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蝶が降り立つ

初めまして、こちら初心者によって書かれている話で、ごちゃごちゃで誤字や言葉使いも理解できないような話だと思いますが退屈な回れ右の気分でどうぞ

「今空が飛べたら楽なのに」

そう言いながら初夏のジメっとした空気を肌に感じながら俺、「鷹原 澄」(たかはら きよし)は買い終えた小道具を片手にぶら下げながら天井がカラス張となっている鳥籠のような商店街のなかを歩いていく。

少し大きめの商店街には、人がごった返しており、そんな中でも俺の高くなってしまった身長と図体が悪目立ちしている。そのせいで前下がりの癖がついてしまった。

早く帰ろう、足を少し早める。


通りすがる者たちは、ホモサピエンスから進化した”ノアル”、それ以外から進化し、今もそれぞれの生物の特徴をもって生まれる”アブノル”の2種類がこの商店街、この世界にいる。


澄はアブノルの「空型」コンドルだ。背中には世界最大種の空を覆い尽くすような黒く力強い翼を国から指定された翼を痛まないよう工夫された紐で翼を縛ることを「空型」のアブノルははそうすることを義務付けられている。

だが、それは空を飛ぶことの自由を持つ鳥、いや、空の自由を知る者にとっては苦痛この上ない。

飛ぶ場所も、高速道路や工場の上を飛ぶことは禁止されている。

もはや、ノアルになれと国が言っているようなものだ。


そんな世界でも、ノアルとアブノルは生きている。

澄自身翼の縛りがあるとはいえ、それ以外、ノアルたちとそう変わりはない、今は小さい頃からの憧れでもある演劇団の裏方で日々輝いている。

片手にぶら下げている小道具達も急遽必要となった演劇ようの小道具だ。

「はやく帰らないと」

足早を早めて、商店街を右に曲がってしばらく道を進んだ後、最寄駅をを越え、交差点を渡った先、ガラスのが張り巡らされたおしゃれなホール、そこが澄が勤めている演劇団「エンジェル・カクテル」の本拠地だ。

ガラス張りの玄関扉を開け、中に入ると真っ直ぐに続く道と右手と左手に2階へ左右で2階に上がる階段がある。

右手の階段から2階に上がり、中の人たちに声をかける

「お待たせ、今買ってきたよ」

扉の近くにいた何人かの団員が気づく。

「澄くん、遅いぞ?何か関係ない者でも買ってきたんじゃないのかな?」

揶揄うようなつかみどころのないようなアブノルの女性が近寄って話しかける。

「違いますよ京歌さん、小道具を増やした方がいいと思って色々物色していただけですよ」

誤解を生まないよう弁解する

「あはは、冗談だよ澄くん、買い出しありがとうね」

荷物を受け取った彼女、「清水 京歌」は澄と同じアブノルであり、彼女は「陸型」の狐のアブノルで、明るい茶髪に明るい茶色のふわふわの尻尾が特徴的で、黒い丸縁メガネをかけた団員の中でも、名を馳せている団員でもある。

「すまないね、いきなり頼んでしまって」

京歌は小道具を見ながら話しかけてくる

先程まで稽古をしていたのか、首筋に汗が伝っているのが見える。正直色っぽくて目を背ける。

「い、いえ、小道具がいきなり必要になるのはよくありますし、大丈夫ですよ」

声がうわずってしまい、動揺してしまう。

「本当にありがとうねぇ、後で、先輩が美味しいジュースでも奢ってやろう」

ご機嫌そうに尻尾をくるりと回すように振る。

「では、お言葉に甘えますね」

他愛無い話で周りの空気は和む。

「ちょっとちょっと?あまり扉前ではしゃがないでもらえるかしら?今日は新しく入隊する団員が入るかもしれない日なんだから」

奥から真っ白なロングワンピースに真っ赤なヒールツバの広い同じく白い帽子、肩には薄い羽織を掛けている。、そして、白い服装に映える真っ赤な潤った唇。まさに、海外セレブのような服装の背が高い女性が奥からヒールの音と存在感と共に歩いてくる。

