二十 『高尚で潔白な希望の花』
「引きずり出すわよ!」
真菊の願いに異論はなかった。雅臣が死ねば、朝日の居場所は永遠にわからなくなる。
唯一の手がかりが雅臣だった。ずっと妹の身を案じている朝羽を救うことができるのは、雅臣が持つ情報と無傷の朝日なのだ。必ず、あの場所から引きずり出さなければならない。
雅臣の命が終わらない、その限界を見定めて。
「モモ。どの辺にいるんだよ」
紫苑は、他の芦屋義兄弟とは違い少し怒っているように見えた。モモはそんな紫苑に気づいていないらしく、ずっとしゃくり上げている。
「……兄さん、美歩」
モモは戦えない。そう判断した紫苑が次に助けを求めたのは、芦屋家の血を継ぐ自分たちで。
「……樒御前は、多分父さんに気づいてない」
結希はゆっくりと息を吐いた。紫苑に気づかないモモのように、樒御前は他に気を取られてちっぽけな陰陽師に気づかなかった。
それでいい、のだろう。雅臣という異物に気づいて外に放り投げられるよりも、気づかれずに取り込まれていた方が自分たちの勝利に繋がる。
「……父さんに関する声が聞こえてこないから、あたしらじゃどうすることもできない。だから、モモ。もう泣くな」
美歩がモモの両肩を掴み、モモが相手にしては少しだけ乱暴な揺さぶり方をする。
「ッ!」
モモは美歩を空色の瞳の中に入れたが、しゃっくりが止まることはなかった。
「モモ。お願い。助けて」
九歳になったばかりの少女にかける言葉にしては残酷だ。十歳にも満たない少女の双肩に、あまりにも重い責任がのしかかっていく。
「──父さんを救えるのはモモだけなんだから」
あまりにも重い、義兄弟たちの想いがのしかかっていく。
「モモ! 大丈夫だよ! ここには僕もに〜ちゃんたちもね〜ちゃんたちもいるもん! みんないるもん! だからちょっとだけ頑張って! 僕はモモのこと信じるよ! だって僕モモのに〜ちゃんだもん!」
その想いを少しでも軽くするように多翼が笑った。大粒の涙の跡を隠さない多翼は、大きく腕を広げて芦屋義兄弟たちだけではなく結希や亜紅里を含んだ百妖義姉妹たちを差す。
多翼がそんな風に笑えるくらい、この場には陽陰町が誇る守護者たちが揃っている。陽陰町を脅かした破壊者たちも揃っている。
「お傍に」
告げて跪いたのは、ずっとモモの傍にいたエンマだった。エンマと共に来ていたカグラ、ツクモ、タマモ、義彦、カグツチは間宮家の式神たちに加勢しており、彼女だけが言葉通りモモの傍に居続けていた。
モモは真っ黒なエンマを一瞥し、唇を結んで自分の周りにいる人々を確かめるように見つめていく。
「守るよ!」
一反木綿の端の方から声がかかった。微笑んでモモを見守る心春、そんな彼女を右側から支えている月夜からだ。
「絶対に誰も傷つけさせないから!」
「ささも! すっごく頑張るから!」
心春を左側から支えている幸茶羽の真剣な表情は、今までで一度も見たことがない。
「だから頑張って! モモ!」
だが、そうだ。幸茶羽にとってモモという少女は、この世界にたった一人だけしかいない──生まれて初めての可愛い義妹だ。義姉から貰ったものをすべて返す、そんな覚悟を決めている双子の想いはモモの双肩ではなく心を包む。
「……がんば、る」
振り絞って出てきた声は震えていた。それでもモモは、樒御前を睨むように見据える。それだけで何がわかるのかは、同じ陰陽師である結希たちにはわからない。
芦屋家が妖怪の声を〝聞く力〟を持っているとするならば、土御門家は瘴気を〝見る力〟を持っているのだろうか。
千年前ならば何かわかったかもしれないが、千年経った今となっては何もわからない。
結希は傍にいる亜紅里へと視線を移し、その亜紅里が既に加勢していることに気づく。亜紅里や明日菜がいれば、過去を。少しでもそう思ったが、絶対に必要な情報ではない。結希は視線をモモに戻し、義姉妹たちへと移し、樒御前を少しずつ押していく姿を目に焼きつけた。
「……みぎ、か、た」
モモの声。右肩? 右肩と言ったのか?
