表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百鬼戦乱舞  作者: 朝日菜
第三章 再誕の言霊
46/331

一  『五年前の再来』

 既に陰陽師おんみょうじの正装である狩衣かりぎぬを着用していた朝日あさひは、大広間に集まることだけを告げて先に結城ゆうき家の敷居を跨いだ。

 残った朝日の式神しきがみセイリュウは、浅く頭を下げて忙しく動き回る朝日の後を追う。


結希ゆうき、式神を出現です。でないと入室許可NGです」


 血縁はないが親族であるるいの言葉に頷き、結希はジャケットの内ポケットから紙切れを取り出して構えた。


「──馳せ参じたまえ、スザク」


 小さな光が結希の手元を照らす。

 光が収まると同時に現れた結希の式神スザクは、緋色の瞳を見開いたまま結希を見上げた。


「ゆ、結希様ぁ……っ!」


 そして、ぼろぼろと大粒の涙を零した。

 結希が生まれた年に術で生み出されたスザクの身長は百五十センチ以下で、顔つきも幼い。そんなスザクは朝日と同じように結希を正面から抱き締めた。


「ふぇぇぇぇん!」


 朝日には多少の抵抗を示した結希だったが、スザクには好きなようにさせておく。

 契約で結ばれた主従関係であるからこそ、親子関係よりも手に取るように感情が伝わってきた。そして、何よりも、実母よりも多くの時間を過ごした絆が結希とスザクの間にはあった。


「結希。スザクは何故泣くのです?」


 スザクのピンク色の髪を撫でる結希を見て、不思議そうに涙は首を傾げた。


「うぅっ?! こっ、これは嬉し泣きでございます、涙様! あの結希様が、五年ぶりに定例会に足を運ぶなんて……っ、もう一生訪れることはないだろうと思っておりましたから……!」


 引っ込みかけた涙は、再びスザクの頬を伝った。

 六年前に百鬼夜行が起こって一年後。つまり五年前、結希は朝日に連れられて定例会へと足を運んだ。その場には百人にも満たない数の陰陽師が顔を並べており、十一歳にして百鬼夜行を終焉へと導いた結希に対して、喝采ではないものを浴びせたのだった。


「今年は町外に妖怪が出現して、町内では結界破りが多発してる異例の年だ。さすがにもう逃げられないだろ」


「…………おっしゃる通りでございますね。あまり快いきっかけではございませんが、結希様がいらっしゃらないと何も始まりません。あの方々はそれをおわかりになられていないのです……っ!」


