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おまえんちヒールないの?  作者: 野井ぷら@12ハロンのチクショー道発売中!
【二年生編】
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うちにもかしましいって言葉はある

「まずはこのマウスでクリックしてみるのじゃ。絵が変わって選べているのが分かるか。これが選択で、そうしたら素早くダブルクリックをしてじゃな……」


 モニターにかじりつくように並ぶ三人。コエダさまを中心にリイズとソサラだ。二人が大人しく人の話を聞けている事にお兄ちゃん驚きです。いやまあ授業とか聞いてるんだからそりゃそうか……やっぱなんか想像できないな……。


「ねえコエダさま。なんでこの絵に直接触って操作できないの?」

「そういうのもあるな。スマホなどはそういう操作方法を取ってるのじゃが、パソコンはより複雑な作業をする前提で作られておるからの。そういった経緯でこのマウスを使った操作を行うのじゃ」

「コエダ様。わたし、もっと動物の写真がみたいです」

「あ。あたしも見たい! 都会ってどんな生き物がいるの?」

「おうおうこれこれ、そんなに慌てるでない。どれ……」


 中身が飛び出しかけていたコエダさまを間一髪のところで助け出し、自己紹介をさせたらあっという間に仲良くなった。なんだろうこの疎外感。この前も感じたぞ。

 そしてコエダさまは頼られると嬉しくなる性質らしい。めっちゃ得意気にパソコンの操作方法を教えている。前も村木さんに煽てられて調子に乗ってたっけ。

 パソコンっていいよな。調べればなんでも答えてくれるし教えてくれるんだから。妹二人もこの有用性にすぐ気づく事だろう。

 あ、俺も狐の写真がみたいです。なに、ワシが居るのに何故狐? いや、コエダさまって狐のようで狐じゃないから別に……いたいいたい! なんで叩くの!

 なんちゃって狐のコエダさまでは満足できないからだになってしまったので、春休みに宮城の狐動物園にタケシとマサヒロの三人で行ってきたのだ。思わぬ大冒険になったけど凄く楽しかったからまた遠出したいなと思った出来事だった。


「ねえコエダさまー。あたしまたここに来てぱそこん触ってもいい?」

「わたしも来たい」

「おうおういつでも来るがよいぞ。ああ、じゃがワシもいつでもここに居るわけでもないからの。そういう時は諦めるがよいぞ」

「なんで?」

「パソコンはこう見えて繊細な物なのじゃ。適当にいじってるだけで簡単に壊れてしまうぞ。お前たち初心者はワシのような熟練者がついていなければ危なっかしくて見ていられぬわ」


 え、パソコンってそんな壊れるかな。いや、変なページに飛んで壊しそうだな。そうかも。


「大体家主がおらぬのに勝手に家に上がり込む奴があるか」

「うちじゃ人んちとかないから知らない」

「だめなの?」

「そうじゃった、こいつらそういう常識ないんじゃった……おいメイジ、なんとか言って聞かせろ」


 何とかって何だ。

 うーん、でもこいつら鍵とか掛けてても普通に開けてはいるだろうしなぁ。最悪扉壊されるかもしれないから、暫く満足するまで付き合ってもらえない? 要はパソコン壊されなきゃいいんだよね。


「……まあ、それもそうか。よし、じゃあワシが居る時は構わないが、そうでないときはメイジを連れてくる事。それが条件じゃ」

「やったー!」

「ないも同然」


 ……俺の同意は?




 そんな感じで俺の放課後の行動パターンが一つ追加された。

 コエダさまは大体夕方は奥卵の部屋に居るけど、たまに用事でいない時がある。そういう時に妹たちに呼び出される役だ。

 こいつらの川遊びとか滝遊び(どちらも凍らせて滑り台にした物に生き物を突き落として遊ぶ悪魔のような所業の遊び。元に戻すのは俺の仕事にされていた)とかに比べればパソコンで変なサイトを見ないかを監視するなんて楽なもんだ。


「ねえおにい。このかりふぉるにあ? ってどのくらい遠いの? 地図みてもいまいち分かんない」


 そーだなー。日本からだと飛行機……は分からないか。とーちゃんが全力で走って2時間とかかかるかな。


「げ。そんな遠いの? あたし暑い国に行ってみたいなって思ったんだけど」


 止めとけよ。大体奥卵も夏になったらヤバイくらい暑いぞ。都心はもっとヤバイからそんなわざわざ暑い場所に行くことなんてないって。


「うるさいなー。あたしは行ってみたいの」

「ねえお兄ちゃん。わたしこの植物園に行ってみたい」


 リイズは海外なんてどうせそんな簡単に行けるような場所じゃないんだから諦めろ。ソサラのそれはなんでなんだ。


「こういう葉の尖った植物って凍らせたら綺麗だよね」


 止めなさい。凍らせる前提で考えるのは。いやそりゃドライフラワーとかそういうのもあるけど、凍らせた花……ってか植物? はちょっと珍しいっていうかアブノーマル(マサヒロ談)だから。


「わたしの氷なら溶けないから大丈夫」


 溶けないのが問題なの。

 でもちょっといいかもしれない。なあソサラ、こういう花で作れない?


