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真実は迷宮の中  作者: Luce
第1章『無限』
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1話 真実は迷宮の中

Luceです。

休載はしないようにがんばります。


それでは短い導入をどうぞ。

最新話になるにつれて文字数も増えてゆくのでお付き合いいただければと思います。


「迷宮入り」という言葉がある。


これは事実や謎が誰にも知られる、或いは解かれることのなかった時に用いられる比喩表現だ。


ただ、この世界『セルディア』においてそれは比喩表現などではなく、常識として捉えられる。


詳しく表現すると、この世界のあらゆる事象は迷宮の最奥に存在する迷宮核によって観測され続けている。


そして迷宮核に最初に触れた者には、己が知りたいと思う事柄についてのありとあらゆる情報が開示される。

その範囲は、殺人事件の真相から気になるあの子の好物、自分の忘れてしまった記憶までと遍くすべての情報である。


つまり、『真実は迷宮の中に存在している』ということである。


迷宮核はすべての事象を観測している。


この性質ゆえに、迷宮は多くの人々に狙われている。


たとえば、敵国の軍事情報を尋ねれば、迷宮核によってすべて暴かれ、効果的な戦術を考案することもできる。

災害などによって消えた資料も、迷宮核によって完璧に復元される。

貴重な動植物の生息、群生域なども迷宮核によって明らかにされる。

情報の宝庫という点から見ても、迷宮核は国、学者、趣味人にとって喉から手が出るほど欲される物である。


そんな迷宮核にもいくつか欠点というものは存在する。


それは迷宮核は観測するのみの物であり、己の思考というものは存在しない。


たとえば、ある病気に対する特効薬について尋ねたとしよう。

その特効薬が過去に数秒でも存在したのであれば、それの製法から治療法、病後の生活方法までありとあらゆる情報が迷宮核によって開示される。

しかし、その特効薬が過去に一度たりとも存在していない場合は、迷宮核はそれについては答えることができない。

もし迷宮核がその特効薬に使えるすべての材料を知っていたとしても。


また、今この瞬間までの事象は観測されるが、未来に関してはごくわずかしか読めない。


こういったいくつかの弱点を有する迷宮核であるが、それを補って余りあるほどの利点が存在する。


さて、そんな様々な思惑が交差し、渦巻く特異点たる迷宮。

迷宮は世界各地に存在し、その魅力に惑わされた人々を飲み込み、殺め、それでもなお色褪せぬ妖艶さで次なる獲物を呼び込む。

今日も今日とて人々は迷宮に入り、最奥を目指す。


そこにある真実を求めて。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ピチャン ピチャン


薄暗い洞窟の奥から水滴が水溜りに落ちるような音がしている。


ザッザッ ガリガリ ザッザッ ガリガリ ザッザッ ガリガリ


複数何かが硬質なものを引きずって歩くような音が妙に洞窟内に響く。


その何かは緑色の肌をしており、身長は1m程度で、汚い腰布だけを身に纏い、赤茶けた剣や槍を引きずって歩いていた。

何かは食べ物でも探しているのか、よくわからない「ギャギャギャ」という鳴き声で騒ぎあげながら、辺りをキョロキョロと見ながら歩いているためその歩みは遅い。


そんな何かに足音を立てずに忍び寄り影がひとつ。


その影は警戒心の薄い何かの首を喉を手にしたナイフで掻っ切った。


あまりにも早い一閃に一拍遅れて吹き出した青い血が何かの絶命を克明に知らせていた。

液体のようなものが顔にかかり、なにかはその発生源をみると、血を吹き出した仲間の姿があり、それが最後の光景となり、その何かも同じく骸と化した。


影は次々と何かの首を掻き、血を撒き散らし、次々と何かの骸を量産し、動くものは無くなったところで動きを止め、どこからか取り出した布で強引に血を拭い、ナイフを鞘にしまって顔についた一滴の血をそっとふき取ると、何かの骸の群れの上に布を放り投げた。


影は物言わぬ骸の群れを一瞥し、もう興味は尽きたというように洞窟の奥のほうへと歩を進め闇にまぎれてその影は消えた。


残されたのは、何かの骸の群れとペンキをぶちまけた様な青と、立ち上る鉄臭さだけであった。


これが彼、ルート・セルファ。


彼もまた自分の家族を奪った'あの日'の真実を求めて迷宮に入る者である。

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もう一つの連載作 テーマは独善の投影。
「辻ヒーラーさんは今日も歩く」
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