ショタのロンド13
ロンドー!
お腹がピンチな時、その人の本性が現れるそうです。
限界まで追い詰められた時、人はその本質を隠せなくなるのでしょう。
……はうっ……。
もう少し……ゆっくりと……次のトイレは見えてます。見えているけど……遠いのです。はうっ。
ムツキ島に着いた僕とロボは、バラダン島とは比べ物にならないオサレで近未来的な街並みにドギマギしつつロボットバトルの開催施設、ロボットバトルセンターへと向かいました。
歩みはゆっくりです。ええ。お腹は大事。
お目当てのバトルセンターは島の沿岸部にありました。沿岸部とはいえ島がデカイので、漁港からそこそこ歩きました。道もちゃんと舗装されててびっくりです。途中、車が沢山走ってました。人も沢山で……祭り? 今日はお祭りですか? と思わず道行くワンコさんに聞いてしまいました。
ワンコさんは『いや、今日は普通の平日だよ?』と答えて散歩の続きに戻っていきました。テコテコです。尻尾はクルンとしてません。
……ワンコの皮を被ったロボットですね。うちのウルフの方が可愛いと思います。
植樹もされている綺麗な歩道を僕とロボがてけてけ進みます。なんかヤシっぽい背の高い木が道路に沿って植えられてます。
オサレです。オサレすぎです。
青空と、みどりの葉っぱなハーモニーです。まるで南国トサーです。
昔地球にあったという伝説の南国トサー。ここには、とある伝承があるのです。皮がダルダルなのにマッシブなワンコがこの南国トサーを支配していたそうなのです。
ダルダルマッシブです。南国トサー……魔境だったのでしょう。
まぁじじいから聞いた話なので与太話の類いだと思います。
それにここは冬島です。ピーカンに晴れてても肌寒いんです。南国とは程遠いのです。
海沿いに、てけてけと歩く僕らには島の風景がよく見えました。なんだかブロッコリーを彷彿とさせるシルエットです。
島の中心地には森とビルディングがあります。ビルディングは森の中から生えてるように見えます。ここも自然と人工物のハーモニーが……ハモってないですねぇ。森に呑まれかかっている建物にしか見えません。
もしくは森を突き破ったビルディングです。
壮大なガチンコバトルを見ているような気がします。森もビルディングも大きいからそんな気がするのです。
不思議な光景です。
これが都会…………トイレは何処? 早く次のトイレを……はぐっ。
この島は大きく別けて三つに区分けされます。
まず住居エリア。
これは島の中央部。森々してる所にビルディングがニョキっなエリアです。大体の人がここに住んでます。人口は驚きのミリオン越えです。とんでもない数の人がこの島に居るのです。
……ここには何人のジョニーがいるんでしょうか。枕詞が非常に気になります。
次が沿岸部にある市街地エリア。
ここは商店や公の施設などが集中して敷設されています。
ムツキ島の中央部が住居エリアなのでドーナツ状に市街地が広がって居るのです。なにこれすごく広いんですけど。地図を見ながら解説してるのに意味が分かんない。
……え、この市街地エリアだけで……バラダン島を越えてる?
……広すぎない?
で、最後が一般人の入れない下層エリア。この島の下層全てが該当します。この島の運行とか整備とか色々と担っている重要な区画だそうです。
ふふふふふ。そうなのです。実はこの島……人工島なのです。
人工島なのにとんでもなく大きい島です。広さは……カナーガワーケンッと大体同じくらいの大きさでしょうか。これも昔あった王国のひとつと言われています。
ここには田舎者を馬鹿にする傲慢な人達が住んでいたそうです。まぁその人達も他所から来た田舎者だったらしいので不毛な事この上ないですよね。そして生粋のカナーガワーケンッ人はわりと芋っぽい人達だったと伝わっています。
……じゃがいも? 一応人間ですよね、この時代。うん。
このカナーガワーケンッには永遠に完成しないヨッコハマンステーションがあったとも伝わってます。
昔の王国って変な伝記が多いですよね。これは歴史の本に書いてあったので信憑性が高いのです。じじいは『ヨッコハマンの幼女ピチピチ! 赤い靴がエロスを醸す! これぞロリータの先駆けなんじゃぁ!』と頭のおかしい事を言ってました。
理解不能です。
ムツキ島の話に戻りますか。
とりあえずこの島はとんでもなく大きい、ということなのです。大体縦横に50キロです。バラダン島よりも遥かにでっかいです。
そして都市機能がきっちり別れています。すごいです。
道の所々に公衆トイレがあるのでこの島はすごいのです。
きっとお腹の弱い人のことを考えてこの島は作られたのでしょう。
でも残念なことに、この島は変型とか出来なさそうです。
……これだけ大きいと変型とか余裕で出来そうですが上に人が住んでいるのでちょっと無理っぽいのです。
そこだけは残念です……うっ。
こうして、いくつものトイレを経由することほぼ半日。僕は遂にムツキ島のロボットバトルセンターへと……
「マスタァ。無理シナクテモヨイノデハ?」
……うん。トイレの外に待機するロボも心配してくれています。まさかここまでの大打撃とは……ぐっ!
今日は何処かに泊まって休むことにしました。いっそ、このトイレにお泊まりする事も僕としては最善策だったのですが……ここは都会なのです。都会だったのです。
トイレを占拠する不審者という事で僕らは警察のお世話になったのでした。
……悪いことしてないのにね。
その日は警察で夜を明かしました。警察のトイレはわりと綺麗でした。
いや、ほらフィクションですからね。神奈川県なんて何処にも書いてないし。
……あ。