婚約者がいる令嬢に言い寄る令息…ただの性悪な女好きじゃない?
名前を借りました
フィクションです
学園に、男爵家に引き取られたばかりの元平民の男、オームが編入してきた。
子どもがいないから、愛人との間にできた子を養子にしたらしい。
貴族のマナーや常識を教えていて、入学式には間に合わなかったそうだ。
担任の話を聞いて、平民が突然貴族になったら大変そうだな、と私ファラドは思った。
私達は、小さい頃からマナーや常識を学ぶから普通にできるだけで、急に覚えろと言われても…
「分からない事ばかりなので、教えてください」
オームが挨拶した。
クラスメイトだから、程々の付き合いかな…
私には婚約者がいるし…
オームは、席の周りの令嬢達に声を掛けていた。
編入してきたばかりだから、聞かれたら答えるが、声を掛けるのが令嬢ばかりなのが気になる。
「ごめんなさい。私、婚約者がいるから、あまり話し掛けないでくださる?」
何人かの令嬢が言うが、それでも話し掛けているオーム。
…言われた事の意味が分からないのかな?
婚約者がいる異性には、やたらと近付いてはいけない、と教えられるはずだが?
家の名前を背負っているのだから、恥ずかしい行動は控えないといけないのに…きちんと躾けてから編入させてよ。
と、私は思ったから、婚約者と両親に報告した。
私はまだ話し掛けてられていないが、クラスメイトだから時間の問題かもしれない。
…話し掛けて来ないかもしれないが…
それなら心配は無い。むしろ話し掛けないでほしい。
気を付けて見ていたら、全ての令嬢に話し掛けているが、婚約者がいない令嬢には、2度と話し掛けていない事に気付いた。
何度も話し掛けるのは、婚約者がいる令嬢だけ。
何が狙いなのだろう?
ちなみに、男子生徒には話し掛けない。
男子生徒から話し掛けられても、忙しいからと逃げる。
その事を婚約者や家族に報告すると、学園長に相談してみる、と言ってくれた。
「ねぇ、クラスメイトなんだから、仲良くしようよ」
とうとうオームは、私にも事を掛けてきた。
…よし、あらかじめ考えていた正論攻撃開始だ!
「どうして男子生徒には話し掛けないのですか?」
私は言った。
「女子の方が話し掛けやすいからね」
ただの女好きか。
「普通なら同性の方が話し掛けやすいと思いますけど」
「俺には姉がいるから、女子の方が楽なんだ」
あぁ言えばこう言う。
「男爵家に子どもはいない筈ですが」
「実の姉だよ」
「そうですか」
「だから、仲良くしよう?」
何故私が、女好きと仲良くしなければならないのか。
「同性の友人がいない人は性格が悪いと聞きます」
私は真顔で言った。
「…は?」
「まずは、同性の友人からお作りください。ハッキリ言って、婚約者がいる令嬢にしか話し掛けない貴方は気持ち悪いです」
「え…?」
今まで断られた事がないからか、驚いている。
「婚約者がいるのに他の男性と仲良くするなんて不誠実な事はできません。私はそんなに尻軽に見えますか?無礼者。これ以上しつこく話し掛けてきたら、家から抗議します。注意しましたからね」
「つまんねぇ女」
負け惜しみか?
「編入したばかりだからと優しくしてもらっている間に、マナーと常識を学んでくださる?私は、つまらない男に好かれたくないです。では失礼します」
私は侯爵家の人間だから、侮られるわけにもいかないし、間違った行動を注意するのが高位貴族の役目だ。
貴族の手本にならないといけない。
他の生徒達の前で話し掛けられたから、私が言った事は皆が聞いていた。
それからは「しつこく話し掛けるなら、家から抗議します」と断る令嬢が増えてきた。
クラスの女子生徒から相手にされなくなり、オームは他のクラスや他の学年の令嬢に声を掛けるようになった。
問題行動を放置する学園も、どうかと思う。
2年生には王女様がいるのだ。何かあったらどうするんだ?
私達…
もしかして…
……連帯責任?
そんなの関係ねぇ!
…って言ってる場合じゃなかった。
婚約者に、王女カンデラ様がオーム対策できるように伝えよう。
なにしろ私の婚約者ジーメンスは、ラジアン第2王子殿下の側近なのだ。
カンデラ様はラジアン第2王子殿下の妹で、王太子殿下と第2王子殿下の兄2人から、とても可愛がられている。
第2王子殿下や王太子殿下が、王女様に迫る魔の手から守るだろう。
早速、ジーメンスに手紙を送った。
「ねぇ君かわうぃ〜ね!」
件の男爵子息が、とうとう王女様に手を出したらしい。
…命知らずめ。
王女と知っていたら不敬罪だし、知らなかったら教育不足だ。
どの道、男爵家にお咎めがある。
我が家から抗議があったにも関わらず、放置していた男爵家も、学園も、何らかの罰が与えられるだろう。
第2王子殿下の大切な妹カンデラ様に手を出したのと、側近の婚約者に手を出したのだから。
婚約者が、悪い笑顔で「ラジアン様が処してくれるよ」って言っていた。
オームがカンデラ様に声を掛けた瞬間、そばにいた護衛役の男子生徒達がオームを捕らえた。
「な…何をするんだ!」
オームが藻掻くが
「王女殿下に無礼を働く不埒者め!」
「お前を投獄する!」
護衛役の男子生徒達に両脇を抱えられて、オームは連行された。
残った護衛役の女子生徒達に連れられて、カンデラ様は学園長に、男爵子息を投獄した旨を報告した。
その後、王城に行き、国王に報告した。
男爵子息が王女に理由も無く声を掛けるなど不敬であるとして、男爵家に勧告した。
男爵家は養子縁組を解消して、オームは平民に戻り、男爵領の片隅の家に幽閉された。
親戚から養子を取り、後継者にした。
王家に従っていると表す為だ。
完全なる二度手間である。
早めに対処しないから王家に目を付けられるのだ。
「ファラドの報告のお陰で、問題は片付いたよ」
ジーメンスが言った。
「お役に立てて良かったです」
「さすが私の婚約者だ」
ジーメンスが私の髪に口付けた。
私も、女好きの性悪男に絡まれる事が無くなったので、スッキリした。
これで平和な学園生活が送れる。
めでたしめでたし。
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