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愛梨さんと斗真


愛莉さんはこの四葉通り近くの専門学校生らしい。家が特別貧しいとか欲しいものがあるからとかではなく、このバイトは気まぐれで始めたらしい。


 ずっと店内で二人くつろいで客足の引いたときには愛莉さんとそんな話をしたりして、あっという間に時間は流れていった。




「はぁーあ、やられちゃったなぁ…。まさか生チョコスペシャル注文してくるとは…」


「えへへー、高いのおごっていただき嬉しいですー♪」


「この…確信犯めーー!!」




 そうやって愛莉さんとじゃれあっていると、夕焼けに染まった空の向こうから風に乗って『♪ゆうやけこやけ』のメロディーが流れてくる。




「そろそろかえろっか 斗真」


「うん」


「じゃ今日はほんとありがとうございました。愛莉さん」


「ごちそうさまでした」




 そう言って軽く頭を下げるあたしと、丁寧にお礼を言う斗真。


そんなあたしたちに愛想よく、愛理さんは笑った。




「うん、またおいでね。奏ちゃん、斗真くん」


「はい」










(『ごちそうさま』、なんて。斗真って結構礼儀正しいんだな…)


そんなどうでもいいことを考えながら、二人並んで帰る帰り道。


なぜか二人の間には、スムーズな会話は流れなかった。隣を歩く斗真との距離が、遠く感じる。




 結局あたしも斗真も、ぎこちない空気をまとったまま家に着いた。
















9月12日  午後10:42




「ねー、斗真。あたしのうす水色の手帳知らないー?」




 ベッドの上のクッションや、本棚、カバンの中や洋服のポケットなど。


ありとあらゆる部屋中をあさるように、ものをどけたりしながらあたしは目もくれずに斗真に呼びかけてみる。




「『8/11 斗真とプール


8/27  玲凪れなとショッピング


8/29  斗真と…』」


「って!! 勝手に読まないでよー!!」




 ふわりふわりと宙に浮きながら、淡々と何かを読み上げる斗真。斗真に視線を向けると、その手には探していた水色のその手帳。


 あたしは慌ててその手から強引に手帳を奪い返す。




「奏の手帳って『斗真と』っていうの多いのな」


「いいじゃない!手帳なんだし、忘れちゃうといけないから…」


「ふーん?」


「なによ、にやけちゃって」


「いやぁ…裏の背表紙に隠してプリクラはってあるとさすがの俺でも照れるなぁって思ってさ」


「えっ」




(あたし、前のもの貼ったままだっけ!?)


あわてて、手帳のカバーを外して背表紙を確認してみる。


しかし背表紙の両面とも汚れかけている様子すらなく、買ったとき同様、白く綺麗なままだった。




「って!いうかそういえばそもそも貼ったことないよ!!」


「まーた騙された」


「もー斗真っっ!!」




 心底腹を立てても見せたが、対する斗真は楽しそうな表情で笑っていた。




「へへ。ん、あれ カバン?奏、学校いくの?」




スクールバッグを整理しながら、頬を膨らませるあたしを見て斗真が小首をかしげて問いかける。




「うん。もうこれ以上休めないし…。来週からはちゃんと行こうと思って。少しずつでも元の生活に戻るって決めたんだもん」


「…そっか。そう、だよな。」


「ん?どうしたの?」


「いや、別に。じゃ俺、先に寝るな。おやすみ」


「ん、おやすみ」




 心なしかちょっとだけ悲しそうに繰り返す斗真。その様子を不思議に思ってそう聞いてもみたけれど、早口にまくし立てるように返事を切り返すとしゅんとすぐに姿も気配も消した。


(どうしたんだろ…?なんだか元気にないような気もしたけど。ま、だいじょうぶだよね。よし、あたしも今日はもう寝よ)


 


 斗真が消えたあと、一瞬は心配したがすぐに明日のことを思い出してひとまず早めに眠りにつくことにした。




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