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魔法とスマホの魔界戦記RPG  作者: 常日頃無一文
第2章:ヘイヘイヘイ天界ビビってる♪ ヘイヘイヘイ天界ビビってる♪
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21:ついてるの? ついてないの? どっち? 

「未だにワシは神の仇敵か……」


 白いフサフサの口あたりがそう動いた時、みーみのユサユサが止まった。

 さっきまでピクピクしつつオッパイしか言わなかった龍帝が、まともっぽい言葉をしゃべったのだ。


「おそらくは第一次聖魔大戦の事を指しておるのじゃろう。……初代魔王より受けた大恩の一つを返さんとやったことじゃが、随分と長い間、尾を引く結果を生んだようじゃな」


 それは喉の奥から絞り出すような、随分としわがれた声だった。

 俺もティラミスもエクレールも、そしてポン太もまた、彼の方に目を向ける。


「そなた、エクレールと言われたかな?」


 龍帝の打って変わったような様子に、エクレールは呆気にとられているのか。名を呼ばれた彼女は、ただ黙って、ゆっくりと頷いた。

 白髪に総身を覆った龍帝は、ゆっくりと語り始める。


「ワシはもう本当に、生物としては愚か、龍としても長く生き過ぎた。生きているものが何故に死ぬのか。その当たり前を不思議と思ってしまうほど、生きてしもうた。……そこにおるポン太の申したように、年を経た身体は痛み、使うことのない頭は耄碌し、心はもはや、生きているという実感さえ忘れておる」


 その口調は、知的な好々爺が若者に諭して聞かせるように柔らかな声だった。


「今では眠りにつくたび、ワシはこのまま死ぬかもしれんなと走馬灯を眺め、そして目の開くたびに、ここは『輪廻』より外れた浄土極楽かと己に問いかける。あるいはこうして、皆と話をしておる最中でさえ、この幸福な一時はワシの夢ではないか、そう思ったりするものじゃ」


 彼は淡々と言った。


「龍帝さん、あの……。一つ聞いてもいいですかメイビー?」


 エクエールの問いかけに、龍帝は「なんじゃろうか」と優しげに応える。


「この龍界は、どうしてこんなに狭くって。どうしてこんなに、龍さんが少ないのですか? 龍帝さんとポンちゃん以外に、どんな龍さんがいるのですか?」


 それは俺も思っていたことだ。


 龍界は狭い。


 いや、正確には、龍界が狭いのかどうかは分からないのだけれど、少なくとも上下に余裕はない。すぐ上は天界の雲に覆われており、足元から天井までの距離は2m強だ。これを一つの世界と呼ぶには、あまりに圧迫感がある。

 また、確かに俺達は、二人の他に龍族を見ていない。

 社殿にはこの龍帝とポン太しかいないし、お風呂の方にもいなかった。もちろん、この社殿に至る道中でも、どこかにポン太のような巫女さんなりペンギンなり、あるいは龍めいた影はなかろうかとキョロキョロしていたのだが、物音一つ聞くことはなかった。

 一体これらは、どういうことなのか。

 それに龍帝が答える。


「龍界はむしろ、ワシやポン太にとってはこれでも広すぎるぐらいじゃ。龍一匹が寝るには畳一畳あれば十分、米は三合あれば三食足りる。ふふふ。理由になっとらんが、答えにはなっとるじゃろう?」


 ――龍界ここには、もうワシら二人しか残されておらん。


「もしかして、戦争でやられたんですか?」


 俺の問いに、龍帝はフサフサと否定向きに身体を揺らした。


「戦争で生き残った龍が、今日まで報復として天界の天使たちに狩られ、残りの龍は、天使の襲ってくるここにはもう居れんと魔界へ降りていってしもうたんじゃ」


 自分たち以外の龍は、天界の天使たちに殺されるか、龍界を追われるかしていなくなった。

 元々龍族がどの程度いたのかは知らないけれど、それでも龍族という一族を名乗るほどの数がいたのは確かだ。それが残すところ、あとは彼ら二人のみ。この有り様は根絶やしにも等しいのではないか。