「右肩!」
真菊が身を乗り出す。その肩を掴んで春が引き戻す。
「姉さん待って! 落ちる!」
「馬鹿過ぎるだろクソババァ」
慌てる春と呆れる紫苑が真菊の一つ下の兄弟で良かった。長子でしっかりしているように見えて、真菊は誰よりも冷静ではないのだ。
「鈴歌さん!」
百妖義姉妹には一切頼らないように思えた真菊が懇願した相手は鈴歌だったが、鈴歌は今でも険しそうな表情を見せている。樒御前に接近するリスクを考えているのだろう、鈴歌自身も、乗せている他の義姉妹たちも、倒れてはならない百妖義姉妹の切り札なのだから。
「タマ太郎、頼む」
結希の声を聞いてタマ太郎が鳴く。
芦屋義兄弟たちを連れてきたタマ太郎はずっと暇そうに上空を旋回しており、結希が呼んだ瞬間に嬉しそうに下りてくる。
「……あ」
真菊が腑抜けた声を漏らした。タマ太郎の顎を撫でる結希を見つめ、そっぽを向き、次々と前簾を上げて乗り込んでいく義兄弟たちに慌てて続く。
「よし」
全員乗ったことを確認した結希は、迷った。自分も行くべきなのだろうか──と、迷っている暇はないのに考えてしまう。
「援護なら、ぼくが」
心春は自身の胸に手を当てた。その手は微かに震えている。それは、恐怖ではなく肉体の限界が近いことを表していた。
傷ついた土地となった陽陰町には精霊がいない。心春の今の力の源は《言霊の巫女》としての素の力のみで、限界を悟った月夜と幸茶羽が力を使えば戦力外になるという危ない橋を渡っている。
「心春。俺たちは陰陽師だ」
戦力外となれば心春の苦しみは終わるだろう。だが、結希は、心春の力をこんなところで使ってはならないとも感じていた。
「……うん。わかった、お兄ちゃん」
心春の双眸が切なそうに揺れる。月夜と幸茶羽は不安そうな表情を見せているが、口には出さない。
「死んだら殺す」
口に出したのは、心春以上に義姉妹たちを見守ることしかできなかった愛果だった。愛果の言葉はいつだって乱暴だが、愛果以上に義姉妹たちのことをきちんと考えて発言できる者はいない。愛果の乱暴な言動は、誰かを守ろうとするが故に出てきてしまうものだった。
「約束」
呟くように愛果が言った。
「わかってる」
指と指が絡まるほどに近い距離ではなかったが、心と心は通じ合っている。愛果は消えそうな笑みを浮かべ、膝の上で眠る歌七星の髪を梳いた。
行こうと本気で思ったわけではないが、義姉妹たちは結希を送り出そうとしている。結希は意を決し、物見から「早くしろ」と告げた紫苑と視線を交わした。
「あぁ」
告げた瞬間妖怪の気配を感じる。全員が身構えて餓者髑髏を利用しながら上ってきた妖怪を視認し──力が抜けるのを堪えた。
「ママ!」
亜紅里が京都に行った瞬間から姿を見せなくなったママは、『メイワクダ』と真下へと視線を移す。多分、式神たちの妖怪狩りに巻き込まれかけたのだろう。ここが安全地帯だと判断して上ってきたようだが、樒御前と戦う亜紅里の援護をするつもりでもあったようだ。
『ノレ』
会話を聞いていたらしい。結希が跨りやすいように関節を曲げたママは、『オイラノ』と怒るタマ太郎に向かって鼻を鳴らす。
『ソノナカカラタタカエルカ』
『タタカエルカ! タタカエルカ!』
ママに同意してママの毛の中から出てきたのは、結希も見たことのない妖怪──いや、御先狐のポチ子だ。二尾の尾を持つポチ子はぬいぐるみのようで、『タタカエルカ!』を連呼しながらタマ太郎の屋形車の中に入っていく。
