ChapterⅡ:決意。そして…… 【ジム=ビーム】③
時間は十分にも満たない。
しかし私とローヤルが馬に乗ってサント・リーから街の東側へ出ると、そこには総勢200名はくだらない荒くれ者が集合していた。
人相は悪いが、誰もが自信に満ちた表情を浮かべていて頼もしさを覚える。
彼らの後ろに広がるテラロッサの大平原。
私たちから少し離れたところには青い制服を着た中央政府の軍人達が上空に浮かびながら地表へ向け銃弾の雨を降らせている銀兵士と交戦していた。
上空から攻撃をしている銀兵に敗残兵たちは為すすべもなくやられている。
そんな絶望的な戦いの中、それでも唯一目覚しい活躍をしている三つの影があった。
遥か極東の島国で着られている和装を纏い、長い刀剣を華麗に振るって銀兵士を切り刻む三人の武士、響 九十郎、山崎 発芽、白州 麦芽。
彼らは主である竹鶴姫を守りながらも、懸命に銀兵士と交戦を繰り広げている。
だが、彼らの活躍があっても敗残兵達の戦況は厳しく、銀兵士の容赦ない銃撃にやられていた。
私は鞍に挿してあったウィンチェスター型ビーンズメーカーを抜く。
「先に行くです!」
轡を握り締め、馬に拍車をかけて私は突き進んでゆく。
「お前たち!ジム=ビームは既に俺たちの仲間だ!ジムに続けッ!」
ローヤルの号令に従って、サント・リーの荒くれ者達も威勢のいい叫びをあげながら追従してきた。
銀兵士の一部が私たちに気が付き、方向を変える
私は素早く馬上でレバーをコックし、実弾の引き金を引いた。
「消えるですッ!」
ライフルから打ち出された鉛玉は銀兵士の頭のようにみえる構造体を打ち抜き、爆発させる。
背後に気配を感じた私は馬を転身させつつ、ライフルを手の中でぐるりと回し、その遠心力で次弾を装填する。そのまま銃身を上空の銀兵士へ向け発泡。
撃ち抜かれた銀兵士が爆散する。
相手の数は圧倒的。
―――でも、ここで負けるわけにはいかないのです!
「かかってくるのです!全部私が撃ち落としてやるのです!」
私は銀兵士の銃撃を交わしつつ、迎撃を続ける。
「お前ら!ジムに負けるな!サント・リーの力を見せてやれぇい!」
「「「「「うおおおおおおっ!!!!」」」」」
するとローヤル以下、サント・リーの荒くれ者達も私に習って銃撃を始めた。
ローヤルはドラムマガジンを備えたマシンガンを空へ向けて乱射する。
銃弾は遠慮なしに銀兵士を蜂の巣にし、空中でバラバラに分解する。
彼女の部下たちもリボルバー、オートマチック、ライフル、マシンガンなど様々な銃器で一斉に発泡を始める。
圧倒的な制圧力と、不規則な銃の乱射は上空の銀兵士の隊列を乱す。
「遅れを取るなぁ!響、山崎、白州!妾達の力を思い知らせるのじゃあ!」
竹鶴姫がしゃもじを掲げて指示を送る。
その幼いが凛然とした声は戦場に響き渡り、士気を高める。
「かしこまりました姫様!どぉぉおりゃぁぁぁぁ!!」
裂帛の気合と共に東方の武士:響が飛び上がり、刀剣で銀兵士を切り裂く。
「やるよ白州!」
「かしこまりました山崎兄者!」
続いて山崎、白州も次々と銀兵士を切り刻む。
すると戦況が好転したことに敗残兵達は士気を復活させ、上空の銀兵士へ向け、銃撃を再開した。
さきほどまで猛威を奮っていた銀兵士の編隊がいとも簡単に乱されてゆく。
全ての銀兵士を殲滅するのに、それほどを時間はかからなかった。
既に負傷していた敗残兵以外はほぼ無傷。
私たちと銀兵士の初戦は、私たちの圧倒的な勝利で終わった。
「お主はジム=ビーム!妾達を助けてくれたことに礼を言うぞ!」
