインさんってもしかしてとても強いですか?」

「・・・・・・もしかしなくても強い。たぶんこの王国の戦闘者の中で10本の指には入ると思う」

「へ、へえ・・・、そうなんだあ」


と樹海の中でもし変に反抗していたらどうなっていたのかと想像して顔を青くするルート。


どうにもこの混乱した場を収める者は居らず、混乱は広がる一方である。


「・・・・・・我が言うことでもないがこいつ等は落ち着きを持ったほうがいいのではないだろうか」


壁際に転がされ枷を付けられている伯爵はそんなことを言うが、その言葉は誰の耳にも届くことは無かった。

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もう一つの連載作 テーマは独善の投影。
「辻ヒーラーさんは今日も歩く」
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