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ビーンズメーカー ~荒野の豆鉄砲~  作者: DSSコミカライズ配信中@シトラス=ライス
VolumeⅤー再臨の黒ChapterⅥ:彼女の二年間
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ChapterⅥ:彼女の二年間③


 旅立ちの日が来た。

すっかり住み慣れたジョニーさんの地下遺跡。

最初は金属ばかりで寒々しい印象を抱いていたけど、この一年ジョニーさんやフランソワさんと、辛く苦しかったけど、でも楽しい思い出がここでいっぱい出来た。

だけど今日でそれもおしまい。

あたしはあたしの目的を果たすために、ジョニーさんが作ってくれた新しい【相棒】と共に旅立つ。


 あたしの【相棒】はやっぱりコイツ、銀色の輝くあたしの新しいガトリングガンだ。

しかも砲門は二連装。

その雄々しい形にあたしは頼もしさを覚える。

新しい相棒、あたしの新しいビーンズメーカー、その名も【ツインガトリング:ヴァテッド】


あたしは一年ぶりに、保安官候補の服へ袖を通し、準備を終えた。

背中まで伸びた金色の髪をなびかせ、ヴァデッドを手に、あたしは地下遺跡から地上に続く階段を登ってゆく。


 目的地はアンダルシアン中央山系に存在する遺跡【スペサイド】

ジョニーさんの調べた情報によるとワッドはジムさんが組織した反プラチナローゼズ組織であるサント・リーに参加しているという。

そのサント・リーはついに悲願である最終作戦を発動させた。

首都奪還隊に偽装した決死隊がマドリッドへ大規模な侵攻をして敵を陽動。

その隙に少数精鋭の攻略隊がスペサイドを狙うプラチナローゼズとの決戦に挑むのがサント・リーの最終作戦の概要だ。


―――きっとワッドは攻略隊の中に入るはず。そしてプラチナローゼズの命を狙っているはず。


あたしはワッドの殺人を止めたい。

あたしが生きていることを知らせて、復讐のための殺人をやめさせたい。

その想いを胸にあたしは地下遺跡から外へ出た。


 外ではあたしと同じく旅支度を整えたジョニーさんとフランソワさんが待っていた。

でも二人共、険しい表情を浮かべている。

様子がおかしい。


「二人りとも、そんな怖い顔してどうしたんですか?」

「今分かった情報なんだけどその……サント・リーの決死隊にハーパーが参加しているらしいのよ」

「えっ……?」


決死隊とは文字通りの想定をされていると聞く。

つまりサント・リーの決死隊は、その命を持って陽動を行うつもりでいるのだ。

しかも敵の大半を引き付ける目的の隊なのだから、相応の死傷者が出るはず。


―――お姉様は妹のハーパーのことを心配してるんだ。


 フランソワお姉さまの唯一の肉親であるハーパーが死地へ趣いている。

きっとお姉さまは今すぐにでもマドリッドへ向かって、ハーパーの力になりたいと思っているはず。

でもあたしたちの目的はスペサイドへ向かうこと。

マドリッドへ向かっている間に、ワッドはプラチナローゼズを殺してしまうかもしれない。

でもその間にハーパーは決死隊の中で命を落としてしまうかもしれない。

どっちに向かうにせよリスクはある。


―――あたしはできるだけ早くスペサイドへ行きたい。でも……


この一年、あたしはフランソワお姉さまのおかげでここまでたどり着けたんだ。

あたしを強くするために、一生懸命になってくれた。

尊敬し、お世話になったフランソワお姉さま。

お姉様がいたからこそ今のあたしがある。


―――お姉様に何か恩返しがしたい!


あたしは決断した。


「まずはマドリッドへ向かいましょう!」


お姉様とジョニーさんが驚きの表情をあたしへ向けてきた。


「でも……」


お姉様は予想通り困った表情を浮かべる。


「マドリッドでハーパー達を助けてからスペサイドへ向かえば良いじゃないですか!」


あたしはお姉さまの手を取った。


「大丈夫!あたしとお姉さま、そしてジョニーさんなら間に合わせることができます!必ず!」

「アーリィ、貴方……」

「お姉さま、あたしを信じてください!」


するとお姉様はあたしの手を強く握り返してきてくれた。

お姉さまの瞳から迷いが消え去り、いつもカッコイイお姉様に戻る。


「ありがとうアーリィ……!」


その時一台のトラックがやってきて、あたしたちの前で急停車した。


「時間通りね。相変わらず正確な性格で助かったわバーンハイム?」


フランソワお姉様は運転席でハンドルを握るバーンハイムさんへそういった。


「お褒めいただき光栄でございますフランソワ様」


バーンハイムさんは前と変わらず冷静にそういう。

ついこの間聞いた話なんだけど、ジョニーさんとバーンハイムさんは来たるべきプラチナとの決戦に備えて色々と準備をしていたそうな。

なんとも侮れない二人だと思うあたしだった。


「おーい、二人共!早く乗った乗った!一旦マドリッドへ向かうんだから時間ないよ!」


既に荷台に乗ったジョニーさんが叫ぶ。


「参りましょうアーリィ!」

「はい!お姉さまっ!」


あたしはお姉さまと一緒にトラックの荷台へ乗り込む。


「バーンハイム!まずはマドリッドへ向かって!全速力で!」

「かしこまりました!」


ジョニーさんの言葉にバーンハイムさんは応答する。

バーンハイムさんの運転するトラックは爆音を響かせながら、アンダルシアンのテラロッサばかりの荒野を走り抜けてゆく。


―――ワッド、待ってて!すぐに会いにいくから!!


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