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魔法とスマホの魔界戦記RPG  作者: 常日頃無一文
第2章:ヘイヘイヘイ天界ビビってる♪ ヘイヘイヘイ天界ビビってる♪
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26:物語はそしてクライマックスへ

「だだだだだだ、大天使長!! どうしましょうどうしましょうどうしましょう!! とうとうエクレール達が真相にたどり着いちゃいましたよ!! 私が悪魔王時代のコネを使ってデビルアンツのクイーンに『エクレールを消せばダージリン教会の水源は貴方のものです』とか吹き込んだことに、とうとうスッパリたどり着いちゃいましたよ!!!」


「ぶぇっぐ! ぐえご!」


 ここは天界の地方都市アテネン。その中央にそびえ立つ高層ビル『デルフォイフォイ』。そこの最上階、大天使長室である。

 いまそこで、テンパリにテンパりきったアフロ天使アリストテレサーが、部屋に飛び込むやいなやカップヤキソバ『とくもりや』を食っていたソクラテサーの首とか締めていた。


「どどどどどどどうしましょうどうしましょう!! 正直デビルアンツの全軍を持てばあんな小娘どもお茶の子さいさい余裕っちかと思ったら、デビルアンツの大半をチートみたいな技でロストしちゃいました!! 青十字爆裂波みたいな技でボーンってなっちゃいました!! ていうかいつの間にジェラートは復活したんですか!? 行方不明になってたとはいえあのタイミングで合流とか最悪じゃないですか!? しかも龍族最強と名高い次期龍帝の大風院まで参加しちゃってますよ!? 」


「へがっう!! うえあ!」


「ももももう時間がありません!! アイツらすぐにここへやって来ます! 悠長にクイーンの到着とか待ってられません!! あれを使いましょう使いましょう!! 最終絶叫兵器『口を慎み給え。君は神の前にいるのだキャノン』とか、天界最強鬼畜兵器『ハハハ、みろ。魔界がゴミのようだ砲』とかでエクレールを木っ端微塵にしちゃいましょう!!」


「あぐえ!! ぶごう!!」


 両手で掴んだソクラテサーの首をガクガクガクとゆする。スキンヘッド天使はチアノーゼで顔色が青くなっていた。


「へぐらって!! ふごい!!」


「って、あ!? これは大変失礼致しました大天使長!!!」


 我に返ったアリストテレサーが慌てて手を離すと、ソクラテサーはゼヒューゼヒューと湿った息をして首をさすりつつ「あ、危うくネクロポリスへいくとこじゃったわい」と九死に一生を得た。死にかけたスキンヘッドグラサンじじい天使は、とりあえず仕返しにアフロを適当にムシってアリステレサーを泣かせてから、


「ワシは何度も言っとるじゃろうアリストテレサー。慌てるなと。そんなテンパったり発狂したりする前に、冷静に現状分析してみなさいよ」


 ソクラテサーは再びヤキソバのカップを手に取りつつ言う。


「確かにあのエクレールの一撃は戦術どころか戦略規模で恐るべき一発じゃがな。しかしさっきのイベント限定コンビネーションアタックですっかりと魔力を使い果たしておるじゃろう?」


「そ、そうでしたっけ?」


 言いながらアリストテレサーは、ちぎられたアフロを木工用ボンドで修復していた。


「試しに最終絶叫兵器『口を慎み給え。君は神の前にいるのだキャノン』に搭載されている超絶高倍率スコープで覗いてみるんじゃ。しかし引き金は引くんじゃないぞ」


 そのように断ってからソクラテサーが、電動式車椅子でウィーンっとバックして、自分のオフィスデスクにアリストテレサーを着かせた。

 アリストテレサーは、どこにスコープなり引き金があるんだハゲとか思いつつ着席していたが、ソクラテサーが電動式車椅子付属のリモコンを押した途端、オフィスデスクの上面からモニターとキーボードが出てきた。

 なんだと思う間もなく、ヴンという電子音とともにモニタに映像が写った。アリストテレサーが覗きこみ、


「ああ!?」


 そこがレッチリ砂漠だったので、思わず声をあげた。


「例の現場じゃ。ほれ、その砂漠をウロウロしてる米粒みたいなのがあの小娘どもじゃ。拡大ズームするぞい」


 ソクラテサーが再びリモコンを操作すると、モニタの映像中央が全画面に拡大された。

 新たに映しだされたのは、片翼の翼と栗色の髪を持つ可憐な大天使。紛れも無いエクレールである。アリストテレサーは未だ恐怖が抜けきらぬ様子で、「ヒィイイ!!!」とブタを絞め殺したような声をあげた。真実、かつてはブタのような容姿を持つ悪魔王ガゼカだったのであるが。


