第21話:彼女の緊張を和らげるためのMC
『わたし、毎朝、学校に行く前にベースの練習を川で練習しているんですよ。家で音を出してするとお母さんに『うるさい』と、言われるので』
『結構、頑張っとるけぇ、えらいわ』
と、えまちゃんは言う。しかし、まだうつむいている。
『弾きながら川を眺めているとですね、色んな考えが浮かぶんですよ』
『まぁ、川にゴミを捨てる人とかおるしそうなるよ』
『辛いと辛いはどうして同じ漢字なのか』
『まあややこしいからわかるけど』
『あそこのご飯屋さんは、お肉が辛いから辛くなるけどその辛さを乗り越えた先に本当の辛さに出会えるんだなって』
『いやもう見たくないわその字面』
えまちゃんは、うつむくのをやめ、こちらを見る。もえはそれを文字として起こした時を、脳内で映像として思い出しながら、
『どうですか? 菊池さん?』
『え?』
『緊張が解かれましたか?』
『え? あぁ、もう緊張しとらんわ』
彼女は左手をぶるぶると振る。もう暗い表情をしていないし、いつもの彼女だ。この夏の太陽のように明るい気持ちにさせる女の子に。
『良かったですねー、菊池さん。これで本来のドラムの上手さが発揮できますよ。それでは聞いてください。『ハルジオン』』
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