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第18話

内容がないよう……。

 球技大会も無事終わり、中間考査が目前に迫ろうとしている。

 まあ、私自身は高校卒業レベルまでは既に終えている為、気を張る事は無いのだが、希帆きほに泣きつかれた為、勉強会を開くことになった。なんでも、高校に上がってからレベルがぐんと上がった為、不安なのだとか。

 そういう人はかなり多いだろうな。かく言う私も、前世では数学で半泣きになった身だ。

 まあ、先生つかまえて猛勉強したからなんとかなった訳ですけども。

 あ、そんな事はさて置き、勉強会です勉強会。会場は私の家。

 希帆の家は? と聞けば、弟達がうるさいので無理と言われ、じゃあ、かえでちゃんの家と言ってみれば、その日は丁度来客があるとかで難しいと言われた。

 私は、2人の家に遊びに行ける日が来るのだろうか。なんだか、何かにつけ理由を作られて、お断りされる気がしてならない。

 いや、うん。そんなの気のせいだよね! ね!




 ----------




 てな訳で、私の家で勉強会です。因みに場所は私の部屋。さすがに、他に家族が居る所で勉強会は集中できないしね。

 てか、勉強会なんて言うけれど、実は私のやる事って無いんだよね。強いて言うなら、試験範囲を軽く見直しする程度だ。

 だったら、なんで勉強会なんて参加したんだよ。って思うかもしれないけど、可愛い女の子と一緒にお勉強だよ? 憧れるでしょ? だから仕方ないんだよ!


 そんな事を考えていたら、隣から唸り声が聞こえた。

 隣を見てみると、希帆が頭を抱えて唸っている。何をそんなに困っているのだろうか。


「どうしたの?」


 私が声をかけると、縋り付くような目でこちらを見る希帆。本当に何なんだ。


「助けて……分かんない。無理」


 今にも泣きそうな顔をしている希帆。それが少し可愛いけど、まあ可哀相なので助けてあげよう。

 何が分からないのか尋ねると、古文。と小さな声で返された。

 しかし、あれだ。元気が無くなって、弱ってる希帆が可愛い。こう、なんて言うのかな。凹んでて、目がウルウルしてる所を、大丈夫だよーって抱きしめて可愛がりたい感じ。こういうのなんて言うんだっけ。……あ、あれだ! 保護欲!


 しかし、古文か。私もあれは苦手だった。読んで問題を解く分には活用なんて要らないって事に気付くまでは凄く大変な思いをしたしね。

 まあ、私の事はいいか。とりあえず希帆に聞いてみよう。


「漢文はどうなの?」

「……古文できないのに漢文なんてできる訳ないじゃん……」


 私が尋ねると、突っ伏した状態から顔だけこちらへ向け、じとーっとした目を向けてくる。そう言うと思ったよ。

 しかしあれだ。古文ができれば漢文ができる。なんて言うけれど、なぜ逆も言えると皆気付かないかね。しかも、私個人としては、漢文から古文を覚えた方が圧倒的に楽だ。て言うか、覚えた方がいいかと言われるといいに決まってはいるのだが、古文を読むという行為に活用なんて一切必要が無いって事を知って欲しい!


「漢文ができれば、古文も簡単にできるようになるよ?」

「……え?」

「……本当ですか?」


 希帆にそう言ったら、希帆からは信じられないと言う顔をされ、黙々と自分の勉強をしていた楓ちゃんにも反応された。

 てかね、高校レベルなら古文ができれば漢文もってなるかもしれないけどさ、普通に考えたら古文できたって漢文できないよね。送り仮名があれば別だけどさ。そんなに優しい問題ばかりじゃないし。白文で漢字1つ1つの意味が分からないのに読める訳がない。


