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魔法とスマホの魔界戦記RPG  作者: 常日頃無一文
第2章:ヘイヘイヘイ天界ビビってる♪ ヘイヘイヘイ天界ビビってる♪
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11:腹減りポン太

「あ!」


 龍帝討伐問題に関する大変有効な解決案が浮かんで、唐突に声をあげた俺ではあるけれど、


「どないしたん?」


 ティラミスの声を聞いた瞬間、その案には色々無理があることに気づいて


「い、いやなんでも……」


 アッサリと没にした。


 ぶっちゃけてしまうと、俺はフィナンシェお嬢様の力を借りようと思いついたのだ。が、しかしすぐに、それはティラミスとエクレールのことを考えれば無理だと悟り、ボツとしたのである。


 理由は以下のとおり。


 まずエクレール、彼女は堕天したとはいえ魔界にとっては天敵の大天使である。これはそもそも論として、天使の手助けを魔界に求めるわけにはいかないだろうというものだ。

 そして次に、エクレールの可愛いらしいさもマズイ。

 これは言わずもがな。あのフィナンシェお嬢様が、彼女の愛くるしい容姿や所作性格を見たらどうなるか。鼻血を吹き出しつつ手篭めにしかねない(マジでありえるから怖い)。


 即ちだから、ティラミスは、この件にフィナンシェお嬢様が介入することを猛反対するに違いない。

 

 ――それにそもそも龍帝。


 神にとって、龍帝は聖魔大戦を敗退に追い込んだ仇敵である。しかしそれは裏を返せば、魔界にとっては大戦勝利をもたらした英雄になるわけである。

 そんな龍帝の討伐を、魔王の娘たるお嬢様に相談などできるだろうか。いやいや出来はしない。最悪の展開として、逆に討伐を阻止される可能性も、なくはないだろう。

 そうなったらもうどうしようもない。


 総合すれば、やはり色々な意味で、フィナンシェお嬢様に助力をこう訳にはいかない。

 当然の結論だ。


 そう。


 ティラミスであればそう結論づけるはずだ。


 でも。 


 俺はそうは思わない。


 龍帝が魔界の英雄?

 大天使が魔界の天敵?


 いやいやそんなものがなんなのだ。


 俺はフィナンシェお嬢様の召使ステビア・カモミールである。俺が必死にお願い(EX泣く)すれば、そんなものなどお構いなしに、フィナンシェお嬢様は力を貸し、願いを聞いてくれるだろう。

 もちろんそれは、単にお願いを聞き入れてくれるという意味ではなく、お願いを叶えてくれるという意味も含めてである。

 

 自信と確信を持って言える。

 間違いない。


 それに変態なれど聡明な――褒めてるんですよ? ――フィナンシェお嬢様のこと。龍帝討伐以外にも何か、俺達には想像もつかない、解決策を下知してくれるやもしれない。


 俺はそれとなくティラミスの方を見る。


「あのさ、ティラミス」


 フレンドリーに呼びかけると、彼女は「ん?」と、エクレールからこちらを向いた。


「もしもエクレールを堕天から救うためなら、悪魔の力だって借りるか?」


 ちょっと小手調べ。果たして天界の事情に魔界が介入することを、シスターたる彼女は是とするか否か。

 ティラミスは応えた。


「え? そんなん余裕で借りるけど?」


 思ったより柔軟なようである。


 まぁ、ティラミスは昔から悪魔王バルバドスと交流もあったようだし、天界だの魔界だのといった拘りは少ないのかもしれない。

 ちょっと慎重になりすぎたか?


 ならばと、俺は続ける。


「じゃぁ変態の力は?」

「改宗しても借りひん」


 変態はアカンぽいです。

 この様子ではやはり、フィナンシェお嬢様の介入を彼女は許さないだろう。

 ――即ち、


 ま だ 黙 っ て お い た ほ う が よ さ そ う だ。

 


「ところでステビアはん、今の質問どういう意味?」


 何か、カットメロンみたいな半円型半眼で見てくるティラミス。ほら、あの『じー』っていう視線レーザー飛んできそうなあの目。

 この反応リアクションでは、もう俺のカマかけは失言していた域である。

 え~っとどこでまずったかな俺。

 ヒヤヒヤしつつ反省してみる。


 悪魔と変態。


 ――――ダメだ。


 全然オブラートになってなかった。こんなのお嬢様に直結ではないか。

 どうしよう、笑って適当に誤魔化すか?

 ステビア、美少女スマイル開始。

 両手を身体の後ろで組んで、小首をかしげてニコニコ。


「えへへへ~」


 みーみがヨダレじゅるり。いやいやお前じゃねーし。

 しかしティラミスは未だ半眼で


「まさかスビテビアはん、その悪魔と変態って……」


 時既にお寿司でしょうか←もはや脳内で発音ミス。


「ベルゼブブに相談とかいうんちゃうやろな? 絶対あかへんで?」


 うまい具合にそれてったぞ。

 俺はそのまま誤魔化すために


「えへへ、そっか。やっぱなぁ」


 と頭をかく。そしてそのまま、今のがフィナンシェお嬢様を想起させないうちに


「あ! そ、そうだ! ところでさ!」


 言いつつ手をパチっと打った。ティラミスの目から疑惑ビームが消失。


「レッチリ砂漠でさ。アミーゴ以外にも、なんていうか行き倒れてるペンギンみたいなヤツに出会ったんだよ」


 不自然なぐらい急な話題転換だけれど、ここは押し切っちゃおう。俺はワザとらしく大仰に手振りも交え、


「いや~、ソレがなんかさ。気の毒というか可愛いというか、ついつい持ってる弁当全部あげちまって、しかも口調が『ござる』っていうほんと面白いやつなんだ。しかも大食いで早食いなんだけどマナーはビックリするぐらい良いんだよね。あはははは」


 ティラミスの表情が「へ~」と和らいだ。よしええぞ。

 彼女は自分の長いポニーテールを触りつつ


「夕暮れのレッチリ砂漠を歩いてて、魔物には会わへんと、アミーゴに続いてポン太にも会ったわけか。ステビアはんは、エラい面白い縁があんねんな」


 話題そらし成功!

