EP
旅立ちの日は、より『窓』からの光が強い日にした。
その日は「晴れ」で、旅程の困難がより少ないだろう、と『猫』は言った。
ずらりと並んだファミリアたちが、不安そうに見守る中、私は『猫』の背中に飛び乗る。
「留守はお願いね、『ファミリア』たち。」
そう、あくまでも、留守だ。
この館の主人は私で、旅の目的はハッキリしている。
『こうもり』を治す手段をどうにか探して、戻って来る。
外を知らない『こうもり』も、外を知る『猫』も、外には危険ばかりがあると口を揃えて言った。
「人は、すべて外で死に絶えてしまったのです」と、『こうもり』は言った。
「私がこの『図書館』に飛び込むことになった顛末でも、聞かせて進ぜようか」と、『猫』は言った。
けれど、私は行くことにした。
小言なら、帰ってから聞かせてほしい。
私はあの小言を、どうしてもまた聞きたい。
『猫』は小さく震えると、
「では、行こうか。」
と立ち上がった。
返事をしようとするわずかの間に、『猫』は『図書館』の壁であり、本棚である場所に足をかけて登り始めたので、すぐに私はその背にしがみつくことで精一杯になった。
私を乗せても『猫』は余裕で、スルスルと着実に、床みたいに壁を駆け上がっていく。
ふと後ろを振り返ると、小さな『ファミリア』たちがより一層小さく見えた。
「実を言うと」
と、『猫』が口を開く。
『こうもり』は、この日を予見してはいたのだ。」
私は返事をする余裕もなかったが、その言葉はしっかりと聞こえた。
そうして、その意味だって、実は既に知っていた。
『こうもり』と私が、『猫』に渡し、返すもの。
『猫』は、渡したぶんだけ、返してくれるのだろう。
この旅の終わりまで、側にいてくれたら、嬉しいのだけど。
『猫』の揺れる背中で、そんな事を、何度も繰り返し、思った。