 俺はその残酷とも言える仕打ちが、他ならぬ天界によりなされたということに、少しばかりの驚きを覚えていた。


 まして戦争の後に行われたとあれば、なおさらである。


「世界創造神話によったら――」


 口を開いたのはティラミスだった。


「龍族自体、その数は魔界の魔物や、天界の天使よりもかなり少なかったって書かれとります。せやから、天界の神も魔界の魔王も、戦争時以外に龍を狩るのは違反やて、互いに約束を結んだとも書かれとります」


 彼女は、龍帝に少し身を乗り出すようにしており、その目もどこか鋭かった。


「せやから、戦争が終わったあとに天使が私怨にかられて龍を狩るやなんて、ウチは信じられません。そんなん、天使やのうて悪魔の所業や」


 ティラミスの声は怒気さえ孕んでるように思われた。


 俺は何となく、彼女の心情は理解できる。

 彼女は教会に身を置き、神や天使の名のもとに信仰を集めて、人々を導く者である。だから『天界が蛮行を行った』と言われても容認できないのだ。神とは天界の支配者にして信仰の頂点である。故に何を置いても『善』でなくてはならない。

 だから、間違ってもそのようなことを彼女は認められないのだ。


 例えそれが、三界の支配者たる龍帝の言であれだ。


「ティラミスと言われたな。お前さんの言うことはもっともじゃ」


 龍帝はそして否定しなかった。


「神もお前さんと同じ判断を下し、龍たちを殺めた天使は『天使として許されざる蛮行』と断罪し、彼らを魔界へと堕天させ、死後は悪魔として転生するよう定めたんじゃ」


 解脱するまでな、と。


「転生と解脱って……」


 俺は息を呑んでいた。


「それは『輪廻』の話ですよね? それって龍界の宗教じゃないんですか? どうして天界の神が、その、なんていうか天界のルールじゃなくて龍界のルールで、その」


 俺は言いあぐねていた。適切な言葉が見つからないのだ。しかしザックリと言えば、天界の神が龍界の教えで裁くという事に、俺は違和感があったのだ。

 龍帝がフサフサっと揺れた。


「ほう。お前さん博識じゃな。左様。輪廻転生とは天界の宗教ではなく、龍界の宗教じゃ。そして神がこの龍界の教えに法って天使たちを捌いたのは、ワシら龍族への謝罪の意を込めてという話を聞いた。龍族の教えに従わせ、死後は彼らの嫌悪した悪魔に転生させ、罪滅しが済むまでは『輪廻』で縛る。そうして何度も悪魔に転生させ、罪の清算が終わり『解脱』まで至れば、再び天界へと復帰させる。とな」


