15:Arcadia戦姫ニュース:『ダージリン教会のロケットがついに起動? 噂の真相はここでチェック!』
皆さんこんにちわ。今日もArcadia戦姫ニュースの時間がやってきました。
司会はお馴染み、初めての方は初めまして。コメンテーターのサクシャーと、本日も特別ゲストを迎えてのお送りとなります。それでは恒例のゲスト紹介から参りましょう。
本日のゲストはこちら。え~、そのはい。ぶっちゃけますと死神です。最凶の死神です。可愛いお人形さんみたいな見た目に騙されちゃいけませんよ?
『トレードマークはピンクの甘ロリドレスと顔に巻いた包帯。そこから覗くは奈落のような瞳。肩に担いだ真紅の大鎌。背中に背負ったネコのぬいぐるみ、なぜか口が縫われてる。泣く子も殺して死なす無慈悲な処刑神』
で、お馴染み。ニックネームは御魂狩りニャンニャン、公称はバイタル・ハント・キティの、リリアナさんです。本日はどうも宜しくお願いします。
「初めましてリリアナです。最初に殺した相手は私のママです」
え~、囁くような優しい声で警察沙汰ありがとうございます。
私からはノーコメントとさせて頂きます。
それでは早速ニュースの方に入っていきましょう。
って、あの、リリアナさん? そちらカメラの方ですが、っていうかプレイヤーさんの見ている画面ですが
「あの、私とお友達になりませんか? 共に毎日を歩んで行きませんか? いつまでも運命を共有しませんか? 私にはわかるんです。貴方と私は間違いなくソウルメイトです。分かるんです。今度こそ本当の出会いだと私には分かるんです。今まで66666666666665回騙されてくびり殺して首を刎ねてきましたけど、今度こそ本当の出会いだって分かるんです。間違いない。間違い無いです。そうだ御挨拶からしないと。初めまして。私はリリアナ・オルトリンデです。魔界よりも地下にある滅界というところで処刑神してます。仕事は堕ちてきた人間の命乞いを聞いてあげること、そして拒否すること。仕事より趣味のお話からしましょうか。趣味は蝶の羽を紅茶に浮かべること。コウノトリをハチミツの海に沈めること。黒い画用紙に黒の絵を黒の絵の具で描くこと。あとはエリーナの傷の手当です。エリーナは私のソウルメイトです。エリーナを傷つけるのも私ならエリーナを治すのも私。だってエリーナは数少ない私の友達なんですもの。最近は少しお熱を入れすぎちゃって、縫うところも多いし包帯を巻く所も多いし、もう全身が糸と包帯ばっかりで、もうエリーナがどんな姿をしてたか分かりません。たぶん女の子だったと思います。ふふふ。でも姿が見えなくたって愛があれば大丈夫ですよね。見た目なんてそんなの瑣末な問題ですよね。腕がとれたって足がなくたって、そんなの愛の前には無意味ですよね。ふふふ。そうだ。最近エリーナの口の包帯が取れて来たから久しぶりにお話をしたの。そしたら『ころして』って言うのよね。泣きながら『ころして』って。おかしいよね、殺してって。きっとまだお口が治ってないんだと思ってキッチリと縫っておきました。っふふふふ。でもそれから数日後、エリーナは全然動かなくなっちゃいました。私のエリーナは動かなくなっちゃいました。熱湯使ってもペンチ使ってもヤスリつかっても、マイナスドライバー使ってもハサミとクギを使っても動かなくなりました。虫の居所が悪いのかも知れません。そういえば今朝は妙に毛は抜けるし、虫は寄ってくるし、身体は冷たいしで、エリーナは分からない事だらけです。怒ってるのかな? え? ……死んではいないと思います。だってエリーナは私と一緒に死ぬって約束しましたから。泣いている私に、私を抱きしめて『一緒に死んであげる』って言ってくれたから。だから私が死ぬとき以外、エリーナは死なないはずです。私一人をおいて勝手に死ぬような、そんなゲスな裏切り者じゃないはずです。そんなクズじゃないはずです。やめてくださいエリーナはそんなんじゃないです。