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ショタのロンド3

 ロンドー!


 

 僕の名前はジョニーです。


 でもこの島には他にもジョニーさんが三人居ます。なので間違えないようにそれぞれ頭に『大』『ハゲ』『ぽっちゃり』と枕詞が付きます。こっそり付いてます。


 ……僕にも何か付いてるんですかねぇ。ちょっと怖いです。多分『小』ですかね。





 僕には幼馴染みの女の子が居ます。隣に暮らしている女の子です。隣といっても結構離れてますが毎日一緒にご飯を食べる仲なのです。


 名前は……通称で『ヒロインちゃん』と呼ばれています。本名はあんまり使いません。


 真名は夫にしか許しませぬ! とヒロインちゃんは鼻息荒く主張する夢見る乙女なのです。


 ……心の棚も一杯になってきた気がします。今度心の棚を整理しよう……。


 えっと……ヒロインちゃんはすごく可愛い女の子です。本当です。僕よりも身長があって、すらりとしてます。カッコいい系の女の子なのです。


 髪の毛をツインテールにしてていつも揺れてるのです。ついつい見ちゃいます。ふりふり揺れる尻尾に僕もメロメロなのです。


 ヒロインちゃんは、いつも澄ましたお顔をしてますが笑顔になると『にぱっ』となってすごく可愛いのです。


 僕はいつも彼女にメロメロなのです。


 ……メロメロなのですよ。


 いや、本当に。うん。


 ちょっと重いなって感じる事もよくありますが……とっても可愛い女の子なのです。


 僕の心の棚を大半占めてる気もしますが気にしない。棚は新調すれば良いのです。とうっ。


 僕には両親が居ませんがヒロインちゃんには居ます。パパさんとママさんです。あとペットのウルフが居ます。


 このペットのウルフは僕のプレゼントしたロボット狼です。口からポジトロン砲とか出ます。とっても犬っぽいけど狼なのです。すごく柴犬っぽいけどウルフなのです。尻尾がくるんとしてます。


 ヒロインちゃんの誕生日用に本気を出して作ってみました。ガチで自信作です。一応僕の言うことも聞きますが今はヒロインちゃんの忠犬です。


 ……戦艦に使われていたプライドの高いコアなんですけどね。あっさりヒロインちゃんに降りました。まぁそうなるよなぁと思ってプレゼントしたのでモーマンタイです。今は普通に犬です。尻尾とか振ってます。


 メンテも僕がしてるんですが、ロボよりも手が掛かってる気がします。まぁあいつは文句が多いので改造もまだ控えめなのです。


 ……まだ、ね。ふふふ。



 

 ヒロインちゃんの家族の説明に戻りますね。


 ヒロインちゃんのお母さんがママさんです。いつも優しく微笑んでいる女性です。なんか温かくて柔らかい人です。いつも甘い匂いがするのでお菓子みたいな人ですね。ヒロインちゃんよりもぷにぷにしてます。


 ……ヒロインちゃんは少し筋肉質なので……いえ、何でもないのです。うん。


 心の棚に、てーい!


 ヒロインちゃんのパパさんの説明をしましょう。


 ヒロインちゃんのパパさんは島の役場で働いています。俗に言う公務員、ですね。今の時代だと珍しいのです。機械生命体が大半を占める公的機関に傀人が勤めるのは中々に苦行であると言われています。


 ……多分うちのロボよりも酷い機械生命体が沢山居るんでしょうね。それでも大丈夫なのは真面目な機械生命体がその分を頑張っているからだそうです。


 ……世知辛いのです。はふぅ。


 そんな辛い職場で働くパパさんは普通の人です。


 本当に普通です。眼鏡です。


 すっごく普通の人です。


 ママさんみたいに隙あらば抱き付いて来たりしませんし、ヒロインちゃんみたいに後ろから絞め技を掛けてくることもありません。


 ごく普通なお父さんです。よくウルフと散歩してます。和みます。ウルフと一番仲良しなのはパパさんですね。


 さて……。


 そんなわけで僕は幸せ家族なヒロインちゃん家に連れ込まれています。


 ……どんな訳なのか僕も知りたい。


 でも心の棚に、ていやー!