「誰ですか? その天使は……」


 ティラミスは、小さく震えながら問うていた。

 悲しいのか、怒っているのか、俺には分からない。

 ただ、大天使という天使を祀るダージリン修道会の、その現修道女長たる彼女にとって、天使が堕天して悪魔となるという話がどう響くのか、俺には察してあまりあった。


 龍帝はさらに、しかしこくな事実を告げる。


「ワシが知っておるのは二人。1人はハエを模した姿の悪魔に生まれ変わり、1人はカエルを模した姿に生まれ変わったと聞く」


 ハエを模した姿の悪魔と、

 カエルを模した姿の悪魔。


 ――――まさかあの二人なんてことは。


 脳裏をよぎった想像に、俺は小さく焦燥した。そしてそれを否定する材料として、他に該当する悪魔を探す。

 しかしけれども。 

 こうしてセットにされて、思い当たる悪魔はやはりあの二人しかいなかった。


 また龍帝だって、全く無関係な悪魔のことを俺達に語っているとは思えない。

 1人ではなく、わざわざ2人の悪魔を列挙したことからも、それは明らかだ。


「龍帝、それは今言わねばならぬことでござるか?」


 ポン太だった。

 そしてその口調は、いつになく険しく、まるで攻めるかのような口ぶり。これで間違い無いだろう。


 バルバドス。

 ベルゼブブ。

 ――――彼らが、龍殺しをした元天使なのだ。

 知らぬ間に、キュっと俺は浴衣の裾を掴んでいた。


「ポン太や。話は最後までお聞きなさい」


 龍帝はしかし、あくまで好々爺のような口調は崩さない。そして再び、俺達の方に向き直る。


「ワシの憶測に過ぎぬが、カエルの似姿をとった悪魔の方は『解脱』まであと僅かじゃろう。ハエの悪魔の方はもう少しかかるかもしれんが、現状ではそう遠くはなさそうじゃ」


 龍帝の救いを示すような言葉に、しかしティラミスは小さく俯いていた。

 彼女もやはり思い至り、そしてショックだったのだろう。


 ――長年の親友が、

 龍殺しによって堕天した天使であると。

 そう知らされたことが。


「念の為に言っておくが、転生した悪魔にもう龍殺しの咎はない」


 ティラミスの心情を見越すかのように、龍帝を言い切った。彼女が顔をあげる。


「悪魔にかぎらず、ワシやお前さんらとて、前世にはとんな咎を犯しておるか分からん」


「でも」


「あるいは逆に」


 ティラミスの反駁を遮るように、龍帝は続けた。


「前世でとてつもない善行を成しておるかもしれん。しかしそれが、今生で評価されぬことと同様じゃよ。前世で成した善行を、今生で称える道理はない。それと同様、今の悪魔となった彼らに、前世における龍殺しの咎を問う道理もまたない。いまこの生で問われるのは、善行にしろ悪行にしろ、あくまで今生の悪魔として成した所業のみじゃ」


 龍帝は続ける。


「そして『輪廻』で滅ぼすべき罪とは、龍殺しそのものを償うのではなく、それに至った心持ちそのものの浄化を言うておる。そしてこれは他の誰にも裁くことはできんよ」


 それはワシにも。

 それはお前さんにもな。

 ただ、己自身で悟るより他ない。

 思考ではなく、心持ちで。


 彼はそういった。


 ティラミスは再び軽くうつむき、


「そんなもんなんかな……」

 

 と、消化しきれないようなことを言いつつも、しかしどこか救われたような吐息を、小さくついた。


「さて」 


 フサフサ――龍帝が、次にエクレールの方を向く。

 とうとう、本題について語るつもりなのだ。


「ワシから話すべきことはもうない。そしてもはやこの生き過ぎた生命には、何の未練もない。このままただ老いて朽ちていくだけの老骨龍。その間際に善行の一つでも出来れば、今生での慰みの一つにもなろう」


 龍帝が言う。


「エクレールや、ワシを討たれるが良い」


 ポン太が何をか言いかけたが、それを制すように龍帝が一瞥だけくれた。


「どのような顛末でこのような運びになったか、この耄碌した頭では察しようもないが、それでもワシは龍帝、分かることもある」


 お前さんは堕天せざるを得ないような咎を何一つおかしておらんよ。


 龍帝は言い切った。

 これまでの何よりも、キッパリとした口調で言った。

 エクレールは、堕天すべきことは何もしてないと。

 彼女の瞳が揺れた。


「しかし測りがたい神の心中か、あるいは止むに止まれぬ成り行きでこうなったのもまた事実じゃ。これこそ誠に不幸というものじゃろう。大天使にとって堕天が如何に重く辛い罪か、それは存じておる。それがワシ程度の命一つで賄えるというのであれば、これほど僥倖なこともあるまい」


「でも、龍帝さん」


「迷いなさんなエクレール」


 少し強めの口調で言った。


「そしてワシを見くびりなさんな。いくら耄碌したとはいえ、たかだか10万年と生きとらん若造に悲しまれるほどワシは浅慮でないぞ。この問題の大きさはお前さん1人で収まるものではない。自分の一存で『出来ない』等といいなさんな」


これはエクレール1人の問題ではなく、彼女を信仰するものたちや、あるいはそういう決定を下した神。彼らの事情もあって、エクレールは自分を討たねばならない。龍帝はそう言っているのだ。


「どのみちワシの死期はもう間もなくじゃ。この長き生においてその差は極めて微々たるもの。今死ぬか刹那後に死ぬかの違いでしかない。その差で大天使1人とそれに連なるものを救えるのであれば、龍帝、これ以上の幸福はもう望めん。さぁエクレールや」


