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第15話

 今日はそらかえでと一緒に買い物へ行く日だ。

 夏に海に行く約束したしね。新しい水着は必要なのだ!


「ねえちゃーん。どこ行くのー?」


 私が着替えて玄関へ行くと末の弟に見つかってしまった。

 しまったなあ。この子は甘えん坊で私や一番上の妹にべったりなのだ。

 私が買い物へ行くと言ったら、必ず一緒に行くと言うに違いない。そして泣く流れだ。

 でも、嘘は吐けないしなー。仕方ない! ここは弟に泣いてもらうしかないか!


「友達と買い物だよ」

「ぼくも行きたい!」


 私が答えると案の定な返事が返って来た。でも、連れて行くのは無理なの!


「駄目。家で大人しくしてるか友達と一緒に遊んでなさい!」

「やあああだあああ。行くのおおおおお!!」

「だーめ! 久美くみ! 心太しんたなんとかして!」


 リビングへ向かってそう叫ぶと上の妹の久美がパタパタと小走りで来て、心太を抱えてくれた。


「はいはい。心太? 大人しくしようね。お姉ちゃんはいってらっしゃい。夕飯までには帰るんでしょ?」

「うん。そんなに遅くはならないから。じゃあ、行ってくるね!」

「やあああああ! ねえちゃああああん!!」


 泣き叫ぶ心太を残し家を出る。しっかしまあ、今生の別れって訳でも無いのにあんな泣かなくてもいいのにね!

 帰ったら寝るまで一緒に遊んであげよう。そうすれば機嫌なんてすぐ直っちゃう子だ。




 ----------




 駅に着くと、楓が既に待っていた。

 くそう。心太に時間を食われた分、私の方が遅れてしまったか!


「おはよう楓! 待った?」

「おはようございます希帆きほちゃん。私も今来た所ですよ」


 そう言って笑う楓は私と違って、なんて言うかお淑やかな感じで羨ましい。

 あと、さっきの台詞ってなんかデートみたいだね! なんか恥ずかしいね!


「今の台詞。なんかデートみたいだね!」

「ふふ、そう言えばそうですね。でも、今日は3人でデートですから間違ってませんよ」


 私がそう言うと、笑ってそう返す楓。

 そっか、3人でデートか。なら私達はデートしまくりだね! こう言うのってなんて言うんだっけ。りあじゅう……だっけ? でも、りあじゅうって爆発しなきゃいけないって聞いた事あるな。私まだ爆発したくないから、りあじゅうになりたくないなあ。

 あ、そもそも女の子同士でもデートって言うのかな?

 あと、デートなら誰が両手に花になるんだろう。んー空かな。あ、でも私って花の範疇に入るんだろうか。お淑やかとは程遠いしなあ。んー、無いな!


 そう言えば、空はなんか元気が無かったけど大丈夫かなあ。

 元気になって欲しくて買い物誘ったけど、元気になってるといいなあ。

 元気になってなかったら私達が元気付ければ良いんだよね! 友達だもんね!


「空さん。元気になってるといいですね」


 どうやら楓も同じ事を考えていたみたい。

 空が元気無くても問題無いさ! 私達が元気付ければいいだけなんだからね!

 中学の頃、男子にお前と一緒に居ると悩んでるのが馬鹿馬鹿しくなるって言われたのは伊達じゃないよ!

 でも、あれって多分褒められてないよね!


「空が元気の無いままだったら私達が元気付ければ良いんだよ!」

「ふふ、そうですね。希帆ちゃんと一緒に居れば元気になれますものね」


 よせやい。照れるじゃないか!

 でも、なんでだろう。 言外に馬鹿って言われてる気がするのは。まあ、楓だからそんな事あり得ないんだけどさ!




 ----------




 空との待ち合わせの為に、電車に乗って学校の最寄り駅まで行く。

 こういう時って定期があると本当に楽だよねえ。移動が気楽だよ。


 改札を出て、空を捜すとすぐに見つかった。

 こういう時、空を見つけるのって凄い楽だ。何せ他の人とオーラって言うか存在感が違うからね!

 これが超絶美少女ってやつのパワーか! って感じ。んー、我ながら意味が分からない!

 しかも、今日の空はいつもより存在感があるって言うか、オーラに安定感みたいのがあったからすぐに分かったよ。ん、私は電波じゃないからね! 比喩だからねこれ!