戦いが終わり、幼い竹鶴姫は真っ先に私へ近寄り、お礼を言ってくれた。
従者の響は「そんな高慢な物言いはよくありませんぞ、姫様!」と注意をする。
竹鶴姫は不満そうに頬を膨らませる。
彼らは相変わらずな様子で、私は少しホッとした。
―――彼らも是非、力を貸して欲しいです。
戦闘に慣れた軍人と一騎当千の武士。
これ以上の戦力はないと思った私は、まず伺いを立てるべくローヤルへ視線を飛ばす。
彼女は私の意思をしっかりと汲んでくれたのか、力強く頷き返してくれた。
「竹鶴姫、そして中央政府方々、話があるのです。是非、私たちと手を組んで貰えないですか?」
「その前にジム殿、お主の後ろに控えている無法者達は何者かお聞かせ願えないだろうか?」
すかさず響が疑問を口にした。
「彼らは私の新しい仲間なのです!」
「なんと!ジム殿それは誠か!?」
「こんな時、どうして嘘をつく必要があるですか?」
「うむむむ……」
突然、響は難しい顔をして唸り始める。やがて彼は険しい表情を私へ向け、
「申し訳ないがジム殿、先ほどの提案は却下させて頂く。我らは誉れ高き東方鎖国の武士と清廉潔白なアンダルシアン中央政府の軍人!無法者と手を組むなど、考えられぬ!」
ローヤルは響の言葉を聞いて不愉快そうに眉間へ皺を寄せた。
どうやら自分たちが卑下されたことに怒りを覚えてる様子だった。
ローヤルの唇が震え始める。
「ド阿呆!お主はこんな時に何を言っておるのじゃ!」
しかし先に怒りの言葉を口にしたのは竹鶴姫だった。
「お主はどうして妾達が無事に済んだか分かっておるのか!?ジム殿達が助けてくれたからではないのか!?」
「姫様、それは……」
「もはや妾達だけで銀兵士と戦うのは無理じゃ。ならばここは目的を一緒にするジム達と一緒に戦うのがとても良い事だとは思わぬのか!?」
「ですが、姫様!」
「ええい!この堅物め!お主のようなどド阿呆は打ち首じゃ!山崎構えよ!」
「ハハッ!」
山崎が刀剣を構え、
「白州、桶を構えるのじゃ!」
「ハハッ!」
相変わらず白州はどこからともなく桶を取り出し、響の顎へ添える。
「ひ、姫さまぁ!それだけはご勘弁をッ!!!」
割と本気で泣き叫ぶ響。
「ならば黙っておれ、この唐変木め!」
竹鶴姫が叫ぶと、響は大人しく引き下がる。
私は竹鶴姫は幼いながら君主の大きな器を持っていると感じた。
伊達に響達を率いてはいないと感心せざるを得ない。
「中央政府のみんなは妾達が説得する。妾は是非、ジム達と戦いたいと思っておるがいかがか!?」
「そんなの決まってるのです!」
私が握手を求めると、竹鶴姫はその小さな手で私の握手に応じてくれた。
ローヤルも眉間の皺を解き、私へ頷き返してくれる。
「ならまずは紹介をするのです。あそこにいるのが後ろにいる男たちをまとめる、ドン・ローヤル=リザーブ!」
ローヤルもまた握手を交わしている私たちへ手を重ねてきた。
「ローヤル=リザーブだ。共闘の快諾、感謝する」
「妾の名前は鳥居竹鶴!誉れ高き東方鎖国鳥居藩藩主の娘ぞ!」
ここに中央政府軍の残党、竹鶴姫、ローヤル達の共闘が成った。
私たちの目的をただ一つ。
【プラチナローゼズを倒し、アンダルシアンへ再び平和を取り戻す】
共闘を誓った私たちはこの日を境に、強力な軍を築き上げた。
後に私たちは共闘が成立した地に準えて【サント・リー】と呼ばれるようになった。
―――大切に思う人達のため、私はプラチナローゼズを殺すまで戦い続けるです!
私は固い決意と共に、プラチナローゼズ一派との戦争を始めたのだった。