 スザクは憤慨して、結希の服の裾を掴んだ。


「ささ、急いで狩衣にお着替えいたしましょう! 今年こそ結希様がこの町のヒーローであることをあの方々に知らしめるのです!」


「うわっ?!」


 走るスザクに引きずられて、結希は結城家の敷居を跨ぐ。歩きながら二人についていく涙は、遠ざかる背中を眺めて薄花色の目を閉じた。


「……本当は皆、胸中では理解です」


 常人よりも聴力に優れた二人は、涙の呟きで振り返った。だが、涙は二人の顔を見つめて微笑んだだけでその場で足を止めてしまう。


「疲労です。俺は大広間にて待機です」


 涙は二人に背中を向けた。それを視認したスザクは、遠慮なく速度を上げて結希を走らせる。


「スザク、ちょ、ちょっと待て!」


「待ちません! だって、今日はこんなにも素晴らしい日なのですから!」


 二人が通り過ぎる度、木製の廊下がギシギシと音をたてた。振り向いたスザクは輝くような笑顔を咲かせ、果てしなく続く結城家の廊下を器用にぴょんぴょんと飛び跳ねる。


「スザク……っ!」


 本来ならば主の命令に逆らえない式神だが、結希の実力が未熟な部分もあってスザクは結希を無視した。そして、長く長く走った先にある一室の襖を開け放った。


「着きましたぁ〜!」


 乱れた息を整えて、結希は顔を上げた。

 普通の家ならばリビングほどの広さを誇る、十六畳の薄暗い部屋。家具や道順から考えても、ここが昔自分にあてがわれた部屋だと気づく。


 スザクは瞬時に結希の狩衣を手元に出現させ、無造作に広げた。結希を急かすようにぴょんぴょんと跳ねると、ほんの少し埃が舞う。


「いつもみたいに一人で着替えるから、スザクは出てろ」


「ふぇっ? ですが、急いでいるのですよっ? お手伝いをして早く終わらせた方がいいに決まっております!」


「ヒーローは遅れてくるものだろ?」


 いくら式神とは言え、昔みたいにスザクに手伝われながら着替えるのはさすがに抵抗があった。

 同い年であってもなくても何もかもが幼い少女──スザクに、着替えさせられる絵面を想像して結希は身を震わせる。


「ヒーローは……遅れて登場……! かっこいいです! それでこそ私の結希様です! では、私はお外で待機しておりますので終わったらお声かけをお願いいたしますっ!」


 スザクに一番効くであろう説得の言葉は、結希が思っていた以上にスザクを素直に従わせていた。素早く外に出たスザクは襖を閉め、呑気に鼻歌を歌っている。

 結希は長い息を吐いて、スザクが落としていった狩衣に手を伸ばした。ハンガーにかけて皺を伸ばした後、着ていた服を脱ぐ。


 全身鏡なんてものはないが、素肌を晒せば嫌でも腕や腹部の刀傷が視界に入った。背中だけは見えないが火傷の花も咲いているのだろう。

 そっと塞がれた傷口に触れると、廊下から乱暴な足音が二人分近づいてくるのが聞こえてきた。


『お、おやめくださいませ! 紅葉くれは様!』


 瞬間、スザクの焦った声が廊下に響いた。


『ビャッコ! 貴方は何故止めないのですか!』


『俺も止めてるよ、スザク! けどそんなんで紅葉が止まるわけ……ぴぎゃあ?!』


『あぁっ、ビャッコ!?』


『ちょっとお。邪魔だって言ってるでしょ、ビャッコ。スザクもにぃの式神だからって調子に乗らないでよねぇ?』


 聞こえてきた猫なで声に身の危険を感じ、慌てて狩衣を羽織る。すると、予想通り躊躇なく襖が開かれた。


「みぃ〜つけた」


 見る者すべてを魅了するかのような艶やかな笑みを浮かべ、自身の式神を押し倒した結希の従妹──結城紅葉。

 従兄の涙と同色の桑茶色のボブヘアーと、それを彩る真紅のピン留め。そして右耳に咲く真紅のピアス。百六十センチに満たない身長の紅葉は、今日という日にも関わらず陽陰おういん学園中等部の制服に身を包んでいた。


「く、紅葉! まだ開けるな!」


 紅葉に背を向けて羽織った狩衣を慌てて着つける結希に、紅葉はむぅと頬を膨らました。


「ざぁんね〜ん……。にぃ、もう着ちゃってるじゃん。だからあれだけ邪魔するなって言ったのに、どうしてくぅとにぃっていっつもタイミングが合わないのかなぁ?」


 じろっとビャッコを睨む紅葉は、まだ中学三年生の子供だ。それでも、パステルピンク色のカラーコンタクトや化粧が紅葉を大人っぽく見せていた。

 ブレザーは高等部と同じだが、緋色のラインが入った白を基調としたスカートを紅葉は揺らす。そして部屋に侵入して初めて年相応に笑った。


「ずっと会いたかったよ、にぃっ。四月になってから百妖ひゃくおうの連中ににぃを盗られて、くぅ、あいつらを殺したいほど憎くて憎くてしょうがなかったんだよ?」


 褒めて褒めてと今にも言いそうな紅葉は、結希に駆け寄って背中側から抱きしめた。

 今日一日で一体何回身内に抱き締められなきゃいけないんだと辟易した途端、不自然に紅葉が離れる。


「姫様、いけません」


 感情を殺した声に、紅葉は再びむぅと頬を膨らました。


火影ほかげ、あんたもくぅの邪魔をする気?」


 棘を含む声にも動揺せず、紅葉は自分を引き剥がした同い年の火影を睨んだ。着つける手元を動かしながら、結希はできるだけ首を振り向かせて紅葉より一センチほど背の高い火影を見下ろす。


