ChaptreⅥ:麗しき仮面騎士 ②
「グッ(G)っと踏み込み、ガッ(G)と快傑!人呼んでさすらいのヒィーロォー!……快傑ゴォールドゥッ!」
勇ましいGの名乗りが響き渡る。
「快傑ゴールドだと?ふざけるな!」
アードベックは怒りを顕にした。しかしマスク・ザ・Gは、もとい快傑ゴールドは微塵も揺らがない。
「そのお言葉、そのままお返ししますアードベックッ!」
「なんだと!?」
「革命という夢想に心酔するばかり街を焼き、あまつさえ再びクーデターを企てる魔人アードベック、そしてバーレイッ!天が見逃そうとも、この怪傑ゴールドは決して貴方たちを見逃しませんッ!!」
「私とローゼズの邪魔をするなぁぁぁッ!」
タリスカーは怒りに吠えながら、ゴールドへ向け飛ぶ。ゴールドは腰の鞘から二本のレイピアを抜いた。
タリスカーの刃がゴールドを狙う。ゴールドはレイピアの柄を合わせた。二本のレイピアは合体し、二刀一刃の双剣と化す。
「ハァっ!」
ゴールドはタリスカーへ向けレイピアを振る。二刀一刃のレイピアはタリスカーのナイフを弾いたばかりか、体勢を崩させた。
「せいッ!」
「あはッ!?」
ゴールドはすかさずタリスカーへ廻し蹴りを見舞う。タリスカーはそのまま物凄い勢いで突き飛ばされた。奴は海に落ち、それっきり上がってくる気配を見せない。
「す、凄いのじゃ!正義の味方なのじゃぁ!」
竹鶴姫が嬉しそうに叫び、隣にいる響はその緊張感の無い叫びに頭を抱えていた。
快傑ゴールドは颯爽と俺の横へ降り立った。
「ワイルド様、私も戦います!」
「君はもしかしてハー……?」
だが再び動き出したバーレイが割って入った。ゴールドは双剣を再び二本のレイピアへ戻し応戦。俺もまたビーンズメーカーを放ち始めた。
「話は後ですワイルド様!まずはこいつらを!」
「だな!」
怪傑ゴールドの刃は次々とバーレイを切り倒す。しかし、その剣は命を奪わず、時に武器を弾き、時に急所を外して敵の意識を失わせる。だけどその無双の強さは何者をも寄せ付けず、華麗に、そして踊るようにレイピアを振るうゴールドの周囲にバーレイの影が留まることはない。
「俺も負けてらんないなッ!」
俺もビーンズメーカーで次々とバーレイのライフルを弾き飛ばし続ける。
その時、一瞬俺たちの周囲は素早くバーレイの姿が消えた。
脇から感じる鋭い殺気。
気がついたときにはもう、横隊を組んだバーレイの隊列が一斉にライフルの銃口へ指を掛けていた。黒々とした無数の銃口が放つ鋭い殺気に、俺の全身は震える。
「ゴォールドゥ!」
勇ましい掛け声と共にゴールドは一瞬でライフルを構える横隊の中へ飛び込んだ。
ゴールドの予想外の行動にバーレイの隊列は激しく乱れる。
「はぁっ!」
ゴールドはその中でレイピアを華麗に薙いだ。鮮やかに、踊るようにレイピアを薙ぐゴールドは敵のライフルを、敵が肩から掛けている弾帯を引き裂き無力化する。
その隙に俺たちは一斉にバーレイへ向け、銃撃を見舞った。
何重にも重なっていた横隊が徐々に崩れてゆく。
いよいよ隊列を維持できなくなったバーレイはそれぞれの武器を持ち、俺たちへ突撃を仕掛け始めた。しかしそれこそ俺たちの思うツボ。
「ッ!!」
ローゼズの銃撃は確実にバーレイを撃ち、
「狙って撃つです!撃つです!」
「うらららららっ!!」
ジムさんとアーリィは互いに背を合わせながら群がるバーレイをそれぞれのビーンズメーカーでなぎ倒す。
「妾の力を思い知らせるのじゃ!やれぇい!響、山崎、白州ッ!」
「「「秘技!嵐の陣ッ!!!」」」
竹鶴姫の号令に従い、東方の三侍は縦列の三段攻撃でバーレイを圧倒する。
俺もまた親父の形見を改造して作ってもらった黒のビーンズメーカーで次々とバーレイを倒してゆく。
乱戦になれば一騎当千揃いの俺たちの方が圧倒的に有利。
