ほんとうのこと
デートの途中、あたしがトラックにひかれそうになったこと。
それを斗真が助けてくれたこと。
そして、あたしを助けたせいで斗真がひかれ、死んでしまったこと。
全部、ぜんぶ、話した。
「おれ、が……しん…だ…?トラックに…?」
「うん…」
半透明な自分自身の両手を見つめながら、聞き返す斗真に胸が痛く、無意識に手のひらに力を込めて握り締めながら短く答えた。
「…そうだ、思い出した…。
俺、ひかれそうになってた奏を助けようとして、突き飛ばして…それで…」
斗真が、さっきより明らかに暗い顔になりあたしも罪悪感を覚えたから、そこから何も言えない。二人ともすっかり黙りこみ、あたしたちの間を冷たい夕暮れどきの風だけが流れる。
しばらくして、斗真が口を開くと重い空気を破る。
「でも」
「え?」
「でも…俺、よくやったよ」
「よくやった…って、あたしのせいで死んじゃったんだよ?あたしがひかれてれば斗真は…」
「もし。
…もし それで生きてたら、俺は今の自分を嫌ってやる。
目の前で奏がひかれそうになってるってのに見捨てるなんて…そんなの、俺は絶対に嫌だ」
「斗真…」
「これでよかった。俺は、正しかったんだ…間違ってなんかない。奏が生きてる。それで、いいんだ」
(これで…よかった?あたしをかばって死んだっていうのに…?)
斗真が、大好きな笑顔で笑う。
その笑顔も、涙で霞んであたしにはよくは見えない。
けれど、思いっきり笑って見えた斗真の瞳にもいっぱいの涙がたまっているように見えた。
「俺、これからもずっと奏と一緒にいるよ。ずーっっと、ついてるからさ」
「うん。ずっと心に中にいてくれるよね…?」
あたしが聞き返すその問いには答えずに、斗真はただ強く抱きしめてくれた。




