ChaptreⅥ:麗しき仮面騎士 ①
【VolumeⅡマスク・ザ・G―ChaptreⅥ:麗しき仮面騎士】
夜のロングネックの街は真っ赤な炎に彩られていた。綺麗な町並みは崩れ、銃声が鳴り止まない。沖合に停泊するバーレイの軍艦は砲弾を放ち、スモールバッチバーボンの火球が次々とロングネックの街を焼いてゆく。
炎の中では残った人々が逃げまどい、バーレイが略奪を繰り返していた。
「やめろぉッ!」
俺はビーンズメーカーを放つ。発射された豆の弾が構成員の銃を弾き落とす。敵が動揺した隙に再度、豆を発射し、相手の眉間を撃って意識を消失させた。
ビーンズメーカーの扱い方は既に完璧。
俺は敵の銃を落としつつ、次々と構成員を倒してゆく。
「オラオラ!」
「い、いやぁーッ!」
俺の目の前でバーレイの構成員が住民である女性の長い髪を強引に引っ張り、引きずっている。
「ッ!」
ローゼズは怒りを顕にし、思い切り飛んだ。
「ぐわっ!」
ローゼズは思い切り構成員を蹴り飛ばした。構成員の手から女性の長い髪が離れる。
「逃げるッ!」
「この女ぁッ!」
ローゼズに蹴り飛ばされた構成員はすぐさまライフルを向ける。しかし数瞬早く、ローゼズは神速の銃撃を行い、構成員を無力化する。すると更に奥に控えていた構成員がローゼズに気づき、彼女へ一斉に銃口を向けトリガーに指をかける。
「目、塞ぐですッ!」
ジムさんの叫びが聞こえた。ローゼズとバーレイの間に小袋が投げ込まれる。俺とローゼズは目を閉じると、瞼が一瞬赤く光った。
「うらららららっ!」
次いでアーリィの勇ましい声と共に、激しい連射音とバーレイの悲鳴が聞こえる。
目を開けた先には折り重なるように倒れるバーレイと奴らへガトリングを構えたアーリィの姿があった。
「先、急ぐよ!」
アーリィに首肯をした俺たちは先を急ぐ。
炎で燃え盛るロングネックにはバーレイの構成員が無数にいて、俺たちへ襲いかかってくる。しかし俺たちは奴らを倒し続け、前へと進む。
そんな中、港の方角からより大きな砲声と多様な叫び声が聞こえた。
俺たちは街の中を闊歩するバーレイを退けながら、ロングネック港の波止場へ向かった。
ロングネックの地名に由来する、長い首のように海へ突き出した波止場にはゴールドメダル号が横付けされていた。波止場の手前にある石造りの倉庫街では緑色の制服を来たバーレイと青の軍服を着た中央政府軍が激しいぶつかり合いを繰り広げていた。
バーレイはゴールドメダル号を背に何重もの横隊を組み、銃を構えている。
中央政府軍は果敢にもその横隊を崩そうと突撃を仕掛けている。が、バーレイは一斉射撃をしては隊列を入れ替える波状攻撃を仕掛けていた。
絶え間ない弾幕は中央政府軍の進行を許さない。更に左右からもバーレイの構成員が中央政府軍へ襲いかかっている。中央政府軍は満足な隊列を組めず、敵の猛攻を防ぐだけで手一杯な様子だった。
響さんたち東方の武士も参戦しているが、敵の猛攻は止まらない。
そんな中へ俺たちは飛び込んだ。すると響さんの背後へライフルを突きつけているバーレイの姿が見えた。
俺はビーンズメーカーを放ち、そいつを無力化すると響さんの背中へ付いた。
「遅れてすみません!」
「おお!ワイルド殿!お待ち申しておりましたぞ」
「状況は?」
「奴らめ、ゴールドメダル号のキーを手に入れいよいよ動き出しました。奴らはこのままゴールドメダル号でマドリッドへ侵攻する算段なようで!」
「いよいよって訳か。しかしよ……」
「響、山崎、白州やるのじゃ!妾の力を思い知るのじゃ!」
何故か戦場のど真ん中に、相変わらず神輿に乗ってしゃもじを振り回して威勢の良い掛け声をあげる竹鶴姫の姿があった。
