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魔法とスマホの魔界戦記RPG  作者: 常日頃無一文
第2章:ヘイヘイヘイ天界ビビってる♪ ヘイヘイヘイ天界ビビってる♪
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4:シャカシャカシャカシャカ♪ シャカシャカシャカシャカ♪

 そんなわけで、ちょっと早い夕食タイムである。


 選んだ場所は、ペンギンがビックンビックンしていた岩陰。

 避暑目的というのもあるけれど、気温は時刻の関係でそう暑くもないので、砂埃を防げる場所かげが欲しかったというのが理由だ。


 俺がバスケットに入れて、馬車より持って出てきた食料は3日分程度。

 熱と乾燥に強く、わりあい保存の効くものを用意したのだが、今日中に消化してしまえるものは、ちょっとピクニック気分で手が込んであるのだ。


 まさかそこにペンギンが参加するとは、もちろん予想していなかった。


 今回の探索は、ティラミスがいる場所を見つければそれで終了なので、長丁場は想定していない。なので、これでもかなり多めといえる。

 みーみは、食事を必要としないので、俺とペンギンのゴハンタイム時は、ゴロゴロニャンニャンと近くの砂場――まぁ砂ばっかですか――で寝そべっていた。夜型にとってはそろそろエンジンがかかってくる頃だろう。

 彼女は、たまに砂上をカサカサといく珍しい虫を見つけては、適当にネコハンドでしばいて(しばいて!)遊んでいた。

 