「あ、2人ともおはよう」


 近づいた私達に気付いた空が、にっこりと笑って挨拶してくれた。

 なんだろう。何か雰囲気変わった?

 上手く表現する事はできないんだけど、笑い方が自然と言うか、んー……なんて言えばいいんだろう。吹っ切れた感じって言うのが適当なのかな?


「希帆? どうしたの?」


 あ、私が挨拶も返さずにじーっと空を見つめてたせいか、少しいぶかしげな顔をされた。


「いや! なんでもないよ! おはよう!」

「そう? なら良いんだけど」


 私がそう返すと、まだ納得しきれてない感じだけどそう言ってくれた。

 危なかったねー。何が危ないのかよく分からないけど危なかったんだぜ!

 空の目元が少し腫れてたのは触れない方が良いんだろうなあ。多分、吹っ切れた感じなのと関係があるんだろうけどね。空が元気になってくれたのならそれで良いんだ。

 私達に相談して欲しかったけど、それが少し寂しいけどね。元気ならそれで良い。元気なのは良い事だしね!


「じゃあ、お買い物に行きましょうか!」

「そうだね」

「そうですね」


 私がそう言うと、2人も笑いながら歩き出してくれた。

 楓は中学からの親友。空は高校からの友達で、親友になりたい人。

 いつか、きっと空も悩み相談とかしてくれると思いたい。私も空に悩みができたら相談したいしね!

 こう言ってはなんだけど、私は女子に嫌われるタイプだ。

 なんでも、男子達と簡単に仲良くなっちゃうのが媚びてるように見えるんだってさ!

 私自身そんな事してないんだけど、そう見えるらしい。

 だから、私の事をちゃんと見て仲良くしてくれる友達の事は全力で大切にするんだ!

 あ、勿論嫌ってる子の事を嫌いになったりしないよ!

 いつか分かり合えるって信じてるんだ。


「希帆はどんな水着を買うの?」


 え? ああ、どんなのが良いのかなあ。

 やっぱり高校生になった訳だし、少し大人な感じのとか憧れるよね!

 ちょっと面積が少なめのとかさ!

 いや、似合わないんだろうなあ。空みたく胸無いしなあ。


「……希帆? 何を百面相してるの?」


 ……おお! また1人で変な事考えてたよ!


「なんでも無いよ! ただ、空みたいな胸が欲しいって思っただけだから!」

「そう? ……でも、公衆の面前でそんな恥ずかしい事言うのは感心しないな」


 羞恥心とかそう言うのをしっかり話し合いしようか? と微笑む空。

 あ、あー。やってしまった。綺麗な顔で微笑む空は凄く素敵なんだけど、目が笑ってないせいで台無しだよ。

 ごめんなさい。もう、そういう事を言うのは学校内とかだけにするので許して下さい!


「……ごめんなさい」

「分かれば良し」


 素直に謝ったら許してくれました。

 いつもの表情で笑ってくれたよ。仕方ない子だなあって感じの笑みに見えるけど、反論が怖いので突っ込まないでおくね。




 ----------




 さて、着きました水着売り場!

 そう言えばなんでこの時期に水着を買うのかって言うとですね。

 それは、そろそろ今年の新作水着が出る頃だからだ! そしてGWゴールデンウィークだから!

 意味が分からないって? つまり、新作との入れ替え時期でしかもGWだから安いのさ!

 さすがに今年の新作はまだ数点しか無いけどね。あまり気にしない。まあ、できるなら新作で可愛いのが欲しいけどさ。お小遣いには限度があるから仕方ないね!


「さて、まずは空の水着を選びましょう!」

「いいですね。そうしましょうか」

「え? なんで!?」


 私がそう言うと、乗ってくれる楓と焦る空。

 だってさー。空が選ぶのって絶対地味そうじゃん?

 こんな派手な顔と身体してるのに地味な水着とか絶対駄目だと思うのですよ!


「てな訳で空はこれね!」


 そう言って、隠れるように置いてあったV字の水着を空に見せる。

 凄いよね。なんでこんなの置いてるんだろうね!

 ここ、普通のデパートだよ? どんな人がこういうの買うんだろう。着てるのも見てみたいなあ。


「なんで私がV型水着を着なきゃいけないの! そしてなんでこんなの置いてあんの!!」


 思い切り頭をはたかれた。スパーンって音がしたよ!

 不思議と痛くなかったけど、私の頭って良い音するんだね!


