ショタのロンド5
ロンドー!
ちょこちょこ短い話がありますが仕様です。
仕様という事で堪忍してつかぁさい。
今日のオススメ!
対アウトロー用バール。
とっても軽くてとっても頑丈!
この突起を奴等の脳天に突っ刺しちゃえ!
…………うん。バールはそういう使い方をしちゃいけないと思うのです。あれは釘を抜いたりするのに使うのです。店先に並べちゃいけないと思うのです。
ヒロインちゃんと小さな店内……『よろずやん』をウィンドショッピングです。お姉さんはグロッキー。まぁいつもの事です。
僕らは一通り店内を巡って目新しい物をチェックしました。
そして僕はジャンク品コーナー。ヒロインちゃんは僕のすぐ後ろにある本棚エリアに釘付けになっています。窓際で明るい所です。
このお店で本を購入する場合、個人端末にダウンロードするんですが……ヒロインちゃんも雑誌とか読むようになったんですねぇ。女の子らしくお洒落な雑誌とかでしょうか。僕がウンコ座りしている背後で随分と熱心に立ち読みしてます。
この前は武芸の奥義書を注文してた気がします。発剄とか内功とか。
あれは読むと言うよりも……感じる? らしいです。
弾丸も素で避けるヒロインちゃんがこの上何処に向かおうとしているのか……僕にも分からないのです。
ひとまず新調した棚に載せておきましょう。よいちょー。
「ヒロインちゃーん。都会で流行りの香水があるんだけど……試してみない?」
ジャンク品のパネルをてしてししながら心の棚上げ作業している僕にお姉さんの明るい声が聞こえてきました。
さっきまでグロッキーだったお姉さんが復活したみたいです。お会計のところで手をフリフリしています。
でも、お姉さんはすっごく悪い笑みを浮かべてます。
そしてヒロインちゃんは……急に声を掛けられてビクッ! としてました。ホロパネルで本を読むのに夢中だったんですね。少しだけなら立ち読みも出来るのです。
僕も気になる本はチラ見してから買ってます。今度は動物図鑑とか欲しいかなぁ。ウサギ……ウンコで食を賄うとかすごすぎです。ある意味永久機関です。
詳しく調べたい所ですねぇ。
「……ヒロインちゃん? あなたまだ未成年よね?」
ヒロインちゃんがビクビクッ! と体をピチピチの海老みたいに跳ねさせています。それにお姉さんの声に呆れが混じってるような気がします。
……まさかねぇ?
振り返って見るヒロインちゃんの横顔には玉のような汗が浮かんでいます。
「……まぁ女の子は早熟だから仕方無いけど」
なんか呟きが聞こえます。お姉さんの声です。いえ、聞こえません。好きな女の子がデート中に僕の背後でエロ本を読んでいるとかあり得ませんからね。
なによりヒロインちゃんは未成年。読みたくても読めないはずですからね。ええ、年齢制限が掛かりますから。
僕は何も見ていないし、聞いていないのです。
ヒロインちゃんの鼻から紅いものが垂れているのも僕には見えないのです。
棚……棚はどこですかっ!
せいやっ! そいやっ!
「お・と・な・の香水……試してみる?」
お姉さんの煽りマックスな問いかけに反応してヒロインちゃんが壊れた人形のようにギクシャクとお会計のテーブルに向かいました。手には何故かバールを握りしめています。今日のお勧めとして店の入り口に置かれていたバールです。
……ヒロインちゃんはバールで何をする気なのでしょうか。怖くて仕方ありません。顔は真っ赤ですし。お姉さんは対照的にニヤニヤしています。
……これは……口封じ?
「……ヒロインちゃん。落ち着こうね。ほらティッシュ」
こういう事態はわりと慣れっこです。こんなときの為に僕のポケットにはいつもティッシュを忍ばせているのです。
ヒロインちゃんにテテテと近付いて鼻をふきふき。ついでにバールを取り上げました。
……なんか指の形に凹んでる?
……いえ、きっとそういう仕様なのでしょう。掴みやすいように加工されてるのです。きっと。流石おすすめのバールですね。
ヒロインちゃんの凶行は、なんとか止められました。ふぃ~。
と気を抜いていたのが悪かったのでしょう。このあと僕はお姉さんが試しで振り撒いた香水のドギツイ臭いに号泣することになりました。
眼にキタのです。あれを香水にする都会人の感性を疑います。ドブです。それも濃厚なドブです。発酵が進みすぎて物理的な質量を持ったガスです。
ガスマスクが必須なレベルでした。
当然ヒロインちゃんも激怒して大暴れしそうになりました。まさかのバール二刀流です。洒落にならないので僕も泣きながら懸命に止めました。
……こういうのを厄日って言うんですよね。ぐすん。
香水って分量を間違えるとテロになりますからね。
みんなも気を付けてー!