 言って、龍帝は背を向けた。


「ワシの望みを叶えておくれ、大天使」


 そのとき静かに、エクレールの頬には一滴の涙が伝った。


 彼女の涙の理由は、俺にも分からない。


 悲しいか。

 嬉しいのか。

 怖いのか。

 辛いのか。

 なんなのか。


 分からない。


 けれども俺自身、龍帝の言葉に、胸をきゅっと締め付けられたのは事実だった。温かくて、切なくなるような力で。


 ただこれだけは言える。


 こんなに優しい自己犠牲の言葉を、俺は他に知らない。


 罪悪感を薄れさせるために理屈を説き、

 強制力を働かせるために筋を通し、

 負担を減らすために責任の所在も分散させ、

 最後にこれは、自分の望みとまで言ってのける。


 迷いなさんなと言った。

 見くびりなさんなと言った。


 俺は思う。


 ――なんて、優しいんだろうか。

 と。


 俺はここでようやく、龍帝が龍帝たる所以を理解したような気がした。

 長に立つという意味を、理解したような気がした。


 ポン太は、


 ポン太はそのとき、静かに目を閉じていた。

 正座して姿勢を正し、凛とした面持ちで。


 彼女はただ、龍帝の覚悟だけを、厳かに受け入れるようとしている様子だった。


 俺がその態度に言うべきことはない。

 彼女は、俺達なんかよりずっと、ずっと多くの時間を龍帝と共有してきたのだ。彼の言葉を、ここの誰よりも理解していることだろう。


 ――――でも。


 それでも俺は、あえて。


 それで良いのかと問いたい。


 龍族はいまや、彼女と龍帝二人。

 これでエクレールが、龍帝の息の根を止めてしまえば、彼女(ポン太)はここで一人になる。


 それだけと言われたらそれだけなのかもしれない。

 でもだからこそ。


 それでいいのかと問いたい。


 理屈じゃない。

 筋ではない。

 責任の問題じゃない。

 まして彼の望みですらない。


 ポン太、お前はそれでいいのか?


 俺は彼女の凛とした面持ちを見て思った。


「あれ? ちょい待ったっす♪」


 みーみだった。

 今までずっと思案顔だった彼女が、シュビっとネコハンドをあげた。

 注目を集めた彼女は言う。


「えっと、大戦後に龍族を狩った天使を、神さんは龍族のルールで罰したんすよね?♪」


 反芻する。

 神は龍殺しを行った天使を堕天させ、死後には悪魔に転生させ、『輪廻』の輪に組み込んだ。


 そのとおりだ。

 俺達は頷く。


 みーみが首を傾げて唸った。


「にゅ~。そこまで筋を通して龍族さんに『謝ってる』神さんが、今更にニャって龍帝さんを仇敵とか討伐とか、そんなこと言うとは思えないっすよ? 変じゃないっすか?」


 あ。


 言われてみればスっとした。


 たしかにそのとおりだ。


 ティラミスもハっとなっている。


 ポン太も目を開き、龍帝自身もピクっとした。


「せ、せやけど」


 ティラミスがエクレールに語りかける。


「でも、確かに。エクレールはんは神さんから持たされた『堕天御免要件』に『大堕天使エクレール:堕天御免要件:神に仇なす龍帝を討伐すべし』って書かれたんやろ?」


 問われた彼女は、目をパチクリとさせる。

 そして彼女はキョトンと言った。  


「あの手紙ですか? あれは神様じゃなくて大天使長ソクラテサーさんにもらったものですマストビー」


 ピタっと。

 皆が固まる。


「「「「…………」」」」


 空気が変わった。


「大事なことだから、もう一回聞くぜエクレール」


 何故か高鳴る心拍を抑えて、俺は聞き直す。


「その、堕天御免要件を書いた手紙は、神様からもらったものではないんだな?」


 俺の目を見ながら、静かに彼女はコクンと頷いた。


「そう言えば、神様からの『認め印』がなかったような……メイビー?」


 ふむ。

 ふむ。


  ――――ほう。


 みーみとティラミスが目を見合わせ、

 ポン太と龍帝も目を見合わせている。


 俺はパチクリとしているエクレールの視線を受けつつ、その、9は素数ですよね? みたいな視線を受けつつ、腕を組んで黙考する。


 彼女の堕天理由と経緯。

 今回の堕天御免要件。

 直に触れた龍帝の人格と、彼から聞いた神の処断。

 そして。


 神 様 の 『認め印』 と い う ス ゴ ク 大 事 そ う な も の が な い 堕 天 御 免 状 

 

 

 ふむ。

 ふむ。

 ふむ。


 ――――OK。

 

 な ん か 今 回 の 黒 幕 判 明 し た 気 が す る ん だ ぜ ? 


