表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/65

第52話:文化祭ライブ2(6曲目『メタリックレッド』(オリジナルソング))

【いつまでたっても上手くならないギター

やめてしまおうか

やめてしまえば


この苦しみに給料が出ればな

この苦しみに残業代が出ればな

この苦しみに退職金が出ればな


――そんなこと言っても時間の無駄

私は諦めきれない

ギタリストになりたい


ギターの弦の臭いが指に染みついた

ピックガードは傷だらけになった

塗装も剥がれまくった

左手のこの指は相当 硬くなった


メタリックレッド

せっかくだからオンリーワンになればいい

きみは冷たい相棒

その愛しい冷たさよ】




 この曲の気に入っている部分は、るかちゃんが言ったように前半は暗い。

 けれど、後半は前向きになるところだ。

 演奏もそれに合わせて今回、さらに陰鬱で美しいシンセサイザーのメロディに仕上げた。

 後半は今までの夜風コーヒーらしい、ピコピコ音のリラックスさで駆け抜けている。


 特に最後の四行、『せっかくだから』は『生まれて来たんだから』という意味。

『その愛しい冷たさよ』は以前、彼女が言っていた、アルミギター使いならではの最高の愛情表現。

 これらはわたしの勝手な解釈だけれど、さなちゃんのこの粋なポエムが最高に好きだ。


――演奏後、わたしたちは拍手を浴びて、お礼を言う。

 三脚を回収して、舞台から下りる。


 そして、次の参加者の曲を聞く。

 るかちゃんの演奏を聞く。

 その曲は、一緒に練習していた時に聞かせてくれたものだ。


 あの鳥肌を立たせるイントロと歌声は通常通りだった。

 観客の反応もわたしたちの時とはまったく違う。

 彼らも圧倒されて、拍手も歓声もすさまじかった。


 演奏後、るかちゃんはお礼を言う。

 黒いピアノから立ち上がり、頭を下げる。

 華やかに舞台を去り、再び拍手を浴びている。


「来年も頑張りましょうね」


 と、わたしは笑顔で言う。

 自分たちの教室へ向かう途中で。


「……あぁ、るかには敵わんねぇ」


 えまちゃんは、まるで自立する我が子を見送る親のように儚く笑みを浮かべている。

 登校時に走ったせいで疲れている。

 本来の力が出せなかったのが、悔しい気持ちはわたしにもわかる。


「もえちゃん、私の黒歴史を歌ってくれてありがとう。けれど、やはり、もえちゃんの作詞でないといけない気がするの」


 と、さなちゃんは言う。

 わたしは彼女の手を握ると、


「そんなことないですよ、さなちゃん。これからもネタ切れになった時、さなちゃんのエモいポエムを歌詞にしましょう!」


 彼女は頬を少し赤く染め、苦笑いする。

 優しく握り返してくれる。

 

 それにしても彼女のギターソロは、今までにないくらい魂がこもった素晴らしいものだった。

 わたしは演奏中、はっきり言うと、るかちゃんの曲よりも鳥肌が立った。

 改めて最高のギタリスト、最高のリーダー、最高のタルボ使いだと思った。

最後までご覧いただき、

ありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