第3話
今日は選択科目を決める日らしい。
美術、書道、音楽から1つを選ぶそうな。どれでもいいじゃんねー。
美術は余り興味ないし、書道は昔からやってたし、音楽かな。ピアノ以外も触ってみたいしね。
その後は校舎案内。
特殊教室は色々とあったが、多過ぎるからか授業で使う教室に案内されただけで終わった。
食堂は広かった。てか、食堂だけで1つの建物になってた。校舎と部室棟の間に広い空間があるのだが、そこに食堂があるのだ。校舎から屋根付きの渡り廊下で繋がり、全面ガラス張りになった開放感のある円形の建物。それが、この学校の食堂らしい。因みに、食堂の周りは池に囲まれ、部室棟側に橋が架かっている。そして、池の周りは芝が張られ、桜などの木々が植えられている。テーブルベンチまで置かれており、そこらの公園より豪華な空間がそこにはあった。
ああ、もちろん食堂にはカフェテラスみたいなのもありましたよ。意味が分からないくらい豪華ですよね。
教室に戻って、選択科目を記入した用紙を提出して今日は終わりらしい。
最初に言った通り音楽でいいだろう。
「空は選択科目何にするのー?」
隣の希帆が話しかけてきた。
相変わらず、にこーって笑ってる。可愛いよ希帆可愛いよ。
「私は音楽にするつもり。希帆は何にするの?」
「んー、まだ決めてないんだ。空と同じにしていーい?」
まーたこの子は小首傾げて!
そんな可愛いと食べてしまうぞ!
「いいよ。一緒に頑張ろうね」
断る理由なんてある訳無いよね!
でも、希帆は音楽やった事あるのかな。いや、むしろここは下手な方が一生懸命やってる姿を見れてお得かもしれない。
「うぇっへっへー。じゃあ、同じにするー。楽譜も読めないけど大丈夫だよね!」
その可愛く無い笑い方は癖なのだろうか。慣れればこれも可愛く感じそうだから困るが。
「困った事があったら教えてあげるよ」
希帆が分かんなーいって縋り付いて来るのは鼻血ものかも知れん。
「おー! 是非ともよろしくお願いします!」
「うん。頑張ろうね」
よーし、何を聞かれても大丈夫なように勉強をしなければならん。
頼れるお姉さんな感じになるのだ。ふふふ、今晩から忙しくなるぞ!
「希帆ちゃんは何にしたんですか?」
前の席の子が、希帆に話しかけた。
そちらを見ると、黒髪ロングのお嬢様って感じの子が居る。
「音楽にしたよー。空と同じにしちゃった!」
相変わらず、にこーって笑う希帆。
にしても、入学2日目にして既に何人かと交友を持っているのか?
物凄いコミュ力だ。
「あ、空! こちらは、吾妻楓ちゃん! 中学時代からの友達なんだー!」
ああ、なるほど。中学時代からの級友でしたか。
「吾妻楓です。よろしくお願いします。片桐さん」
太陽のような笑顔の子の次は清楚なお嬢様ですよ!
俺のテンションが有頂天ですよ!
「片桐空です。空って呼んで下さい。よろしくね」
笑いかけながらそう言う。
片桐さんなんて他人行儀な呼び方は駄目ですよ。まあ、野郎共に俺の名前を気安く呼ばせる気はさらさら無いけどね! 女の子は別なのさ!
「じゃあ、空さんで。私の事も楓って呼んで下さいね」
そう言って笑う楓ちゃん。
なんて言えばいいかね。希帆の笑顔が太陽なら、楓ちゃんの笑顔は癒しの風って感じだ。うーん、上手い事伝わればいいんだが。
「よろしくね。楓ちゃん」
「そうだ! 楓は選択科目決まったの? 迷ってるなら一緒のにしようよ!」
互いに自己紹介が終わった後、希帆が楓ちゃんにそう誘う。ナイスだ!
