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adult love  作者: 天端 翼
1/1

恋のお相手


 他人の舌が私の口に侵入する。

 熱い熱いキス。

 大人なキスをしてイタズラを成功した少年のように笑うその相手は、

 私よりはるかに小さい男の子だった。




          ◇◆◇◆





「た、(たける)くん?」

「なんだよ」

「なんでこんなことするの?」

キスの相手近所の小学生の剛くんに私はそう問う。

「じょ、冗談だよ。バーカ」

は、はぁ?

「ちょっと、剛くん、冗談って…!」

私の言葉は電車の音に掻き消され、剛くんは、自分の家に向かって走っていった。

ちょっと、まって…。

もしかして、私小学5年生に遊ばれたの???



          ◇◆◇◆



剛くんは、いつも元気な子だった。

私とは、年が、7年違って、小学校でさえ一緒に通ったことがない。

新しくできたこの団地。

小さい子が多く、私はいつも学校から帰ると、近所のこと遊んでいた。

最近は、高校には行って、部活やなんやで忙しくなったから、遊べなくなっていたけど…。

やっぱり、子供は好きだった。

でも、そういう好きじゃない。

剛くん…何考えてるんだろう…。

ファーストキスだったのに…。



          ◇◆◇◆


(いく)!」

(まな)!」

藤堂愛美(とうどうまなみ)は私、海藤郁美(かいどういくみ)の心友である。

「郁、選択科目、どれにした」

「ん?音楽だけど」

「えっ、珍しい…。美術だと思ったのに…」

選択科目。音楽と美術と家庭科と技術の4項目。

いつもなら、美術なんだけど、そんな気分じゃない。

「愛は、美術にしたの?」

「うん…。だって、郁と一緒がいいもん…」

愛は、意外と人見知り激しいから、なんでも私と一緒にしたがる。

まぁ、これもいい機会なんだろう。

「でも、なんで美術にしないの?」

「ん?……。今、時間かけれないから」

「…?なんで?」

そんなこと言われても困る。

私に剛くんのことを話せと言うのか…。

「ねえ、なんで!」

本当に、愛は、少々強引だ…。

「分かったよ…。今日、公園よってこ」

「分かった。んじゃ!」

愛は、クラスが違うから、自分の教室に帰って行った。


 隣の席は、才色兼備の立川葵(たちかわあおい)さんだから、あまり横を見ないように席に座る。

美人が、隣にいると、この平凡な顔は、ブスに見えてしまう。

まぁ、当たり前なんだけど…。

「海藤さん」

いきなりの隣からの声。

「は、はい!」

立川さんが、私に?

「あなた、何に悩んでるの?」

意外と勘が鋭いです立川さん…。

「な、なんでですか?」

「なんとなく」

そうですか…。

相変わらず不思議な人だな…。

「別になんにも悩んでませんよ?」

「そう。もし、悩んでたら、黙ってない方がいいわ」

なんて、アドバイスをくれた立川さんは、また、前を向いた。

私って、分かりやすいのかな…。



          ◇◆◇◆


授業も終わって、愛と帰る。

「公園に寄るんでしょ」

そう言って、愛が、公園に入る。

近所の公園だ…。

「おっ、郁じゃん」

後ろから、聞いたことのある声がした。

「た、剛くん……」

剛くんがここに居られては困る。

「愛、向こうの公園行こう。剛くん。バイバイ!」

愛が、「なんで、なんで」と言うのを無視して背中を押す。



「なんで、あそこじゃ駄目なの!」

「どうしても!」

「じゃ、悩んでること話してよ!」

「今から話すから!」

そして、私は、愛に全てを話した。

ファーストキスを済ませたこと。それが、大人なキスだったこと。

そして、その相手が剛くんだってこと。

「えっ、じゃあ、あんたは、小学五年生の子にファーストキス奪われたわけ?」

「そう…」

「高3のあんたが、小学生に恋しちゃまずいんじゃない?」

「そうだよね…。って!私は、恋しないからね!」

「もしもの話よ。剛くんが、あんたのこと本気で、告白されたら、あんた落ちそうじゃん」

「落ちないよ…。相手は小学生だよ?」

「分かんないよ。あんたのことだもん」

「なによそれ」

「頭がガキだからなぁ。意外と合うかもね」

愛はそうやって笑った。

私が、剛くんに恋するわけないのに…。



          ◇◆◇◆


家に戻ろうとすると、家の前に、剛くんがいた。

「あれ、剛くんじゃん」

なんとなく気まずい…。

「じゃ、じゃあ、バイバイ」

なんて、剛くんを通り過ぎて家に入ろうとした。

でも、入れなかった。


なぜなら、剛くんが、私の腕を掴んでたから。

「何?どうしたの?」

多分、私の今の顔引きつってる。

剛くんが、私を睨んだ。

「俺のこと。避けたよね」

「えっ?」

「昼。俺と会ったとき、俺から逃げたんだろ?」

「えっ…」

まぁ、そうなんだけど…。こんなとこで肯定するわけにはいかない。

「そんなこと…」

「どうせ、俺の話してたんだろ。こないだの」

当たりです…。

最近の子は、なんでこうも頭がさえてんのかな。

「勘違いしてるようだけど」

お前のこと好きじゃないって言うんでしょ。分かってるよ。勘違いなんてしてない。

「俺、郁のこと…」

「何…」




驚いた。

そんなこと言うと思わなかった。

仮にも、私は高3で、剛くんは、小学生。



「俺、郁のこと好きだから。本気だからな」




こんなこと言われると思ってなかった…。






なんか…




予想以上に…剛くんが格好いい…。


   

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