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ビーンズメーカー ~荒野の豆鉄砲~  作者: DSSコミカライズ配信中@シトラス=ライス
VolumeⅠゴールデンプロミス―ChapterⅤ:バラと家族と親友と
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ChapterⅤ:バラと家族と親友と ③


「真紅の薔薇よ、今度はスチルポットへ向かい、そこのジョン牧師を殺しなさい」


 いつもどおりマッカランの言葉を頭に焼き付けた、

13歳のわたしはスチルポットへ来ていた。

 スチルポットはすごく賑やかな街だと思った。

小さな街だけど、みんな元気で、明るい。

こんなところだったら目標のジョン牧師を殺す時間と場所は、

ちょっと考えなければいけないと思った。


 わたしは時々、移民を装って街に潜入して、

目標を殺していた。

 だから今回もマッカランが用意してくれた書類を提出するため、

保安官のところ訪れる。

 いつも通りすんなり書類は通り、

わたしはスチルポットの一員に加わった。


「この街のまとめ役は教会のジョン牧師です。まずは牧師に挨拶を済ませてください」


 良いチャンスだと思った。

どんなところにジョン牧師が住んでいるかわかるし、

もし大丈夫ならそこで殺してしまえば良い

わたしはスチルポットの教会へ向かった。


「こんにちは。君が新しい移民の子だね?名前は?」

「フォア・ローゼズ」

「ローゼズ、素敵な名前ですね」


 ジョン牧師はすごく優しそうな人だった。

青い瞳は綺麗に輝いていた。


――この人油断している。殺すの簡単


 わたしは担いだ袋の中から銃を取り出し、

ジョン牧師を殺す想像をする。


「あっ! 女の子だ!!」


 想像が終わって、行動に出ようとした時、

大きな声がした。

びっくりした私は振り返った。

 そこにはたぶんわたしと同じ位の歳の女の子がいた。

ジョン牧師によく似た綺麗な青い目をした女の子。

長い金色の髪がすごく綺麗だった。


「私、ハミルトン! よろしく!貴方は?」


 そういってハミルトンは笑いながら手を差し出してきた。

ハミルトンが何をしているのかわからなかった。


「どうかしたの?」

「何してる?」

「何って、握手だよ? 歓迎の!」

「あくしゅ?あくしゅ……」


よくわからなかった。

するとハミルトンはわたしの手を握ってきた。


「これが握手! 知らない?」

コクリ。

「あは! 変なの!」

「こらハミルトン! いきなり失礼じゃないか!」


ジョン牧師が怒った。


「怒られちゃった。ごめんね。これが握手。宜しくって挨拶だよ!」


 ハミルトンはわたしの手を少し強く握ってきた。

不思議と胸が暖かくなった。


「ねぇ、あなたの名前は?」

「……フォア・ローゼズ」

「じゃあフォアで良いのかな?」

「ううん。フォア・ローゼズが名前。長い名前だからみんなローゼズって呼んでる」

「あは?名前も変なの!」

「ハミルトン!」


またジョン牧師が怒った。


「お父さんうるさくてごめんね」

「気にしてない」

「良かったぁ~ローゼズが心の広い人に生まれてきてくれたことを神様に感謝しないとね」


 わたしはその日、

ジョン牧師を殺すのを諦めた。


「ハミルトン、ローゼズさんに迷惑をかけた罰です。彼女を家まで送って差し上げなさい。彼女の住まいは町外れの長屋にあります」

「わかった!」


 罰と言われた割には、

ハミルトンは嬉しそうだった。

 良くわからなかった。

そうしてわたしはハミルトンと一緒に教会を後にした。


「ねぇねぇ、ローゼズはどこから来たの?」

「……」

「ねぇ、聞いてる?」


 聞こえてはいたけど、あえて無視した。

うっかり前にいたところを喋ってしまえば、

ここに来る前にしたマッカランのお願いが、

バレてしまうかもしれないからだった。

 それに話しかけられるのが少し面倒だったのもある。

こうして暫く何も答えなきゃ、

ハミルトンはきっと諦めて黙る筈。


「じゃあ質問を変えましょう! どうしてスチルポットに来たの?」


これも答えられない。

却下。


「あーもしかしてコーンで一発儲けようとか?」

「……」

「あ、あはは……違うよね」

「……」

「あは……」


 何故かちょっと胸の辺りがムズムズした。

さっきまで横で明るく喋っていたハミルトンが苦笑いを浮かべている。

 そんな彼女の顔を見ていると、また胸の奥がザワザワした。

でもどうしたら良いか、

わからなかったわたしは黙るしかなかった。


「あ、あの、ローゼズって好きな食べものある……?」

「……豆」

「えっ!?」


ハミルトンが急に素っ頓狂な声を上げたから、

自然とわたしは彼女をみた。

ハミルトンは、驚いた顔をしていた。


「どうしてそんな顔してるの?」

「あー、いや! 何でもない! そっかぁ~! ローゼズは豆が好きなんだ! どんな食べ方が好きなの?」

「んー……煮て、辛くするの」

「へぇ! スパイシービーンズが好きなんだ! 私も一緒! お父さんの作るスパイシービーンズすごく美味しいんだ!」

「ホント?」

「うん! ホント! そうだ! 今度、うちに食べに来てよ!ねっ?」

コクリ。

「やったぁ~!」


 ハミルトンはすごく笑っていた。

まるでお日様のようなハミルトンの笑顔をみて、

わたしの胸の中がまたムズムズした。

でも、さっきのムズムズとはちょっと違って、

少し暖かい感じだった。


 すると自然とわたしの口から言葉が出るようになった。

勿論、答えられないことは黙ったけど、

でもそうじゃないことは自然と口から出た。

 その度にハミルトンは笑ったり、驚いたりしてくれた。

 そんな風に喋っていると、わたしたちは目的地の町外れの長屋に着いていた。

 スチルポットは賑やかだけど、

 ここは少し違った。

静かで、人通りも少なく、

建物も結構ボロボロだった。

それはわたしが住むことになっていた長屋も一緒だった。


「こ、ここに住むの?」

コクリ。


 わたしとハミルトンが玄関に続く階段を昇るたびに、

ボロボロ板でできた階段は軋んだ。


「ここまでで良い」


 わたしは一番右端の部屋の扉の前に立ち、ハミルトンへそういった。

 ハミルトンは何故か難しい顔をして、

その場から動かない。


「どうしたの?」


 わたしがそう声をかけると、

ハミルトンは難しい顔を止めて、

引き締まった青い目を向けてきた。


「ローゼズ、一晩待って! 絶対何とかするから!」


 そうハミルトンは力強く言うと、

長屋の床板を軋ませながら走り去った。

 なんだか良くわかんなかったわたしはそのまま部屋の中に入った。

 部屋の中は外と同じでボロボロだった。


 壁はところどころが穴だらけで、

床はすぐにでも底が抜けそうなボロ屋だったけど、気にならなかった。

 少し疲れたわたしはそのままベッドへ身を投げた。


――ここに住むのもジョン牧師を殺すまで。それに屋根とベッドがあるだけ、外で寝るよりも格段にマシ。


 布団は柔らかくていい。

ゴツゴツした土の上や、チクチクとする草の上と全然違う。

 寝て起きても背中は痛くならないし、

変な虫や生き物を警戒する必要もない。


「ふかふかきもちいい……」


 布団の気持ちよさは自然とわたしの目を閉じさせる。


―――ジョン牧師を殺すのは機会を見てからにしよう。


わたしはだんだんと眠くなり、その日はそのままベッドの上で眠った。


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