「本当だよ」

「え、でもほら! 活用とか色々覚えなきゃ駄目じゃん!」

「あ、要らないよ、それ」

「……え?」

「まあ、覚えた方がいいに決まってるけどね。読む分には要らないよ」

「ど、どういう事?」


 このやり取りで、希帆は目を真ん丸にして驚いている。いやー、驚いてる希帆は可愛いね。

 しかし、説明か。いざ説明となると難しいな。上手く伝わればいいのだけど。


「じゃあ、尊敬語と謙譲語の話をしようか」


 希帆はそれを聞いて、うんうんと頷く。横で楓ちゃんも手を止めてこちらを見ていた。


「まず、そもそもの話として、目上の人にへりくだる時に尊敬語使う?」

「……使わない……ね」

「そうですね、使わないです」

「そうだね。自分が謙る時なんて謙譲語以外あり得ないよね。じゃあ、部下に対して命令する時に尊敬語使う?」

「使わないね」

「使わないと思います」

「うん、つまりだ。ここで重要なのが、文脈から誰に対して言ってるのかを読み取る事だよね。活用なんて一切入ってくる余地はないの」


 ここまで大丈夫かと聞くと、頷く2人。


「で、なぜ私が漢文を推奨するかと言うと、単語を覚えるのが楽だから。これに尽きるね」


 そこで2人揃って首を傾げる。そんな2人が可愛くて萌えたいけれども今は真面目な話。ぐっと我慢をする。


「漢字源って知ってるかな。返り点の意味をしっかり把握して、この漢字源があれば、漢文はできたも同然だよ」


 そう言って、漢字源の入った電子辞書を見せる。本当は紙媒体の辞書を使った方が単語とか覚えるから良いのだけどね。学校に持って行くには重すぎるのですよ。広辞苑とかさ。


「……漢和辞典じゃ駄目なの?」


 そう言って少し残念そうな顔をする希帆。多分、漢和なら持ってるのだろう。


「普通の漢和辞典でも良いと思うよ。でも、私は漢字源の方が信頼度は高いと思う」


 私の言葉を聞いて、少しほっとしたような残念なような顔をする希帆。


「これで漢字の意味を調べて、返り点をしっかり把握すれば漢文は読めるようになるよ。文法は英語とそっくりだし」

「漢文がそれでできるようになるのは分かりましたけど、それがなんで古文に繋がるんですか?」


 私が説明を終えると、楓ちゃんがそこに突っ込んできた。確かに古文と繋がる理由を教えてなかったね。こいつは失礼。


「じゃあ、『しこうして』って言葉があるよね。これの意味分かる?」

「えーっと、そして、とかだっけ」

「そうだね、じゃあ漢字で書ける?」

「え? あ、えーっと……無理」


 案の定である。因みに、これが漢文古文の最も非効率的な部分だと私は考えている。


「意味は分かるけど、書けない。となると、漢字だったら読めない可能性の方が高そうじゃない?」

「……確かに」

「じゃあ、これを漢字で覚えたらどうなる?」

「……ん? どういう……」

「つまり漢文の方で『しこうして』って意味を覚えるの。そしたら基本的に平仮名になってる古文の方でも意味が分かるんじゃない?」

「あ、ああー! なるほど!」

「平仮名で覚えたって読めなきゃ意味ないじゃん。漢字で読みと意味を覚えちゃえば一石二鳥じゃない? 漢文の日本語読みと古文は一緒だからね」

「言われてみれば、そんな気がする!」


 ちょっと試しに漢文やってみるよ! そう言ってまた集中し始める希帆。楓ちゃんも、私もと言いながら漢文をやり始めた。

 因みに余談ではあるが、前世では、この勉強法でセンター試験で190点台を取った。活用なんて1個も覚えてないのに、だ。

 そんなこんなで、漢文は古文をやればできるようになる。なんて言ってる奴は馬鹿だとしか思えない私である。逆の方が絶対楽!




