神話と混乱の世界
神話を明確に定義づけることはむずかしい。
というのはこの語は説話や伝説、あるいは現実には起こりそうにもない話など、あまりに多様な用いられ方をするだけでなく、神学者や神話の研究者の間でも用法が一定していないからである。
ただ神話や神と言う語があるのは、現在の秩序や人間の生き方としてのルールが生まれる以前の、混沌とした世界で生まれたからにすぎない。人間と動物の区別も無視されて、動物がまるで人間のようにふるまい、動物とも人間ともつかない祖先たちが主人公の話が神話ではあるが、これも同じ理由による。
神話の物語る事件が起こった太古昔には、人間と動物、それと精霊などの区別がまだなかったか、あっても曖昧なものだったのである。
これらの神話を神聖視、神格化して伝承する文化をもつ人々にとっては、神話は人間の運命や秩序について自ら納得する真実の話として信じられ、規範として現在の生活の細部にまで浸透していた。いいかえれば、人間はそれぞれの文化のなかで固有の神聖なを生み出し、かつ伝承しながらそれに則して生活を営んできたわけで、そこにはつねにありえないような話、神話が反映されていた。
そして現在、細部にまで科学が発展した現代でも混乱は続き神話の続きが始まったのである。
1980年代とある現象が世界各地で観測された。南極でしか見られないはずの空にかかるオーロラの出現。空には亀裂が入り、中はまるで宇宙のような光景が広がっており星のような数えきれぬ光がこちらを見つめていた。
それを1人が見たといえばただの妄想にしか過ぎなかったはずだった。だが、2人、3人と共通で認識したそれはもう、現実と言わざるおえなかった。
光は全世界に一晩中亀裂が閉じ切るまで降り注いだ、その中でも特段大きな光を放つ星が5つ煌めきを放ちながら、アメリカ、中国、フランス、ギリシャ、そして日本に落下した。
そこからが混乱と神話の始まりだった。
神、霊、精霊、怪異、幽霊、妖怪色んな呼び方を皆がしたが頭に角の生えた化け物、蛍のように淡い光を放ちながら人型に羽が生えたものが飛び交うなど現代にありえないことが起き人々に恐怖と混乱を招いたのは言うまでもない、神話や伝承でしか聞いたことのない物語の始まり。
ここからは当時の研究議事録や新聞の記述を参照とするが、日本だけではなく世界中で目撃した人の混乱とそこからの長い戦いの日々の記録が残っている。
最初銃などの兵器を用いて人間側は応戦したが、一部の獣形通称ビーストには通用するものの、精霊形と呼ばれるものはすり抜けたり、人型と呼ばれるものは柔肌のように見えて膜のようなものに阻まれ全く通用しないものもいた。
そのなかでも際立ったのは大きな光が落ちた5つの国の中でも日本を除いた4つの国。
アメリカではどの州にいても観測できる大きな山脈を思わせるような巨大な髑髏の塊、遠目でも蠢くその山の名は狂気山脈。
通称死者の王。近くで確認し生き残ったもの曰く骸の大群が蟻のように一際大きなアンデットの周りに渦巻いていた‥と。
中国では世界的事象の観測日に1体の神獣の確認。後に14体を確認されたとの報告。そこから以降の情報は国内判断で遮断。
ギリシア近海の海では通称レビァティンの出現、他複数体巨大な怪物の確認、クジラの音楽を観測していた研究室が最初に観測したレビァティンと思われる歌声を聞いた研究員が次々と、海へと自ら入り自死する事象が確認。沿岸部の町は崩壊。いや正確に言うと大きな何かに土地が抉られそこに賑わっていた町はなく、海となっていたと。
フランスでは大きな壁に阻まれた国と思われるものの出現。見た目は中世ヨーロッパを思わせるが構造は細部に渡り複雑であり、観測中その中に数十人の人型を確認。
侵略と判断し先行した調査大隊総勢100名。進行の際中、高台にいる金色の甲冑を纏った騎士と思われる1人の人影から放たれた閃光に飲まれ壊滅。
以上の報告を受け、混乱下世界安保理は初めての満場一致、適材適所での兵器の共有、使用が承認。
第一時神話大戦へと繋がっていく。
また以上の4体は始まりの王、危険度SSS級と認定された。
大きな光が確認された日本といえば、幽霊や怪異による事件は多発しSSランク鬼神は確認されたが(後2005年に冲方十蔵含む特殊部隊により討伐)はあるが上記4国のような王、即ち統べるものは現在人理3年現在も確認されていない。
ここからは最初の記述より数ヶ月たった頃のこと。
人間は兵器を使い応戦したが、相手側は超自然現象を操る万物の存在。王に関してはミサイルを打ち込んでもびくともしておらず、近づくことさえ困難を極めた。人間側は攻めに攻められず向こう側のもの全ての形を含め通称幻夢、人々が夢幻だと信じたい一心でつけた名前だが人間はなすすべなく、敗退を繰り返しこのまま神話に飲み込まれ滅びると皆が死を覚悟した。
だが1980年の終わりそれはアメリカで最初に確認された。
一般的な家で生まれた青年は何もないところから剣を生み出し、西の州に進行してきた骸の部隊に対して応戦勝利を納める。
中国――見たもの曰く両手は光り輝き神獣の一体と己の極めた憲法を奮い3日3晩による戦いの末痛み分けの形となり、侵攻を止めた。
フランス――進行する騎士のような格好をした幻夢に対して、キャンパスを広げ生み出した絵はユニコーンであり、生命を吹き込まれたかのように自由自在に動き出し侵攻してきたS級と思われる相手に善戦、後に人理兵器と共用にて勝利する。
人間側も気、念、新、SPECなど様々な呼び方があったが後にこれを国連で呼び名を統合、通称conception概念と呼び神話の世界に晒され、また彼らに触れたことで体に異常をきたし万物の理を超えた科学で未だ証明できない力、概念の能力を手に入れたもの達が、世界各国で確認され始めた。