「うー。じゃあこれ!」

「……希帆? 本当にその貝殻着て欲しいの? ねえ、どうなの? 答えて?」


 ……あ。

 あははー、悪乗りが過ぎたみたいだねえ。私の人生短かったなあ。


「希帆。私に何か言う事あるんじゃない?」

「ごめんなさい!」

「よし」


 許して貰えた!

 良かった。ちょっと真面目に遺書の内容考えちゃったよ。そのくらい怖かったよ!


 空への悪戯は許容範囲は絶対超えたら駄目! 超えたらあの笑顔を向けられてしまう!

 ある程度までなら笑って許してくれるんだけどねえ。程度を超えると笑いながら怒られる。

 同じ笑顔のはずなのにね! 不思議だね!


「じゃあ、私これ試着するから希帆は自分のちゃんと選びなさいね」


 そう言って、白地にペイズリー柄の水着を持って試着室に入ろうとする空。

 因みに、1人足りないと思ったら、既に楓の靴が試着室の前に置いてあった。

 空は私の相手してたはずなのにいつの間に選んだの!

 そして楓は一言あっても良いんじゃないかな!


「あ! 待ってよ! 一緒に試着しようよ!」


 生着替えも見たいけど水着を着た空が見たいよ!

 着替えてる時にちょっと揉ませて貰おうとか全然考えてないし!

 ご利益あるかなとか全く思ってないし!

 楓も見たかったけどいつの間にか試着室入っちゃったし!

 あ、もしかして楓には私の考えてる事が分かってた? だから素早く選んで試着室に入った?

 なんてこった! こうなったら空のだけでも揉まないと! あ、いやそんな事思ってないよ?


「やだよ。狭いし」

「そう言わずに! 空の水着姿見たいもん!」

「……じゃあ、着替えたら呼ぶから待ってて?」


 しまった。これ一緒に入れないぞ!

 いや、まあ見るのが目的だしそれが叶うんだから不満は無いけどね。……うん。


「じゃあ、私は待ってる間に自分の選んでるね!」


 そう言って売り場に戻る。

 まあ、いつ呼ばれても分かるようにチラチラ見るんだけどね!

 にしても、選ぶと言ったってそんなに選択肢がある訳じゃないんだよねえ。主に胸のせいで!

 私だってセクシーな水着とか憧れるけどさ。そんなの着たって涙しか誘わないって理解してるんだ。悔しいけどね!

 くっそー。全部遺伝が悪いんだ! そう、たとえ妹の胸が私より少し大きくても遺伝のせいで小さいんだ!


「希帆ー?」


 あ、空に呼ばれた! 意外と早いね!


「……どう思う?」

「似合ってるけど……なんか違うね?」

「あ、やっぱり?」


 空の入ってる試着室に顔だけ入れて眺めたけど、なんか違う。

 白い水着は似合ってると思うんだけど、なんか違う。上手く表現できないけど、もっと似合うのがあると言う気がしてならない。

 てか、腰の位置がおかしい。なにこの人の足の長さ! なにこの綺麗な形したお胸! なにこのしっかりとくびれた綺麗な腰!


「……空って薄らとだけどお腹割れてるんだね」

「ふふん。凄いだろう?」


 うん、凄い凄い。何が凄いってそうやって胸を張ると突き出て少し揺れる胸が私には理解ができなくて凄過ぎる。


「にしても何が違う気がするんだろう。色かなあ。柄かなあ」


 そんな事を言いながら、顎に手をやる空。

 そしてその仕草のせいで胸が腕によってむにゅって感じで潰れる。

 ああ、ここに居ると私のライフがゴリゴリ抉られていくなあ……。


「ねえ希帆。何が違うと思う?」


 空が私のライフを無意識に抉っているとも知らずにそんな事を聞いてきた。

 知らない! って言いたいけどそれは八つ当たりだって分かってるので言わない。


「多分だけど、色じゃない?」

「色かー……。なら、ちょっとこれの黒があったから取って来てくれない?」

「いいけどサイズは?」

「9号だよ」

「そうなんだ? てっきり7号かと思ってた!」


 意外や意外。手足が長いからそうは見えないけど案外ガッチリしてるとか?


「ジーンズなら7号なんだけどねえ。トップスとか上は7号だと胸がきつくてね」


 そう言いながら少し照れた顔をする空はとても可愛いと思う。

 けどね! 私のライフはもうゼロだよ!