「ごめんなさい団ちょー」

間延びの気の抜けた声で、京歌が返事する。

彼女こそ海外セレブこと、「エンジェル・カクテル」の団長、「クロエ・ヘルツォーク」がその人だ。

「全く、京歌あんたはオンとオフの切り替えができるのはいいことだが、オフの時は流石に気が抜け過ぎているよ」

「あぅ、ごめんなさぁーい」

耳を垂らして観念したように京歌がいう。

「ほらほら、そろそろ少しは片付けな、新人審査をするから京歌、澄、あんたらはあたしと一緒に審査員をするよ」

「え、俺もですか」

すっとんきょな声が出る。

「あんたはここに入ってもう長いだろう、京歌はともかくあんたは真面目でちゃんと審査してくれそうだしね」

「団長が酷いこと言ってるー」

小道具の片付けをしながら京歌が声を上げる。

「それじゃ、また後で呼びにくるよ」

クロエ団長は羽織を翻して、また奥の事務所に戻って行った。




1時間も経たないうちに新しい顔ぶれが集まってきた。

新顔達はそわそわしているもの、堂々としているもの、楽しそうに笑っているもの、どの者も個性的が出ている。

澄たちはホールに椅子三つに長机といったいかにも面接のような体制で、新顔達を迎えた。

「それでは、審査を始める前にまず、自己紹介をお願いするわ」

クロエ団長は手元の新顔の履歴書を見えやすいように整理してから言った。

「では、私から見て左の方からどうぞ」

クロエ団長は左端にいるアブノルの少女に話を振る。

真っ黒な色に桔梗色のグラデーションの長い髪を三つ編みで一つにまとめた髪。

桔梗に菫色が特徴的なグラデーションが目立つ瞳。

幼そうな小さな体からは小さい体なんか片方の羽で包めるほど、大きく広がる蝶の羽。

黒い葉脈のような模様が羽全体に広がり、羽も桔梗色に染まった、まるで夜空がそこにあるようなそんな若く幼い印象を持たせる少女だった。


「はい、蜃蝶華じんちょうが 歌恋かれんです。この「エンジェル・カクテル」で理想の自分を追い求め、なりたい私になり、劇団として頑張っていきます。よろしくお願いします。」

元気ではっきり、はきはきとしてきらきらと見せる瞳。まさに、劇団としては理想の逸材だ。

そして、「蠱型」オオムラサキ。「蠱型」のアブノル自体珍しく、彼女が団員として、入ったら、京歌、いや、それ以上になるだろう。

その後、次々に自己紹介が話されていく。ノアル、「陸型」アブノル、「海型」アブノル、ノアル、ノアル、ノアル、ノアル、「陸型」アブノル。たくさんの自己紹介を頭に入れ、誰が誰かを確認していく。


「では、早速簡単な演技をしてもらいます。時間は一時間とります。セリフを覚えた人から私の元に来てください。」

クロエ団長は試験者達にほんの少しのセリフしかない一枚の紙を渡す。内容は簡単、「はい」「いいえ」だけのセリフを言うだけ、言い方もアレンジで何かのキャラになりきるのもなんでもありだ。

だが、初めてここに来て、いきなりの演技、慣れていないとそうそうできない。

「これを、アレンジも追加のセリフもいいけど、こんな短い分で?」

「難しくない?」

「演劇団の中でもハイクラスなところだからね、これくらいできてないといけないのかもね」

色々な言葉が試験者達の間で飛び交う。

「すみません、覚えたので初めてもいいですか?」

「陸型」アブノルの青年が声を上げた。

確か、名前は「林 野虎」名前通り虎の尾と耳を持つ金髪が特徴的ないかにもヤンチャでヤンキー感のある子だ。

「はい」

たったその一言、だが、さっきまでのチャラさはない、むしろ重々しい印象だ。

「いいえ、そんなことはしませんよ、俺はしたいことをするだけです」

決意が固まっている、まるで、旅に出る決意をした勇者主人公のようだ。

「これで終わりです!ありがとうございます」

元気な明るい青年の声。さっきの林から聞こえてきた印象は忘れてしまいそうになる。

「うまいねぇ、普通に良い子じゃない?」

今まで、だんまりだった京歌が不意に口を開く。

「そうですね、雰囲気も彼なりにアレンジされていますし、俺としても良いとは思いますが」

澄としても、なかなかにうまいタイプだとは思う。

その後、林の後に続くように審査が続いた。





そろそろ疲れてきた。

澄は霞む目を擦り、最後の試験者の書類を見る。

それは「蟲型」少女、歌恋の書類だ。

彼女のことは書類に大学1年生と書かれている。

ここから比較的近くにある大学だったはずだ。

彼女は試験者達が次々に演技を終わらせて、帰るのを見届けることなく、ずっと薄い台本だけをじっと見つめていた。

あんなほとんど何も書いていないようなプリント一枚に何を考え、何を求めているのだろうか。




「すみません、お待たせしました」

困り眉にした表情で最後の試験者がやっと口を開く。

「どうぞ」

赤いリップを塗り直したクロエ団長は聴く体勢をとる。

「いいえ、私はそのためにここにきたんじゃありません」

知れない空気

語る口調

誰もこんな演技は見たことないだろう

彼女は何もしていない

ただ、真っ直ぐに綺麗な姿勢な、ままそこにいるだけ

思いを伝える。ほとんどの演者は自分の思いを観客に伝えようとする。

「私を見て」「踊りを見て」「歌を聴いて」「表情を見て」「自然な私を見て」「誰よりも頑張った演技を見て」

どれも、己の感情をぶつけたり、気づいて欲しかったり様々な感情の渦を舞台の上で繰り広げ、眩しいスポットライトその光の輪のなかで誰もがその全てを捧げる


だが、彼女は違う



彼女は幼い印象、人の姿をしていて、俺たちと同じ空気を吸って生きている。


だが、彼女は他の試験者と違う




彼女は感情をぶつけてこない、欲しがらない、感情を高ぶらせていない。

彼女はただそこに存在している。

静かに、息を吸う音すら皆無なほど、


”その場に君臨している”








                        ”異常”






それが出てきた言葉で、彼女にあうこの世で最も似合う言葉だ。


「私は、ここで舞い踊るためにここにきました」

微笑みと嘲笑

彼女はまるで、その場に舞い降りたかのように語った。


その場の空気を飲み込ませ、すべての目線を喰らう彼女の目は、ただ静かに、蝶の羽ばたきほど、無音で、綺麗だった。





これは、俺、「鷹原 澄」と「蜃蝶華 香純」との思い描く理想。





いや







異常で狂わせる舞台劇の話





ありがとうございました。

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