「そ、それ……ホンマか?」


 震えてるのはティラミスだ。

 プルプルしてる彼女に、エクレールがコクンとすると、ヘナヘナと崩れるように背を曲げた。


「は~~~~」


 そして、これまでの疲れを、全て吐き出すような息をついた。


「やっぱり神さんがそない意地悪なことするとは思ってへんかってんけど、やっぱりそやったか。……ははは」


 ホトホト疲れたと言わんばかりに、彼女は言った。


「あの。ちょっといい?」


 挙手る俺。


「その大天使長ソクラテサーって、誰?」


 ティラミスはもう、全てを理解したというような面持ちで言った。


「神さんいわく、今最も堕天に近い天使や。汚職の影には必ずソクラテサーっていうな」


 OKOK。


 もはやOK。


 OK過ぎる。


 もう間違いない。


 この期に及んでもはや、このお話の討伐対象は龍帝ではない。


「ワシの耄碌は思ったよりも酷かったようじゃ」


 龍帝が嘆息した。


「この年になって神を見損なうとは、これはもう少しばかり長生きして贖罪せにゃならん」


 ポン太の目が輝いた。


「これは今生の罪じゃしな」


 エクレールの目も輝いた。


 よしよし。

 非常によし。


 方向性は定まった。 


「ねぇみーみ」


 俺は、今も内股ずわりになってるネコ娘に呼びかける。すると彼女は


「ニャんです御主人様センパイ♪?」


 振り向いて小首をかしげた時


「お前最高だよ」


 俺はこの、最高の手柄を無自覚に持ってきた護衛に抱きつき、


「大好きだ!」


 その桃蜜の香りたっぷりな頬にキスをした。

 そして俺らしからぬ笑顔で、勢い任せにいってしまう。


「後でご褒美に、背中流してブラッシングしてあげる」

 

 ネコ娘の目が燦然と輝いた。


「にゃにゃにゃ!? マジっすか御主人様センパイ!?」


「マジマジ。大マジだよ」


 みーみが勢い良く立ち上がり、俺は「キャ」っと彼女に引っ張られる格好になった。


「じゃぁ今から早速いくにゃん!♪」


 ネコハンドを突き上げる彼女。


「こらこらもう。せっかちだな。ふふふ」


 俺は咎めなかった。さりげなくとはいえ、これはそのぐらいは許せてしまう大偉業じゃないか。

 でもこの後、俺は龍界の露天風呂でこの発言をたいそう後悔することになりました。


 こんな風にね♪

 

 ピロリン♪ YOU♪ CG『ボディソープとネコネコマッサージ(CERO18)』をGETしましたYO♪ *閲覧に年齢認証あり。


 ともあれ、

 ――最後に。


 衝撃のオチを御覧ください♪


 すっかり和らいだ空気の中、龍帝が笑う。


「やれやれ。ワシは今回も死に損のうとか」


 周囲も、既に和やかに笑っている。


「ふふふ。ワシの一人息子もこうして立派に育ってもう欠片の未練もないと思っとったんじゃがな。ふふふふ」


 言いながらポン太の方を見た。周囲も、既に和やかに笑っている。

  

「一人息子ってなんですか!?!?」なんや!?」ですかマストビー!?」


 三人揃って絶叫だった。

 ポン太はしかしキョトンとする。


「言わなかったでござるか? 私は男でござるよ」


「言わなかったぜ!」


 俺の声は悲鳴。


「あるいは言ったでござるか? 私が女だと」


「言わなかったですマストビー! でもそんなの私だって言ってませんマストビー!」


 両手をグーにして彼女も悲鳴。


「ほ、ほな! なんでポン太は巫女の衣装なんて着てるんや!?」


 ティラミスは震えている。そして指を指して指摘すれば、ポン太はまた愛らしくハニかむように袖を口元に当てて


「だからあのとき言ったでござろう? 『異界の客人にこの格好を見られるのはたいそう照れくさいものにござる』と」


 あれそういう意味だったの!? 仕事的な意味じゃなくて女装的な意味だったの!?


