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小さな記憶

そして通ってきた道の先に見えてくる学校。


ここが、すべての始まり。


授業中の時間帯なので、人はいないと思うが一応周りに注意してこっそり校舎裏へと回る。


校舎裏にはちょっとした庭のような広場がある。


普段からひとけはなく、授業中に限らず放課後だってあまり人のいない、いわば知る人ぞ知る穴場スポットみたいなものだ。


(ここなら…  きっと誰にも見つかんないよね)




「…であるからして、ここの公式はー……」




 上のクラスが、数学の授業なのかどこからか先生の淡々としたそんな声が聞こえてくる。


そうやってクラスの声に耳を澄ましたり、周りをただぼんやりと眺めたりする時間は早く流れて、


昼休み…、5時限目、6時限目…、清掃…、SHR………。


気付けばあっという間に赤く染まりあげた夕暮れの空はすっかり太陽が低くなっていた。




(ん、そろそろ帰らなくちゃ…)


小さくため息をついて立ち上がると、昨日ポケットにしまったままだった携帯電話の存在を思い出し、時刻を見てふと、昨日の夢を思い出した。


(『6時に、ここで待ち合わせ……』)


そういったのは夢のなか。


 でも、あたしはそのまままた、その場所に腰を下ろした。












「……で  ……なで、か  」


(ん…誰か呼んでる…?ていうかこの声…)


「起きて、奏」


「あ…れ、とう…ま…?」




 いつのまにか眠っていたのか呼び起されて、寝起きの目で一度その人物を見たあと、あたしは何度も瞬きをした。しかし、見開いた目の先に立っていたのはまぎれもなく…斗真。




「逢いに来たよ、奏」




そういって、斗真は優しく笑った。


目を細めた斗真の微笑んだような表情はずっと隣で見てきたあの大好きな笑顔のままだった。


(夢じゃない。斗真…これ…)




「なんだよ?逢いに来たのにそんな顔して…」




何も返事を返さないまま呆然と見つめるだけのあたしにいつかの日のように、ふくれる斗真。


しかし、その彼は体で隠れて普通なら見えるはずのない夕日が見えた。










透けている。


斗真が、透けている。


これ以外、どうにも言葉にしようがなかった。



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