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【完結】夜風コーヒー  作者: 夜風セト
最終章 社会人編(2026年~)

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最終話:登録者数が百万人になった(9曲目『まだ終わりじゃないさ』(オリジナルソング))

――それから、もえたちは高校を卒業した。以前、進路の話をしたように、るかちゃんは短大へ進学。えまちゃんは保育士になるためにそういう学科を受けた。さなちゃんは音響を勉強するために専門学校へ。もえは進学せずに引き続き、楽器店でバイト生活だ。三人が頑張っている中、バンド活動も細々と行っている。ユーチューブへの動画投稿を行うのも変わらなかった。


 変わったことと言えば、えまちゃんのずっとやりたいことリストで、バスドラムのヘッドに『夜風Coffee』と、バンド名のロゴを入れてみたかったこと。祖母にエレキベースの十六万円の借金を返済できたこと。チャンネル登録者数がかなり¨増加¨したこと。その増加にはこのような理由があった。


 もえたちのバンド活動を初期から応援していた同郷の漫画家が、「私の漫画がアニメ化したら、『夜風コーヒー』をオープニング曲に使わせていただきたいです」と、ラブコールを受けたのだ。はじめは二つ返事で承諾した四人だったが、無名の女性漫画家のその夢が叶うには途方もない時間がかかると思われた。


 ところが、その漫画家はとてつもない才能の持ち主で、最初の連載が大ヒットしてアニメ化に漕ぎつけたのだ。もえたちは驚くしかなかった。もえ自身もアニメオタクなのもあり、自分たちの曲がアニソンになったらと妄想していたので嬉しかった。アニメ制作は進み、放映されるのを待った。


 しかし悲しいことに、アニメの出来は芳しくなく、炎上してしまった。まず監督が原作無視のアニメオリジナル要素を大量に入れた。次に声優さんたちの演技が棒読みすぎた。次にアニメーションがところどころ崩壊を起こしていた。最後に夜風コーヒーの楽曲『夜風コーヒー』が、作画崩壊のアニメ映像と共にインターネットのおもちゃにされてしまった。要するに動画投稿者たちが著作権侵害、無断転載をしてニコニコ動画とユーチューブに投稿して愚弄したのである。


 そんな屈辱の日々にまたしてもあの女性漫画家が、二作目が大ヒットしたのでアニメ化の話が持ち上がった。彼女はまた「夜風コーヒーさんの曲を使用したいです」と言うのだ。るかちゃんは、「それでまた炎上とかするんじゃないの?」と尋ねた。彼女は「はい」と食い気味に答えた。「はいじゃないよ。しませんって言うんだよそこは」と、るかちゃんはツッコんだ。


 そこで四人は話し合い、「人間は完璧ではないから、失敗も多くする。その動画投稿者たちも冷笑しているわけだが、彼らも多くの失敗をしているはずだ。だから失敗してもまだ終わりじゃないさって。そういう曲を作ろう」という運びとなった。これに対して漫画家は、「ちょっと面白くないアイデアですが、まぁいいでしょう」と答え、「やかましいわ。何様なんだよ」と、るかちゃんは怒鳴った。


 なんということか、その二作目のアニメ化は大成功を収めた。あの監督も反省して原作要素とアニメオリジナル要素をバランス良くした。あの声優さんたちも演技力が上がった。アニメーションも映画並みのクオリティだ。夜風コーヒーの新曲『まだ終わりじゃないさ』も好評を得た。そうすると大手のレコード会社から、メジャーデビューのお誘いを受けたことがあった。けれどこれにもえとさなちゃんは、『ユーチューバーという自由な活動を許された状態でいたい』という理想があり、お断りした。曲の権利や管理をするためにさなちゃんが、レコード会社¨ヴィンテージレッド¨を設立した。るかちゃんとえまちゃんは、『もったいない!』と騒いでいたけれど。


《そんな日々の中、わたしは前世で出来なかったことを二つ出来た。一つ目はベースを弾けるようになること。二つ目は高校を卒業すること。前世は高校卒業の間近に、病室のベッドの上で死んだ。文化祭ライブも夢のまた夢だった。来世では出来なかった二つのこの夢が、一気に叶った。いつかこの現世が終わっても、相棒の緑色のベースとはまた会える気がする。仏教では輪廻から離脱すること、執着しないことが目標だとされている。しかしそれは、わたしにとっては出来ないことだし、別に輪廻して執着することは、わたしの場合は楽器だけど、恋人だった人に来世でも再会するなんて素敵だと思うんだ》


 ユーチューバーなら誰もが夢見る登録者百万人を達成した。彼女たちは感謝の動画撮影をすることに決める。彼女たちの良くも悪くも有名曲となった『夜風コーヒー』を、「歌ってください!」と望むファンたちのリクエストは多かった。「こいつらあたしらの曲とあのアニメで嘲笑ったやつらだぞ」と、るかちゃんは反対するけれど、もえは「それでも聞きたいなら歌いますよ」と冷静に、寛大に答えた。


「しかしですね」


 と、もえは言う。


「はい」


 と、そばで見ている漫画家は答える。


「その人たちよりも先にこの曲が好きだと言ってくれた、あなたのために歌います。聞いてください。『夜風コーヒー』」

「……うわっ」

「うわって言うな!」




<完>

最後までご覧いただき、

ありがとうございました。


※2023.12.2

『シャイニングスター』など、

今作に載せる許可を魔王魂さんに

直接、問い合わせた結果、

大丈夫でしたので変更しました


※2024.5.6

完結当時、載せようか迷った4人のその後を追加しました

高校生編は終了ですが、2025年以降、

世の中がどうなっているのかわからないので、

とりあえず完結にしたのですが、

その時が来たら高校卒業後の

彼女たちの日々も投稿しようと思います


※2025.3.27

主人公のフルネーム、

主人公の前世で買ったベースを

タルボベースからジャガーベースに変更、

えまの名字を変更、

さなのギターにジャガーを追加、

るかをソロ活動からキーボード担当に変更しました


※2025.4.29

社会人編を投稿するよりも、

主人公のこの思いで終わった方が

完成した感じがするので、これにて完結にします

最後までご覧いただき、ありがとうございました


2025.7.5

ややこしいので、さなのギターに

ジャガーを追加をやめました


※2025.7.25

さなのタルボのネック交換を追加しました


※2026.1.8

地の文をいちいち改行せず、

続けるように変更しました。


※2026.4.19

コメディ要素をだいぶ減らしました。


※2026年6月21日

もえの一人称から三人称に変更。

載せるか迷った本来のオチを載せました。

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