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第7話

 俺こと、片桐空かたぎり そらの朝は早い。

 朝5時半に起きて、30分のジョギング。そして帰ってきたらシャワーを浴び、夜の内に下拵えしておいた物を弁当につめる。ここで大体6時半になる。後は30分程予習をして、着替えたら下に降りて朝食。8時少し前までゆったり過ごし、学校へ向かう。着くのは大体8時半かな。いつもこんな感じだ。


 なんでこんな話をいきなりしたかって言うと、今日はいつもと違う行動パターンを取るからだ。

 いつもだったら8時までゆったり過ごすのだが、今日はその時間を削って学校へ行こうと思う。

 なんでかって? そうすれば嫌なイベントが起きずに済むんじゃないかなと考えたからだよ。


 昨日作ったフロランタンを紙袋に入れて学校へ行く準備は完璧。

 あ、弟の分もちゃんと用意しましたよ。友達と一緒に食べるって喜んでたから良かった。

 因みに紙袋は手作りだ。ネットでそういうページを見つけたので、英字新聞を買って作ってみたが、意外と楽しかった。

 あ、どうでもいい? ごめんねー。




 ----------





 学校へと向かう道は、駅前の商店街を抜けて国道へ出て真っ直ぐ行くだけ。簡単で覚えやすい。

 現在の時刻は8時少し前。同じ学校の人は見かけすらしなかった。

 離れた所にあるグラウンドからなのかな。朝練の掛け声が聞こえる。


 昇降口に着いた。誰か居るかなと思って周りを見渡すが、シンとしており人っ子1人居ない。

 ふふふ、勝った! 何にって? 知らんがな。でも、そう言う気分になったのだから仕方あるまい。


 教室へ入ると案の定誰も居ない。

 なんか誰も居ない教室って良いよね。普段味わえない開放感と、独特の哀愁がある気がする。


 さて、何しよう。

 普段より30分ほど早くに来てしまった為、やる事が無い。

 暇だし、予習でもしようかな。明日からは本でも持って来よう。そうしよう。


 予習、と言っても教科書とノートを眺めるだけだが。をしているとガラガラと教室の扉が開かれる音がした。

 そちらへと顔を向けると、メガ……宝蔵院ほうぞういんがちょっと驚いた顔をしてこちらを見ている。

 へえ、コイツこんなに早くから来てるのか。顔の通り真面目君だねえ。


「……おはようございます」


 宝蔵院から挨拶をされた。初めての出来事だが、若干険のある言い方だ。

 昨日の委員長決めを根に持ってるのかな。申し訳無い事をした自覚はあるが、あれは仕方なかったんだ。

 そう、全てはクラスの奴等が悪い。でも、ごめんねー。


「おはようございます」


 俺も挨拶をして会話終了。

 宝蔵院も自分の席に座り、読書を始める。教室には2人きりな訳だ。

 何これ。なんか気まずいんですけど。誰でも良いから早く来て!


 そんな俺の願いが通じたのか、程無くしてかえでちゃんが教室に入ってきた。

 そう、彼女が入ってきたその瞬間、教室と言う殺風景な空間は消え去り、まるで一面の草原が広がる世界に天使が舞い降りたようなって、そんな大げさな物じゃないけどさ。

 まあ、気まずい空気からは救われた訳ですよ。


「あら? 空さんおはようございます」


 多分、俺が居るのが意外だったんだろう。

 一瞬驚いた顔をしてから、にこやかに挨拶をしてくれた。


「宝蔵院君もおはようございます」

「……おはようございます」


 彼の険がある言い方は素なのか?

 我が天使である楓ちゃんに挨拶して頂いたと言う栄誉にあずかりながらその反応。万死に値する!

 なーんて事は無いけどさ。あれが素なら委員長の件は根に持って無い事になるね。良い奴かもしれん。


「楓ちゃんおはよう」


 席に座った楓ちゃんに挨拶をする。


「おはようございます。今日は早いんですね」

「うん。早く来たら面倒なイベントに巻き込まれずに済むかなって」


 俺が苦笑いをしながら言うと、楓ちゃんも苦笑いをする。


「その顔を見る限り、巻き込まれずに済んだみたいですね」

「うん。今度からこの時間に来る事にするよ」


 話を聞くと、俺が朝告白された日はかなり機嫌の悪そうな顔をしていたらしい。

 それが無くなりそうなら、良かったと言ってくれた。


「そうだ。今日お菓子を焼いてきたんだ。お昼に希帆きほも一緒に食べようね」

「良いですね! どんなお菓子を作ったんですか?」

「フロランタンってお菓子だよ。知ってる?」

「買って食べた事はありますけど、作った事は無いですね。楽しみです」


 この会話の最中、楓ちゃんは目を大きくしたり、微笑んだり、コロコロ表情が変わってた。

 かわええの。分かるかな。清楚なお嬢様って感じの子が、お菓子1つで嬉しそうに色んな表情をすると言う、この萌えが!