「じゃ、じゃ、じゃあなんで巫女衣装なんだ!? さ、さっきのは別に理由になってないぜ!?」


 俺の声、超上ずってる。


「お、俺知ってるぜ!! ちゃ、ちゃんと巫女さんの他に、龍界には禰宜っていう男の衣装があるの、知ってるぜ!?」


 わかりやすく言えば、巫女さんの男ヴァージョン。


 そこでとうとう。


 龍帝がついに。

 龍帝としての気を吐く。


「ワ シ の 趣 味 じ ゃ ! ! ! 」


 俺は凍結した。


「こ ん な 可 愛 い 子 が 男 の 子 の わ け な か ろ う ! ? 」


 日焼けがスカリンになった。


 OKOK。龍帝OK。

 ファースト インプレッション 通 り


 あ ん た 見 な お し た 俺 が バ カ だ っ た よ 。


「フガフガオッパッピー♪」


「うるせーよ変態ジジイ!」


 もう俺は遠慮してなかった。


「じゃ、じゃぁもしかして。もしかしてポンちゃんは……」


 エクレールがカタカタと震えながら、そしてその可愛い指を、ポン太のある一箇所に向けている。


 やめて。


 エクレールちゃん、やめて。


 それ聞いちゃダメ。

 それすごく聞いちゃダメ。


 でも彼女は言っちゃう。

 アホの子だから。


「 オ ○ ン ○ ン つ い て る の で す  かー ! ? ! ? ! ? ! ? 」 


 俺達絶叫した。

 絶叫したが、しかしポン太は冷静に小首を傾げて

 

「見るでござるか?」


 ふふふ。

 見るでござるかですってふふふ。


 ――何考えてんだこの男の


「ダメだふざけんな! 見せるな絶対見せるなよ!」


「いやウチは見る!!!!」


 日焼けの暴言に俺は飲みもしないコーラ吹きそうになった


「お前いまなにいったか分かってんのか日焼け!?」


「うっさいわ青髪! いまさらポン太が男やとか信じられるか! 絶対女に決まっとるわ!」


 謎の取っ組み合いが始まる。


「お前の耳は風穴か!? いまポン太が自分でカミングアウトしたじゃねーか俺は男だって!」


「でまかせに決まっとるわ! あの緋袴の奥にはウチらとおんなじ割れ(バキューン!」


 あまりの発言に俺は巴投げ。ティラミスも思わず前方回転受け身で着地。エクレールは超展開のあまり龍帝のメシを食いだす。

 俺は障子を突き破って着地したティラミスに叫ぶ。


「落ち着け! 落ち着けお前! 今すごいこと言ったぞお前! これ全年齢のゲームだからな!」


「そんなもん知らんわ! いまさらポン太が男とか信じられるか! お前こそ眼科行ってこいや! 紹介したるわ!」


「目は恐ろしく正常だよ! 俺だって信じられんよコイツが男だって!」


「じゃから言うとるじゃろう? ポン太は男の娘――」


「お前は黙ってろジジイ!」


 叫ぶとジジイ龍はゼザンヌ!? と謎の奇声。さておきティラミスは喚く。


「うっさいうっさいうっさい! ウチは見るったら見るんや! 何があってもポン太の割れ(バキューン!」


「わーわー!!! わーーー!」 ←みーみによる消音作業


「だからそこがおかしい!! なんでだからといって見なきゃいけないんだ!? 男でも女でも非常に美味しいいや違くてまずいCGが回収されるだろ!? アイツが頬を染めつつ目線そらして帯解いてる構図とかシャレになんないぞ!」


 必死に叫ぶ俺に、ティラミスはもう我慢限界とばかりに半泣きで叫んだ。


「ポ ン 太 は ウ チ の 裸 を 先 に 見 と る ん や ! ! ! ! 」


 このとき、空気が瞬間冷凍された。


「レ ッ チ リ で 何 回 も 一 緒 に 風 呂 は い っ て る ん や!」


 誰一人として、その場を動けなかった。


 ポン太が、おもむろに帯を解き始めるまで。

 

 さぁ、


 いよいよ。


 第二章はクライマックスだぜ。

安定のヒドさを誇る無一文ですこんにちわ^^


ここまでノンビリ来ましたが

次回から本気で展開が怒涛です。


どうぞお楽しみに^^

公式プレイヤー様(お気に入り登録読者様)も40名を超えました。

どうもありがとうございます。プレイ続行して頂ければ幸いです。


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