バーレイは一人一人確実に倒され、勢いが衰えてゆく。
中央政府軍もまた状況が有利と分かり、戦意を高揚させ、バーレイを圧倒する。
その時、ゴールドメダル号から轟音が響いた。ゴールドメダル号に積載されているライトが次々と光を灯す。
「アードベック様!出向準備整いました!」
どこからともなくバーレイの1人が叫ぶ。
「よし分かった!ここは任せるぞ!」
アードベックは数人の部下を引き連れ、足早にゴールドメダル号へ続くタラップを渡り始める。突然、信号弾が夜空を照らした。
すると、街の至るところから奇声と馬蹄の音が聞こえる。
馬に乗った無法者。それぞれの服には黄金のバッチが付けられている。
「おのれバーレイめ!よもやゴールデンプロミスの残党をも取り込んでおったか!」
響さんは現れたゴールデンプロミスの無法者を見て苦虫を噛み潰したような顔をする。
「例え敵が増えようとも前進するだけです!皆様参りましょう!」
ゴールドは先陣を切り、バーレイへ立ち向かう。
その勇敢な背中に後押しされた俺たちもまたゴールドメダル号へ向けての進攻を再開した。だが数を増したバーレイは俺たちの行く手を阻む。
幾ら敵を倒しても俺たちはなかなかゴールデンメダル号に近づけずにいた。
「「「「「おおおおーーーー!!!」」」」
その時だった。勇ましい掛け声と共にロングネックの街の随所から武装した住民が溢れ出てくる。
「我々の街は我々の手で守るのです!行きましょう皆様ッ!」
交戦する住民を指揮していたのはバーンハイムさんだった。バーンハイムさんもまた手甲を装着し、バーレイとの交戦を開始する。
再び勢いづいた俺たちは一気に攻勢に出た。
「アリたん!」
「アイアイマム!」
ジムさんとアーリィの銃撃が敵の隊列を分断する。崩れた隊列は構成員を混乱させた。
「行けッ!ゴールド、ローゼズ!」
俺の声を受け、ゴールドとローゼズは同時に俺の肩を踏み台にして飛んだ。
高速の刺突が、ローゼズの神速の銃撃がバーレイの構成員をなぎ倒す。
着地した二人は互いに手を合わせた。
「お前、やる!」
「そちらこそ素晴らしい射撃ですね!」
そんな二人へ向け容赦なく銃剣を構えた構成員の一団が突撃を仕掛けた。
しかし、二人の前へ颯爽とバーンハイムが現れ、拳一つでその一団を吹き飛ばす。
「お二人共油断は禁物です」
「わかっております!参りましょうバーンハイム!」
「ハッ!仰せのままに!」
ゴールドのレイピアが、バーンハイムの拳が、俺たちの銃撃が次々とバーレイを倒し、道を開いてゆく。だが、無情にもゴールドメダル号から汽笛が聞こえた。
巨大な船体がゆっくりと動き出す。
でも飛びつくには距離が有りすぎる。
―――どうしたら!?」
「快傑ゴールド!飛ぶのよ!!貴方ならできるわ!」
後ろでジョニーさんが叫んだ。ジョニーさんもまたリボルバーを手にバーレイと戦闘を繰り広げていた。
「わかりました!ワイルド様参りましょう!」
「お、おえ!?」
ゴールドは突然俺を抱き抱えた。いわゆるお姫様抱っこという体勢。
「しっかりと掴まっていてくださいね!」
ゴールドは体格で勝る俺を軽々と持ち上げ、そして膝を折った。
「ゴォールドゥ!」
「まじかぁ!?」
俺を抱えた快傑ゴールドは跳躍する。ゴールドはたった一飛びで、戦場が遠くなるほど
高く飛び、走るよりも早くゴールドメダル号に接近する。
「待つ!わたしも行く!」
「ほわっ!?」
「ええっ!?」
ローゼズもまたジムさんとアーリィを脇に抱え跳躍を始めた。ローゼズも負けず劣らずの跳躍を見せ、抱えられているジムさんとアーリィは少し目を回していた。
しかしゴールドとローゼズはそんなのお構いなしでバーレイの構成員を踏み台にして飛び続る。そして長い首のように海へ伸びる波止場の先端から、洋上を進んでゆくゴールドメダル号へ向け、高く飛んだ。