 ----------




 2時間くらいは集中してやっただろうか。さすがに疲れてきたらしく、希帆の集中力が切れ始めた。


「ねえ、疲れてきたしさ、ちょっと休憩しよ!」


 案の定、来帆がそう提案してくる。まあ、ここまでずっと集中してやってきたしね。

 せっかく、皆でやってるのだから楽しくやらないと意味がないよね。


「そうだね、そうしようか」

「私も少し疲れました」


 楓ちゃんもそう言って、シャーペンを置き、んーっと言いながら伸びをする。


「じゃあ、お茶でも入れて来ようか」

「あ、待った!」


 私が立ち上がろうとすると、慌てたように希帆に止められた。なんだろうか。


「小腹が減ったのでコンビニでも行きませんか!」

「あ、私も行きたいです」


 あー、そっか。今はお菓子の作り置きなんて無いしなあ。お茶請けが無いのも寂しいよね。


「じゃあ、ちょっと歩くけど行こうか」

「おー!」


 掛け声と共に立ち上がる希帆。そして、ちょっとってどれくらい? と聞かれたので、5分くらいと答えると、近いじゃん! と言われました。あれー? そうかなあ、普通か少し歩くレベルじゃない?




 ----------




 てな訳で着きました、コンビニエンスストアです。


「そう言えばさ、なんでセブンゼロって言うんだろうね!」


 希帆が突然そんな事を言った。どうでもよくないですかね。ああ、でも皆1度は思う事でもあるのかな。

 因みにお店は、あの有名なコンビニチェーンだ。濃い赤と言うか、なんて表現したら良いのか分からない色の制服で、夏場は緑色のポロシャツに変わるあの店だ。


「できた当初は、朝7時から午前0時まで開店してたから、らしいよ」

「へー! そうなんだ。昔は24時間じゃなかったんだねえ!」


 そうだね。私も知った当初は驚いたものだが、昔から24時間なんて無いだろうなあって事で納得した。そして、安直なネーミングだったんだな、と少し笑ったものだ。


「で、何買うの?」

「ポテチ! ポテチが食べたい!」


 私が尋ねると、ノータイムでそう答える希帆。そんなにポテチが好きか。


そらは何味が好き?」


 私はやっぱりのり塩だね! と言いながら私に聞いてくる。

 私はなんだろうなあ。ここの所、ずっとポテチなんて食べてなかったからなあ。……って、あれ? 私、生まれ変わってからポテチを食べた記憶が無いぞ。いや、そんなはずは無い。絶対どこかで食べてるって。確かに、健康や美容的によろしくないので、食べる癖をつけたらいけないって事で、意図的に避けてはいたけど。

 ……なんてこった。やっぱり食べた記憶がない。


「どうしたの?」


 答えようとして固まった私を心配したのか、希帆が声をかけてくる。

 あ、心配かけてごめんね。大丈夫だからね。てか、希帆のお陰で衝撃の事実に気付く事ができました。ありがとうね。


「……私、ポテチ食べた事がないかもしれない」

「え? いや、そんなまさかー!」

「それは、さすがに嘘ですよね?」


 私が答えると、信じられない! って顔をする2人。いや、私も信じられないけどさ。本当なんだよ。

 そう言うと、天然記念物がおる……。と、更に驚いた顔をされた。


「じゃあ、私が買うから空にも分けてあげるね!」


 ポテチデビューだ! そう言って希帆は、2袋ほど籠に入れた。2つも食べられるの? 自分がポテチを食べた事がない事実にも驚いたけど、お姉さんそれにも驚きだよ。


「さあさあ! 2人も選ぼうよ!」


 そう言われたので、素直に従って、店内をうろつく。

 何を買おうかなー。コンビニ来たってお菓子とかあまり買わないしなー。基本的に買うのって、筆記用具とかファッション誌だしな。困ったなって、ん?