 広げた敷物の上で、俺は正座して適当にオニギリなど食べているのだが、ぶっちゃけ、ペンギンの凄まじい食べっぷりに圧倒されている。

 さっきのものすごいお腹の音から、このペンギンの空腹の程度を推し量り、とりあえず件の『手が込んである』お弁当二食分を広げてみたのだが、


「どうぞおあがんなさい」


 と進めた途端


「かたじけない!!!」


 とペンギンは両手をペタっと合わせるやいなや、そこからマシンガンイーティングである。

 羽ばたくような勢いで両手をズバババババババっと動かし、それにあわせてお弁当があれよあれよと消失していくのだ。

 しかも驚かされるのが、決して雑に食べているのではない。

 動きが超高速なだけで、食べ方は極めて丁寧なのだ。

 ゴハンであれば米粒一つ飛ばさない残さない。

 スープであれば音立てない皿を鳴らさない。

 ナイフやフォークは外から順番に使い、

 お箸はキチンと箸置きに一品終わるごとに寝かせ、

 本当に作法も礼儀も正しく、お手本のようなマナーを展開していくのだ。ただし爆速。

 しかもそのえ、このペンギンは


「これほど美味な食べ物を生まれてこのかた食したためしがない!」


 とか


「いやいやステビア殿の料理に関するお手前には私もひたすら感服しきり!」


 とか


「ステビア殿の伴侶は間違いなく果報者でござろう。なにせこのような品々を毎日食べられるのだから」


 とか

 そんな風に

 そんな具合に

 そんな感じにべた褒めされるものだから、


「えへへへ、もう。そんなに褒めったって何も出ないぜ? デザートは水羊羹とパンナコッタどっちがいい? それとも両方いっちゃう?」


「誠に恐れながら、私に極楽と天国の何れかを選ぶ、などということは出来もうさん」


 そんな感じで

 そんな勢いで

 ついつい。


 全部あげちゃった(あげちゃった♪)。


 カラです、マジ。


 もうバスケットを逆さに振っても、何も出てこない。


 俺は静かにマバタキし、現状認識を試みる。

 そして分かりやすい結論に至る。


 ――――あちゃ、やっちまった。


 目が点になってしまった俺のその前で、お腹を風船のようにポンポンに膨らませたペンギンは


「大変なご馳走でござった!!」


 ペタンと両手を合わせ、これまた丁寧に「ごちそうさま」をした。

 俺は自分の無計画さに途方に暮れつつも、「お、お粗末さまでした」とペンギンに言った。みーみは、「やれやれニャンニャン♪」とアクビをしていた。


 ―――トラブルが起きたのはその時である。


 シャカシャカシャカシャカ♪ シャカシャカシャカシャカ♪


 俺の知る限り、これはマラカスの音である。


 なんだこのノリノリな音は? と、おもむろにそっちを見れば、後方10メートルばかりの距離。

 派手派手しいメキシカンハットを被った、サボテンのお化けみたいなのが10人ぐらいいた。

 そのサボテン、両手と思しき枝別れ部分には、マラカスを1つずつ持っていて、大きく上下に動かし、楽しそうにシャカシャカシャカシャカ振っている。


 唐突の光景に、俺は放心する。


 シャカシャカシャカシャカ♪ シャカシャカシャカシャカ♪


 パっと見、緑色のハニワかと思った。


 眼と鼻と口の部分が真っ黒な穴だし。


 そしてよく見れば、サボテンみたいな質感と色をしているけれど、肝心のトゲがない。

 その上、あのサボテン独特の筋張ったようなデコボコもないし、どうもそれらしくないというか。


 いや、ていうか。


 ――トゲがないサボテンって、キャラ的にすごく微妙じゃないか。


 今もマラカス振りまくっている緑色のサボテン集団。

 なんだか瓜に見えてきた。


 シャカシャカシャカシャカ♪ シャカシャカシャカシャカ♪


 そんなのが10人ぐらいいて、マラカスを振っているわけである。


「アミーゴ!!!」「アミーゴ!!!」「アミーゴ!!!」「アミーゴ!!!」「アミーゴ!!!」「アミーゴ!!!」「アミーゴ!!!」「アミーゴ!!!」


 歌い出した。

 ものすごく適当に、歌い出した。


 シャカシャカシャカシャカ♪ シャカシャカシャカシャカ♪


 振っていた。

 ものすごく楽しそうに、振っていた。


 俺はゆっくりと立ち上がる。

 立ち上がって、その、10人のサボテン集団を見る。


 砂漠で生き倒れている――、

 ゴザル口調の皇帝ペンギンも許せた――、

 心の広いステビアちゃんではあったが――、


 流 石 に こ れ は な い と 思 っ た 。


「アミーゴ!! そこのセニョリーター!!! アミーゴ!!」


 なんか真ん中ぐらいのサボテン@トゲなしが、マラカスを差し向けて語りかけてきた。


「な、なんだよ?」


 たじろぐ俺。

 たじろぐ俺に、このトゲなしサボテンはシャカシャカシャカシャカ♪ シャカシャカシャカシャカ♪ やりながら


「アミーゴ! 命が欲しいんやったらオモロイこと言うてワシらを笑かしてみいや! アミーゴ!!」


 シャカシャカシャカシャカ♪ シャカシャカシャカシャカ♪


 ――――どうしよう。


 第一ファーストコンタクトからしてサッパリ意味わからん。


 そしてもう言ってしまうが。


 コ イ ツ ら の キ ャ ラ 設 定 時 間 が 1 0 秒  未 満 な 気 が し て 仕 方 な い !


「私の命の恩人に対して随分な口を利くのだな? アミーゴ達よ」


 なにか随分とカッコイイお姉様の声色と口調に振り返れば、さっきのペンギンだった(そしてヤツらの名前はアミーゴだった。


「笑う門には福も来るが、口が災いを呼ぶこともある」


 ペンギンが、ゆるりと、俺を庇うように前に出る。


「いまのお前たちの言動はそれだ」


 いまや餓死の憂き目から回復したペンギンは、そのツブラなかわゆいを怜悧にすがめ、身体を半身にし、まるで練達の武人のような趣を、その小さな身体より放っている。

 アミーゴたちも思わずマラカスをとめ、その小さな、しかしただならぬ様子のプニプニ生物を凝視している。


 ペンギンは言った。


「本来ならばその無礼、即刻この場で叩きのめしてやるべきところだが、幸いにしてステビア殿はそれを望んでおられるぬようだし、私も家に武器を置き忘れてきたようだからどうしようもない」


 その声は容姿とは不似合いなほど闘気に満ち、


「命拾いしたな。幸運なヤツらめ……」


 聞くものをゾクリとさせるものがあった。


「分かったら、早々に立ち去るがいい……」


 ペンギンは溜めを作り、言い放った。


「次 は ぶ っ 飛 ば す ぞ ?」


 と。

 その気迫に、アミーゴたちが一歩下がった。

 言葉そのものが、まるで怜悧な刃を備えているかのような、そんな鋭さがペンギンにはあったのだ。

 俺は確信する。

 間違いない、

 このペンギンは、ただのペンギンではない。

 きっと、武道に対する浅からぬ心得があるはずだ。

 俺達の間を、砂煙が過ぎていく。にらみ合いが始まったのだ。

 張り詰めた空気、重い沈黙。


「あ、アミーゴ!!」


 やや狼狽えた様子で、アミーゴの一人がその沈黙を破った。


「けどお前、家に武器を置き忘れてきたからどうしようもないんやろ!? アミーゴ!!」


 マラカスでペンギンを指し示してビシっと指摘。しまったアミーゴちゃんと聞いてた! てっきりこの空気でうまくごまかされてくれるとか思ってたのに! どうしようハッタリ失敗した!

 内心焦りまくってる俺に、しかしペンギンは、


「フフフ」


 と未だに不敵な笑みを浮べている。おお! もしかしてまだ秘策か何かあるのか!?

 期待する俺の眼差しを横顔に受けたペンギンは、再び怜悧にその目をすがめ、フンっと余裕の伺える鼻息を吐いてから言った。


「――万策尽きたか」


 ダメだったーーー!!!  一策すら発動してないうちに万策散ったーー!! しかもペンギンはまだ言うことがあるようで片手をアミーゴに向けている!


「ついでにいうと、私はいま美味しい物を食べ過ぎてポンポンが一杯になって転がることはできても歩くことはままならぬ。ほれこのとおり」


 コロコロコロリン♪ コロリンリン♪ ペンギンは右に左にボールのように転がった。俺達の前をコロコロ転がった。やべー、ポンポン可愛い♪

 っていうか、


 致命的なことを告白したーー!!! 言わんでもいいことわざわざ自白したー!!


 もう青ざめっぱなしの俺の前に、よいしょ、と再びペンギンは立ち上がり、アミーゴの中央にまたまたピシっと片方の手を向け、


「有り体に言えば今の私は……」


 静かに溜めを作り


「 足 手 ま と い だ ! ! 」


 有り体にどうしようもないこといったー!! ほんともうどうしようもないこと言ったーー!! さっきからなんでこの窮地で無意味に正直なんだこのプニプニは!! なんか無意味にかわゆい!!


 いや、ていうか待てって。


 ――マジでこれ結構、ピンチじゃね?


 ジリジリと迫ってくる10人アミーゴ達と、

 コロコロ転がってるプニプニを前にして、

 今頃になって焦りが生じてきた。

本日でお盆休み終わりの無一文です(しょぼん


お休み中、連投のチャンスとばかりオラオラオラと綴ってきましたが

まぁ、このお話、非常に書きやすいので、比較的ピッチよく更新は続けられそうな気がします。


ではではまた次話で^^

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