でもそんなこと、どうでも良いですよね。私の趣味なんて、ホントどうでも良いですよね。聞かれてもいないのにごめんなさい。1人でテンションあがってごめんなさい。本当にごめんなさい。反省しています。許してください。悪気はなかったんです。あなたと友達になりたかったんです。お願いです。好いて欲しかったんです。嫌わないでください。何でも言うこと聞きます。だから私のこと嫌わないでください。許してください。そんな目で見ないでください。私をそんな目で見ないで。私とお友達になってください。私と一緒に生きてください。私と一緒に死んでください。お願いします。お願いします。お願い。お願い。お願い。お願い。……ひっく。うううう」
あ、あ、あの。
一応ニュース続けますね?(最近ゲストの人選ヤバ過ぎだろ人事どうなってんだよこの放送局!)←さっきから冷や汗とまらん。
え~、気を取り直してニュースを続けます。
まずはティラミスさんを探して、レッド・ホット・チリ・ペッパー砂漠に出ていったステビア・カモミールさんとみーみさんについてですが、こちら超展開を見せております。
このほど天界より堕天してきた、大天使のエクレールさんですが、その堕天御免要件が龍帝討伐ということで、もう天界復帰は不可能であろうと多くの専門家たちが意見していたわけですが、なんと、これより龍界に向けて一向は出発するということです。メドがたったのでしょうか?
「ぐすん。ううう……ひっく。どうしてみんな私と友達になってくれないんですか。なってくれないんですか。エリーナどうして。どうしてエリーナ。ひっぐ。ううう。どうして。どうして。どうしてどうして。どうして」
え~、ただいまリリアナさんが、背負ってたネコのヌイグルミに『エリーナ』と連呼しつつ果物ナイフをザクザクやっておりますが、ニュースを続けます。
ダージリン修道会の境内、位置的には教会のすぐ裏手にあるロケットですが、それがいま龍帝の住む龍界に向け、発射カウントダウンを行なっているようです。
その模様をご覧頂きましょう。現場の特派員が入手した映像がこちらです。
デデン♪
え~、お分かりになりますでしょうか。
測定不能天使、メイビー・マストービー・エンジェルエクレールさんの膨大な魔力エネルギー、それを推進力とした、ダージリン修道会が誇る天界突破単段式ロケット『クリー・エクレール号』の勇姿がこちらです。
これまでは過去に一度だけ、グリモアを用いたテスト飛行がなされたと聞いていますが、実利用はダージリン修道会始まって以来初とのことです。果たして今回の発射、うまくいくのでしょうか。
さてさてクリー・エクレール号。前修道女長であるジェラート・ダージリンさんが好んで用いた奇跡の名を冠しているわけですが、天を穿つとばかりに尖ったオレンジ色の流線型ボディ。実に美しい。先端のペイロードには恐らく、ステビアさん、みーみさんが搭乗しているものと思われます。エクレールさんはもちろん、エンジン部で絶賛発電中です。ここからでもバリバリとスパーク音が聞こえます。電波だしまくり。なにせ魔力量は空前絶後の1京。間違ってミヤコと呼んだ貴方は異界の神。ともあれ凄まじい推進力が得られることは間違い――っと、ここで! ただいま発射台のストッパーが解除されました! アンビカルケーブルも解除です! いよいよ発射です! おお、エンジン部にも点火された模様です! 凄まじい噴煙があがって今大空に向けてロケットが――あああああっと!!! 大きく右に傾いてそのまま地面に ああああああっと!!! ギリギリ左に舵を切ってなんとか持ちこたえああああっと!!! 今度は切りすぎていまようやく軌道修――ああああっと!!! もう軌道が定まった途端、一瞬にして視界から消えてしまいました! 凄まじい速度です! まず間違いなくマッハは出ていたでしょう! もう噴煙すら見えません! 大丈夫でしょうかG的に。
とりあえず発射は成功したようです。