「誰かにあげるの?」


 おいお前触った人間全てを凍り付かせる罠を仕掛けようとしているだろう。顔が邪悪だからすぐ分かるんだぞ。いいや、やるなら自分でやればいいもんな。奥卵に花屋さんはないから立川に出た時にしよう。うわ、花って意外と高いんだな……。


「うわっ、Utubeでオススメにおにいが出てきた。きっしょ」

「本当だ。おにいちゃん空飛んでる。すごいねこんなことできたんだ」


 一々きしょいって言葉に傷ついていたら今頃俺の身体は大根おろしみたいにすり下ろされて原型がなくなっている事だろう。気にしないのだ。気にしないったら気にしない。

 あーそれウイングスーツの企画の時のか。コエダさまに怒られた奴だな。


「怒られたって何したの?」


 飛んでる時に風をガンガン吹かせて加速したんだけど、術式がでかすぎて何事かと思ったんだって。大袈裟だよな。


「お兄ちゃんの魔術って、いきなり膨らんで効果が出るから気持ちは分かる」

「そうそう。その圧縮言語も結局あたしら使えないじゃん」

「お前らちゃんと印組めてないからそのせいだろ」

「普通はお兄ちゃんみたいに手はぐにゃぐにゃ動かないよ」

「そこは訓練でどうとでもなるだろ」

「ならないよ。きっしょ」

「おれはきずついたぞ」


 ふーんだ。俺は拗ねたぞ。俺のチャンネルのコメントでも見てよう。

 あ、ヒモヒモフクロウだ。こいつまだヒモなのかな。タケシに聞いたけどヒモっていい意味の言葉じゃないんだってな。いい加減こいつとも雌雄を決さないといけないな。今まで俺の全戦全敗だけど、次勝てば俺の勝ちだからいいんだ。

 返信しとこ。『いつまでヒモなの? 俺、猪とかワンパンだけど』と。ワンパンって言葉いいよな。強さを表すステイタス(かっこいい)としてこれ以上のものはないぜ。


「ねえお兄ちゃん。わたしもお兄ちゃんみたいにスマホが欲しい」


 いつの間にかソサラが俺の端末をのぞき込んで言ってきた。耳元で囁くようにいうからぞわっとしたぞ。これが『きしょい』か。

 スマホか。スマホなー。当時は金銭価値がよく分かってなかったけど、スマホってマジで高いんだよな。これを手に入れるのは相当大変なんだぞ。

 なに、クラスメイトがみんな持ってる? まあ、そうだよな。都会の子ならスマホくらい持ってて当たり前なんだろうが……。

 うちで相談してもしょうがないからコエダさまに聞いてみたら? いい方法教えてくれるかもしれないよ。


「おにいが買ってくれればいいじゃん」

「やだよ。お前らいつもなんもくれないじゃん」

「むー」

「リイズ。コエダ様に今度相談してみよ」

「そうしようかー。おにいがケチだからなー」


 俺基準だと俺に何もくれないお前らの方がケチなんだがそれでいいのか。こうしてコエダさまに相談することにしたらしいのだが。



『これは溶けない氷。火であぶられたら流石に溶けるけど、そうでもない限りはずっとそこにあり続ける。部屋の温度を下げるし中に保存したいものを入れておけば観賞用としても優れている。お買い得。値段応相談』

『はーい。じゃあ今日紹介するのはジーヴーのローゲージニット。色は三色あってー』


 コエダさま経由でラヴィーネにも話が波及した結果、二人ともストリーマーとして活動するようになった。ソサラは無自覚に人の逆鱗に触れそうだし、リイズは普通にリスナーと喧嘩しそうだが大丈夫なんだろうか……。

うるさいなーって文字列をうってvtuber赤身かるび氏を思い出したワイ

よかったら見てみてな


12ハロンの閑話も更新しているのでよかったら読んでください

書籍も電子じゃないやつ買ってもらえると大変喜びます^p^

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[良い点] マッハ3.5のとーちゃん!
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