 セミロングの黒髪に、左耳には紅葉と色違いで瞳と同じ色の紫のピアス。目のくまが目立つが清潔感のある凛とした少女は、制服ではなく紫の着物に身を包んでいた。


 少女のフルネームは、百妖火影。


 陽陰町に二つある、結希が家族として同居している百妖家の分家の一人娘。そして、どういう経緯でそうなったのかは知らないが、紅葉の専属の付き人として結希とは六年前からの知り合いだった。


「大広間で、千秋せんしゅう様と朝羽あさは様、並びに多数の陰陽師様がお待ちです。姫様は陰陽師の姫様としてのお務めを果たしてください」


「嫌だよ。お父さんやお母さんはともかく、どうしてくぅがあんなゴミどもを相手にしなきゃいけないわけ?」


「姫様、お言葉が……」


「紅葉! そういう言葉は使っちゃダメって、俺何度も言ってるでしょ?!」


 火影を押し退けて、腰に手を当てたビャッコは頬を膨らました。その仕草は紅葉そのものだが、敬意のない口調から紅葉の実力が見て取れる。


「あ〜もうっ! どいつもこいつもマジでうるさいなぁ? やっぱり、くぅの味方は六年前からずうっとずうっとにぃだけだよ。にぃだぁ〜い好き!」


 再び抱きつこうとした紅葉の額に手を置き、結希は紅葉と正面から向き合う。紅葉の注意が逸れていた隙に狩衣を着た結希は、桑茶色の頭を撫でた。


「早く行くぞ、紅葉」


「むぅ〜……、やっぱりにぃは行くの? じゃあくぅも行くっ!」


 紅葉は結希の左腕に腕を絡ませた。

 ほっと息を吐いたのはビャッコだけで、火影は複雑そうな表情で紅葉を見つめる。スザクは頬を綻ばせて、結希の右隣に駆けつけた。


結希様ヒーロー紅葉ひめ様は遅れて登場、でございますねっ!」


「スザク、あんたはにぃの式神だから仕方なぁ〜く傍にいることを許してるんだからね? 調子に乗ったらお札で封じちゃうから」


「ビャッコはできても他人の式神は封じれないからやめておけ、紅葉」


 先月の町役場での戦闘で学んだ教訓を紅葉に伝えると、紅葉は唇を尖らせた。


「えぇ〜、何それ! にぃの言うことだから疑ってないけど……それって使えないってことじゃん!」


「……素質だけはあるんだから、ちゃんとした使い方をしろよ」


 自室から大広間までは一直線で、それが廊下の長さを物語っていた。

 百妖家に預けられた時から泊まりにさえも来なくなったが、普段ここで暮らしている紅葉や火影、涙は相当体力を削られるのだろうなと乾いた笑みを浮かべる。


「先導いたします、姫様」


 一行の最後尾で複雑さを拗らせたかのような形相をしていた火影は、紅葉と結希の間を割ろうとして止め、迂回して先頭に立った。


「火影は大広間に入室することができません。ですので姫様、くれぐれも言動にはご注意を」


「いちいち言わなくてもわかってるし。うっざ」


「紅葉!」


 ビャッコが紅葉を窘めるが、外部から〝姫様〟と呼ばれ崇められながら育った紅葉は聞き入れなきった。

 そうしている内に、視覚的に長いだけであって案外早く大広間へと続く大量の襖が見えた。


間宮まみや家のご子息、百妖結希様と結城家のご息女、結城紅葉様のご到着です」


 旅館の女将のように膝をつき、火影は一部の襖を開ける。

 頭を深々と下げる火影を視認し、紅葉は結希を引き入れた。スザクとビャッコが中に入ると、火影は音もなく襖を閉める。


『あの男、姫様にベタベタベタベタベタベタベタベタと触らせるなんて許せない許せない許せないぃ……!』


