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小さい星


「ついたねー!学校。そっかぁ…斗真と逢ったのも、全部が始まったのはここだったもんねー。初めて会った時のことか…なつかしいなぁ」


「それもそうだけど、な。ここじゃないよ、俺が行きたいとこは」


「ここじゃないの?」




 あたしの問いには答えないで、また先を歩く斗真。


あたしもそれ以上答えは求めないでただ黙って斗真の背中を追ってついていく。


しばらく歩いて、ある場所について立ち止まる。




「ん… ついたな」


「ついたな…って、なぁーんだ。いつもの待ち合わせ場所だったとこじゃない」


「なぁーんだってなんだよ。ここ、俺が見つけたとっておきの場所なのに…」




そこは、いつも待ち合わせ場所にしていたあの校舎裏の小さな中庭だった。


もっと特別な場所を期待していただけに、ついた場所がいつもの待ち合わせ場所だったことに拍子抜けしてつい、そんな言葉が出てしまう。




「ごめんごめん。そういえば…そっか。ここ教えてくれたのも斗真だったっけ…」


「うん。俺、ここ、大好きなんだ。あ。ほら上、見てみ」


「上?」




 斗真が指差した夜空を見上げると、何千何万と…一面に広がる星の数々。




「う…わぁ星が!!いっぱい……!!すごいねっ斗真!すっごく綺麗…!!」


「うん。俺も、…明日からあっち側に逝くんだもんな」


「あ……」




…ピピピピ ピピピピ…。


一時間ごとに鳴る携帯の音が鳴り響き、ポケットから携帯を取り出して時刻を確認する。














『10月10日 AM0:00』




携帯の画面から顔をあげて、目の前の斗真を見る。全身を淡い白い光が包み込み始め、足元から徐々に消えて見えなくなっていく。




―――――――――――――――――――…トウマガ キエル…――――――――――――――――――――――




事実を目の前にして涙ばかりが溢れてくる。


そんなあたしを見て斗真が困ったように笑いながらあたしに諭すように、続ける。




「そんな顔すんなよ。 俺、もう気持ちは決まったんだ。…もう、だいじょうぶ」


「だって…やだよ…! いかないで!! ……あ」




だんだんと消えていく斗真に、抱きつこうとしたあたしの手が透明になった斗真をすり抜ける。


(あ…れ……?)


疑問を抱いたままもう一度手を伸ばす。


が、それもまたすり抜けて冷たい夜風に空をきる。




「あ…れ…? なんでだろ…」




手を伸ばしては空をきる。手を伸ばしては空を切るを繰り返す斗真が静かに首を横にふる。




「無理だよ、俺たちは触れることはできないんだ」


「そんな…嘘でしょ…ねぇ…っ!!


だって初めて会ったとき、ちゃんと触れてたじゃない!!それに前だって…!!」


「前は…、な。


でも霊力の弱くなった今の俺に自分の意思で触れることはできないんだよ。まれに触れたりすることもできたけど、な。


それに……」




言葉の続きをそこできって、それからはなにが起きたのかわからなかった。


気がつけば斗真の閉じた瞳がまつげがあたるほど近くにあった。


そっと顔を離していく斗真が、続ける。




「と…う……ま?」


「透明なキスなんて…、悲しいだけだろ?」




(あ… 今の…。)


初めてのキス。


唇のふれあった感触も、優しい斗真の温度も


なにも感じない透明な…キス。




「それじゃあ…」




その言葉を最後に完全に斗真が見えなくなってしまった。






















「うっ……ひぐっ……」




斗真がいなくなったあと、一人でひとしきり泣いてしゃっくり混じりの泣き声を無理に押さえつけながらもう帰ろうかと校門に向かって歩きだしたとき、不意にコツン…と足に何かが当たる。


(なんだろ…?)


不思議に思って暗闇の中、拾い上げた筒状のものを月明かりにかざしてみる。


 望遠鏡だ。


立派とはとても言い難いほど使い古された傷だらけの天体望遠鏡。


(ん…何か書いてある)


視界の端に映った文字を目で追ってみる。


『かざぎり とーま』


それは、小学生のときに書いたのかひらがなで書かれたらしい斗真の名前だった。


(斗真ってば…。小学生の時からずーっとこれ大事に使ってきたんだ…)


そんなことを考えながら望遠鏡をそっと覗いてみる。


レンズの向こうに広がる、幾銭もの星々たち。


そのどれもが綺麗だったけれど、まわりの星よりひときわ小さな星に目がとまる。














 まるでこちらに合図を送るかのように一生懸命瞬くその星は、斗真が見てくれているような気がした。








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