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君がいてくれること2

四つ葉通り。


この町でもっとも人口の多い街の通り。流行に乗った洋服店などのお店はもちろん、


カラオケやボーリング、のどかなこの町の娯楽施設が唯一存在する通りでもあり休日は若い人々でにぎわいを見せている場所なのだが…




「わ… 人すくなっ!!」


「ほんと…いつもと全然違うとこみたいだ」




珍しい光景に声を上げるあたしに、斗真も新鮮な目で見なれた通りを見回す。


そんな四つ葉通りもさすがに平日、しかも午前中となると予想以上に人気ひとけがない。


(でもこれはこれで、なんだか貸切っぽくていいかも…)


ちらりと横目で隣の斗真を見上げてみると、どうやら同じことを考えたみたいで突然ひらめいたような顔をすると、悪戯っぽく口角を上げて笑った。




「な。奏、せっかくほとんど貸切状態なんだ。ここで、問題っ」


「問題…?」


「はい。見てのとーり、あの四葉通りがこうして貸切状態なわけですが。…はいっ、まず何をする?」




クイズ番組の出題者のような口調ぶりで、右手のエアーマイクをあたしの顔の前に突きだした。


(なるほど。問題って、そういうこと。それならもちろん…)


同時のせーののかけごえ。




「「せぇーのぉ…」」


「ショッピング!!」


「あそぶ!!」


「「え?」」




……別々の返答。














「斗真何言ってんの!四つ葉通りっていったら『一に洋服、二に洋服。三に洋服、四に帰る』。鉄則でしょ!!」




 あたしは理解できない斗真の意見に思いっきり反対を主張した。しかし、斗真の方も負けじと同じくらいかそれより大きな声を張り上げる。




「奏こそ何言ってんのさ!!四つ葉通りは唯一カラオケとか、ボーリングとかあるとこだよ?つか、一から三まで全部洋服じゃん!!四に至ってはもうgoホームだよ!! 帰ってんじゃん!!」


「そうだよ。女の子は買い物したら疲れて帰って、お風呂入って幸せに寝るの!!そういう生き物なの!!」


「あ゛ーーもう!!奏なんて知らない!!一人で買い物にでも行って来ればいいじゃん」


「そっちこそ!一人で遊びにでもいってくればいいじゃーー」




ーーカランカラン。


そのとき、あたしたちのすぐ向かいのお店がシャッターをあげて開店し始めた。ショウィンドウに張られた数々のスイーツのメニューや写真。外見や、そのメニュー表の様子から洋菓子店だと見てとれる。


あたしが無意識のうちにじーーっと見つめていると、やがて店前に小さな看板を立てに出てきた長い黒髪を後ろでお団子にまとめた大学生くらいの若い女の人と目が合う。




「あらあら…、朝から学生さんがいるなんて珍しいな。もしかして二人ともデートで学校さぼっちゃったのかな?どこの学校の子?」




カツカツと高いヒールの音をあたりに響かせながら、女の人がこちらに向かって近づいてくる。女の人の口調からして学生の私たちが学校の時間帯に街をうろついているのを快く思っていないことがわかる。しかし、急に走り出すような勇気もないままその場に立ち尽くし、目の前で足を止めた女の人はもう一度冷たい目を向けてこう聞いた。




「学校はどうしたのって、聞いてるのよ?」


「え… あの…」




荒々しく暴れだすような雰囲気ではないが、決して優しく包み込んでくれるような感じでもなさそうで、逃げ場のないその目に反射的に肩を小さくすくめる。


(やば…  学校に知らされちゃうーー…!!)