「タマ太郎、みんなを頼んだ」
ママに跨った結希をタマ太郎は不満そうな目で見ていたが、結希の言うことならばなんでも聞く火車だ。頷いて空を飛び、ママも一反木綿から離れる準備をする。
「足場に使うなら、使ってもいいわよぉ」
あともう少しで完全体となる餓者髑髏を生み出している真璃絵が告げた。
「さっきのはなかったことにしてあげるわぁ」
最高傑作とも言える餓者髑髏を完成する前に踏み台にされ、さすがの真璃絵も怒っているようだ。いつものように笑っているが心の中では何を考えているのかわからない。
「あ、ありがとうございます」
後でママの代わりに謝ろう。結希は決意し、立ち上がるママと共に餓者髑髏の背骨に乗る。四つん這いになっている餓者髑髏に足りない部分は膝から下すべてで、それ以外の部分は既に動かせるらしく──樒御前の肩まで餓者髑髏の手が伸びる。そんな中、真下から冷気が襲ってきた。
「──ッ?!」
攻撃されたのではない。麻露だ。ヒナギクと共に樒御前の足元を凍らせたらしく、これで、樒御前は後退することもできなくなる。
その巨大な氷の塊を溶かすことができる依檻は、ヒナギクを背負ってヒナギクの力で滞空し、樒御前の胸元へと両腕を伸ばしていた。まるで、胸元を撃つかのような。それができるほどの火力が、ヒナギクと共にいれば──出せる。
「今ッ!」
熾夏が叫んだ。ママが餓者髑髏を踏み台にする前から頭蓋骨にいた彼女は、多分、千里眼を使っている。隣に立つ亜紅里と共に幻術で樒御前を翻弄しているのか、退避する朱亜や和夏や椿や火影や千里には一切拳が当たらない。
その一撃に、すべてを懸けているようだった。
アリア、乾、アイラ、真、星乃にも。
熾夏、朱亜、和夏、椿、亜紅里、火影にも、樒御前を倒せるほどの派手な攻撃方法はない。
現状でそれができるのは、長女の麻露と、次女の依檻と──三女の真璃絵のみ。
三人の準備が整うまで粘った彼女たちは餓者髑髏からも退避して、一反木綿を操る鈴歌は彼女たちを迎え入れる。
大技で相手を倒す麻露、依檻、真璃絵、歌七星と、索敵に長けた鈴歌、熾夏、朱亜と、体術で相手を倒す和夏、愛果、椿と、援護に長けた心春、月夜、幸茶羽。そのすべてに長けた火影、亜紅里、千里と、彼女たちを統べるヒナギク。一人でも欠けていたらここまで来ることはなかっただろう。
依檻がじっと結希を見つめた。放っていいのか──そう問うているようで、結希は何度も何度も頷いて見せる。
そして、ヒナギクも結希を見つめていることに気づく。麻露と依檻と真璃絵の技に連続で力を貸しても彼女自身に疲労の色は見えない。ヒナギクが彼女たちの力を足したのか力を引き出したのかはわからないが、ヒナギクが無事ならばなんでも良かった。
ヒナギクが依檻に囁く。依檻が大きく息を吸い込む。吐くように出した炎の銃弾は依檻の狙い通り樒御前の胸元に当たり、樒御前の背後に炎が抜けていく。
「開いた……ッ!」
瘴気も。肉体も。骨さえも燃やして。願いは叶って、傷口は焼けて、修復できないことを確認する。
樒御前は倒れない。倒れないように麻露が大地に固定した樒御前は、どこを見ているのだろう。タマ太郎から数秒ほど遅れて樒御前の肩付近に辿り着いた結希は、山と山の隙間から町役場を視認して一瞬固まる。だが、真菊の声で我に返った。
「父さんッ!」
いるのだろうか。結希の目には何も見えない。ただの瘴気があるだけだ。だが、今すぐに引きずり出さないと真璃絵の攻撃が来てしまう。そうなってからではもう遅い。