 何を買おうか困りながら店内を見回して目に止まったのは、デザートコーナーの商品だ。

 見つけたのは、抹茶ムースの杏仁豆腐と書かれた商品。

 そっか、少し過ぎたけど新茶の季節だもんね。こういう系の商品も出るか。

 てか、季節的に発売されてから結構たってるはずだけど、全然気付かなかったな。

 コンビニ自体はたまに来てるし、どんだけ目的の物以外に見向きをしなかったんだって感じだよね。


「なんか良いのあった?」

「これが美味しそう」


 希帆が足を止めた私の横から覗き込んできたので、商品を手に取り見せる。


「へー、こんなのあるんだ! でも、空って甘い物苦手って言ってなかった?」


 基本的には苦手だね。でも、杏仁豆腐とかゼリーとかプリンとか、喉越しが良い物は好きなんだよね。

 むしろ、カボチャプリンとか見かけたらほぼ必ず買っちゃうレベルで好きだし。

 それに、ごくたまにだけど、甘い物を食べたくなる時もあるのです。

 そう答えると、そういうもん? と言われた。そういうもんなんですよ。


「あとは何か買う?」


 希帆にそう言われたけど、別に要らないかなー。なんか、良いのがあれば別なんだけどって……あれ良いな。


「……枝豆食べたい」

「おっさんぽいよ?」

「……美味しいじゃん」


 希帆に若干凹む事を言われたが、気にせずに籠に入れる。いいんだ。美味しいからいいんだ。

 別におっさんぽいとか言われたって気にしないし! 事実、前世からの年齢を考えるとってこれ以上は考えるのを止めよう。まだ、ピッチピチでっせ!


「で、楓ちゃんは何にするか決めた?」


 1人、黙々と商品を選んでいた楓ちゃんに声をかける。


「あ、はい。とりあえずこれにしようかと」


 そう言って見せてくれたのは、コアラの音頭と言う定番のお菓子だ。

 うん、たまーに食べたくなるよね。そして、1個ずつ違う絵柄なのが少し楽しいんだ。


「きのこたけのこじゃないんだ?」


 希帆がそんな事を言う。おい、止めるんだ。戦争が始まってしまう。


「友達同士で戦争はしたくないです。あとは、これですかね」


 クスクスと笑いながら、そう言う楓ちゃん。なんて賢明な子なんだ。ここにまた1つ世界平和が生まれた。って大げさだね。さすがに言い過ぎだね。

 また、手にとって見せてくれたのは、故郷の母と言うこれまた定番のクッキーだ。

 柔らかい生地が病みつきになるんだよね。これまた、たまに食べたくなるやつだ。


 あとは、2人がジュースを取ってきて買い物は終了だ。

 私は、家でコーヒーを入れるので、飲み物は不要。

 レジで会計を済ませ、家に戻る。相変わらずこの店の接客態度は良かった。パートのおばちゃんも、大学生っぽい人も皆、にこやかに接客してくれるので気分が良い。

 2人にそんな事を言うと、美人って得だよねって言われた。

 いや、そんな客の顔で接客態度が大きく変わるような事なんて無いでしょ。

 そう言い返すと、溜め息と共に、分かってないな。と、言われる。そんな事は無いと思うんだけどなあ。


 因みに、家に帰って希帆にポテチを貰ったけど、塩辛くて駄目だった。

 食べるのは前世ぶりだけど、味覚って変わるんだなあ、と思ったよ。うす塩ならいけるんだろうか。でも、駄目だったら損した気分になるしなあ。試すのは止めとこう。




 ----------




 時は過ぎて、試験最終日。

 まあ、特に書く事もなく試験は既に終わりましたがね。


「空ー。試験どうだった?」


 希帆と楓ちゃんが席に来て、そう尋ねてくる。2人の顔を見る限り、笑顔なので出来は良かったのだろう。


「私はいつも通りだよ。2人は?」

「ふっふー。今回は良くできた自信があるよ! 色々教えてもらったお陰かもね!」

「私もいつもよりできた気がします。空さんのお陰です」


 ありがとう、とお礼を言われた。

 そんな、私のお陰じゃなくて2人の実力ですよ。いやーでも、2人が嬉しそうにしてるのは、こちらも嬉しくなるね! 良い事をした。


「この後はどうするの?」


 希帆がそう言ってくる。なんだろう? 試験も終わったし遊ぼうって感じなのかな?