「なんで姫さんをこんなとこへ連れてきたんだよ?危ないだろ?」
俺と響さんは襲いかかるバーレイの構成員を倒しつつ、話を続ける。
「いやはや、拙者も止めたのでござるが、姫様がいうことを聞かず……」
「あんたも大変だな」
「全くもって」
「しっかしそれならちゃんと姫さんは守らないとな!」
「仰る通りで!」
俺と響さんは同時に飛び出す。響さん刀剣が、俺のビーンズメーカーがバーレイを次々と駆逐してゆく。ローゼズ達もまた闊歩する敵を次々となぎ倒していた。
俺たちが加わったことで中央政府軍は勢いを増し、バーレイへ勇敢に立ち向かってゆく
次第にバーレイの隊列が崩れ始める。
すると奴らの間から真打が姿を表した。
栁葉刀を持った隻眼の首領アードベック、そしてタリスカー。
突然タリスカーは飛び、そして、
「ローゼズッ!会いたかったよ!」
タリスカーはローゼズの目の前にいたバーレイを切り殺し、ローゼズへ接近する。
ローゼズは辛うじてビーンズメーカーでタリスカーのナイフを受け止める。ローゼズはタリスカーを押し切り距離を置くが、奴はすぐさま迫撃を仕掛けた。俺はすかさずビーンズメーカーを放つ。タリスカーは立ち止まりナイフで俺の弾を弾く。
その隙にローゼズは神速の銃撃を行うが、タリスカーは相変わらずの規格外の速さで全ての弾を弾いた。
俺とローゼズは二人掛かりでタリスカーへ向かうが、タリスカーには一発も当たらない。
「あは?忘れた?私のこと忘れちゃった?ねぇ、ローゼズ!私だよ!」
「……ッ!?」
突然ローゼズが動きを止めた。
「バカ!」
タリスカーのナイフがローゼズを狙い、俺は咄嗟にその間に割って入った。
俺はタリスカーのナイフをビーンズメーカーで受け止める。俺とタリスカーの間に火花が散った。
「君は誰?ローゼズの何?」
俺は銃を押し込む。タリスカーは体勢を崩すが、後ろへ飛び退きながら体勢を立て直し、着地する。奴は嬉々とした表情を浮かべ、妖艶にナイフの刃を舌で舐めた。
「そっかぁ、君が今のローゼズの家族なんだねぇ。じゃあ殺してもいいかなぁ?八つ裂きにしても良いかなぁ?良いよねぇッ!?」
タリスカーは再びナイフを構えて突撃を仕掛けてくる。二本のナイフが俺とローゼズを狙う。俺とローゼズは銃でタリスカーのナイフを弾くが、奴の速度が早すぎて反撃に転じられない。タリスカーはナイフを振り回しながら狂気に満ちた笑みを浮かべる。
「あははは!あはははは!」
狂ったタリスカーの笑い声を絶え間ない剣戟が響く。
「あは!お父さん!スチルポットのみんな!殺すよ、今殺すよ!私たちを皆殺しにした赤い悪魔を今すぐ殺してあげるよぉ!」
「ハミルトン……!?」
再びローゼズの動きが止まった。タリスカーのナイフがローゼズを狙う。俺は急いでステップを踏むが、タリスカーのナイフは今まさに硬直するローゼズへ振り落とされようとしている。俺は割って入ろうとするが、間に合わない。
刹那、タリスカーのナイフが弾かれ宙を舞い、そして石づくりの舗装路へ落ちた。
ローゼズとタリスカーの間には金色のGが描かれた黒いカードが突き刺さっている。
「お待ちなさいッ!」
凛とした聞き覚えのある声がロングネックの波止場に響き渡った。そこにいる誰もが戦いを止め、周囲を見渡す。
「あそこだぁ!」
バーレイの一人が叫び、誰もが波止場にある倉庫の屋根へ視線を移す。そこには手足と胴体を、無数の金色のラインが走る黒い鎧で覆い、凛然と佇む一つの影があった。素顔を黄金のマスカレードと黒のハットで隠し、両腰に一本ずつレイピアを差した存在。
「来たな!マスク・ザ・G!」
「違いますッ!」
アードベックの言葉にGが叫んだ。Gの体が動き出す。そして、