餓者髑髏の指先までしか進めない結希は、タマ太郎の背中に飛び移って雅臣を探す真菊に託す。
結希よりも、強い意思を持っている真菊が探す方が雅臣が見つかる確率は高いだろう。そう思った。
「モモ! 本当にこっちなの?! 左じゃなくて?!」
「右であってるってよ!」
モモの代わりに紫苑の声が聞こえる。
「じゃあどこなの?! もう時間がないの! 教えて!」
確かに、結希や真菊、美歩よりも、モモの方がわかるのかもしれない。前簾を上げて姿を見せたモモは、その視線をまったく動かさない。
あまりにも前方に立ち過ぎたのだろう。不安に思ったのか、春がモモの右手首を掴む。それを真似するようにポチ子がモモの足の上に乗る。
「モモッ!」
真菊が叫んだ。結希とママが乗る餓者髑髏が大きく揺れ、時が来たことを全員が悟る。結希も、ママと共にタマ太郎に飛び移らなければ危ないかもしれない。真璃絵は結希の安全が確認できない限り動かないだろうが、樒御前を倒せる絶好の機会を逃すわけにはいかないのだから。
瞬間、モモの体が大きく動いた。心配する春の腕を振り払い、真っ逆さまに落ちていったのだ。
「──あ」
ポチ子も落ちていく。ママが跳躍しようと深く腰を落とすが、その後のことを考えると一瞬では飛び出せないようだった。
「モモッ!」
元々肩の付近にいたタマ太郎から落ちたのだ。すぐに瘴気に飲み込まれた彼女には、誰の手も届かない。
「……うそ、だろ」
最悪の事態を考えるのはまだ早いのかもしれないが、モモには紅葉の札がない。瘴気の中に入るということは、陰陽師にとって水の中に入ることと同じだ。呼吸ができず苦しい思いをしながら落ちていることは容易に想像できる。
「モモッ!」
真菊はこの瞬間も馬鹿だ。大切な義妹を守ろうと身を投げて、タマ太郎に咥えられる。
「離して!」
タマ太郎には後で礼を言わなければ。だが、モモは──。
唇を噛み締める結希の傍に誰かが下り立つ。咄嗟に顔を上げた結希を見つめていたのは紅蓮の瞳で、その左脇には一回り大きくなったポチ子がいる。
「ヒナギ、ク……!」
右脇に抱えていたのはモモだった。結希はモモに駆け寄り、背中に貼られた紅葉の札を気合いで剥がしてモモに貼り直す。早く火影と合流して、新しい札を貰わなければ。
「ありがとう……!」
すぐには言えなかった礼を言う。モモが落ちたことに気づき、瞬間移動で瘴気の中に入り、モモとポチ子の手を掴んだであろうヒナギクには感謝してもし切れない恩がある。
「……いや」
だが、ヒナギクの表情は曇っていた。
「話は後だ。離れるぞ」
そうだ。今は話している場合ではない。モモとポチ子の無事を知ったタマ太郎とママが樒御前と餓者髑髏から離れる。
一反木綿に戻る頃には餓者髑髏は完全に覚醒しており、餓者髑髏を操る真璃絵は、全身に玉の汗を流していた。
全員が固唾を飲んでいる。そして、餓者髑髏に万一のことがあれば戦えるように気を張りつめる。
「──潰せ」
餓者髑髏が四つん這いであることには変わりない。肩まで伸ばしていた手を振り上げ、真上から潰すように、餓者髑髏の手が下ろされる。
樒御前は柔ではない。だが、瘴気を切り裂き腐った体に下ろされる骨は、簡単には折れない。
「……あの中に、芦屋雅臣がいた」
そんな中でヒナギクが言葉を漏らす。モモを抱き締め泣いていた真菊も、春も、紫苑も、美歩も、多翼も、聞き逃しはしなかった。
