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第9話

 今日は日曜日。

 そして、デートなのだ!

 誰とだって? そんなの希帆きほかえでちゃんに決まっておろうが!


 今日は2人と隣街のショッピングモールで買い物をするのさ!

 やっと、やっと2人の私服が見れるのだ。もう気合入るよね。

 気合入り過ぎて、10時に駅で待ち合わせなのに5時に目が覚めたよ!


 今日は天気が良く夏日に近くなりそうとの事なので、シフォン素材のポンチョにブーツ カットデニム。そして、サンダルブーツをチョイスしてみた。

 髪の毛は編み込みでワンポイント入れたお団子だ。我ながら頑張り過ぎである。

 でも仕方ないんだ。2人と一緒に歩くのに、お洒落を頑張らない訳にいかない。

 それでありながら、カジュアルに纏めて気合入れ過ぎと引かれないようにした。

 中々に難しい相談だったが、デニムにする事でクリアした感じだ。

 カジュアルに纏めたい時のデニムは最強かもしれん。

 あ、どうでもいいね。ごめんねー。


 ん? キュロットにニーハイ? あんなの恥ずかしくて無理だろ。


 あ、因みに男子2人とはなぜかあの後お昼を何度か一緒に食べた。

 下心は感じないし、メガ……宝蔵院ほうぞういんは委員会の真面目な話もしてくるので、特に嫌な感じはしない。茶髪ピアス改め、館林たてばやしは、迷惑そうな顔をしつつ一緒に昼を食べている。そんなに嫌なら一緒しなければいいのにねー。


 そして、嫌な感じはしないと言っても俺の癒しタイムを阻害されてる事に変わりは無いんだよな。

 しかし、断ると言うのも角が立つ感じがして微妙だ。困った物である。


 ん? あ、もう時間だ。行かなくては。





 ----------




「あ、そらー!」


 駅前に着くと、こちらを見つけた希帆に声をかけられた。少し離れた所で、手をブンブン振っている。

 隣には既に楓ちゃんも居て、こちらを見て微笑んでいる。2人とも私服が可愛いのなんの。


「おはよう。2人とも」

「おはようございます。お団子可愛いですねー」

「おはよー! なんかお姉さんって感じだよね!」


 2人が挨拶しながら褒めてくれるが、こっちに言わせればこの子等の方が可愛い。

 希帆は、膝丈ジーンズにロングTシャツと袖なしパーカーでボーイッシュな感じ。

 楓ちゃんは、花柄のロングワンピにメッシュ編みのニットセーターだ。

 もう、お姉さんのハーレムはこれで完成と言って良いんじゃないかな!


 2人の方が可愛いよ。等と口説き文句を言いながら、電車へと乗り込んだ。

 と、思うじゃん? ナンパされんだよこれが。さすがにこの3人が私服で居ると目立つのかね。


「ね。ご飯奢るからさー。一緒に遊ぼうぜ?」


 茶髪の顔の造型が、主に鼻がちょっとアレなチャラ男がそんな事を言ってくる。

 コイツはなんで堂々とナンパできるんだろう。男子校の学祭に来た女子じゃないんだから、これが普通にナンパしても誰も釣られないだろうに。

 あ、因みに後2人居て、そいつ等は茶色やら白やらが入り混じった汚いロン毛の小麦色と、B系と言うのか? それに身を包んだ豚だ。


 なんて言うかさ。俺等にだって選ぶ権利はあるんだと言いたい。

 こいつらと遊ぶくらいだったら、クラスの男子と一緒に遊んだ方が数百倍良い。


「ね? 遊びに行こうぜ」


 うーん。普通に断ったら面倒な感じになるタイプに見えるんだよねえ。

 だからと言って、生まれ変わって出直して来いとは言え無いし。どうするかな。


片桐かたぎり。何やってんだ?」


 うん? 誰ですかね。俺の名前を呼ぶ輩は。

 振り返ると茶髪ピアスとメガネ。もとい、館林と宝蔵院が居た。


「どうした」


 いや、どうしたもこうしたも、何でここに居るんですかね。

 そしてあれですか。助けてくれる流れですか? てか、なんで休日も君等に会わねばならんですか。ストーカーですか?