 その後、パラパラと人数が増え出し、希帆も教室に入ってきた。

 鼻歌でも歌ってるかのような陽気な雰囲気だ。いつもながら可愛くて癒される。


「おっはよー! あれ? 空が居る!」


 なんでー! と驚いた様子の希帆。

 俺が先に居るのがそんなに変ですか。変ですね。今まで無かったものね。


 楓ちゃんに説明した事をもう1度希帆に説明をして、納得された。

 そして、フロランタンを焼いて来た事を告げると「昼休みはまだか!」と気が早過ぎる事を言っていた。

 希帆? まだ授業すら始まってないからね?




 ----------




 はい。待ち遠しい昼休みのお時間となりました。

 まあ、待ち遠しかったのは主に希帆ですがね。もう、早く行こうと急かされて大変だった。


「さあ! お菓子食べよう!」


 いつものベンチに座り、弁当を広げようとすると希帆がそう言って、爛々とした目で紙袋を見る。

 いや、弁当先に食べようね。お食後にしようね。


「希帆ちゃん。先にお弁当食べましょう?」


 楓ちゃんもそう思うよね! 良かった。楓ちゃんからも先に食べたいと言われたら断れない所だったよ。

 希帆も分かったと、不満そうながら了承してくれた。食い意地は張ってるけど、聞き訳の良い子だよね。


「ああ、ここに居たんですか」


 突然、後ろから声がしたと思ったら、メガ……宝蔵院と茶髪ピアスが立っていた。

 何の用ですかね。俺はこれから2人が可愛く弁当を食べるのを眺めるので忙しいんですけどね。


「何か?」

「いえいえ。朝方話していたフロランタンが気になりましてね。昨日の委員長の件をそれで水に流せればと思いまして」


 ……ぐ。

 コイツ、根に持ってない訳では無かったか。

 むしろお菓子1つで水に流せるなら安い物だが、俺の貴重な眼福タイムが阻害されるのは痛いな。

 つか、なんで茶髪ピアスも一緒に居るんだ? このミスマッチな2人が仲良かったりするのかな。

 あ、茶髪ピアスにも借りあるじゃんか俺。

 ……よーし、仕方あるまい。ここで一気に2人に対して借りを返してしまおう。


「分かりました。そちらの……方にも前に助けて頂いたお礼がしたいので、ご一緒に如何ですか?」


 はい。名前分かりませんでした。

 初日に自己紹介したろって? 野郎の自己紹介なんざ碌に聞いてませんよ。


「もしかして、彼の名前分からないとか?」


 宝蔵院、空気読もうぜ? そんなんだからメガネとか言われるんだ。


「い、いえ。そんな事は」

「じゃあ、俺の名前言ってみ?」


 おい茶髪! そんなニヤニヤしながら聞いてくんな! くっそ!

 落ちつけー。なんか伊達って苗字だったような気はするんだ。

 うーん……よーし分からん! 勘で行こう。


伊達だて……政宗まさむねさん?」

「疑問形の時点で分からねーの確実じゃねーか……。俺の名前は館林輝宗たてばやし てるむねだ」


 ……そっちかい! 父親の方だとはさすがに思わんさ!

 誰か! 誰か、お客様の中に二本松にほんまつ様はおられませんんか!

 ふう。落ち着こう。伊達じゃなくて館林だしな。二本松が出てきてもフラグにはなるまい。


「えっと、改めまして片桐です。よろしくお願いします。館林君」


 体裁を整え軽く会釈しつつ改めて自己紹介をしてみる。

 茶髪ピアス改め館林輝宗も、よろしくと言ってくれたので失礼な事を考えたのは、ばれなかっただろう。


「そう言えば、2人は仲が良いんですか?」


 楓ちゃんが気になっていた事を聞いてくれた。まじグッジョブ。


「ああ、コイツとは幼稚園の頃からの腐れ縁ですよ」


 宝蔵院がそう説明をしてくれた。そのまま腐ればいいのに。


「片桐さん。何か?」


 あ、メガネの目が笑って無いね。やばいね。


「いえ、仲が良いんですね」


 茶髪ピアスに舌打ちされたよ。

 きっと照れてるんだね。そうに違いないね。ツンデレって奴だね。そう思う事にしよう。


 その後、5人で弁当を食べて食後にフロランタンを食べました。

 かなりの好評で嬉しかった。希帆が無言でリスの様にポリポリと次々食べてたのは、笑ったと同時に俺を萌え殺す気かと思ったね。

 多分、男2人が居なかったら写真を撮っていた。


 あ、男2人は今までの奴等とは違って、下卑た目も一切向けず、何と言うか対等な感じで見て来る感じだった。

 まあ、イケメンだし女には困って無いんだろうな。爆発すればいいのに。

 この2人なら、怖く無いしある程度仲良くしてやらんでも無いって感じ。




 ----------




「好みだろ?」

「何が」

「気の強そうな感じとか」

「何の話だよ」

「さあ?」

「意味が分からん」

「そうだな」




すこーし動かせたかなーと。

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