「……だが、鬼の肉体とほとんど同化していて、連れ出すことができなかった」
ヒナギクは結希に謝っているのだ。
「……その、すまな」
「ヒナギクが謝ることなんて何一つない」
その反応は、ヒナギクが予想していたものと同じようで少しだけ異なっていた。
ヒナギクは結希の怒りの理由を知らない。だが、結希は全員を危険な目に遭わせた雅臣のことを許せなくなっていた。
「本当に、ありがとう」
潰れていく樒御前を大切な家族と眺めながら、自分は何をしたのだろうと思う。ヒナギクは視線を落とし、結希の礼を拒んだ。
「モモは、私が引き剥がすまで芦屋雅臣のことを離そうとしなかった。……たいした女だよ、あの子は」
救えなかったことを謝りながら、モモのことを認める。結希は、最後の言葉がヒナギクの口から出ただけでも幸せだった。
「ありがとう」
もう一度告げる。初めて会ったあの時からでは想像することができないほどに萎れるヒナギクに少しでも元気になってほしくて、「ありがとう」ともう一度告げる。
「わ、わかった、もういい」
その熱を受け止め切れないのだろう。結希を避けようとするヒナギクを追いかけ、何度でも「ありがとう」と告げる。
「いつまで言うんだ……!」
「ヒナギクがわかってくれたら一回止める」
本当はもっと言いたいが、恥ずかしそうにしているヒナギクから嫌われたくない。ヒナギクは「わかったから」と口元を隠し、「こっちを見るな」と樒御前の方を指差した。
霧散する瘴気と瓦解する餓者髑髏を確認し、火影に札を貰ったモモを含む芦屋義兄弟たちを呼ぶ。
「次は俺たちの番だ」
最初にヒナギクが告げた通り、弱り切った樒御前を人工半妖の五人が誘導している気配がある。
紅葉の札の効果が消え、麻露の氷も溶けたのだ。動き出した樒御前が目指す場所は変わらず町役場であり、その先に、罠がある。
「町役場に行ってくれ。千秋さんのことを助けてほしい」
「おい、兄さんはどうすんだよ」
「ヒナギクと一緒にアリアさんたちに合流する」
「なんで」
紫苑が疑問に思うのは当然かもしれない。だが。
「ティアナさんと約束したんだ」
すべての半妖が力を合わせて力を削ったのだ。弱った樒御前とはいえ、五人だけに任せるわけにはいかない。
「アタシも行く」
名乗り出たのは椿だ。椿の真っ赤な双眸に、結希が映る。結希が知っている椿の面影はどこにもない。
「私も」
熾夏と和夏、そしてそれは亜紅里と火影と千里もだった。しばらく動けそうにないのは麻露と依檻と真璃絵の三人のようで、歌七星と愛果と心春を運ぶ鈴歌も、麻露と依檻と真璃絵を治療する月夜と幸茶羽も、これからはついて来れない。
「わかった」
頷き、芦屋義兄弟たちをタマ太郎で送ってママに再び跨った結希は先行する義姉妹たちについて行く。
両隣にはずっと、ヒナギクと亜紅里がいた。
ヒナギクは先ほどまで萎れていたとは思えないほど生き生きとしており、亜紅里はそんなヒナギクが愛しくて堪らないのか、結希ではなくヒナギクが真ん中となるようにヒナギクの隣に移動する。
「ど、どうしたんだ亜紅里」
「こっちの方が右腕左腕生徒会って感じするでしょ」
「語感いいなそれ」
「どうでもいいことに反応するな」
だが、こんな風にくだらない話をしたことも、こんな風に戦おうとしたことも、今まで一度もなかったのは確かで。
高尚で潔白な希望の花は、おかしそうに相好を崩した。