 思わず漏れたかのような声と爪で床を引っ掻くような音だけが直後に聞こえたが、結希はなるべく聞こえないフリをした。


 真後ろの狂気よりも、真正面の狂気が結希を射る。


 電気はついておらず、襖をすべて閉めた大広間は自室よりも暗い。下座にいる結希と紅葉の真正面、上座の頂点に座る結城千秋と妻の朝羽の表情は読めなかった。


 親子と甥の間には、百人以下の陰陽師と式神が二列となりそれぞれ向かい合って座布団に座っている。彼らが、紅葉が必死に抱き寄せている結希を光のない瞳で見つめていた。


「結希くん。こっちよ」


 その中で灯る優しげな声色を出したのは、朝日だった。朝日は手招きをして上座に結希を呼び寄せる。朝日の斜め後ろでは、セイリュウが周囲を威圧するような瞳で座っていた。


「……遅かったではないか」


 結希が朝日の隣に、紅葉が千秋の隣に座った瞬間に口を開いたのは小さな老人だった。


「今年も尻尾を巻いて逃げたのではないかと思っていたぞ」


 また別の老人の言葉に、主に周囲の老人が失笑する。

 結希が下座に視線を向けると、半数以上を老人が占めていることに初めて気がついた。中年と思われる陰陽師はごく僅かで、若者は二十代から十代に集中している。


「お主は間宮と芦屋あしやの人間じゃ。陰陽師の歴史上二つとしかない〝裏切り者〟の一族の血を両方引いておるお主は、無理に来んでも良かったんじゃぞ?」


「芦屋は関係ありません」


 怒気を孕んだのは、朝日だった。


「間宮の件も、私たちには関係のないことです」


 状況の理解に遅れていた結希は朝日に視線を移す。朝日は無表情だった。それがますますセイリュウを威圧させている。

 真後ろに待機していたスザクは、結希とは違い眉間に深い皺を寄せていた。


「関係ない、と? それでは辻褄が合わぬのだよ。関係ないのなら何故、齢十一歳にして百鬼夜行を止めることができたのだ」


 ただ、この感覚は覚えていた。

 これは五年前の再来だ。結希が拒絶したあの日を繰り返している。


「──!」


 唇を噛み締めて吐き気を押し込んだが、感情は押し殺しきれなかった。


「そうじゃそうじゃ。おかしな話じゃ」


 老陰陽師たちは口を揃えてそう言った。中年の陰陽師たちは固く口を閉ざし、若き陰陽師は戸惑いを浮かべている者が多い。

 静寂に包まれていた大広間がざわつき始め、紅葉が耐えきれず口を開くと──


「やめいやめい」


 ──呑気な声が紅葉の隣から聞こえた。


「一つ、会はまだ始まっておらぬ。二つ、逃げざるを得なくさせたのは我々だということを忘れるな。三つ、それは我が妻と旧友に対する侮辱ととるぞ?」


 ただ、表情は呑気とかけ離れていた。


「せ、千秋様……!」


 殿様のように他の陰陽師よりも一段上に構える千秋は、全体を見回す。自分よりも年をとった人々を黙らせた陰陽師の王は、満足そうに頷いた。


「……意地悪な人。でも、すっきりしたわ」


 隣の朝羽はくすくすと笑いながら、千秋越しに紅葉に視線を送った。紅葉は頬を膨らまして、不服そうにそっぽを向く。結希は密かに息を吐き、朝日は姉の朝羽に笑いかけた。

 紅葉と朝羽の斜め後ろに座るビャッコとゲンブは、恐る恐るセイリュウとスザクに視線を移す。怒らせると普段から乱暴なゲンブよりも恐ろしくなる二人は、何食わぬ顔で自体の収束を見守っていた。