「……取ってくるねー」


 私にはそう言ってその場から逃げる事しかできなかった。

 不甲斐無い私を許してくれたまえ。




 ----------




 水着選びも終わって、現在は昼食の為にレストランへ入っている。

 

 空はあれから黒い方を試して見事これだ! って感じに収まった。

 なんて言うかお姉さんって感じだね。黒地に白のペイズリー柄で腰にはパレオ。これを16歳で着こなす子は、なかなか居ないだろうね!


 楓は白地にフラワーパターンが入ったキュロットパンツにもなるタイプのビキニだ。

 見た目のほほんとした清楚なお嬢様って感じの子が、可愛い系の水着を着る。

 ギャップにやられそうな人が続出しそうだよね!


 私? 私はフラワーパターンのフリル付きビキニだよ。

 いや、私だって少しは胸を誤魔化したかったんだよ! だからフリルは仕方なかったんだよ!

 そりゃ大人な感じの水着とか憧れるけど無理だもん。今回頑張りに頑張って黒地のを買うのが限界だったさ!

 いや、止めよう。おかしいな。楽しく水着買うだけのはずだったのに、なんで私のライフがこんな危険域になってるんだろう。


「お昼食べたらどうしよっか」


 私が1人の世界に入っていると、空がそう言う。

 そういえばそうか。当初の目的は達成した訳だし、このまま解散でも問題ない訳だ。

 でも、それじゃあ寂しいもんねえ。


「いろんなお店を見て周りませんか?」

「そうする?」


 あ、ならアレを是非とも空には買って頂きたい!


「ならさ! 空のスカートを選ぼうよ!」

「いいですね! そうしましょう」

「……え、なんで?」

「ミニを穿いた空が見たいからに決まってるじゃん!」

「その通りです!」


 そう言うと、空が苦笑いしたまま固まった。

 その後少しして、溜め息と共にコーヒーを飲むけど、こういう感じの空は大体諦めた時の空だ!

 まあ、私と楓が結託すれば大抵の事は押し切られちゃうのが空なんだけどね!


「……じゃあ、一休みしたら行こうか」


 空には悪いけどこれは譲れないのさ!

 まあ、私達の自己満足なんだけどね! 可愛い子に可愛い格好をさせたいと思うのは自然なはず!

 空はいつもお洒落だと思うけど、露出が少ないんだよ!




 ----------




「ねえ、空さん。これとか可愛いですよ!」

「花柄とか無理だから! 無理!」


 えー、現在スカート売り場に来ております。

 楓がはしゃぎまくりですね。次々と持ってきては薦めてるよ。

 花柄とか可愛い系が多いのは楓の趣味だろうなあ。


「空さん。じゃあこれはどうですか? 無地ですけど」

「フリフリとかそういうのは無理だから! 似合わないからー!」


 いや、フリフリも似合うと思うよ!

 まあ、どちらかと言うと可愛い系よりカッコいい系の方が似合うんだろうけどね。

 それにしても若干涙目な空可愛いなあ。ずっと楓のターンって感じ。


「もー、我が儘ですねえ。じゃあこれなんてどうです?」

「キュロットスカートは希帆が良いんじゃないかな!」

「いや、空も似合うと思うよ?」

「希帆!?」


 今まで静観してたせいか、参戦したら凄い驚かれた。

 なんか、希帆が裏切るなんて! って顔されたよ。

 でもね、空。この企画を言い出したのは私なんだ。空に味方は初めから居ないんだよ!


「空はこれね」


 そう言ってキュロットスカートを渡す。


「希帆?」

「これね?」

「あの、希帆さん?」

「これが似合うと思うよ!」

「あ、はい」


 やっと観念したのかスカートを手に取ってくれたよ。頑固なんだから!


「サイズは7号だったよね!」

「……うん。わざわざ合ってるサイズ渡してくれてありがとう」


 いえいえ、人に薦めるからにはちゃんと合ったサイズを渡さないとね!

 空が項垂れてるけど、気にしないでおこうね!


「……じゃあ、会計してくるね」

「あ、私達が薦めたんだから出すよ!」

「いや、いいよ。ありがとう」


 そう言って空は、若干重い足取りでレジまで歩いて行った。

 なんか悪い事したかなあ。でも、なんであそこまでミニ嫌がるんだろう。制服なら平気なのにね!




