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第55話:3年ぶりの弾いてみた動画&生まれてはじめてDMをした

 バイトが終わって帰宅後。

 わたしは、こたつの前の座布団の上に座っている。

 灰色のスマートフォンを操作しながら、ベースを持っていると、


「あ、三年ぶりに投稿してる!」


 と、わたしは思わず叫ぶ。

 というのも、わたしがはじめて見た、¨弾いてみた投稿者さん¨。

 彼女が新しい動画をユーチューブに投稿しているのだ。


 彼女は今、大人気アニメの劇中歌を弾いていた。

 そのヒロインのコスプレをしている。

 そして相変わらず、プロレベルの上手さだ。


 しかし、たった一つ、わたしは気になる事がある。

 それは彼女のベースが、わたしが今、手元にある灰色のベースではないのだ。

 水色の¨再生産タルボベース¨だ。

 さなちゃんのタルボのベース版だ。


 やがて聞き終わり、動画説明文をよく読む。

 彼女はツブヤイターをはじめたことを打ち明けている。

 わたしは早速、フォローして、


『バックさん(彼女のハンドルネーム)は、わたしがベースをはじめるきっかけの弾いてみた投稿者さんなんです。好きな曲をリクエストもしたことがあって、弾いていただいたこともあり、嬉しかったです。(以下、彼女の動画のリンク)』


 と、投稿する。


――すると、三分後にバックさんがフォローを返してくれる。

 いいねをしてくれる。

 わたしはとても嬉しくて、心臓の鼓動が早まる。


 わたしは冷静でいられなくなり、


『バックさん、フォローといいね、ありがとうございます! いきなりなんですが、わたしたちのバンドとアニソンの弾いてみたコラボ動画、投稿しませんか?』


 と、ダイレクトメッセージを送る。

 送ったと同時にとても後悔する。

 完全にこれは深夜テンションに似た若気の過ちだ。

「無視されたら?」「バカにされたら?」「晒されたら?」と不安になる。

 メッセージの取り消し機能があれば今すぐに消したいくらいだ。


――するとまたしても彼女は三分後に、


『良いですよ。撮る場所は、もえちゃんが指定してくれれば行けますので。私の来月の休日を貼るので、都合の良い日にメンバーと相談してください。そしてお会いしましょう』


 と、彼女はカレンダーの画像を見せてくれる。

 わたしはそれを見て安堵して、


『ありがとうございます! ちなみにバックさんは、どちらに住んでいらっしゃるんですか?』

『広島です』

『え! 広島なんですか!? てっきり東京か大阪に住んでいらっしゃるとずっと思っていたので驚きました! それでしたらすぐお会い出来ますね!』


 さなちゃんたちと会話して来月の初旬、日曜日に憧れの人と会うことになる。

 わたしの唐突な提案にも、バンドメンバーは優しく受け入れてくれる。


 それはバックさんが成人女性ということもあった。

 何より同じ場所に住んでいるので、夜行バス。

 新幹線を利用せずに、すぐにセッション出来るからだろう。

最後までご覧いただき、

ありがとうございました


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