「だから落ち着けというておるじゃろうアリストテレサー。こっちには気付いたとらん。ほれ。……そこの詳細ボタンを押してみいい」


 アリストテレサーがキーボードに目をやれば、そこに確かに、『詳細ディーテイル』と印字されたキーがあった。アリストテレサーは「これですね?」と素直にポチっと押す。すると画面に、エクレールのステータスが展開した。



 名前:エクレール・オ・ショコラ

 職業:片翼の大天使(測定不能天使:メイビー・マストビー・エンジェル)

 LV:250万

 HP:2000万 MP:0 / 1京

 装備:純潔の翼『ブライダル・ウィング』

 

 詳細:

 物理攻撃力:5 魔法攻撃力:1億

 物理防御力:10 魔法防御力:1000万


 発動アビリティ:

 聖属性ダメージ無効 魅了チャーム 電波的直感メイビーマストビーセンス


 

 アリストテレサーが驚愕のあまり、酸欠の金魚のように口をパクパクしているのを見ると、ソクラテサーが笑った。


「ふっふっふ。驚いたか? この通り最終絶叫兵器にはステータス参照魔法『みるみる』よりもさらに詳細なデータを見ることができるんじゃ。そしてエクレールを見てみい。物理攻撃力も物理防御も、人間の村娘に毛が生えたようなものじゃ。まぁ魔法攻撃力は恐るべきものじゃが、しかし肝心のMPは0。そして魔法防御の高さも、そもそも魔法を使わぬデビルアンツには意味が無い。どうじゃ?」


「す、っすすすすすすばらしいです!!!」


 アリストテレサーは快哉した。ソクラテサーはふへへと笑う。笑って入れ歯が飛び出たが、何事も無かったように入れなおす。そこで再び「は!?」っとなったのはアリストテレサー。


「しししししししししかし! やはり万全には万全を期しましょう!! このままズドンと撃って!! さっさとエクレールたちを討伐しちゃいましょう!!!」


 再び『とくもりや』を食い始めたソクラテサーだが、アリストテレサーのその言葉に煩わしそうに眉根を寄せ


「だから落ち着けというておるじゃろうアリストテレサー。お前さん脳みそまでアフロか? もうすぐあそこへはデビルアンツの群本体がクイーンと共にやってくるじゃろう? そんなところに、お前さんは最終絶叫兵器をぶち込むつもりか?」


「あんな虫けらは所詮捨て駒です大天使長!!」


 アリストテレサーは言い切った。かつては盟友と呼び共闘関係にもあったデビルアンツとその支配者クイーンを、捨て駒と言い切った。


「エクレールを討てるなら!! あんなものまきぞいになって全滅しようが灰になろうが惜しくもなんともないでしょう!?」


「いや、それはたしかにそうじゃがな。しかし今、あの娘どもの中に、次期龍帝の大風院がおるじゃろう?」

 

 大風院とはもちろん、巫女衣装に身を包んだあの男の娘ポン太のことである。そしてこの時点で、エクレール達はポン太にそのような呼ばれ名があることを知らない。

 アリストテレサーはまくし立てる。


「大天使長!! もしや今更龍界との関係を気にされておるのではありますまいな!? 龍界なんて今では耄碌したヨボヨボ龍帝一匹が真下にいるだけじゃないですか!? 強さはいまやデビルアンツ一匹に劣ります!! そして龍族の大半も、かつて貴方が密命を下して天使たちが龍刈りを行ってほぼ全滅!! そして生き残った龍族10匹も、魔界に逃れて今は消息不明ということじゃないですか!! そんなとこと戦争になったって怖くもなんともないでしょう!?」


「いや、じゃから落ち着け」


「は!? まさか神王ゼウスの下した『龍界への不干渉条約』を気にされているのですか!? あんなもの前の龍刈りのときと同じように、適当な天使に濡れ衣着せて堕天させたら良いじゃないですか!! バルバドスとかベルゼブブみたいに!!」


「だから落ち着けと言うておる。ええか。この最終絶叫兵器も天界最終鬼畜兵器も神王ゼウスの許可なしに発射すれば、その時点でそもそもワシ達が厳罰ものじゃ」


「ぐ」


 アリストテレサーはたじろいだ。


「まぁそれも、ワシのコネを使えば誰ぞに濡れ衣を着せてしまうこともできる。が、このまま放っておいても、後はクイーン率いるデビルアンツ本隊がエクレールなど始末してくれるじゃろう。今の測定不能天使は無力も同然。このまま放置すれば死ぬものを、わざわざ余計な仕事を増やすことはあるまい?」


「そ、それは確かに」


「しかも何より気がかりはあの大風院。第一次聖魔大戦で、神の軍団が最終絶叫兵器と最終鬼畜兵器を使用した瞬間、大敗を期すことになったあの龍帝の子じゃ。やはり迂闊に撃つのは得策ではなかろう?」


