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【完結】拝啓、魔王様。この勇者どうにかしてください!〜魔族の姫は勇者に愛される〜  作者: あまNatu
第一章

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勇者候補

「ヘスティア!」


「走らない。ドレスの裾を持ち上げない。大声出さない」


「今そんな場合じゃないだろ!」


 駆け寄ってきた彼女たちに苦言を呈せば、ルナから鋭いツッコミが入った。

 わかってはいたが、だからこそヘスティアは口にしたのだ。

 きっと先ほどの王とのやりとりを見ていたのだろう。

 彼女たちのことだから、申し訳ないとかなんとか言って謝ってくるに決まっている。

 だがなぜ彼女たちが謝る必要がある?

 悪いのはあの愚王なのに。

 だからこそ話を逸らそうとしたのだが。


「…………申し訳ございません。ですがどうかご理解ください。我々には、魔物たちと対立する意志はないのだと」


「ほらやっぱり」


「え?」


「なんでもないわよ。安心なさい、この程度のことで戦争になんてならないから」


 ほっと息をついたクレアを見つつ、ルナはヘスティアの肩に腕を回す。


「だーから言ったじゃん! ヘスティアは懐が深いんだって」


「そういう問題ではありません。このような無礼なこと、魔王に知られたら……」


「…………まあ、魔王が知ったら人間界滅ぼすでしょうね」


「ひぃ!」


 エリーの小さな悲鳴を聞きつつ、ヘスティアはそっと腕を組む。

 もし仮にあの魔王が、娘がこんな扱いを受けていると知ったら、敬意を表す勇者がいようが関係ないと、人間界に現れ生きとし生けるもの全てを破壊するかもしれない。

 これはだめだなと、ヘスティアは首を振った。


「絶対知られちゃダメね。……で、あなたたち、今までなにしてたの?」


「飯食ってた! こーんな大きな肉があってさ、まじ美味かった!」


「聞いた私が馬鹿だったわ」


 やはり付け焼き刃程度では彼女たちを淑女に変えることは難しかったらしい。

 まあこれもいい意味で個性だろうと諦めて、ヘスティアは足をすすめようとした。

 ここもここで人の視線がうるさい。

 どこか静かなところへ移動しようとしたその時、人混みの中からリヒトが近づいてきた。


「やあ」


「……王太子殿下にご挨拶申し上げます」


「気楽にしてくれ」


 アルフォンスに倣い頭を下げるが、リヒトはそれを手を振ることで止めた。


「……どういった御用でしょうか?」


「貴族たちが勇者と話をしたいらしい。今回のことの労いのようだ。私が案内役を仰せつかった」


「――それは、ご足労をおかけし申し訳ございません」


「構わないさ。美しい人たちとも会えたのだし」


 ちらりとリヒトの視線がこちらに向けられたような気がしたが、ヘスティアは決して視線を上げることはしなかった。

 その目にはただ、静かに立つアルフォンスだけを映す。

 そんなヘスティアの様子に気づいたのか、リヒトは軽く肩を上げた。


「……君の奥方は手強いね。さ、行こう」


「…………はい。行ってくるね」


「わかったわ。私は彼女たちと一緒に待ってるから安心しなさい」


「うん。……ありがとう」


 はいはいと頷けば、彼はリヒトと共に人混みに消えていく。

 せっかく彼が主役のパーティーなのに、あのように呼び出されるなんて大変だなと思っていると、同じようにアルフォンスを見送っていたクレアが小さくため息をついた。


「アルフォンス、大丈夫でしょうか?」


「なにが?」


「あっ……えっと…………」


「……? あぁ、あの男との間に何かあるのは知ってるわ。事情まではわからないけれど」


 アルフォンスとリヒト。

 二人の間に何かある事は知っているが、詳しいところまではわかっていない。

 無理に聞き出すことでもないと思っていたからだ。

 だがクレアたちはその内容を知っているのだろう、三人が顔を合わせると数秒後こくりと頷き合う。


「たぶん、アルフォンスの口からは言いにくいことだから言わなかっただけだと思うのですが……」


「そうなんじゃない? 雰囲気的に私が知ることを嫌がってるようには見えなかったわ」


 どちらかといえば言いづらそうにしていた。

 そう伝えればクレアは一度頷くと人気のない方へと足をすすめる。


「実際この国の人たちはほとんど知っていることですから、お伝えしても問題ないと思います」


「そうなの? なら逆に教えておいてもらったほうが良さそうね。あることないこと知らない人間に教えられるより、信頼のおけるあなたたちから聞いた方がいいもの」


「…………」


「なによ?」


「…………信頼、してくださってるんですか?」


 嬉しそうに笑うクレアに、ヘスティアはぴくりと眉を動かす。

 まさかポロリとでた言葉に反応されるなんて思ってもおらず、視線を横にずらした数秒後、むっと唇を尖らせた。


「なによ悪い?」


「いいえ、まさか。とっても嬉しいです」


「わ、私たちも、ヘスティアさんのこと信頼してます…………へへっ」


「お前は本当に可愛いやつだな〜」


 またしても肩を組んでこようとしてくるルナをひょいと避けつつ、人気のないところまでやってきたヘスティアは改めてクレアに向き合った。


「それで、あの二人ってどんな関係なの?」


「あの二人……というより、まずは王太子殿下のことですが、彼は元勇者候補の一人です」


「――勇者候補?」


 なんだその聞きなれない言葉は、とクレアを見れば彼女はああ、と納得したように頷いた。


「勇者とは聖剣に認められた者のことで……聖剣を手にできたものに与えられる称号です。その剣でのみ、人間は魔王に傷をつけられます」


「それは知ってるわ。でも勇者って最初から決まってるわけじゃないの?」


「違います。勇者とは、この国の資格ある者全てから選ばれた者のことです」


 そこから先の話は、ヘスティアも初耳なことだらけだった。

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