 とりあえず、家に帰って自己採点をするつもりだと伝えると、なら一緒にやろうと誘われた。


「なら、図書館でやる? わざわざ私の家まで行くのもあれだし」

「そうだね! 賛成!」

「じゃあ、早速行って席を確保しちゃいましょう」

「それ、僕等も混ぜてもらっていいですか?」


 さて、行こうか。と立ち上がると後ろから声をかけられた。

 振り返ると、宝蔵院ほうぞういんと、館林たてばやし鍋島なべしま君がいる。

 そう言えば、なんで宝蔵院と館林だけ呼び捨てにしてんだろ。まあ、喋る時は君付けしてるけどさ。

 きっとあれかな。呼び捨ての方が似合いそうだからだな。うん、自分で言ってて意味が分からないや。

 しかし、一緒に自己採点か。別にいいけど、真田さなだ君と今川いまがわ君は一緒じゃないのな。球技大会で一緒だったし仲良くなったりとか別に無いのか。


「ああ、アイツ等は赤点さえ取らなきゃ成績なんてどうでもいいんだとよ」


 まったく、こちとら成績下がったら呼び出しくらうってのに。と、私が疑問を口にするとぼやく館林。

 まあ、スポーツ特待生と野球で入った人だからね。勉強面は大会出場の件もあるから、赤は駄目だとしても、それ以上を目指す事はないか。しかし、私達は勉強面で結果出さないと駄目だけど、彼等はスポーツで結果出さないと駄目だしな。どちらのプレッシャーが大きいかって言ったら、スポーツの方が大変そうな気がするよ。私にはきっと無理だ。


「まあまあ、それより早く行こうよ! 席なくなっちゃうかもしれないしさ!」


 あ、そうだね。早く行かないとね。

 後ろから付いて来る鍋島君が、このメンバーと一緒に自己採点とか、俺の心はもつのか? とかブツブツ言ってたけど、気にしないでおこう。




 ----------




 結構な時間を取られたが、皆で答え合わせをしながらの自己採点が終わった。

 希帆と楓ちゃんは、ほとんどが80点以上で、中には90台もあったため喜んでいた。

 宝蔵院は、平均が90台って感じで、満点は無いもののかなりの好成績と言える。

 館林は、半分ほどが満点。残りも90点以下は無しと、文句の付けようが無い成績だった。

 鍋島君は、平均が60台。良いものは70点ほどと、良くも悪くもない感じだ。


「で、空は自己採点何点だったの?」


 ん? 私の成績とか需要無いからどうでもよくない? てか、あんなポカミスをしたんだろう。それが凹む。


「……あんまり良くなかったの?」


 私が自己嫌悪で凹んでいると、希帆が心配そうに声をかけてくる。

 いや、点数自体は良かったよ。でも、勉強不足とかそれ以前の間違いをしちゃったから凹んだだけだよ。


「いや、そんな事ないよ。ただ、1問だけ簡単なミスをして間違えちゃって」


 私がそう返すと、一瞬私が言った意味を考える顔をして、その後驚いた顔をされた。


「……1問だけ?」


 そう、1問だけ。その1問が無ければオール満点だったのにね。凹むね。


「……全教科で?」


 うん、だからさっきからそう言ってる。


「全教科で1問しか間違えなかったの?」


 自己採点が間違えてなければ、そうなるね。てか、さっきから希帆は何をそんなにしつこく確認してくるのかな。


「……空にガリ勉女の称号を授けるよ」

「……酷くない?」


 素直に答えれば、この仕打ちである。さすがに酷いので抗議はするが、実は反論の余地が無いのは自分でも分かっているのが、嫌になる所である。しかし、ガリ勉女と呼ばれるのは嫌だ。私自身、ガリ勉かもしれないが、勉強だけでなく他にも色々頑張ってるのだ。そんな安い言葉で片付けて欲しくない!


「しかし、勉強に料理、美容に運動って呆れるくらい反則な人だよね、空って!」


 こういうの何て言うんだっけ! とは希帆。


「確かあれだろ、チートってやつ」


 反則とかズルって意味じゃなかったか? とは館林である。

 2人揃ってなんて酷い言いぐさだ。努力はしたけど、ズルはしてないぞ! あ、前世の記憶ってある意味ズルかなあ? ……ズルだなあ。

 そうか、私は今までズルをしていたのか。いや、でも私自身に備わった才能的なアドバンテージでもある訳だし……。

 うん、考えるのを止めよう! 意味無いし!


