表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/67

城と王族

 しばらく馬車に揺られた後、私はついに城へと到着した。

 「着きました」

 御者の人が馬車の中にいる私を呼びに来て、そう言った。私は差し出された彼の手を取って馬車から降りる。

 おお〜、エスコートってやつね。ぴょんって降りちゃダメなんだ。

 馬車から降りた私は、辺りをぐるりと見渡してみた。普段は立ち入ることのできない貴族街。そこには、街よりも遥かに大きく、豪華な屋敷が立ち並んでいた。

 わぁ、綺麗……。でも、うちの屋敷と大して変わらないかも。魔法使いさん、すごい人だったんだなぁ。

 馬車と御者さんとはここでお別れのようで、代わりに城から出てきた使用人に見える女性が、私の元にやって来る。

 「ミズキ様、ですね?お待ちしておりました。ご案内いたします」

 そう言った彼女の後をついていき、私は城の門を通る。見上げれば、周りのどの建物より高い城のてっぺんが見えた。

 門から城の扉までの間で、並んだたくさんの使用人たちに礼をされた。私的な招待を受けてやってきた私向けにしては、少し豪勢すぎる気がする。

 しかしその理由については後ほど、察することになる。

 私を案内している女性とは別の使用人たちが、二人がかりで重そうな扉を開く。その扉を通り中に入ってみれば、きらめくシャンデリアと美しい階段が目に入った。

 ……そしてその階段の上にいる、六人の人影も。

 背の高い男性が三人と、それよりは少し低い少年が一人、それから女性と、困った顔の少女。

 ……私的な招待じゃなかったけ!?シャロンティーヌ様!

 華やかな服に身を包み、一際存在感を放つ彼らこそ、この国の王族、ヴェリアールパレス家だ。


 「やあ、よく来てくれたね。フードの救世主殿」

 ああ……、ホントにバレてる……。

 私に向けてそう言ったのは、おそらくこの国の国王である方、ヴィルフォルト様だ。念の為ちゃんと王族全員の名前を覚えてきてよかったと思う。ありがとう、オリヴィエ……。

 年は四十代後半か、五十代くらいに見える。少し白いものが見えるブロンドの髪に、青い瞳をしている。温和そうな顔つきで、遺伝子の強さを思わせるイケオジだ。しかしながらその中に、王としての威厳も見える。

 えっと……、声かけられちゃったし、なんか言わなきゃだよね?

 「お、お初お目にかかります。シャロンティーヌ様より招待を受けて参りました、ミズキと申します」

 オリヴィエの教わった挨拶を述べながら、その場に跪いて首を垂れる。

 ……合ってるよね?

 私はチラリと目線だけを王族たちの方に向けて確認する。ヴィルフォルト様が私を見て頷いたのが見えた。

 「顔を上げてくれ、ミズキ殿」

 私はそう言われて顔を上げる。跪いた姿勢はまだそのままだ。

 「ここに来るのは初めてだね。私たちはずっと、君の活躍を耳にはしていた。幾度となく国への襲撃から街や農村、そして民を救ってくれた。私はいつか君を城へぜひ招待したいと思ってはいたのだが、君も知っているだろうか?子供達は最近まで、アカデミーに行っていてね」

 ヴィルフォルト様は彼の子供達を見回しながら続ける。

 「みんな揃っている時に、君を招待したいと思っていたのだ。だがまさか、シャロンティーヌに先を越されるとは……」

 彼はシャロンティーヌ様を見ながら笑う。シャロンティーヌ様はそれを受けて、恥ずかしそうに俯いた。

 「さて、初対面なわけだし、簡単に自己紹介でもしようか。ああ、君は大丈夫だ。君のことはよく知っているからね。西の森の奥に暮らす魔法使いであり、フードの救世主……」

 ああっ!その名前そんな連呼しなくていいですから!王様!!

 今すぐうずくまってしまいたい思いをしていた私に、ヴィルフォルト様は続ける。

 「そして……、白竜を従える者」

 私はその言葉にピクッと反応して、つい口を挟んでしまった。

 「お言葉ですが、彼は私の従者ではありません。私の大切な、“家族”です」

 その言葉に、王族たちは皆それぞれ驚きの表情を浮かべた。私はそれを見ながら、全身から汗が吹き出すのを感じた。

 ……やっちゃったかも。私のバカバカ!なに王様の言葉に口答えしてるのよ!!