 ソクラテサーは、『とくもりや』を食べ終え、「これで血圧もビンビンじゃ」とスキンヘッドを擦りつつ電動車椅子の背もたれに体重を預けた。


「あの時のようにすぐさまここが壊滅となるとは思わんが、何も起こらんという保証もまたない。ようは、果報は寝て待てということじゃ。それにワシは何も絶対に撃たんとは言っておらん。クイーンが万一敗れでもすれば、そのままエクレールはゼウスへ今回の不正なり堕天撤回なりを直訴に来るじゃろう。そうなっては四の五の言ってられん」


 ソクラテサーはそこで頬を釣り上げた。


「そのときは、ワシも躊躇いなく撃つ」


 ――名目は、次期龍帝が魔界のアリと画策し、天界を襲おうとしていた為にやむなく先手で撃った。


 ――それも、適当な天使がこの部屋に忍び込み、独断でやったということでな。


 ――そしてそのときワシ達は、アテネンの清掃活動でもしとったことにしよう。適当なヤツに金でも握らせば、アリバイなんぞいくらでも買えるからの。


 アリストテレサーはようやく納得したようだった。そして醜悪な笑みで安堵の息をひとつついた。


「しかし大天使長、いったい本当に、第一次聖魔大戦では何があったのでしょう?? 当時の全盛期でさえ、たかだか悪魔王クラスと言われていた龍帝に、それこそ最終絶叫兵器や最終鬼畜兵器の直撃を受けたよりも大きな損害を与えられただなんて。私にはどうも信じられないのです」


 ソクラテサーも眉をひそめた。


「そこがワシにもサッパリ分からんのじゃ。魔王ならばともかく、龍帝にそんな攻撃力はない。そんな攻撃手段もない。何度も何度もこの超絶高倍率スコープで確かめておるのじゃが、ない。しかし事実は事実じゃからな。認めるより他あるまい。……しかしそれが分かれば、あるいはワシもその対策を講じて、この場で引き金を引き、あの小娘どもを灰に変えとるじゃろう」


 やはりソクラテサーとしても、今のうちにエクレールや次期龍帝のポン太をまとめて始末したい気持ちはあるらしい。

 このとき、ある意味で誤算だったのは、ステビアやみーみ、ティラミスやジェラートを完璧に度外視している点である。

 彼女たちが一体どういう存在であるかを、彼ら二人はこのとき、正確には把握していなかった。


「しかし分からんから、こうして今は静観を決めておる。な~に。クイーンとの戦いを見てからでも遅くはない。エクレールに頼りきっていたあの娘どもが、果たして今度はどのようにデビルアンツたちを迎え撃つか見物しようじゃないか」


 ソクラテサーは最後にそういった。

 アリストテレサーは、なるほど、と、今度は上辺ではなく心底から納得した。

 それを受けてソクラテサーは、


「ま、他の気がかりといえばこれかの」


 とリモコンを操作してモニタ画面を切り替える。


「今回の件とは特に関わりはないと思うが、しかしそれでも、この災厄が同じレッチリにいることは注視せねばならん」


 新たに映しだされたのは、砂漠の上にぽつねんとあるカボチャの馬車だった。

 やたらと華美で、やたらと豪華で、やたらと高機能な、しかし嫌味を全く感じさせないようそれらをまとめあげたフォルム。

 アリストテレサーが、「まさかこれは」と、言い切って震える前に、そのステータスが参照された。



 名前:フィナンシェ・エルヒガンテ

 職業:魔王の眷族(生ける絶対:ブリージング・アブソリュート)

 LV:1

 HP:1(瀕死) MP:無限

 装備:宵闇の翼『ヴェスパー・ウィング』



 画面が詳細を表示し切る前に、アリストテレサーは再びソクラテサーの首を掴んだ。


「ここここここここここっちにブッパしませんか!?!?!? ここおここここここここっちにブッパしませんか!?」


 もはや半狂乱だった。

 一体全体どういう事情とどういう展開であのフィナンシェ・エルヒガンテがレッチリに一人でいて、LV1になって、衰弱し切っているのか知らないが、これを見逃す手はないと頭が爆発した。


 いまなら、あのフィナンシェに勝てる!!!!


「いいいいいいいいまここここここここで!!! あのあのあのあのあのあのあのあフィナンシェ・エルヒガンテを討伐すれば!!! わわわわわあわわあわわわたしたち!!! 大金星ですよ!!!!!!」


 首をガクガク揺すられて再び青くチアノーゼ発生しつつもソクラテサーは、必死で、切り替えたモニター画面を指さしていた。


 ――――そこには、


 エクレールたちに向けて殺到する、


 デビルアンツの本体が映しだされていた。



 ――――ちなみにここで、


 少々重要なことであるが、


 『Arcadia戦姫ニュース』は、


 魔 界 限 定 放 送 で あ る 。

次から2章の終わりまでほとんど疾走状態です


フラグは全て回収できるものだと考えてます^^


今回もまた、


泣き笑いとツッコミを意識したようなエンディングになればとおもいます。


でわでわ


追伸:評価どうも有難うございました!


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