「これで、武道とかやってたら本当の意味で反則キャラだな」

「……武道は時間が無かったので、できませんでしたね」


 館林に言われた言葉にそう返す。なんで私が今まで武道をやらなかったかと言うと、本当に時間が無かったからに尽きる。なにせ、今まで勉強や料理、その他習い事等やる事が山とあったのだ。

 必然的に武道の優先順位は下がっていった。

 最近は時間もあるし、武道をやってみるのも良いかもしれないな。となると、何をやろうか。やはり、細い体型は維持したいし、薙刀とか合気道かなあ。

 あ、でも希帆や楓ちゃんとも遊びたいから休み潰して道場通いは嫌だな。

 うん、武道をやるかはもう少し慎重に考えよう。今の所必要だともあまり思わないし。


 ……何の話をしていたんだっけ。あ、そうだ自己採点だよ、自己採点。

 てか、自己採点終わったよね? 帰ろう帰ろう。


「えー、折角テスト終わったんだから打ち上げにカラオケでも行こうよ!」


 私が帰ろうと言うと、そう言って希帆が不満そうにする。

 なんで、高校生とかって打ち上げが、イコールでカラオケなんですかね。

 私は、カラオケ向きの曲をあまり知らないってこの前言ったばかりですよね!


「ね! 皆で行こうよ!」


 あ、行くのって希帆と楓ちゃんとじゃなくて、ここに居る面子となのか。

 んー、野郎とカラオケねえ。まあ、前回も行ったけどさ。正直、男が歌ってる姿見たって楽しくもなんとも……。……まあ、この面子なら一緒でもいいかなあ。


「俺はこの後バイトがあるからパスするわ」


 私が折れて、行こうかと言おうとすると、館林がそう言った。


「えー、行けないのー?」

「悪いな」

「……なら、行くの止めようかー」


 1人だけ行けないのもなんかねー。と希帆が言う。まあ、確かにここまで話をして1人だけ居ないのは盛り上がりに欠けそうだ。


「気にしないで行って来いよ」

「いや! いいんだ。次があるさ!」


 そんな館林と希帆のやり取りを見ながら、ふと思った。バイトって何をやってるんだろう。


「バイトって何をしてるんですか?」

「…………秘密だ」


 私が聞くと、たっぷり見つめられた後に、目を逸らしてそう言われた。

 しかし、そう言われてしまうと余計気になるのが人の常だ。誰か彼の情報を持ってる人は居ない物だろうかって、宝蔵院が居るじゃないですかー。おっとニヤニヤしてはいかんですよ。今はまだ堪えるのだ。


「宝蔵院君は、館林君のバイトの事知ってますか?」


 彼等は幼馴染と前に言ってたからな。十中八九知ってると見て間違いないだろう。


「知ってますよ」


 ほら、案の定である。本人の口から聞けないのは残念だが、是非とも教えてもらいたい。


のぶ、言ったら殴る」


 と、思ったら館林から口止めされました。いいじゃんバイトくらい教えてくれたってさ。何、そんな疚しい職種なの?


てる、別にいいじゃないですか。減るもんじゃなし」

「駄目だ」


 宝蔵院も助太刀してくれたが、駄目だった。

 嫌がってるのを無理矢理知る気は無いが、なぜそんなに嫌がるんだろう。

 宝蔵院からは、職種は教えられないが、疚しい職ではないと言われた。なら、なぜ嫌がるのか。


 とりあえず館林には、けちー! って言って苛めとこう。

 うん、それが良い。


 家に帰ってからも、何のバイトか考え続けたけど、答えは出なかった。

 何なんだろう一体。

漢文に関しては作者の過去の体験談です。

実際、この方法で半年ほど勉強をして、模試でも漢文は40点、古文は30点以下を取らなくなりました。

まあ、勉強法に向き不向きはありますがね。

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勉強サボっててごめんなさい!
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