 ヒロインちゃんの家に拉致された僕は夕飯を頂きました。普通に美味しかったです。


 ……ええ。美味しかったです。


 ……多分。


 ヒロインちゃんは気付いてないみたいですが僕らは間接キスをしまくっていたのです。正直、味なんて記憶にありません。恥ずかしさと照れ臭さで胸が一杯になりました。


 そう、ヒロインちゃんは僕に『あーん』をしまくったのです。彼女の使うスプーンで。


 男女七才にして同席せず、とは申しません。何せ赤ちゃんの頃からずっと一緒に育って来たのです。一緒にいるのが普通なのです。


 でも、もう少し節度を覚えた方が良いと思うのです。僕らはもう子供ではないのです。あと数年後には結婚が出来る年齢なのです。


 まるで赤ちゃんのお世話をするような『あーん』は、恥ずかしいのです。


 まぁヒロインちゃんの笑顔が見られたので……嫌ではないのですが。


 いつもの澄ましたお顔が『うにゅ』となるのはとても……その……可愛いと言いますか……恥ずかしいです。はぅぅぅ。


 まぁヒロインちゃんのママさんも間接キスをしまくるので、きっと遺伝的な物なのでしょう。パパさんはしませんからね。ウルフはそんな家族の様子を寝ながらチラ見してます。あっ、あからさまにため息をついてますね。


 あとでお腹を撫でてあげましょう。仲間外れはいけません。


 食事の団らんはいつも賑やかなのです。これが『家族』というもの、なのでしょう。


 ……じじいはちょっと違うのです。はぁ……。


 



 ご飯が終わり、一段落つくとお風呂です。その前にウルフを撫でまくりました。ウルフはヘソ天で喜んでました。やっぱり犬ですね。


 今日はパパさんとお風呂でした。ヒロインちゃんとママさんは毎回一緒に入りたがるのです。少しは慎みをもって欲しいと思います。


 僕はもう子供ではないのです。


 お風呂上がりにコーヒー牛乳を飲むくらいには大人になったのですっ!


 ちょっと前まではお風呂上がりと言えばイチゴ牛乳でした。まぁ今も普通に飲んでますけど。


 コーヒー牛乳のほろ苦さが分かる年齢になったのです。僕はもう大人なのです!


 汗が引いたら歯磨きして夜に備えるのです。ふふふ。夜は大人の時間なのですよ。


 夜の9時になったのでお布団でスヤァしました。大人の夜は早いのです。


 今日もヒロインちゃんの家にお泊まりです。スヤァ。


 ……ヒロインちゃんも隣でスヤァです。にゃむにゃむ……なんか……固い……にゃむにゃむ。





 ……朝です。


 僕は大人です。大人なのです。だからヒロインちゃんが寝起きドッキリで僕の顔にイタズラしているのも寝たふりをしてスルーするのです。


 前はオデコを中心にイタズラされてたんですよね。今は、ほっぺとか唇に何かを当てられてます。何か柔らかい物です。ウルフの肉球でしょうか。なんか生臭いです。


 僕は毎朝ヒロインちゃんに無駄に高い再現率を誇るウルフの肉球でぷにぷにされているのです。


 何気に一番高いパーツなのです。しっとりしててぷにぷにする肉球パーツって意外と需要があるんですねぇ。


 多分ウルフは渋い顔で従っているのでしょう。ぷにぷに。


 ……若干、鉄の匂いがするのでやっぱりウルフの肉球でしょう。


 ……。


 ……。


 ……今日は長いなぁ。ぷにぷに。




 朝です。僕は目を覚ましました。ヒロインちゃんが起こしてくれたので起きれました。ウルフは逃げたようです。影も形もありません。完全犯罪ですね。


 うにゅっとしたヒロインちゃんと朝ご飯を食べました。すごく、うにゅっとしています。超ご機嫌です。


 そんなご機嫌なヒロインちゃんですが……鼻にティッシュが詰められてます。


 鼻に紅く染まったティッシュを詰めてますが、そんなことでヒロインちゃんの可愛さは損なわれないのです。


 ……えっと……あんまり?


 ヒロインちゃんは、よく寝鼻血をする体質なのです。朝になるとお布団が血まみれとかよくあるのです。多分血圧の関係なのでしょう。あと鼻粘膜。


 玉に僕も血まみれで起きますけど……慣れました。


 好きな女の子の鼻血くらいで男の子は怯みはしないのです。


 ……心の棚はその時からでしたか……。


 ……五才だったかな、最初の棚作り。


 まぁそれは良いのです。ていやっ!