「いえ、別に」

「そうか。で、何してんだ?」

「ナンパなう」


 素直に答えてみた。

 これで頑張れとか言われたら、これから毎日上履きに画鋲を入れる作業が待っている。


「なんかキャラが……。いや、いいか」

「おい、お前等。コイツ等は俺達の連れだ。諦めろ」


 助けてくれるのは良いけど、誰が連れになりましたかね。この野郎。

 しかし、効果は覿面で、ナンパ達は茶髪ピアスに睨まれて退散して行った。


「えーと、助けてくれてありがとうございます」


 素直にお礼は言いますよ。

 たとえ、連れとか言われて不本意だと思っていたとしてもね!


「気にしなくて結構ですよ。で、片桐さん達はどこへ行く所だったんですか?」


 メガ……宝蔵院がそう尋ねてきた。

 いや、なんでお前が謙遜するん? 何もやってないよね。助けたの茶髪ピアスだよね。

 茶髪ピアスの方を見ると、気にするなと言わんばかりに苦笑いされた。


「私達はねー。これから隣街のショッピングモールへ行くのさ!」


 あー、希帆が答えちゃった。


「へえ、奇遇ですね。僕達もそこへ行く予定だったんですよ」

「……デートですか?」


 試しに聞いてみる。肯定されたらされたで対応に困るけどな!


「……片桐さん。僕にそういう趣味はありませんからね?」

「俺も、のぶとデートだなんてご免だな」


 ほほう。館林は宝蔵院の事を信と呼ぶのか。

 今度、信ちゃんって呼んだらどんな顔をするのか試してみようかな。


「どうです? ショッピングモールまで一緒に行きませんか?」


 勿論、着いたら別行動ですが。

 と、宝蔵院に言われた。一緒に買い物しようなんて言ったら荷物持ちとしてこき使おうと思ってたのだが、先を越された感じだ。

 まあ護衛にもなるし良いだろう。


「えー? 一緒に買い物しないの?」

「女性の買い物の荷物持ちは遠慮したいですね」


 希帆が尋ねると、宝蔵院がそう答えた。ははっ、ばれてーら。




 ----------




 はい。着きましたショッピングモール。

 既に、男子2人とは別れて別行動ですよ。

 え? 展開が速いって? 電車に乗ってるだけの描写が欲しいのか?


「さて! まずどこに行こうか!」


 希帆が見取り図を広げながら張り切っている。

 このショッピングモールだが、めっちゃ広い。去年オープンしたばかりだが、このショッピングモール専用とも言える駅が作られ、敷地内を端から端まで歩くだけで30分以上はかかるんじゃないかと言えるレベルの大きさだ。

 駅の傍にはメインとなる大きな建物がある。数回ここに買い物で来た事があるが、敷地全てを回れた事は1度も無い。大抵、歩き疲れた挙句夕方になり帰る事になる。


「まずはここへ行きませんか?」


 楓ちゃんが指差したのは、メインの建物内にあるペットショップだ。

 なるほど、猫や犬が見たい訳ですな。愛い奴よのう。そして、可愛い猫達と可愛い女の子達のダブルコンボで俺の萌え成分が急速補充されるという寸法か。

 これは異論なぞある訳が無い!


「分かった! 空もここでいい?」


 希帆が俺に尋ねてくるが、異論なぞ無い。

 首肯し、俺達はペットショップへと向かった。




 ----------




 ペットショップ内は結構な人が既に居たが、そんな事は余り気にならない。

 それよりも猫だ! 犬だ! 爬虫類は趣味じゃない! てか置いてない!


「いっぱいいるねー! 可愛いねー」

「可愛いですねー。飼いたいなあ」


 希帆と楓ちゃんが、ショーケースに吸い寄せられるように近づき、そのまま猫達を見始める。

 2人の顔も緩みっぱなしだ。これは良い目の保養ですな。

 しかし、俺も猫が見たい。でも、この2人にも萌えたい。ああ、でも猫が俺を呼んでる。お、落ち着け。これは孔明の罠だ。いや、罠でも良いから猫が見たい。


 結論としては、猫の誘惑に勝てませんでした。

 いやー、白毛のメインクーンを見つけた瞬間に俺の理性は宇宙の彼方へと飛んで行ったね。

 すっごい可愛いの。すっごい綺麗なの。ああ、飼いたいなあ。欲しいなあ。可愛いなあ。


「よろしければ、猫ちゃん抱っこしてみませんか?」


 店員さんに話しかけられた。抱っこなんてしちゃってよろしいんですかね?

 よろしいのであれば抱っこしちゃいたいんですけど、買えるお金無いですよ?


「ふふ、この子は人懐っこくて抱っこされるのが好きなんです。是非抱っこしてあげて下さい」


 ふ、ふふん。そこまで言われたら仕方ないですね。

 抱っこしてあげましょうか。やっほい!