 ----------




「ねえ。空はなんでミニをそんなに嫌がるの?」


 現在はスカートも買ったし、そろそろ帰ろうかと言う話になり、出口へと向かってるところだ。


「いや、なんか恥ずかしいじゃん。ミニスカートって」


 でも、制服なら平気なんだよね? 結構スカート短く穿いてるしさ。


「んー。制服はなんて言うかそういう物として扱えるって言うか。仕事着的な感じかな? あと、短く穿いてるのは制服で長いのは可愛いと思わないからだね」


 疑問をそのまま尋ねると、そんな答えが返ってきた。

 私服だと、その仕事的な割り切り感が無くなるから恥ずかしいって訳なのかな?

 でも、そんな割り切りの中で可愛く着る為に短くするなんてね!

 やっぱり慣れれば私服でもミニは平気で穿けるようになると思うよ!


「慣れれば気にならなくなるよ! と言う訳で、今度見せてね!」

「んー、考えておくね。……あ」


 ん? 空が横を見て固まった。なんだろう?

 そのまま空の見ている方に視線をやると、靴屋さんがある。視線の先は……ブーツ?


「これ可愛いね」


 そう言って手に取るのはウエスタンっぽい雰囲気のロングフリンジブーツだ。

 確かに可愛いね! けど、前に一緒に買い物した時も靴買ってなかったっけ?

 空は靴が好きなのかな?


「空って靴が好きなの?」

「うん。好きだねえ」


 靴から視線を逸らさずに言われたよ。そんなに好きなのか!


「何足くらい持ってるんですか?」

「え? んー、2いや……うーん。えへへー」


 あ、誤魔化した! すっごい可愛い感じで誤魔化した!

 何がえへへーだ! そんな事言いながら小首傾げて頭かくなんて駄目だよ!


「ちょっとこれ買ってくるね!」


 あ、しかも買うんだ! いっぱい持ってるのにまだ買うんだ!

 小走りで店員さんに向かって行って、これの24下さい。なんて言ってる。

 自分好みのを見つけたのかちょっと嬉しそうな顔してる。

 あーあ、あの店員さん顔赤くしちゃってまあ。嬉々として試し履きしてるのを茹蛸ゆでだこみたいになって見てるよ。


「私達は近くに行かなくていいんですか?」


 楓がそう聞いてきけど、どう考えてもここで見てる方が面白くない?


「ここで眺めながら待ってる方が面白くない?」

「んー、確かにそうですね」


 暫く待っていると、会計を済ませた空がこちらへ戻ってきた。


「お待たせ。ごめんね?」

「いいよいいよ。じゃあ帰ろっか!」

「そうですね」


 そう言って歩きだそうとしたら後ろから「ありがとうございました。またお越し下さいませ」と言ってお辞儀をしているさっきの店員さんが居た。


「ここのお店の接客凄く丁寧だったよ。今度買う時もここにしようかな」


 空はそんな事言って笑ってる。

 なんとも罪作りな女だよ。アンタは!




 ----------




 現在、空とは別れて電車に乗っている。

 楽しかったし、何よりも空が元気になって良かった!

 なんだか吹っ切れたようで、笑顔の無差別テロをしないか少し心配だけどね。


「空さん元気になって良かったですね」


 どうやら楓も同じ事考えてたみたいだ。

 ここら辺が、気の合う親友だなって思う。


「そうだね。泣きあとがあったみたいだけど元気だったから良かったね!」

「そうですね。吹っ切れたのか、飾ってる感じが無くなりました」

「あー、確かにそんな感じかも! でも、良い事だよね?」

「そう思いますよ。でも、自分の悩みを自分の力で解決しちゃうのは空さんらしいなって思いつつ、少し寂しいですね」

「うん。相談して欲しかったね。でも、まだ先は長いんだよ! これからいっぱい相談したりされたりできるよ!」

「そうですね。私も空さんに悩み相談してみたいです」


 そう言って私と楓は笑い合う。

 空とは知り合ってまだ1ヶ月しか経ってない。でも、大切な友達だ。

 これからいっぱい相談したりされたりする機会があるに違いない!

 これからもどんどん仲良くなって楽しい事をたくさんしたいな!

 きっと悩みだって皆で話し合えば楽しい事になるかは分からないけど軽くする事だってできるよね!



 因みに、家に帰った私を待ち受けていたのは、帰って来た事に泣く末の弟であり、GWと言うのも有り、夜遅くまで遊びに付き合わされたのは言うまでも無い。


 私……ス○ブラに心太が飽きてくれたら……寝るんだ。

てな訳で希帆視点から空の変化をお見せできたかなと。

できた……よね?

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