 僕らはママさんお手製の朝ご飯を食べてからパパさんの出勤を見送ります。いつもの日課ですね。そのあと僕とヒロインちゃんでデートに出掛けました。お金が無いのでウィンドウショッピングなのです。


 いつもお世話になってる『よろずやん』にデートなのです。


 ……お金が無いので冷やかしとも言います。でも仕方無いのです。このままヒロインちゃんのお家にいるとママさんのハグがすごいのです。


 それはもうハグハグされてしまうのです。ヒロインちゃんも参加してのハグハグデーになってしまうのです。


 今日は休日なのです。発掘作業をした次の日は、いつもお休みにしているのです。


 ハグハグなお休みデーもよくあります。二日に一回はそんなもんです。


 でも昨日の件で僕は凹んでいたのです。本当はもう少しお布団でまったりしたいところなのです。


 だけど僕は男の子です。


『女の子を決して飽きさせないのが大人の男』ってママさんとヒロインちゃんに言われているのです。


 大人の男はマメなのです。


 どんなに疲れていても家族サービスを怠らない……それが『大人の男』なのです。


 マンネリは家庭崩壊をもたらすのです!


 ……でも半月ごとに僕の服装を強制的に変えるのは違う気がします。この前なんてフリフリのスカートでしたし。あれはパパさんがすごかったなぁ。


 眼鏡を曇らせながらローアングルで写真を撮りまくってました。


 ……棚に載せていいのかなぁ。まぁ実害は無かったので載せておきましょう。よいちょ。





 さてさて、デートです。


 僕らはよくデートします。


 デートというか、何処かに二人で遊びに行くことを最近はデートと呼んでいます。ラブラブです。多分ラブラブです。


 僕とヒロインちゃんはランデブーなのです。


 今日は休日なのでロボも家でまったりしてるのでしょう。ロボとヒロインちゃんは相性がイマイチなのであまり一緒に居たがらないのです。


 まぁロボは休日になると家でゴロゴロしてるので心配はしていません。昨夜から別行動をしていますがパートナーとはそういうものなのです。


 ロボにも人権や自由があるのです。


 ……まぁ義務もありますけど……適当なんですよね、あいつ。いつか痛い目に遭うと僕は思います。


 ま、そんなことよりデートですね。


 ヒロインちゃんの家を出て……手を繋いで僕らは島を歩きました。朝の空気は爽やかで緑の匂いに満ちています。手付かずの自然が沢山残るこの島は、とっても田舎です。道は基本的に砂利道です。


 歩くとジャリジャリ言います。


 緑の匂いを含んだ潮風がヒロインちゃんのツインテールを揺らします。フリフリです。今日もよく晴れそうです。


 バラダン島は常夏の島です。通年で気温があまり変わらない『夏島』なのです。毎日海で泳ぐことも出来るくらいにぬくぬくです。


 まぁ油断してるとアウトロー達に襲われるので水泳は命がけです。奴らも泳いで遊んでるのです。何気に優雅です。


 アウトローはアームを出してバタ足で泳いでいるのです。意外と速いのです。こっちが平泳ぎだと捕まります。海でこちょこちょは即死案件なので付近のアウトローを掃討してから海遊びになります。


 ちょっと手間なのです。


 なので海はデートスポットに使えないのです。むしろアウトロー達の遊び場なのです。見てるとほっこり和むんですけどね。ボール型ロボットが砂浜をコロコロして遊んでるのは。


 まぁ近付くとヤられます。なので遠くで見るのがお約束です。


 砂利道をジャリジャリと歩きながら、そんな事を考えていると、ふと手に温もりを感じました。


 バラダン島は朝晩それなりに気温が下がります。湿度も下がって過ごしやすいというか、少し肌寒く感じます。


 なので自然と僕の手はヒロインちゃんに握られていました。


 ……柔らかくて温かい手からヒロインちゃんの体温が伝わって来るのです。


 僕の胸が高鳴ってしまうのです。


 隣で歩くヒロインちゃんは相変わらず澄ましたお顔をしてました。


 でも、よく見ると口許が『 ω 』になっています。可愛いです。すごく分かりやすいのです。


 指も『恋人繋ぎ』でウニウニしてます。手汗がウニウニです。ヒロインちゃんは怯みません。ウニウニです。


 ウニウニしながら僕らは朝日を浴びながら、朝露の匂いに包まれながら、てけてけとお店に向かうのでした。


 ……ヒロインちゃんは汗っかきなのです。心の棚に……載せなくてもいいか。でもあんまし気持ち良くはないのです。なんてったって手汗ですからね。


 高鳴っていた胸が鎮まりました。お店にゴーです。

 

 


 ……リア充。


 

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