「いいんですか? じゃあ、ご迷惑じゃなければご一緒させて貰ってもよろしいですか?」
ご迷惑なもんですか! 可愛い子が多いのは素晴らしい事ですよ。
「迷惑なんてある訳無いでしょう。楓ちゃんも一緒に頑張ろう?」
「じゃあ、私も音楽にしたいと思います。よろしくお願いしますね」
「うぇっへっへー。これで楓も一緒だー! 楽しいねー」
にこーって笑いながら本当に楽しそうにする希帆。
この子の笑顔を見ていると、こっちまで楽しくなる。本当にええ子や。
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その後、一緒に帰ろうって話になり、昇降口まで降りる。
これから毎日一緒に帰ろうぜ。ってな具合に俺のテンションは止まる事なく上昇しっ放しだ。
「あ、あの! 片桐さん!」
昇降口まで降りると、待ち伏せしていたのか1人の男子に話しかけられた。
コイツ誰だろう。同じクラスでは無いと思う。てか、なんで俺の名前知ってるんだ?
「ちょちょちょちょっと、よろしいでしょうか!」
「はあ……なんでしょう」
凄いどもってるし、ガチガチだ。
まあ、急ぎでは無いし少しくらい構わないけど、何の用なんだろうか。
「えっとですね……。一目惚れしました! 僕と付き合って下さい!」
……ああ。そういう事ですか。
「ごめんなさい」
初めて会って、名前も知らないのにOKすると思っているのだろうか。
てか、男子と付き合うとか気持ち悪い事この上ない。
「駄目……ですか」
「はい。済みません」
俺が追い討ちをかけると、ガックリと肩を落として去って行った。
俺も、さっきまでのテンションが嘘みたいに落ちた。
中学時代もそうだったが、なんで初対面で告白なんてできるんだろう。
中身を知らないのに好きって言われたって嬉しくもなんとも無いに決まってるだろう。
「おーおー、今の子結構カッコ良かったのに断っちゃうんだー」
にこーじゃなくて、ニヤニヤと笑いながら希帆が弄ってくる。
希帆。俺はその笑顔あまり好きくない。いつものがいいな。
「だって、初対面だよ? 私の事何も知らない人に告白されたって嬉しくない」
「ですよねー。私も自分の事をたくさん見てくれる人に好きになって欲しいです」
楓ちゃんも同意してくれた。やっぱりそうだよね。
まあ、俺の場合は男と付き合うのは嫌だっていう前提があるので、若干違うかもしれんが。
「ふーんだ。もてる人は皆そう言うんだ! 選り好み、贅沢って言うんだぞ!」
希帆がむくれてそう言う。むくれてる顔も可愛いが、希帆だって絶対もてるだろ!
「何言ってんの。希帆だってもてるでしょ?」
「希帆ちゃんはですね。男子とも簡単に仲良くなってそこから好きになられるパターンが多いんです。だから、仲の良い男子は気まずくなるのが怖くて告白できないんですよ」
俺が希帆にそう言うと、そっと楓ちゃんが教えてくれた。
なるほどなるほど。仲が良い好きな子に告白して振られたら気まずいもんね。それなら告白せずに仲良く一緒に居られる方がいいってパターンか。
「何内緒話してんのー! 私も混ぜろーい!」
少し前を歩いていた希帆が、俺と楓ちゃんの間に飛び込んでくる。
多分、男子の前でもこんな感じで仲良くなっちゃうんだろうな。そして、気が付いたら好きになってる男子が多いんだろうな。
「希帆は可愛いよねって話をしてんだよ。ね、楓ちゃん」
「ふふ、そうですね。希帆ちゃんは可愛いですね」
「そっそんな事言ったって嬉しくなんかないんだからねー!」
顔が真っ赤になりながらそんな事言ったって説得力が無いぞ。
こちらとしては、そんな姿も可愛いので構わないんだがな。
その後は、真っ赤になった希帆を弄りながら帰りました。
友達が2人に増えて、そしてとても良い子だ。この学校に入って良かったなと思う。
余裕があるうちに更新する作戦。
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