 隣でみーみが、今度はエクレールを膝枕で寝かしつけつつ――マジでペット化しとるぞあのネコ娘――ティラミスに言った。


「いやいやティラミス姉さん♪ 魔物はウジャウジャいたっすよ♪」


 サラっと怖いことを。

 彼女は続ける。


「ニャんかこう、全然話し通じニャさそうニャ、ブチっとキレた感じのデカイ蟻の軍団っすね♪」


 言い終えると、ティラミスの表情が少し陰った。


「それ、レッチリで一番危ないデビルアンツやわ」


 デビルアンツ? と俺が復唱するように尋ねると、彼女は「そう」と頷いた。


「ホンマ、一体そいつらの手にかかって何人の人間がレッチリ砂漠で命を落としたか分からへんわ」


 俺は眉を潜める。


「そんな危ないやつなのか?」


 俺が聞くと、ティラミスはまた静かに頷いた。


「みーみの言うとおり、デビルアンツはレッチリ砂漠に住んどる体長2~3mぐらいのお化け蟻や。色はオレンジ色しとってな、力はバカっ強いし、性格は獰猛。それだけでも大概なんやけど、何より厄介なんは、アイツら一つの巣に数千匹ぐらいの軍団作りよんねん」


 それはまたえらい規模である。


「一応、デビルアンツとは意思疎通もできんねんけど、アイツら人間のことをエサとしか認識してへんから、襲われたら最後、命乞いが通じひん」


 下手な悪魔よりタチ悪いなそれ。俺は思った。


「せやから、あの砂漠にはホンマに数えきれんぐらいの遺体が眠ってるんよ。ちょっとそのへんの砂掘ったらゴロゴロ骨出てくるはずやわ」


 

 今までみーみに背負われてきた道中は、そんな場所だったのか。

 今更ちょっと寒気がした。

 ティラミスはそして、まるで祈りを捧げるように目を閉じた。


「ここにいたシスター達は、ウチを除いてみんな教会を去ってしもうたけれど、その原因がデビルアンツなんよ。……ただでさえ住みにくい気候の上に、そんな魔物までが跋扈しとるわけやから、まぁ誰が出ていったかて、ウチは責められへんと思うわ」


 彼女のその声は、教会に沁みるように消えた。ここには俺達しかいなというい、静寂の証だ。

 俺は納得する。

 そうか。

 なるほどと。

 この教会にティラミスしかいないのは、そういう事情だったわけなのだ。


「せやけどホンマにヒヤヒヤするわ」


 ティラミスが苦笑する。


「ウチはてっきり、ステビアはんはフィナンシェはんと一緒にいるもんや思て安心してたけど、まさか二人だけで砂漠やってくる思わへんかったわ」


 と。ここでティラミスからお嬢様の名前でたわけであるが、さりげなくまだ怒ってるかどうか聞くべきだろうか。ステビア思案タイム。

 そのとき、にゅ!? とみーみが何か気付いた様子で言った。


「ボクは鼻が利くから魔物回避は余裕っすけど、ティラミス姉さんはよくここまで無事だったすね?」


 と。それは確かにそうだ。一体彼女は、どうやってここまで無事に辿りつけたのか?

 みーみの問いに答える代わりか、ティラミスは自らの羽織っているローヴの、その肩の辺りをちょんちょんと指でさした。


「ウチはこれで何時でも、食いがいのない純真無垢なガイコツになれるからな」


 そして「へへ」っと小さく笑った。

 なるほど、アリが来たらスカリンモードでやり過ごす訳ね。

 ティラミスは続ける。


「さっきも言ったけど、デビルアンツは人間をあくまでエサとしか認識してへんからさ。死神の格好でおったら、まぁ行進の邪魔でもせん限り襲ってこえへんよ」


 マジでグッジョブなバルバドスの贈り物だと俺は思った。


「ところで、ポン太にあったんやっけ?」


 ティラミスに急に問われ、俺は「え?」と小首を傾げる。


「ほら、ステビアはんの言う、生き倒れとったペンギンや。うつ伏せてビックンビックンしてへんかった? あと、めっちゃ艶っぽい声のはず」


 もうそのまんまです。


「もしかしてティラミスの知り合いなのか?」


 尋ねると、彼女は大きく頷いて


「うん。腹減りポン太とは古い知り合いや」


 あのペンギン、名はポン太と言うらしい。

 俺は再び、あの容姿を思い返す。

 青と白のボディ。

 腰下ぐらいの身の丈。

 ヨチヨチ歩行。

 つぶらな瞳。

 意味不明な挙動。

 ――――ああ、

 可愛かったな、あのプニプニ。

 思わず顔がほころぶ。みーみがそれ見てヨダレじゅるり。だからお前じゃねーし。

 ティラミスは思い出すように、教会の天井を見上げた。


「最初にポン太と会ったのは、うちがまだ見習いの時の話でな」


 そして彼女は、当時のことを語り出した。


ここで異次元コメ

ツインテールがM・Y

エクレールもM・U

ティラミスはT・S

さて

ポン太も同様に対応するものがあるんですね。

ここで驚けたプレイヤーさんは異世界の神です。

なんぞ? 

と思われたプレイヤーさんは異世界も冒険してみてください^^


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