「では、始めようぞ。末森すえもりくんと本庄ほんじょうくんは遅れて来るらしいしの」


「えぇ。涙、報告をお願い」


 朝羽は、上座に座っていた甥の涙に声をかけた。


「四月と五月に起こった件は、話す必要性を感じないので省略です。俺が話すのは、五月に結希が報告した裏切り者の陰陽師──マギクについてです」


「ふんっ、それは芦屋の隠し子ではないのか?」


「あんた、黙って聞くこともできないのかい? 涙と結希に失礼だよ」


 野次を飛ばした老人を非難したのは、三十代前半の──この中では若い部類に入る女性だった。腕を組んで、他に野次を飛ばそうとする者がいるのなら、すぐにでも責める。そういう表情をしている。


京子きょうこ、感謝です。町長権限を駆使して陽陰町の戸籍を調査ですが、結論から言うとマギクという名の人間はこの町に存在しませんでした」


「感謝はいらないよ。偽名なんだろうね、マギクってのは」


「結希の証言から、マギクの特徴と一致する陰陽師の有無も調査ですが、この中にマギクと思われる人物も存在しませんでした」


「未登録とは厄介だね。この中に子を産める陰陽師はいるけれど、マギクの見た目年齢を考えると親の世代は……」


 京子は口を閉ざした。マギクを実際に目にした結希も、薄々気づいていたその答えは。


「いません。その世代は皆、六年前に最初に犠牲となった世代です。生き残ったのは、伯父のように化け物じみた強さを持つ者だけです」


「やめいやめい。我は化け物ではなく戦わせた側の人間。そのマギクとやらは、六年前の百鬼夜行で行方不明となり、死亡届けを出された子供だろうな……」


「千秋様、涙様。お考えを改めてくださいまし。裏切り者が嘘をついている可能性を考えていきましょうぞ」


 老人の言葉で、全員の視線が集中するのを肌で感じた。

 逃げ出したくなる衝動を殺して、結希は堂々と受け止める。ここでまた逃げたら、今の今まで感情を殺しながら逃げていた自分が消えてしまう。


「くどいぞ」


 千秋が顔を顰めたが、それでも老陰陽師たちの勝手な推測と野次は止まらなかった。


「あんたら、いい加減にしな!」


「静粛を要求です」


 京子と涙が場を収めようとするも、それらは犠牲者が一番多く出た中年の陰陽師にまで広がっていった。ついには、親を失い祖父母世代の老陰陽師と暮らす若き陰陽師も口を揃え出す。


 終わりが見えない。


 結希は口を開こうとするが、この状況では自分が何を言っても無駄になるような気がしてやめた。

 記憶を失い、たった一度の非難の嵐に傷つき逃げてしまったせいで、自分が何故裏切り者と呼ばれているのかもわからない。


 朝日は何も教えてくれなかった。結城家は何も話さなかった。


「──チッ、ありもしねぇこと言ってんじゃんねぇよ。老害は黙ってろ」


 大声ではなかったが、静寂が下座から上座に伝い流れる。いつの間にか開かれた襖からは光が漏れ出ており、見るとそこには逆光を背負った三人の人間が立っていた。


「末森琴良ことら様、本庄琉帆りゅうほ様。──そして、綿之瀬乾わたのせいぬい様のご到着です」


 聞き取りやすい火影の声に、先ほどとは別の意味で場がざわめいた。


「綿之瀬……?! 《十八名家じゅうはちめいか》がなんの用でこの場に!」


「何度も言わせんじゃねぇ。黙れ、さもないと殺すぞ」


 乾という女性の手に握られた投げナイフが、逆光に照らされて怪しく光った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