目指すは龍界。
天と魔の狭間にある薄闇の世界。
無事を祈りましょう。
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
え~、さて次のニュースですが(なんかリリアナさん大人しいな。奈落のような目でじっとプレイヤーさんの方見てるけど大丈夫かな)
次はお待ちかね、我らが魔界のアイドルにして魔王の一人娘、フィナンシェ・エルヒガンテさんの近況です。
特派員の調査によりますと、フィナンシェさんは、ステビアさんがカボチャの馬車を出ていった位置からずっと動いておらず、ひたすら中に篭ったままで、え~。
ゲームをしておられるようです。
中にカメラを持ち込む許可は頂けませんでしたので、特派員がマイクで様子を集音致しました。
彼らの分析によると、フィナンシェさんは朝も昼も夜もぶっ通して某有名狩りゲームに打ち込んでおり、食事もステビアさんの作った分以外は全然食べておらず、相当衰弱しておられるようです。
これを見かねた魔王のサマエルさんが、魔界のフルコース料理を持参し、馬車の前にやってきたのですが
『ふぃ、フィナンシェちゃん。パパだよパパ。フィナンシェちゃんを世界一愛しているパパだよ。ちょっとゴハンとか持ってきたんだけど少しだけお邪魔して』
『いまいらない。そこおいといて』
とこういう具合で、取り付く島もなく追い返されてしまったということです。ちなみにこれは余談ですが、魔王の乗ってきた痛戦闘機はこの日トゲのないサボテン10人が暮らす居住区に突っ込んだと報じられております。後にはアミーゴ! という悲鳴があがっていたとか。
ここで速報です。
ただいま特派員が特別な許可を頂いて、フィナンシェ・エルヒガンテさんのステータスを『みるみる』で参照することが可能となりました。御覧ください。
デデン♪
名前:フィナンシェ・エルヒガンテ
職業:魔王の眷族(生ける絶対:ブリージング・アブソリュート)
LV:3
HP:2 MP:無限
装備:宵闇の翼『ヴェスパー・ウィング』
解説:どういうことかしら。テーブル合わせも乱数調整も完璧なのに、どうしてこうも『天狼竜の碧玉』は私を拒むのかしら。かれこれ全部位破壊0分針討伐を9万回も繰り返しているのよ。ありえないわ。ありえないわ。ありえないわ。
あ~~~~~~~~~~~~、
これはヒドイ。
あまりにヒドイ。
HPどころかもうLVまで下がっちゃってます。魔界最強の姫君、これは一体どうしてしまったのでしょうか。というかステビアさん、この子をこのまま放置してても大丈夫なのでしょうか。特派員のコメントによりますと、フィナンシェお嬢様は今現在、自分の溺愛する召使からのメール返信が遅くてヤケになってる可能性もあるということです。いったいこの状態いつまで続くのでしょうか。今後の動向、こちらも目が離せません。
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
え~~(ホントにしゃべらないなリリアナさん。どうしたんだろうな)
これでArcadia戦姫ニュースは終わります。
お相手はコメンテーターのサクシャーと、バイタル・ハント・キティのリリアナさんでお送りいたしました。
それでは皆さん、また次回お会いしましょう。
「やっぱりソウルメイトです貴方」
なにかおっしゃいましたかリリアナさん?
「一ヶ月後に貴方の枕元に立ちます」
リリアナさん?
「時刻は午前2時22分。私を見つけてね」
リリアナさん?
「でないと貴方は私とともに滅界まで堕ちることになる」
リリア――
プツン。
名前:リリアナ・オルトリンデ
職業:滅界の処刑神(御魂狩りニャンニャン:バイタル・ハント・キティ)
LV:0
HP:0 MP:0
装備:首狩りの振り子『そめあか』
解説:正体不明。母の形見を探して魔界までやってきたらしい。バカ(狂気的な意味で)
メンヘラおいときますね(爆




