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最後までの制限時間(タイムリミット)


「それじゃ…お先に、失礼します…」




 涙声のまま、鼻をすすりながら一礼して部屋を出ようとするあたしをおばあちゃんの声が引き止めた。




「待ちなさい。斗真くん、探しに行くつもりなんじゃろ?…彼なら、奏ちゃんとの思い出の深いどこかの商店にいるはずじゃよ」




(思い出の深い…。商店…。)


おばあちゃんの教えてくれたキーワードを頼りに記憶のなかを探り、やがてひとつの商店が目に浮かぶ。


(あ。二人でよくいった…あそこの商店だ…!!)




「ありがとうございます!おばあちゃん」




 顔も見ないで玄関に駆け出しながらおばあちゃんにお礼を告げると、頭の中に浮かんだ商店を目指してただ走る。




「とうま…っ」




走りながら、呼吸でせいっぱいのその状況の中で自然と逢いたくてたまらない彼の名が自然と唇を滑り落ちる。














たどり着いた商店前。


すっかり透明に近くなった斗真が一人、店横の段差に座り込んでいる。




「こんなところで一人じゃ、さびしくない?」


「奏…」




あたしに気づいた斗真が、ぽつりとあたしの名前をこぼす。




「…隣 すわってい?」




何もいわず斗真はそっと右によってくれて、あたしはその隣にゆっくり腰かける。




「ここ。よく二人でココア買って飲みまわしてたよね…なつかしい」


「そうだね…忘れたことなんか一度もなかった。っはは…俺、これからもずっと 奏と思い出作っていけると思ってたのになぁ…っ?」




 そう笑った斗真の目にうっすらと浮かんだ涙が、沈む夕日の光に照らされて綺麗に光る。


 そのあまりにも悲しそうな横顔に何もしてあげられない無力さにただただ悲しくなって。なんて言葉をかけてあげたらいいのかわからなくて。とにかく、これ以上つらいことは思い出してほしくなくて…。




「…………今日はもぅ帰ろっか…。」




あたしは、逃げるようにそう促してこの場所を離れて、斗真が頷く。その日、二人無言のまま帰路についた。
















「49日かぁ…。」




死後49日…それは斗真がこの世にいられる時間。そして斗真が亡くなった日から47日目の今日。斗真とあたしが共にいられる時間は、あと1日だけ。


大切な明日をどう過ごそうか。


そんなことを考えながらベッドについて枕元の電気を消し、目を閉じる。




この世とかあの世とか、もぅ何がなんだかよくわからない。


混乱した頭の中、わかるのはただ一つ。


共に過ごせる時間が限られたものであるならばー…




ーーー…なら


一言でも多くの二人の会話を。


どんなにささいでも小さな記憶おもいでを。


二人で 綴ろう。




…最後のその瞬間ときまで。
















10月8日 PM11:09


 斗真と向かえる最後の朝は、運悪く月曜という平日の朝だったためろくに言葉を交わすこともなく、学校から帰ってきてお風呂入ったり、夕飯を食べたりして気づいたころにはもうこんな時間。




「ね、ねぇ斗真。今日はその…あれなんだから…、どこか行かない?」




あの日以来、すっかり口数の減ってしまった斗真を外に誘う。




「そう…、だな」


「うん。じゃちょっと待って。あたし着替えるかー…」




そういって私服を手にしようとした腕を、斗真が後ろからそっと掴んだ。




「いいよ。そのままで。そのままで…行こうよ。」


「ん…。じゃ、行こっか」




あたしの声に促されて、家の門を出ると二人並んで歩き出す。


しかしやっぱり斗真からは一向に口を開こうとしなくて沈黙に耐え切れなくなったあたしが話を振ってみる。




「じゃ、じゃあ…どこいこっか?あたし特に行きたいとことかもないし…。斗真はどこかいきたいとこ、ある?」


「…あんまない、けど。ひとつだけある」


「……?」




そういって学校へと向かって歩き出す斗真に並んであたしも学校へと歩いた。


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