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小さな記憶2



「とうま……」


「ん??どした?」


「ごめんね…っっ!!」


「え?ちょっ…あ 奏!! 待てよ!!」




確かめてしまった事実にたまらなくなって、斗真にそれだけ残すとその場を駆け出す。追いかけてくる斗真の声を背中に、あたしは宛もなくただ走った。斗真が死んだ事実が嘘じゃないかと思いたかったけど、嘘じゃなかった。あの夜の電話は夢だっただろうと思ってたけれど、夢じゃなかった。


(斗真は…)


涙の膜が張った目で見える景色が滲む。

冷たい風が吹き抜けるのを感じながらまた唇を噛むと、うっすらと口の中に血の味が広がった。



「待ってって!!」




ようやく追いついた斗真があたしの腕をぐんと強く掴んだ。冬の寒さでかじかんだ冷たさとは違う。芯から冷え切った、冷たい手。そんなことに気づくたび、現実が深く心に突き刺さる。




「一体、どうしたってんだよ?」




いつまで経っても斗真の方を振り向かないまま黙って肩を震わせるだけのあたしの顔を、斗真は怪訝そうに覗き込んで、あたしの表情に気づくとそれ以上の言葉を飲み込んで顔を覗き込むのをやめた。


となりあったまま、少しの沈黙が流れる。


そんな沈黙を、あたしの口をついた言葉が断ち切る。




「ここ」


「え…」


「…ここ、斗真が教えてくれた場所だね」


「あ、ああ。そう、だな…」




ぎこちない会話。


互いに目を合わせないままで、またしばらく沈黙を置くと今度はしっかりと斗真と目を合わせる。




「ねぇ斗真。落ち着いて、あたしの話を聞いてほしいの」




そういってあたしは、少しずつ、"あの日"のことを斗真に話始めた。




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