 店員さんが、ショーケースから猫を出して俺に渡してくれる。

 生後70日程らしい。小さくて可愛い。そして、人差し指を出したらチューチューと吸われた。

 もうね。この猫は俺を萌え殺すつもりですかと。そして、俺の顔は絶対緩んでますよ。自覚あるけど、元に戻る気配すら無いよ。


「……猫も可愛いけど、今この場で1番可愛いのは空だよねー」

「ふふ、そうですね」

「店員さんもお客さんも殆ど空の事見てるもんねー」

「そうですねえ」


 なんか希帆達が喋ってる声が聞こえるけど、猫が可愛過ぎてどうでもいいなー。

 あ、でも希帆達に萌えるつもりでここに来たんだっけ。目的が迷子になったけど猫可愛いなー。


「凄い顔緩んでるねー」

「あの笑顔見たら、学校の男子はイチコロでしょうねえ」

「……写真撮ろうかな」

「あ、私も撮ります」


 あ、ゴロゴロ言い出した。可愛いなー。やばいなー。

 ああ、なんか希帆達の方からカメラの音がした。止めろって言わなきゃなーでも可愛いなー。

 欲しいなー。飼いたいなー。父に頼んだら買ってくれるかな。頼むだけやってみるかな。


 その後、10分程猫を堪能し父に電話してみる事にした。

 今日も仕事だけど、少し電話するくらいは大丈夫だろう。駄目なら母に頼み込めば良い。


『もしもし』

「あ、仕事中に済みません。今、大丈夫ですか?」

『ああ。問題無い。どうかしたか?』

「実は、どうしても欲しい物があってお願いしに電話しました」

『……珍しいな。空が物を強請るなんて。で、何が欲しいんだ』

「えっとですね。猫が欲しいんですけど……」

『……』

「ちゃんと世話や躾もしますし、予防接種等も私が連れて行きますので、駄目ですか?」

『……まあ、空なら大丈夫だろう。何かを強請るのも珍しいしな』

「じゃあ、いいんですね?」

『ああ。次の日曜は休みだから、そこで買いに行こう。店には空から言っておきなさい』

「ありがとうございます!」


 ふはは! 優等生万歳!

 家の父は厳しい人だが、ちゃんとやる事をやっていれば優しい。

 そして、俺は優等生で我が儘を言わない子として育ったのだ!

 たまにお願いすると大抵聞いてくれる。今回は値段が値段だったので不安だったが大丈夫だった。

 家に猫が来る! テンション上がってきた!


 その後、店員さんに話をし、住所や電話番号を書いて売約済みにしてもらった。

 希帆と楓ちゃんは、買うの!? と驚いていたな。まあ、俺もこうなると思ってなかったので驚いている。


 ペットショップを出た後は、色々な店を冷やかし、もといウインドウショッピングをしたり、希帆を着せ替え人形にして遊んだりした。

 ボーイッシュかつ可愛い系の希帆は、基本的に何でも似合う子だったよ。

 楓ちゃんと楽しみ過ぎて、希帆が少しげんなりしてたのは秘密だ。


 2人とも何着か服を買って満足そうだ。

 俺? 正直、猫を飼える事に満足して服とかどうでも良くなってたよ。

 クラークスのカジュアルシューズで良いのがあったからそれを買っただけだ。




 ----------




 帰り道、駅でまた館林と宝蔵院に会ったよ。

 猫のお陰で機嫌が良いので同行を許したが、彼等は本当にストーカーじゃあるまいな。


 帰りの電車では、館林がげんなりしていた。

 なんでも宝蔵院に1日連れ回されていたらしい。

 こういうのは彼女でも作って、そいつとやるべきだ。と愚痴っていた。

 それには全面的に同意する。少なくとも男同士でやる事じゃ無い。


 家に帰り、母と弟に猫を飼う事になったと伝えた。

 事後承諾だったが、怒られる事は無く、弟は純粋に喜び、母はちゃんと面倒を見るようにと言ってきた。

 勿論ですとも。むしろ猫の寝床は俺の部屋にしますよ。てか、一緒に寝る勢いですよ。


 ああ、早く週末にならないかなー。

 まだ、月曜さえ来てないけどね。

主人公が希帆と楓で萌え成分を補充しようとしたら、逆に補充させたと言う本末転倒な話。


そう言えば、話ごとに固有名詞に関しては初出でルビ振ってますが、邪魔ですかね?

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