 その続きは何も言えないまま、ぎゅっと目をつぶって、斗真の後ろに少し隠れながら次の言葉を身構える。














「なんてねー。


学校さぼってデートなんて。んー…熱いねぇ、お二人さん♪」




 予想していた言葉とは違って、けろっとした顔で楽しげに笑う女の人をみてつい、間抜けな声が口をつく。




「へ?」


「驚かせちゃってごめんね。 久しぶりにこんなカップルみたから


ちょっとからかってみたくなっちゃって…」




 茶目っ気たっぷりに左目をつむり小さくウインクしてみせる女の人。その仕草は年上の人とは思えない、いたずらっ子な少年少女のようだった。その表情を見てようやく状況の整理がついてあたしは思わず気の抜けたように口を尖らせた。




「もぅ!驚かせないでくださいよ~。学校に 知らされちゃうかと思ったじゃないですかぁ…」




後半、半べそなあたしに女の人が軽く謝る。




「あはは、ごめんごめん。


お詫びと言っちゃなんだけど、うちの店で何か食べていかない?そうねぇー、代金はあたしが持ってあげる♪」


「ほんとですか!?わーい じゃあお言葉に甘えていただこうかな」




思わぬラッキーに気分が上がっていると、開店準備にあわただしい店の奥からもう一人、同年齢くらいの女の人が出てきてこちらに向かって呼びかける。


 


愛莉(あいり)さーん?  店長が呼んでますよ~?」


「え?あ…大変!!怒られちゃう!!


えーと、とりあえずあたし仕事に戻らなきゃだから先に店内で待っててくれるかな?」




 後ろ向きにお店に向かってゆっくりと駆け出しながら、あたしに笑う。すると、しびれを切らしたように先程の人がもう一度女の人の名前を呼ぶ。




「愛莉さーん?」


「はーい!今戻りまーす!!じゃ」


「あ はい、じゃあ…」




二度目の同僚の呼びかけに答えると、


軽く手を振って忙しそうな店内へと消えていった。


(愛莉さん、っていうんだ、あの人。あれ?そういえば斗真は…)


 愛莉さんとの会話に夢中になっていてすっかり気付かなかったが、そういえば斗真が見当たらない。




「とーま?おーい、とーまー。と…」




不思議に思って斗真を呼びながら、辺りをぐるりと見回してみる。


(ん… あれ今視界の隅になんか斗真っぽいのがいたような…?)


 小首をかしげて、も一度視線を向けてみる。


いた。ベンチに座って真剣に四つ葉通りのテナントのパンフレットを読んでいる斗真。




「いた。もうー。パンフレットなんか読んで…」


「あ、奏。だってさっきの人と話長いんだもん。俺の居場所ないって。


それよりさ…じゃんっ!!」




ふてくされた表情から一変して、パンフレットをあたしに見せる。


(えーと  なになに…)




「『ライト・チョコ 一日10個限定 生チョコスペシャル(650円) 』?


え。なにこれ、おいしそーー!!」


「だろ!?ショッピングなんだかんだは後にして…これ、食べにいかない?」


「りょうかい!で、どこにあるの?」




 そんな疑問がつい口をつくが、いうより早くひょいとパンフレットの見取り図に目をやると『ライト・チョコ』というお店を探してみる。




「あ これって…」




 










ーーカランカラン。


 かわいらしい鈴の音を店内に響かせて、それに気づいたカウンターの店員さんー…愛莉さんが声をかけてくれる。




「あ さっきの…  いらっしゃい、彼氏さんも」


「へへ  来ちゃいました」


「…どうも」




恥ずかしがっているのか斗真は、頭を軽く下げて小さく呟く。


どうやらまだお客さんは一人も来ていないようで、ホールにはカウンターの愛莉さん以外の店員さんは見当たらず、瀬戸さんがカウンターを抜けてきてあたしたちの接客に対応してくれた。




「それでご注文は何になさいますか?お客様」




こじんまりとした店内の小さなテーブルの上にはメニュー表もきちんと置いてあったが、それを開くどころか触れることもなく心に決めていた注文を告げた。


(ご注文?そんなのもちろん…)


















「生チョコスペシャル 2個お願いしますっ!!」













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