 しかしもう言ってしまったことは取り消せない。ああ、いざとなったら魔法で逃げよう。うん……。

 私は目線を落として、ヴィルフォルト様が口を開くのを待った。だが、彼の口から出た言葉は、私の想像していたものとは違っていた。

 「……それはすまなかった。こちらが誤解していたようだ」

 そう言われて、今度は私が驚きに顔を上げる番だった。

 「家族はいいものだ。それじゃあ、私の大切な家族たちの紹介も、聞いてくれるかい?」

 彼は優しくそう言った。私は驚きの後、今度は嬉しさが込み上げてくる。

 ああ、温かい人なんだな……。

 私はそう思いながら、「はい、もちろんです」と答えた。


 私が頷いたのを見て、ヴィルフォルト様は自己紹介を始めた。

 「まずは私からかな。ヴェリアールパレスの国王だ。ヴィルフォルトという」

 私は彼の言葉に再度頷く。私は、さて、次は誰かな〜と思っていたのだが、ヴィルフォルト様はさらに続けた。

 「好きな食べ物は……やっぱり肉料理かな」

 あっ、そういう……。ホントに普通の自己紹介をなさるんですね、王様。

 私は思わず目をパチパチさせながらそれを聞いていた。

 「次は私ですね」

 まだ続けようとしていたように見えたヴィルフォルト様を遮ってそう言ったのは、彼の隣に立つ美しい女性だ。

 「メラリッサと申します。ヴェリアールパレスの王妃です。よろしくお願いいたします、ミズキ様」

 そう言って彼女はニコッと笑みを浮かべた。赤茶色の結い上げた長い髪に、紫色の瞳をしている。整っていて、聡明そうな顔立ちをしていた。

 「彼女はハーフビュッセル出身で、アカデミーでは首席だったんだよ」

 ヴィルフォルト様がそう付け加えた。

 ハーフビュッセルとはヴェリアールパレスの南東に位置する、アカデミーのある国のことだ。首席ということは、私の見た目からの予想通り、本当に頭がいいのだろう。

 「次は私ですか……。ディーンヒルトと申します。ヴェリアールパレス家の長男で、第一王子です。よろしくお願いしますね、フードの救世主様?」

 彼にそう言われて、私は思わずひぃっと息を呑みそうになるのを慌てて抑えた。

 ……なんか怖い。全然、優しそうな見た目なのに、なんか怖い。目が凄んでる気がする。

 父に似た金髪に母譲りの紫の瞳をした、整った顔立ちの方だった。好青年感が溢れているはずなのに、冷や汗が出るような感覚はなんだろうか。

 「次は俺の番だな。次男で第二王子、ヒィッツハルトだ。特技はスポーツ全般、肉も魚もなんでも好きだぞ!野菜は嫌いだな!」

 彼は清々しくそう言い切った。薄い茶色の髪に青い瞳、活発な雰囲気が溢れ出ている。

 ヤンチャな王子様って感じだな……。すごく偏見だけど、学校の窓ガラスを割って怒られてそう。

 私は心の中でそう思った。

 「……次は僕でいいのか?姉さんがやるか?」

 少年が少女に、そう聞いた。少女の方はそれに首を振り、それを見た少年の方が自己紹介をする。

 「トゥーズベルト。三男で第三王子、この家では一番年下だ。趣味は読書。よろしく」

 淡々とそう言った彼は、母よりもさらに赤みの強い茶髪に、紫の瞳。母の遺伝子を引き継いでいる見た目だ。顔立ちも母親の方に似ている気がする。

 読書好きということもあって、ヒィッツハルト様より大人しそうに見える。

 そして最後、少女が口を開いた。

 「そして私が……、今回あなたをお招きした、シャロンティーヌです。あの、このような形になってしまって、申し訳ありません。驚かれたでしょう?でも、私ではお父様たちを止められなくて……」

 彼女は申し訳なさそうにそう言った。伏せられた長いまつ毛が儚げなお姫様を思わせる。長くウェーブした金髪に、ピンクにも見える薄い紫の瞳。可愛らしい顔立ちは、すこしおどおどした雰囲気を持っていた。

 ……謝られてるし、なんか言った方がいいかな?

 私はそう思って口を開く。

 「大丈夫です。驚きはしましたが、こうして皆様に会えたこと、光栄に思います」

 私は彼女にこう返した。シャロンティーヌ様はホッとしたような表情を浮かべる。

 「これで、全員の自己紹介も終わったね。あとはシャロンが彼女と好きなように茶会をするといい。今回招待したのは、私ではないからね」

 ヴィルフォルト様はそう言った。それに、「分かりました、お父様」とシャロンティーヌ様が返す。

 「でも……、何故彼女を呼んだのかくらい、教えてくれてもいいんじゃないか?」

 彼はシャロンティーヌ様にそう尋ねる。「私も気になります」とディーンヒルト様も付け加えた。

 それを見て困ったような表情を浮かべながらも、シャロンティーヌ様はキッパリと、それを断った。

 「申し訳ありません……。でもこのことは、お父様たちには言えないのです」

 「初対面の彼女には言えるのに?」

 ディーンヒルト様が私を見ながら言った。

 ……そんな目で見られても困ります。私もまだ何も知らないんで。

 私は心の中でそう答えながら、代わりにニコッと微笑んでおいた。

 「……まあ仕方ない。年頃のシャロンにはパパに言えない秘密の一つや二つ、あるだろう。私はこれで失礼するよ。楽しんでね、シャロン」

 ヴィルフォルト様は深追いすることはせず、そう言い残して離れていった。メラリッサ様とヒィッツハルト様とトゥーズベルト様もそれに続いて去っていく。

 残ったディーンヒルト様は、尚もシャロンティーヌ様に食い下がる。

 「私も彼女とじっくり話がしてみたいんだ。ついていってはダメかい?」

 「ダメです、お兄様。これは私とミズキ様のお約束ですもの」

 兄相手だからか、さっきよりもより冷たい態度で、ツンとそっぽを向きながらシャロンティーヌ様は言った。それを見て少ししょんぼりした表情を浮かべながら、ディーンヒルト様は離れていった。

 「ふぅ……、これで大丈夫ね。では、ミズキ様……」

 シャロンティーヌ様がこちらに近づいてきて言った。

 「改めまして、シャロンティーヌと申します。私の招待に応じてくださり、ありがとうございます。茶会の準備をしてありますので、行きましょうか」

 優しい笑みを浮かべてそう言った彼女に、「はい!」と頷いて、私は立ち上がる。

 しかしその直後、バランスを崩して私は派手にその場で転倒した。

 「ミズキ様!?」

 「も、申し訳ありませんっ!」

 心配して駆け寄ってきたシャロンティーヌ様に、私は大声で謝る。

 あ、足が痺れた……。長時間、同じ格好してたから……。

新キャラいっぱいです。

貴族風の長い名前がよかっただけで、それぞれに特に意味はありません。なんとなくです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